「これより、第一学年表彰式を執り行うわ!」
ステージ中央には、禍々しい鎖で拘束された表彰台が用意され、ミッドナイト先生の声が響き渡る。
そして、スタジアムの天井から「ハーーーハハハハ!」という、あの聞き馴染みのある豪快な笑い声と共に、平和の象徴が姿を現した。
「私が!! メダルを授与しに来た!!!」
「「「「オールマイトーーーーーッッッ!!!」」」」
オールマイトの登場に、会場全体のボルテージが再び跳ね上がる。
まずは3位の切島くんの前へ。
「切島少年! 決勝の戦い、実に見事な『漢気』だった! 攻撃を恐れぬその硬き意志は、多くの人の盾となるだろう!」
「あ、ありがとうございます……っ! 次はもっとガチガチに鍛えてきます!」
オールマイトから銅メダルを首にかけられ、切島くんは涙ぐみながらトレードマークの鋭い歯を見せて笑った。
続いて、2位の轟くんの前へ。
「轟少年。緑谷少年との試合、そして決勝……何かが吹っ切れたような良い闘いぶりだった。君の持つ二つの力、これからは君だけのものとして、高めていくといい!」
「……はい」
轟くんは首に銀メダルをかけられ、静かに、けれど前を見据える確かな光を宿した瞳で頷いた。その表情には、もう以前のような暗い翳りはなかった。
そして最後は、1位の表彰台。そこには、なぜか拘束具でガチガチに縛られ、口枷までハメられた爆豪くんがいた。
優勝したというのに、その瞳は完全に狂戦士のごとくギラついている。選手宣誓の時に言った「俺が1位になる」という伏線を完全に回収してみせたが、本人は納得のいかない決着(轟くんが炎を全力で使わなかったこと)に怒り心頭のようだ。
「ふーむ、爆豪少年! 圧倒的な実力での優勝、お見事! だが、その顔はまるでヴィランのようだな! ハハハ!」
オールマイトが苦笑いしながら口枷を外すと、爆豪くんは即座に「こんな1位に価値はねぇんだよォオオオ!!!」と怒声を上げた。オールマイトは「まぁまぁ!」と強引に金メダルを嚙ませるようにして首にかけ、なんとか表彰式を形にした。
こうして全ての競技が終了し、閉会の挨拶へ。
ステージのミッドナイト先生が鞭をバチンと鳴らし、スタジアム全体を見渡す。
「ヒーロー科A組・B組、普通科、サポート科、そして観客席のみなさん! 本日は本当に、ありがとうございました! それでは最後に、あのお決まりの言葉で締めくくりましょう!せーの……」
観客も生徒も、全員が拳を突き上げて「さらに向こうへ」と息を吸い込んだ。
「「「プルス・ウルトーーー」」」
「お疲れ様でしたァアアアア!!!!」
一斉に叫ぼうとしたその瞬間、すべてをかき消すようなオールマイトの規格外の大声がスタジアムに轟いた。
「「「って、そこは『プルスウルトラ』だろぉおおおおお!!!」」」
A組はおろか、スタジアム中の観客、プロヒーロー、果ては実況席のマイク先生まで巻き込んだ、総ツッコミの嵐が巻き起こる。感動のフィナーレのはずが、一瞬で大爆笑の渦に包まれるという、なんとも雄英らしい幕引きとなった。
人混みの中、A組の観客席の隅っこで、白煙くんと透ちゃんは肩を並べて一息ついていた。
「透ちゃん、本当にお疲れ様。八百万さんとの試合も、三奈ちゃんとの試合も……すっごく、かっこよかったよ」
煙の隙間から、白煙くんが優しく微笑みかける。
すると、透ちゃんの手袋がえへへ、と嬉しそうに頭をかく仕草をした。
「えへへ、ありがと! でも、エンちゃんのあの最後の大きな拳も、めちゃくちゃかっこよかったんだからね! 爆豪くんにあそこまで迫るなんて、本当にすごいよ!」
お互いに褒め合いながら、二人は顔を見合わせて(透ちゃんの顔は見えないけれど)自然と笑顔になった。
「……でも、A組のみんな、本当に凄かったね」
「うん、圧倒されちゃった。でもね、エンちゃん。私、次の行事や授業では、もっともっと強くなって、今度こそみんなを驚かせちゃうんだから!」
「うん! 僕も負けないように、もっと煙の容量を増やす特訓、頑張るよ」
夕日に染まり始めたスタジアム。
それぞれの悔しさと、手に入れた新しい絆を胸に、「チーム放課後」の二人は、お互いの手の温もりを確かめ合うように、再びそっと手を繋ぎ直して歩き出すのだった。