林間合宿の前にオリジナルストーリーです
映画第1弾は時系列が林間合宿前らしいですが、特にストーリーが思いつかなかったので書きません
チーム放課後全員がバックドラフト事務所で職場体験です
再演職場体験 夏休み バックドラフト事務所、再び!
ついに始まった待ちに待った長期休暇、夏休み!
白煙くん、透ちゃん、障子くん、梅雨ちゃんの4人は、相澤先生と校長先生の許可を得て、約束通り『バックドラフト事務所』の門を叩いていた。
「みんな、来てくれて本当にありがとう!」
一度経験している白煙くんは嬉しさのあまり頭の煙をぽわぽわと弾けさせて満面の笑顔。対する透ちゃん、障子くん、梅雨ちゃんの3人は、本物のプロの仕事場を前にして少し緊張した面持ちで背筋を伸ばしている。
そこへ、「よく来たね、雄英の卵たち!」と大きな身体のバックドラフトが姿を現した。その後ろには、総勢10名の精鋭サイドキックたちがズラリと並んでいる。
「「「「よろしくお願いします!!」」」」
4人が元気よく挨拶を交わすと、バックドラフトは事前にヒーロー公安委員会から発行された臨時の『個性使用許可証』を4人に手渡した。これで合宿前に、プロの現場での実戦経験を積むことができる。
「さて、初日の今日は葉隠、障子、蛙吹への説明会だ。事務所の設備や救助の連携について学んでもらう。……ただし!」
バックドラフトはニヤリと笑い、白煙くんの肩をポンと叩いた。
「今回の説明会、サイドキックの面々ではなく、我が事務所の『即戦力』である白煙少年にリーダーをやってもらう!」
「えええええっ!? 僕がですか!?」
白煙くんの頭の煙が驚きでポワンと大きく爆発した。
まさか教わる立場から、いきなり仲間に教える立場へ任命されるなんて。
「頼んだぞ、リーダー。君たちのチーム名は何だったかな?」
「は、はい! 『チーム放課後』です!」
白煙くんは照れつつも、きりっと表情を引き締めた。
全員がサポート科に改造してもらったお揃いの強化手袋付きのヒーローコスチュームに着替え、さっそく事務所の車両・機材スペースへと向かう。
「まずは、僕たちが救助や消火に使う大事な乗り物の説明をするね。これがバックドラフト事務所特製の消防車と救急車だよ!」
白煙くんが誇らしげに紹介すると、透ちゃんが「すごーい! 本物の運転席だ!」と大はしゃぎで救急車の助手席へ乗り込んだ。見えないけれど、車内で嬉しそうにシートの感触を確かめているのが伝わってくる。
その時だった――。
――ウゥゥゥゥン!!! ウゥゥゥゥン!!!
突然、事務所内に鼓膜を震わせる激しい緊急警報のサイレンが鳴り響いた。
「キャッ!?」と驚いて身をすくませる透ちゃん。
しかし次の瞬間、白煙くんの目の色が一瞬にして変わった。笑顔は完全に消え去り、その鋭い眼光はすでにプロのそれだった。
「透ちゃん、危ないからすぐ降りて!」
白煙くんは驚くほどの素早さで救急車のドアを開け、透ちゃんの手を引いて車外へ出すと、障子くんと梅雨ちゃんへ向けて間髪入れずに叫んだ。
「みんな、壁際に下がって! 車両がすぐに出動するから、動線を開けて!」
「「っ!?」」
普段の優しくておっとりした白煙くんからは想像もつかない、冷徹なまでに迅速な指示と変わった雰囲気に、3人は思わず息を呑み、言われるがまま壁際へと飛び退いた。
直後、バックドラフトと10人のサイドキックたちが、猛烈なスピードながらも一分の無駄もない洗練された動きで防護服を纏い、それぞれの車両へ飛び込んでいく。
エンジンが爆音を上げ、タイヤが悲鳴を上げてシャッターの向こうへと次々と発進していく。
白煙くんはその様子を見送る間、直立不動の姿勢でビシッと綺麗な敬礼を送り続けていた。
サイレンが遠ざかっていく。サイレンが鳴り始めてから、最後の車両が現場へ向かうまで、わずか3分足らずの出来事だった。
「……ふぅ。よし、みんな怪我はない?」
車両が見えなくなると、白煙くんの頭の煙がいつもの柔らかいもこもこした形に戻り、雰囲気も一瞬で元の優しいエンちゃんへと戻った。
「す、すごすぎる……ガチの空気じゃん……」
あまりの緊迫感に透ちゃんの手袋がブルブルと震える。けれど同時に、その緊迫した空気の中で誰よりも早く自分を守り、的確に指示を出した幼馴染の姿に、胸が激しく高鳴っていた。
「でも……今のエンちゃん、めちゃくちゃかっこよかった……!!」
「ええっ!? そ、そんなことないよぉ、ただ教わった通りに動いただけだよ……!」
透ちゃんに直球で褒められ、白煙くんは瞬時に頭の煙をピンク色に染めて照れまくってしまう。
そんな二人の様子を見ながら、梅雨ちゃんが人差し指を顎に当ててクスリと笑った。
「白煙ちゃん、すっかりプロの顔ねケロ。ほら、照れてないで説明の続きを促してちょうだい」
「ああ」と障子くんも頼もしげに頷く。
「お前がこの1週間でどれだけ高いレベルにいたか、今の一瞬でよく分かった。早くその知識を俺たちにも共有してくれ、リーダー」
「うん! 任せて!」
仲間たちの信頼の眼差しを受け、白煙くんは嬉しそうに胸を張った。
始まったばかりの夏休み。この最高の『チーム放課後』のメンバーと一緒なら、2度目のバックドラフト事務所は、前回以上に熱く、厳しく、そして最高に楽しい場所になりそうだと、確信する白煙くんなのだった。
バックドラフト事務所での『チーム放課後』の特別訓練は、リーダーである白煙くんの指揮のもと、ますます熱を帯びていった。
訓練1:放水ホース練習
まずはレスキューの基本、高圧放水ホースの訓練だ。
「このホース、水圧がすっごく強いから気をつけてね!」という白煙くんの警告通り、実際に水を出した瞬間、ホースが生き物のように暴れ出す。
「きゃあああ!? 体が浮いちゃうー!!」と、透ちゃんはホースの凄まじい勢いにあちこち振り回されて大パニック。梅雨ちゃんも懸命に踏ん張るが、やはり純粋なパワー不足でホースを固定しきれない。
そんな中、障子くんだけはそのガタイの良い筋肉と複数の腕を活かし、びくともせずに力強くホースを構えて狙い通りの放水を決めてみせた。
訓練2:重装備での屋上走り込み
続いては、過酷な現場を想定した体力訓練。
全員がずっしりと重い防火服やヘルメットのフル装備を身にまとい、事務所の階段を屋上まで全力で駆け上がる。
「はぁ、はぁ……もう無理、動けないよぉ……」と、頂上に着く頃には透ちゃんはくたくたでその場に頽れてしまう。逆に障子くんは、この程度の重量ならまだまだ余裕といった表情。梅雨ちゃんは、もともとのヒーローコスチュームが冷え対策(炎対策)済みだったこともあり、体温調節を上手くこなしながら安定したペースで走りきった。
3:怪我人治療(タイトロープ&包帯)
次は座学と実践を交えた救急処置訓練。
白煙くんはみんなに手作りの『簡易救急キット』を配ると、訓練用のマネキンを使って手際よく包帯を巻くお手本を見せる。
「僕もね、初日は失敗ばっかりでバックドラフトさんにたくさん叱られたんだよ」なんて雑談を交えつつ、優しく教える白煙くん。
手先の器用な透ちゃんは「これなら得意かも!」と綺麗に包帯を巻いていくが、障子くんはその大きな手での細かい作業に大苦戦。梅雨ちゃんは持ち前の器用さで、初めてとは思えないほど何でもそつなくこなしてみせた。
訓練4:総合模擬・崩壊現場レスキュー
そして初日の総仕上げとして、事務所の訓練棟を使った『模擬の崩壊現場救出ミッション』がスタートした。設定は「2階に取り残された怪我人の救助」。
「よし、みんな行くよ!」
白煙くんの合図で突入。まずは障子くんがその怪力で道を塞ぐ瓦礫を次々と撤去していく。
しかし、現場の臨場感を出すために白煙くんが個性の『煙』を周囲に展開すると、一気に視界がゼロに。
「全然前が見えないケロ……!」
視覚を奪われて苦戦する梅雨ちゃんと透ちゃんだったが、障子くんが複数の耳と目を複製して周囲を索敵。「左だ、足元に気をつけろ」と的確にナビゲートし、4人は一歩一歩2階へと進んでいく。
2階に到達すると、そこは赤ランプで演出された「燃えている部屋」だった。
「ここは任せて!」と、梅雨ちゃんが背負った小型ホースで素早く消火。その隙に透ちゃんが部屋の奥へ飛び込み、倒れている怪我人(役の白煙くん)を発見した。
「大丈夫ですか!? 今助けます!」
透ちゃんが声をかけると、白煙くんは迫真の演技で「あ、足が……瓦礫に挟まれて動かないんだ……!」と苦しげに訴える。
「えっ!? あ、足が動かない!? どうしよう、どうすればいいの、エンちゃん!?」
あまりのリアルな演技に、透ちゃんはすっかりパニックに陥ってしまった。
「落ち着け、葉隠。俺が運ぶ」
後ろから追いついた障子くんが、白煙くんの身体をそっと、しかし迅速にお姫様抱っこで抱え上げる。
「透ちゃんはパニックになっちゃダメだよ! 周りの崩落に気をつけて、脱出路を確保して!」という白煙くんの指示を受け、透ちゃんはハッと我に返り、「うん! 私が先導する!」と周囲を警戒しながら全員で地上へと急いだ。
無事に地上へ到着し、最後の仕上げとして、透ちゃんが白煙くんの腕に怪我の包帯を巻く。
「もう、エンちゃん演技が迫真すぎるよー!」と、パニックにさせた仕返しにと、透ちゃんは少し強めの力でぎゅっと包帯を締め上げた。
その瞬間――。
――ぽわん。
「あ、あれ……? エンちゃんの腕が消えた……!?」
包帯を巻いていたはずの白煙くんの腕が、突然もこもことした煙になって消えてしまったのだ。
「あはは……ごめんね透ちゃん。怪我人役としてみんなの処置を受けるために、わざと腕の煙の耐久力(出力)をギリギリまで減らしていたんだ。そこに強い力が加わっちゃったから、個性が維持できなくて煙に戻っちゃった」
頭の後ろを掻きながら申し訳なさそうに笑う白煙くんに、みんなは「プロの訓練は、怪我人役まで徹底しているのね……」と驚くばかりだった。
こうして、内容の濃すぎる初日の特別訓練がすべて終了した。
「うぅ……もう指一本動かせないよぉ……」
ロビーのソファに泥のように沈み込み、文字通りくたくたになる透ちゃん。
「だが、思ったよりは動けたな。自分の課題もはっきり見えた」と、大きな身体を伸ばしながら充実感を滲ませる障子くん。
梅雨ちゃんは、人差し指を顎に当ててしみじみと呟いた。
「私たちはたった1回の訓練でこれだわケロ。これを毎回の現場で、何時間も続けているレスキューヒーローの人たちは、本当に凄いわ。改めて感動しちゃった」
そんな仲間たちの姿を見て、白煙くんは誇らしげに、そしてどこか愛おしそうに目を細めた。
「みんな、本当にお疲れ様。最初から全部できる人なんていないから、この夏休みで少しずつ、一緒に覚えていこうね」
白煙くんの優しい言葉に、透ちゃんはソファからぐっと拳を突き上げた。
「うん! エンちゃんに追いつけるように、明日からもがんばるぞー!」
一歩ずつ、確実にプロの背中へと近づいていく『チーム放課後』。夕暮れ時の事務所には、疲れ果てながらも、どこか晴れやかな4人の笑い声が響き渡るのだった。