個性「煙」の救煙レスキューヒーロー   作:ウルトラエックス

37 / 37
再演職場体験 夏休み チーム放課後の特訓

『バックドラフト事務所、3日目』

 

朝の訓練室には、昨日までとは打って変わった、張り詰めた空気が漂っていた。

 

「ここは、瓦礫の重さによってアプローチを変えた方がいいわねケロ」

 

「ああ。俺の複製腕で土台を固定している間に、葉隠が隙間から救命措置に入るのが一番効率的だ」

 

透ちゃん、障子くん、梅雨ちゃんの3人の目は、驚くほど真剣に集中している。昨日の現場での悔しさをバネに、少しでもプロの動きに近づこうと必死だった。

リーダーの白煙くんも、そんな3人の熱意に応えるように、自分がこれまでに経験した現場での失敗談や、バックドラフトさんから教わったレスキューの極意を、身振り手振りを交えながら一生懸命に説明していた。

 

「エンちゃんは何しているの?」

「麻酔の勉強。麻酔を使うには資格がいるから。でも、難しくて頭が混乱するよー」

「がんばって!」

 

そんな4人の様子を、訓練室のドアの隙間からこっそりと覗き見ている影があった。バックドラフトと、10人のサイドキックたちだ。

 

「……おいおい、今年の雄英の1年生はとんでもねえな」

 

「ああ、あれでまだ15歳だろ? 俺たちが同じ年の頃なんて、あんなにしっかりしてなかったぞ……」

 

サイドキックたちが感心したようにひそひそと雑談を交わす。バックドラフトも、自慢の教え子を見るように目を細めた。

 

「ケムリン(白煙くん)がさ、『僕の仲間はみんなすごいんです!』って笑顔で自慢していた理由がよく分かるよ。素晴らしい向上心だ」

 

 

 

 

その時――。

 

――ウゥゥゥゥン!!! ウゥゥゥゥン!!!

 

3日目の緊急警報が鳴り響く!

だが、今日のチーム放課後は一味違った。サイレンの音に怯む者はもう誰もいない。

 

「みんな、行くよ!」

 

「応!!」

 

全員が完全に準備万端の状態から、白煙くんとまったく同じ、一瞬の無駄もないスピードでヒーローコスチュームへと着替えを完了。そのまま弾かれたように消防車の後部座席へと飛び乗った。

凄まじい駆動音とともに、消防車が現場へと発進する!

今回の現場は、市街地にそびえ立つ高層ビル。

現場では、すでにヴィランが暴れたことによる大火災が発生しており、地元の人気プロヒーローであるシンリンカムイとマウントレディが、ヴィランの制圧と周囲の避難誘導のために激しい戦闘を繰り広げていた。

 

「消火班アルファ、行くぞ! 消防活動を最優先し、地元ヒーローと連携せよ!」

 

バックドラフトの指示のもと、サイドキックたちが迅速に動き、巨大な水流による放水が開始される。

 

「チーム放課後、ビル内に突入して生存者を捜索するよ!」

 

「了解!」

 

白煙くんを筆頭に、4人は黒煙の立ち込めるビル内へと果敢に突入した。すでにエレベーターは完全に停止している。

 

「階段で上へ向かうケロ!」

 

2日目の過酷な重装備走り込み訓練の成果が、ここで完全に活きた。防火服の重さをものともせず、4人は驚くべき体力を維持したまま、一気に火元のフロアへと駆け上がっていく。

 

「誰か、誰かいないか!?」

 

障子くんが複製した耳で周囲の音を拾う。すると、奥のオフィスから微かな声が聞こえた。

 

「た、助けてくれ……!」

 

そこにいたのは、このビルに入る会社の社長さんだった。

 

「他の部下たちは全員逃げたんだが……この、この巨大金庫だけは見捨てられないんだ……! これが燃えたら、うちのようなサポート会社は一発で倒産してしまう……!」

 

社長さんが涙を流しながら縋り付いてきたのは、火の手が迫る部屋の奥にある、文字通り鉄塊のような巨大な金庫だった。普通なら諦めて逃げるべき状況。だが、会社の未来、社員たちの生活という、社長さんにとっての「命の次に大事なもの」がそこにはあった。

 

「――障子くん!」

 

白煙くんが叫ぶ。言葉にせずとも、チーム放課後の意思は一つだった。

 

「ふんぬぅぅぅあああああッ!!!」

 

障子くんが『複製腕』のパワーを全開に発揮し、何人分もの怪力でその巨大な金庫をガシッと持ち上げた!

 

「凄いわ、障子ちゃん! 透ちゃん、行くわよ!」

 

「うん!」

 

梅雨ちゃんと透ちゃんは、サポート科の簡易キットやオフィスのカーテンを瞬時に組み合わせ、金庫が落下しても衝撃を和らげられるような「即席のパラシュート(緩衝材)」をものすごい手際で作り上げていく。

その間、白煙くんは「僕が通路の煙を吸い取る! 出口を確保するからついてきて!」と、迫り来る爆煙を限界まで吸い込みながら先導した。

しかし、想像以上に火災の回りが早く、バックドラフトたちの消火が追いつかない。下へ降りる階段は完全に炎で包まれてしまった。

 

「ダメだ、下の階の火が強すぎる! パラシュートで下へ落とすのも危険だ!」

 

白煙くんは瞬時に状況を判断した。

 

「みんな、屋上へ移動しよう!」

 

火の粉が舞う中、障子くんが金庫を担ぎ、全員で屋上のヘリポートへと一気に脱出する。

煙を突き抜けて屋上へ出ると、そこへ、白煙くんの要請を無線で受けていた巨大化ヒーロー・マウントレディが、ビルの横から大きな顔を覗かせた。

 

「お待たせ、少年少女たち! さあ、こっちへ飛び込んできなさい!」

 

マウントレディが巨大な両手を広げる。

 

「みんな、跳ぶよ!」

 

障子くんが金庫を抱えたまま、梅雨ちゃんと透ちゃん、そして白煙くんが息を合わせてマウントレディの手のひらの上へとダイブした。全員を大きな手で優しく受け止め、ゆっくりと地上へと降ろしていくマウントレディ。

こうして、怪我人ゼロ、そして会社の未来である巨大金庫も無傷のまま、全員が無事に地上へと帰還を果たしたのだった。火災もまもなく完全に鎮火した。

 

「素晴らしい……素晴らしいよ、雄英のヒーローたち……! ありがとう、本当にありがとう……!」

 

地上で巨大金庫を撫で回しながら、大号泣でお礼を言う社長さん。バックドラフトやサイドキックたちからも、「見事な救助活動だったぞ、チーム放課後!」と惜しみない拍手が送られた。

 

「大成功だね! 誰も怪我をしなかったし、大切なものも守れた! みんな、本当に、本当にかっこよかったよ!」

 

白煙くんが頭の煙をぽわぽわと弾けさせ、自分のことのように大喜びでみんなを称える。

 

「えへへ……やったね、エンちゃん!」

 

透ちゃんは、2日目の悔しさを完全に晴らせた達成感と、大好きなエンちゃんへの「役に立てた!」という純粋な喜びが爆発してしまった。

 

「――もぅ、エンちゃん大好きーーッ!!」

 

「ひゃ、ひゃわわわわぁぁぁ!?!?」

 

嬉しさのあまり、透ちゃんが背後から白煙くんにギュッと抱きついた(手袋が白煙くんの体に回った)瞬間、白煙くんの頭の白い煙が一瞬にして真っ赤っか(ピンクを通り越して真っ赤)に変色し、ポワンポワンと大爆発を起こした。

そんな二人を、少し離れた場所から見つめる冷静組。

 

「ふふ、すっかり青春ねケロ」

 

「ああ。……まあ、今日の大成功のご褒美としては、妥当なところだな」

 

梅雨ちゃんと障子くんは、お互いに顔を見合わせて、なんとも微笑ましそうにクスリと笑うのだった。

プロの厳しい現場を経験し、悔しさを乗り越え、自分たちの力で掴み取った初めての完全勝利。

『チーム放課後』の絆と実力は、この熱い夏休みの空気の中で、どこまでも高く、強く、成長していくのだった。

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。

評価する
※参考:評価数の上限
評価する前に 評価する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。


  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

読者層が似ている作品 総合 二次 オリ

個性「炎」(作者:ドゥルガー)(原作:僕のヒーローアカデミア)

何処にでもあるような個性で、何処にでも居るような少年が夢を追う物語。


総合評価:114/評価:-.--/連載:10話/更新日時:2026年08月23日(日) 17:19 小説情報

僕のヒーローアカデミア A Little Extra(作者:ジョン堂)(原作:僕のヒーローアカデミア)

 日本に生きるごく普通の一般人だった男は、唐突に【個性】が存在する世界へ転生する。▼ 原作に登場するキャラ達、事件の数々、襲い来る敵、物語の中心『雄英高校』での試練……。▼ 転生主人公が、薄い原作知識とチート【個性】をもって、どうあがいていくか……。▼ これは、そんなよくある話――▼※注意※▼ 拙作・愚作・凡作・駄作、ご注意されたし。▼ 何卒寛容な心をもって…


総合評価:737/評価:7.07/連載:31話/更新日時:2026年08月24日(月) 17:30 小説情報

個性『異生獣(スペースビースト)』~僕とトガちゃんの共犯者物語~(作者:復活のB)(原作:僕のヒーローアカデミア)

『連続失血死事件』▼世間を騒がせるヴィラン───トガヒミコ▼その傍らには、もう一人の‘‘怪物,,がいた▼ヴィラン名『スペースビースト』▼本名『綾瀬黒斗』▼無数の‘‘異生獣(スペースビースト),,を操り、自らもビーストへと変貌する少年▼だが彼は、生まれながらの怪物でありながら誰よりも人間を理解していた▼そして誰よりも、一人の少女を理解していた▼これはヒーローの…


総合評価:471/評価:7.08/連載:14話/更新日時:2026年07月25日(土) 00:00 小説情報

俺の個性は種を植え付けます(語弊あり)(作者:ザリガニ同担拒否)(原作:僕のヒーローアカデミア)

▼人類の8割が個性を持つ超人社会。▼この社会を、例に漏れず個性を持って生まれた主人公は愛に突き動かされて生き抜いていく。▼これは主人公が、最強で最高の愛妻家ヒーローになるまでの物語だ。▼エンデヴァーに主人公の爪の垢煎じて飲ませたい。▼「実は俺の個性で種植え付けられんだよ」▼「オイラ気づいちまったんだけどよ、もしかしてそれって遠距離であばばばばば!?」▼「植物…


総合評価:379/評価:6.82/連載:5話/更新日時:2026年08月08日(土) 04:20 小説情報

ガンマンヒーロー(作者:妖狐アルル)(原作:僕のヒーローアカデミア)

故郷の町でプロヒーローとして活動する男、中堅ヒーローなのに同級生のプロヒーローに呼ばれたり後輩に呼ばれたりとなんだかんだ幅広く活動する男の話し


総合評価:55/評価:-.--/連載:4話/更新日時:2026年08月04日(火) 14:07 小説情報


小説検索で他の候補を表示>>