個性「煙」の救煙レスキューヒーロー   作:ウルトラエックス

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英雄呼称発表 ヒーロー名を考えよう!

「それじゃあ、今日も1日頑張ろう!」

 

そんな余韻に浸りながら歩く登校路、白煙くんはいつものように、顔をもこもこの白い煙で覆って歩いていた。

けれど、今日のお散歩(登校)は何かがおかしかった。

すれ違う女子高生やOLの皆さんが、白煙くんを見るなり「……っ!?」と息を呑み、一瞬で顔を真っ赤にして通り過ぎていくのだ。

 

(うーん、みんな顔が赤いな……。最近、急に寒くなったりしたし、風邪でも流行っているのかなぁ?)

 

白煙くんが不思議そうに首を傾げていると、通勤途中のおじさんがガシッと肩を叩いてきた。

 

「おい、お前! 昨日の体育祭、爆豪との戦い凄かったぞ! あの大火力に一歩も引かねぇ煙の拳、痺れたわ!」

 

「あ、ありがとうございます……!」

 

まさかプロのヒーローでもない一般の人に声をかけてもらえるなんて。白煙くんは、恥ずかしくも誇らしい気持ちで胸をいっぱいにしながら雄英高校の正門をくぐった。けれど校舎に入ってからも、すれ違う女子生徒たちがやっぱり顔を真っ赤にして彼を避けるように走り去っていく。

 

 

 

 

 

「あ、エンちゃん! おはよう!」

 

昇降口で待っていた透ちゃんと合流する。

 

「透ちゃん、おはよう。……って、わわっ!?」

 

合流した瞬間、透ちゃんはいきなり白煙くんの右手をギュッと力強く握りしめた。そして、周囲の女子生徒たちの視線を遮るように、見えない身体でブンブンと威嚇するようなステップを踏み始めたのだ。

 

(う、動機は分からないけど、透ちゃんが手を握ってくれるのは嬉しいな……)

 

1年A組の教室に到着すると、すでにクラス中が昨日の一大イベントの話題で持ちきりだった。

 

 

 

 

 

「おー、白煙! お前も街で声かけられたか!?」

 

「うん、おじさんに爆豪くんとの試合を褒めてもらったよ」

 

「俺なんか、すれ違う人全員に『ドンマイ!』って肩叩かれたわ……。泣いていいか?」

 

涙目の瀬呂くんに、白煙くんは「ど、ドンマイ……!」と苦笑い。その向こうでは、すっかり怪我の治った緑谷くんが「おはよう、白煙くん!」と元気にノートを広げており、元気そうな姿に白煙くんもホッと胸をなでおろした。

すると突然、教室の入り口から凄まじいプレッシャーが漂ってきた。

現れたのは、準優勝の轟焦凍くんだ。彼は真っ直ぐに白煙くんの席へと歩み寄ると、オッドアイの瞳でじっと白煙くんを見つめた。

 

「白煙。昨日、お前が爆豪と戦った時の……あの『素顔』を、俺は煙で見逃した。……一度、見せてくれないか」

 

轟くんの突然の要求に、教室中に「ゴクリ……」と緊張の糸が張り詰める!

白煙くんは少し困惑しながらも、人懐っこく笑った。

 

「あ、うん、いいよ。僕の煙は『常時発動型』だから完全に消すのは難しいんだけど……こうやって、煙の密度をコントロールして、位置を少しずらせば……」

 

「ちょっと待ってエンちゃん! 駄目だってば!!」

 

透ちゃんが慌てて止めようと手を伸ばしたが、白煙くんの対応の方が一瞬早かった。

もこもこ、と顔の正面の煙が左右に割れ、あのさらさらとした銀髪と、少女漫画から飛び出してきたかのような儚くも端正な「素顔」が白線の光の中に露出する。

超至近距離でその顔をまともに拝むことになった透ちゃんは、「――ッッ!?」と言葉を失い、両手で心臓のあたりをギュッと押さえたまま、その場にカチコチに凝固してしまった。

 

「う、美少年、すぎる……!」

 

後ろで見守っていた三奈ちゃんや八百万さん、麗日さんたち女性陣も、全く同じ姿勢で胸を押さえ、一斉に天を仰いで息を荒くしている。

轟くんは白煙くんの顔をじっと見つめた後、ふっと表情を緩めて小さく頷いた。

 

「なるほど。爆豪が怒るわけだ。……噂通りの美少年だな。良い顔だ」

 

「えっ? 美少年?轟くんも冗談言うんだね。褒めてくれてありがとう、仲良くなれて嬉しい!」

 

白煙くんが裏のない満面の笑みを浮かべると、教室の後方から「グハッ……!」と峰田くんが血を吐いて倒れる音が聞こえた。

 

「だーめーーーっ!! もう隠して!! 早く顔をモヤモヤにしてぇええ!!」

 

正気に戻った透ちゃんが、半泣き(多分)になりながら、白煙くんの割れた煙を両手で無理やり真ん中に手繰り寄せようとガシガシ掴みにかかる。

 

「わ、分かった、分かったから透ちゃん! 隠すよ!」

 

白煙くんがあわてて煙の密度を元に戻すと、ようやくいつもの「もこもこヘッド」に戻り、教室の温度が数度下がった。

そんな狂騒の中、胸を押さえたままの耳郎さんが、ガタガタと震えながらボソリと呟いた。

 

「あれは……ダメだよ。天然でやってるのが一番タチが悪い……」

 

「ええ……。通常攻撃が完全に『全体範囲攻撃』な上に、無自覚に『2回行動』してくるタイプの隠しボスですわ、あれは……」

 

八百万さんも真っ赤な顔で同意している。

煙の向こうで、白煙くんは「通常攻撃? ボス? 一体何の話だろう……」と、やっぱり頭の煙をぽわぽわと不思議そうに歪ませるのだった。

 

 

 

 

キーンコーンカーンコーン。

 

チャイムの音と共に、担任の相澤先生が教壇に立った。体育祭の疲れを微塵も感じさせない、いつも通りの気だるげなトーンで告げる。

 

「授業を始める。今回は『コードネーム』……プロに名乗る臨時のヒーロー名を考案してもらう」

 

「「「「胸ふくらむヤツきたーーー!!!!」」」」

 

教室中が一気に歓声に包まれた。

 

「これはいわゆる、体育祭前に話したプロからのドラフト指名関係だ。集計結果のリストがこれだ」

 

相澤先生がホワイトボードに液晶画面を投影する。そこには、生徒たちの名前と、プロヒーローから届いた指名数がズラリと並んでいた。

 

 

 

* 爆豪:1676

* 轟:1501

* 切島:1064

* 芦戸:327

* 白煙:320

* 麗日:271

* 緑谷:249

* 葉隠:244

* 障子:241

* 八百万:166

* 上鳴:70

* 常闇:52

* 飯田:50

* 瀬呂:11

* 青山:1

 

 

 

「今年は決勝戦が変則的な三つ巴になったため、上位陣にポイントがばらけた形だな」

 

相澤先生の説明を聞きながら、トップ3はそれぞれリアクションを見せる。

「ケッ」と不機嫌そうに鼻を鳴らす爆豪くん。「親父の知名度だな」と冷静に現実を受け止める轟くん。そして「めちゃくちゃ来ているぜ!」と目を輝かせる切島くん。

そんな中、指名リストを見た緑谷くんと麗日さんが驚きの声をあげた。

 

「白煙くんが麗日さんを上回っている……!」

 

「うわぁ、本当だ! ウチはシードだったから、あまり戦闘で目立てなかったんだよね」

 

白煙くん自身も、まさか300件以上もの指名が来ているとは思わず、頭の煙をパッと大きく広げて驚いていた。さらにリストをスクロールしていく。

 

「あ、透ちゃん! 透ちゃんもいっぱい指名来てるよ、よかったね!」

 

「本当だぁ! エンちゃんもすごーい! ……あ、障子くんもある!」

 

「やったね、障子くん!」

 

白煙くんと透ちゃんに声をかけられ、障子くんは大きな複製腕を少し照れくさそうに縮めた。

 

「ありがとう。正直、1回戦の芦戸さん相手に何も出来ずに敗退したから、指名は無いと思っていたんだ。……お前たちのおかげだ」

 

「チーム放課後、大勝利やったね!」

 

「イェーイ!」と、白煙くん、透ちゃん、障子くんの3人で息を合わせてハイタッチを交わす。

 

「放課後に特訓していたのね、透ちゃん」

 

ひょこっと、隣の席から蛙吹梅雨ちゃんが小首を傾げて話しかけてきた。

 

「あ、梅雨ちゃん!」

 

「私も、その特訓に参加していいかしら? 体育祭ではあんまり結果を残せなかったから、もっと強くなりたいのケロ」

 

「もちろん良いよ! 仲間が増えたね、エンちゃん!」

 

「うん! 嬉しいな!」

 

嬉しそうに煙をぽわぽわさせる白煙くんを見て、梅雨ちゃんは「本当に仲良しなのね」と口元に手を当ててフフッと笑った。

こうして、特訓グループ『チーム放課後』に、個性『カエル』を持つ蛙吹梅雨ちゃんが新たに加わることになった。

 

 

 

 

「この指名数に関係なく、お前ら全員に『職場体験』としてプロの現場に1週間行ってもらう。そのために必要なのが、さっき言った呼び名だ」

 

相澤先生が寝袋に潜り込むと同時に入ってきたのは、ヒーロー名(センス)の添削をしてくれるミッドナイト先生だった。

ここからは、ドキドキのヒーロー名発表タイム!

 

 

 

* 青山くん:「輝きヒーロー I can not stop twinkling☆」

(何故英文!? しかも長い!)

* 芦戸さん:「エイリアンクイーン!」

(ミッドナイト先生から「色々ダメそう」と即却下される)

* 梅雨ちゃん:「梅雨入りヒーロー フロッピー」

(満場一致で「可愛い!」の大絶賛)

* 切島くん:「剛健ヒーロー レッドライオット!」

(憧れの漢気ヒーロー・クリムゾンライオットへのリスペクト。王道で最高にかっこいい!)

* 耳郎さん:「ヒアヒーロー イヤホンジャック」

(個性をそのまま表したスマートな名づけ)

* 障子くん:「触手ヒーロー テンタコル」

(響きも見た目もプロっぽくて抜群にかっこいい!)

* 瀬呂くん:「テーピンヒーロー セロハン」

(シンプルで凄く分かりやすい!)

* 尾白くん:「武闘ヒーロー テイルマン」

(A組一同、心の中で『似たようなヒーローが既にいそう……』と思う)

* 砂藤くん:「甘味ヒーロー シュガーマン」

(これもどこかの海外ヒーローにいそう……)

* 芦戸さん(再チャレンジ):「ピンキー!」

(可愛い系で見事採用!)

* 上鳴くん:「スタンガンヒーロー チャージズマ」

(チャージとイナズマを掛け合わせた、意外なハイセンス!)

* 透ちゃん:「ステルスヒーロー インビジブルガール!」

(これぞヒーロー! 文句なしにカッコいい!)

* 八百万さん:「万物ヒーロー クリエティ」

(彼女の気品と個性が詰まった名前)

* 轟くん:「ショート」

(まさかの本名。潔いけれどシンプルすぎる!)

* 常闇くん:「漆黒ヒーロー ツクヨミ」

(なんだか彼だけ別の世界観(ダークファンタジー)に生きている気がする)

* 峰田くん:「もぎたてヒーロー グレープジュース」

(もはや飲み物そのものである)

* 口田くん:「うれあいヒーロー アニマ」

(優しくて可愛い、彼にぴったりの名前)

* 爆豪くん:「爆殺王!」

(ミッドナイト先生から「ヒーローじゃなくて完全にヴィランよ!」と速攻却下)

* 麗日さん:「ウラビティ」

(自分の苗字とグラビティを足した、親しみやすくて可愛い名前)

* 飯田くん:「天哉」

(轟くんに続き本名。色々と思うところがあるようだが、大丈夫だろうか……)

* 緑谷くん:「デク」

(かつての蔑称を、あえて「頑張れって感じの」ヒーロー名に。白煙くんも大好きな名前だ)

 

 

 

そして、いよいよ白煙くんの番が回ってきた。緊張しながらホワイトボードの前に立ち、フリップを掲げる。

 

「僕のヒーロー名は……『救煙ヒーロー、ケムリン』です!」

 

「救援と煙を掛け合わせているのね。素敵ケロ」

 

「可愛いーーー!」

 

「なんか愛嬌があって親しみやすいな!」

 

ミッドナイト先生からも合格をもらい、白煙くんは煙をほわほわとピンク色に染めて「えへへ……」と喜んでいた。だが、その微笑ましい光景の裏で、教室の男子陣がこそこそと邪悪な会話を始めていた。

 

「おい……可愛い名前つけて愛嬌振りまいてるけどよ……」

 

「アイツ、煙の下はあの『超絶美少年』なんだよな……」

 

「着ぐるみの中から超イケメン俳優が出てくるパターンだろこれ。そんなギャップ見せられたら、全国のロリショタの性癖が狂わされちまうぜ……!」

 

上鳴くん、瀬呂くん、峰田くんの3人が、ハンカチをキリキリと噛み締めながら怨嗟の声を漏らす。

さらに、女子陣の方でも別のベクトルのヒソヒソ話が始まっていた。

 

「完全に『初恋キラー』の系譜ですね……」

 

「ピンチの時に煙のヒーローに助けられて、フッと煙が晴れたら中から信じられない美少年が……って、何それ? 少女漫画? なろー小説? 尊すぎて無理……」

 

そんな周囲のザワつきを遮るように、「爆殺卿!!!!」と再提出した爆豪くんの怒号が響く。「だからダメだってば!」とミッドナイト先生のツッコミが入る中、透ちゃんが白煙くんの袖をツンツンと引っ張った。

 

「エンちゃん、ちょっと待っててね」

 

「??? 分かった、透ちゃん」

 

頭の煙で綺麗な『?』マークを作りながら、白煙くんは素直に頷いた。

 

 

 

 

 

ここから、**『第一回・白煙薫の職場体験プロ指名リスト・超厳重審査会』**が極秘裏に開幕した。

透ちゃんは、ヒーローの知識がクラスで1番豊富な緑谷くんを半ば強引に巻き込み、さらに『チーム放課後』の障子くん、梅雨ちゃんを招集。白煙くんに届いた320件の指名リストを、本人が全く知らないところで1件ずつ精査し始めたのだ。

 

「緑谷くん、障子くん、梅雨ちゃん。これからエンちゃんに変な虫がつかないように、ブログ、インタビュー、新聞記事、週刊誌、SNSの裏アカまで全部チェックして!」

 

「け、警察並みの検閲だね、葉隠さん……。でも確かに、白煙くんのあの素顔が世間に知られたら、良からぬ目的の事務所が動く可能性はある……。よし、調べるよ!」

 

緑谷くんがガタガタと恐ろしい速度でスマホを操作し始める。

透ちゃんたちが調べているのは、白煙くんの『能力』ではなく、彼の『素顔(美貌)』を目当てに変な意味でスカウトしようとしている、俗物的な女性ヒーローや芸能寄りの事務所の対策だった。

 

「――あ、このヒーロー、SNSで『体育祭の煙の子、素顔めっちゃタイプだからうちに来ないかな〜(ハート)』って書き込んでるな」

 

障子くんが冷徹な声で報告する。

 

「除外!!!!」

 

透ちゃんが即座にリストから黒ペンで抹消する。

 

「インタビューの記録で『次の職場体験では可愛い男の子を拉致して愛でたい』って公言してる女性プロがいるケロ」

 

「除外、即除外っ!!!!」

 

「う、わぁ……こっちの個人事務所のオファー理由、『白煙くんを手取り足取り優しく教えて、あわよくばプライベートでも……』って書いてある……!」

 

緑谷くんの報告に、透ちゃんの手袋が完全に怒りでワルプルギスの夜のようなオーラを纏った。

 

「絶対消去ォォォオオオオオ!!!!」

 

バツ印どころか、紙が破れるほどの勢いで指名リストを塗りつぶしていく透ちゃん。障子くんと梅雨ちゃんも、頼もしい護衛のごとく「これは妥当な判断だな」「エンちゃんを守るためケロ」と淡々と手伝っている。

これは、白煙くんの知らないところで勃発した、恋する乙女(と仲間たち)による絶対防衛戦。

そんなこととは微塵も知らない白煙くんは、「みんな、僕のために一生懸命リストを見てくれてるんだなぁ、優しいなぁ」と、のん気に心の中で感謝しているのだった。

 

 




白煙薫くんのヒーロー名は『ケムリン』です
よろしくお願いします

そしてチーム放課後に梅雨ちゃん参戦です
白煙くんと葉隠さんを障子くんと一緒に見守ります
梅雨ちゃんは謙遜していますが、普通に強いです
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