二回戦のトーナメント表が巨大モニターに映し出された瞬間、会場の熱気はさらに跳ね上がった。
* 第1試合:葉隠さん vs 芦戸さん
* 第2試合:白煙くん vs 爆豪くん
* 第3試合:緑谷くん vs 轟くん
* 第4試合:切島くん vs 物間くん
* (シード):麗日さん
対戦相手が決まり、それぞれのエリアで火花が散る。
「あはは! 次は透ちゃんと勝負だね! 手加減しないよ!」
「三奈ちゃん……! うう、びっくりだけど、私だって八百万さんに勝ったんだから負けないよ!」
女子同士、お互いに手の内を知り尽くしたクリエイティブな戦いが予想される。
一方、第2試合の組み合わせを見た白煙くんは、顔の煙をこれ以上ないほどヒエヒエの青色に染めていた。
「ば、爆豪くん、かーー……」
「ケッ、モブが。すり抜けだか何だか知らねぇが、俺の爆風で跡形もなく吹き飛ばしてやるわ」
ギロリと睨みつけてくる爆豪くん。一回戦の常闇くん戦で見せた、あの容赦のない大爆発の嵐が脳裏をよぎる。白煙くんにとって、熱と風圧を同時に放つ爆豪くんは文字通り「相性最悪」の天敵だった。
そして、第3試合のコート中央では、張り詰めた空気が漂っていた。
「轟くん……」
「俺が勝つ、緑谷。親父の力(左の炎)なんか使わなくても、お前を創り込みの氷結だけで叩き潰す」
並々ならぬ因縁を感じさせる二人の視線が、静かにぶつかり合う。
「ハハハ! 硬化の脳筋男が相手か! 一回戦で勝って調子に乗ってるA組を、僕のコピーでどんどん絶望させてあげるよ!」
不敵に笑う物間くんに、切島くんは「コピー野郎、男らしく正面からかかってこい!」と拳をガチガチに硬化させて受けて立つ。
そして、対戦相手の奇妙な棄権(発目さんの場外ステップ)により、一足早く不戦勝で準決勝への進め方が決まった麗日さんは、「みんな、頑張って……!」と、応援席から祈るように仲間たちを見つめていた。
「さあ、ここからは一瞬の油断も許されない二回戦だぁああ!! 」
プレゼント・マイク先生の絶叫とともに、体育祭のボルテージは最高潮へ。白煙くんは己の個性をどう活かしてあの爆発魔に立ち向かうか、必死に思考を巡らせながら、まずは透ちゃんの試合へと視線を送るのだった。
「第二回戦第一試合――START!!!」
ゴングの音とともに、女子同士の容赦ないバトルが幕を開けた。
芦戸さんは抜群の運動神経を誇り、さらに何でも溶かす『酸』の個性を持っている強敵。対する透ちゃんは運動能力こそ並みだが、特訓で培った体の柔らかさと粘り強い持久力、そして何より『透明化』という唯一無二の個性がある。
しかし、試合は誰もが予想しなかった方向へと進んだ。
なんと、勝負は純粋な肉弾戦、剥き出しの「殴り合い」になったのだ。
(あ、よかった……!)
観客席の白煙くんは、胸をなでおろしてホッとしていた。いくらガチバトルとはいえ、さすがの芦戸さんも、体操服を脱いで完全な透明状態(全裸)になった女の子に対して、肌を容赦なく溶かす酸を浴びせるのは踏みとどまったようだ。
「がんばれーーー! 葉隠さーーん!!」
白煙くんは顔の煙をブンブンと激しく揺らしながら、声を限りに応援する。
酸を封印された芦戸さんだったが、それでも持ち前の驚異的な身体能力は健在だった。透ちゃんも透明な体を活かして必死にフェイントをかけながら食い下がったが、最後は芦戸さんの強烈なアッパーカットからの押し出しが決まり、軍配は芦戸さんに上がった。
「勝者、芦戸三奈ーーーッ!!!」
「うぅ〜、負けちゃったよぉ〜〜」
控え室に戻ってきた透ちゃんは、ジャージを着直してガックリと肩を落としていた。
「お疲れ様、葉隠さん。すごく良い試合だったよ」
白煙くんが優しく声をかけると、透ちゃんは悔しそうに手袋を握りしめた。
「三奈ちゃん、私に配慮して個性を抑えてくれたのに……それでも純粋な体術で勝てなかったぁ。隠密の個性も大事だけど、私、もっと体を鍛えるよ!……って、それより次は白煙くんの番じゃん!」
ハッと気づいた透ちゃんが、白煙くんの前に立ってポンポン(チアの時のもの)を力一杯に振った。
「相手はあの爆豪くんでしょ!? 私、応援すっごくがんばるからね!!!! 飯田くんの時みたいに、あっと驚かせてやりなよ!」
「うん……! ありがとう、葉隠さん!」
透ちゃんの全力の応援を受けて、白煙くんの顔の煙が覚悟の純白へと染まる。
次は第二試合。相手はあの、歩く爆弾・爆豪勝己。
相性は最悪、恐怖がないと言えば嘘になる。けれど、チーム放課後の仲間がくれたエールが、白煙くんの背中を強く、強く押していた。
「よし……行ってくる!」
白煙くんは拳を握り締め、嵐の待つステージへと一歩を踏み出した。
流石に「酸」は止めました