個性「煙」の救煙レスキューヒーロー   作:ウルトラエックス

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真剣勝負試合 1回戦 白煙くんVS飯田くん

「第四試合、そろそろだね……」

 

薄暗い控え室のベンチで、白煙くんの頭からは不安のあまり、もくもくと灰色の煙が止めどなく溢れ出ていた。

ガチャ、とドアが開いて入ってきたのは透ちゃんだった。今度は彼女が、白煙くんを励ましにきてくれたのだ。

 

「飯田くんは本当に強いよ……。僕の煙なんて、彼の超スピードが巻き起こす風圧で一瞬で吹き飛ばされちゃう」

 

「うーん。せっかく物理攻撃は効かない個性なのにねー。何かいい方法はないのかなぁ?」

 

「飯田くんはあの有名なヒーロー・インゲニウムの弟だしね。やっぱりヒーロー一家の生まれは強いや……」

 

白煙くんがガックリと肩を落としたその時、透ちゃんが人差し指を顎に当てる仕草をして(手袋の動きで分かった)、ポツリと言った。

 

「ヒーロー一家かぁ……。じゃあいっそのこと、ヒーローらしくない戦い方……ヴィランっぽくするとか?」

 

「ヴィラン……? 悪者……」

 

その言葉が、白煙くんの脳内でカチリと音を立てて繋がった。

 

「ヴィラン……僕の個性にちょっと似ている、あの凶悪なワープの……そっくりさん。……うん、できるかもしれない。試してみる!」

 

「えっ、ほ、本当に!?」

 

「うん! 葉隠さんのおかげで新しい戦い方を思いつけたよ、ありがとーー!」

 

嬉しくなった白煙くんは、透ちゃんの手をギュッと握ってブンブンと激しく振った。

 

「あ、うんっ! がんばって、白煙くん!」

 

去っていく透ちゃんの力強い応援に、白煙くんの胸の奥から熱い勇気が湧き上がってくる。

 

 

 

 

「第四試合――START!!」

 

ゴングが鳴った瞬間、飯田くんの排気筒から凄まじい爆音が響いた。

 

「勝負だ、白煙くん!」

 

トップスピードで突進してきた飯田くんの、電光石火の強烈な後ろ回し蹴りが白煙くんの脳めがけて炸裂する。

 

スカッ……!

 

しかし、白煙くんは直前で身体を煙化させ、その蹴りをすり抜けた。

 

「白煙くん! 君の『すり抜け』は決して無敵ではない! どんなに周囲を煙で覆おうが、必ず『本体』のコアはどこかに存在する!」

 

(あ、当たり……!よく見抜いてるな……!)

 

白煙くんは心の中で冷や汗を流す。

身体を煙にすることは出来るけど、煙の容量が無くなればごく普通の人間が出てくるのだ。

 

「そして、俺の蹴りが巻き起こす強烈な風圧で、その本体ごと君を場外へ吹き飛ばすッ!!」

 

飯田くんの狙い通り、凄まじい脚風が巻き起こり、白煙くんの煙が大きく煽られる。完全に飯田くんのペースだ。

 

(ここで、さっきの作戦だ……!)

 

白煙くんは覚悟を決め、あのUSJ襲撃事件で見たヴィラン「黒霧」のように、自身の白い煙をモヤモヤとステージいっぱいに巨大に広げた。

 

「身体を大きくしたところで、風の当たり判定を増やしただけだ!」

 

飯田くんが再び猛烈なキックを放つ。

 

ドゴォオオオオン!!!

 

凄まじい風圧によって、巨大に広がっていた白煙くんの煙が一気に霧散し、四方に吹き飛んだ。

 

「勝負ありだ!」

 

飯田くんは勝利を確信し、ふうと息を吐く。しかし、実況のマイク先生も、レフェリーのミッドナイト先生も、一向に試合終了の判定を下さない。

 

「……?何故、先生方は何も言わない……?」

 

飯田くんが困惑したその瞬間。

 

「――こっちだよ、飯田くん!」

 

「何っ!?」

 

なんと、飯田くんの真後ろから白煙くんの声が響き、その細い腕が飯田くんの胴体をガシッと後ろから捕まえた!

さっきの巨大な煙は、ただの囮(おとり)。白煙くんは本体をごく小さな煙の塊にして、飯田くんの死角へと地を這うように回り込んでいたのだ。

 

「くらえ! もくもく煙ーーー!!」

 

間髪入れずに、白煙くんは密着した状態から飯田くんの頭部を煙で包み込んだ。あの轟くんを沈めた「視覚ゼロ」の暗闇空間だ。

 

「なっ、み、見えない……! 前が完全に……!」

 

「これで終わり! 煙パーーンチ!!」

 

白煙くんは飯田くんの視界を奪ったまま、彼の周囲に漂わせた煙の質量を足元に集中させ、飯田くんの足をすくい上げるように激しく攻撃した。

 

「なんのこれしきぃいいい!!! レシプロ……バーストーーーッ!!!」

 

飯田くんが最後の力を振り絞り、エンジンの出力を限界まで解放する。強烈な爆風が全方位に吹き荒れ、白煙くんの煙を一気に力ずくで剥ぎ取った。

しかし、視界が晴れた瞬間、飯田くんの目の前にあったのは――ステージの白線の「外」の景色だった。

 

「飯田天哉、場外(アウト)!! 勝者、白煙薫ーーーッ!!!」

 

「し、しまった……!」

 

飯田くんが愕然とする。視覚を完全に奪われていたあの数秒間、白煙くんの猛攻に焦った飯田くんは、自分が向いている方向を完全に見失っていたのだ。全力の超加速で突っ込んだ先は、ステージの場外だった。

 

「はぁ、はぁ……やった……やったぁあああーーーッ!!」

 

白煙くんはステージ中央で、顔の煙をポンポンと嬉しそうに弾けさせた。

あの実力者の飯田くんを相手に、頭脳と執念で掴み取ったガチバトルの初勝利!観客席からは、透ちゃんの手袋がちぎれんばかりに振られ、障子くんも力強く拍手を送ってくれていた。白煙くんは、溢れる喜びを噛み締めながら、誇らしく胸を張るのだった。

 

 

 

「第五試合――START!!!」

 

始まった第五試合は、チーム放課後の大黒柱・障子くんと、アクロバティックな動きが持ち味の芦戸さんの対戦。

 

「障子くんがんばれー!」

 

「障子くん、いけるよー!」

 

観客席から白煙くんと透ちゃんが声を限りに声援を送る。しかし、芦戸さんから放たれる『酸』の液体が、障子くんの最大の武器である複製腕に容赦なく降り注いだ。

酸の溶解力に対抗する手段がなく、自慢の腕を広げれば広げるほど的になってしまう障子くん。必死に間合いを詰めようとするも、芦戸さんの酸のトラップに足元を阻まれ、健闘虚しくステージ外へと押し出されてしまった。

 

「障子くん場外! 芦戸三奈、二回戦進出ーーー!!」

 

悔しそうに引き上げてきた障子くんを、白煙くんと透ちゃんは「強かったよ!」「怪我はない、障子くん!?」と全力で励ました。障子くんは少し悔しそうにしながらも、「すまない。だが、お前たちに繋げられて良かった」と静かに微笑んだ。

続く第六試合は、轟くんと瀬呂くんの対決。

試合開始の合図と同時に、会場中を激しい地鳴りが襲う。轟くんが放ったのは、スタジアムの天井にまで届くほどの、文字通り空間を埋め尽くす超巨大な氷結だった。

 

「さ、寒いいいいいい!!!」

 

「みんな凍っちゃったよぉお!!」

 

観客席の白煙くんの煙も寒さで真っ青になり、透ちゃんもガタガタと震え出す。瀬呂くんは戦うどころか、身動き一つ取れないまま氷の中に完全に取り残されてしまっていた。

観客席からは思わず「ドンマーイ!」「瀬呂ドンマイ!」の大コール。圧倒的な実力差を見せつけ、轟くんが冷徹に勝利を収めた。

 

第七試合は、上鳴くんと切島くんのガチンコ対決。

開始早々、上鳴くんが「130万ボルトォオオ!」と全方位への大放電を敢行する。対する切島くんは、個性を最大限に発動して『硬化』状態のまま、凄まじい電撃の嵐に歯を食いしばって耐え続けた。

放電が収まった瞬間、上鳴くんは脳がショートして定番の「うぇーい……」状態に。一方の切島くんも限界ギリギリだったが、辛うじて意識を保っていた切島くんが、よろめく上鳴くんを優しく(?)場外へ押し出し、男気の勝利を飾った。

 

第八試合、麗日さんとサポート科の発目さんの対決は、もはや試合というより発目さんの独壇場だった。

発目さんは麗日さんを相手に、自分が開発した「ベイビー(サポートアイテム)」の性能を次々と実演・紹介。スタジアムの全ヒーローや企業に向けて存分にアピールし終えると、「目的は達しました!」と自ら満足げに場外へステップ。麗日さんは何もしないまま勝利を手にした。

 

そして一回戦の最後を締めくくる第九試合。青山くんと、B組の曲者・物間くんの対決だ。

物間くんの個性は、触れた相手の個性を一定時間コピーすること。試合が始まると、物間くんはニヤリと笑って青山くんに触れ、まさかの『ネビルレーザー』の撃ち合いに発展した。

 

「ボクの美しさには勝てないよ!☆」

 

「ハハハ! 僕の方が上手く使えるよ!」

 

激しいレーザーの応酬が続く中、勝負は意外な形で決着する。元々レーザーを撃ちすぎるとお腹を壊してしまう青山くんが、連発の限界を迎えて急激な腹痛を発症。「お、お腹が……アデュー……」と崩れ落ちた隙を突かれ、物間くんの勝利となった。

こうして、激動のガチバトルトーナメント一回戦がすべて終了。

勝ち残った強者たち、そして「チーム放課後」から見事二回戦へと駒を進めた白煙くんと透ちゃんの次なる戦いが、すぐそこまで迫っていた!

 

 

 

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