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それと、物語の序盤を修正しました。
少しでも読みやすくなっていれば幸いです。
これからもよろしくお願いします。
翌朝、午前5時。
まだ薄暗い朝靄に包まれた合宿所の広場に、A組の全員が叩き起こされていた。
チーム放課後はバックドラフト事務所の習慣で起きれた。
「お前たち、おはよう。今日から本格的に『個性の強化』を始める」
相澤先生の非情な声が響くが、不合格組の上鳴くんや芦戸ちゃん、峰田くんらは、昨日の補習疲れが一切取れておらず、一部の生徒は立ったまま白目を剥いて寝ている始末だった。
しかし、プロの世界に甘えは許されない。
「林間合宿の目的は全員の底上げ、すなわち『個性伸ばし』だ。限界の先にあるキャパシティを強引に広げる地獄だと思え」
その言葉を合図に、広場は一瞬にして**地獄絵図**へと変貌した。
「死ねえええええええ!!」
爆豪くんはドラム缶の水に両手を突っ込み、汗腺を広げながら、ひたすら最大出力の「爆破」を連続で繰り返し、筋肉と個性の出力限界を限界突破させようと絶叫している。
「くっ……!」
轟くんは巨大なドラム缶の湯の中に浸かりながら、右半身で「氷結」を放ち、即座に左半身から「炎熱」を交互に発動。体温の急激な変化に耐えながら、出力の最大化と二つの個性のスイッチング精度を極限まで高めていく。
一方、緑谷くんと透ちゃんの二人は、プッシーキャッツの武闘派ヒーロー『虎』の前に立たされていた。
「お前たち! 基礎体力がなければ個性など使いこなせん! 筋肉をいじめ抜けッ!」
「は、はい!虎さん!」
「透明少女が頑張ってんだから、男どもはもっと気合入れろやゴラァ!」
「「「はいィィィーーーッッッ!!」」」
虎による超ド級のスパルタ・ブートキャンプ。緑谷くんは『フルカウル』を維持したまま、透ちゃんは自身の身体を限界まで動かし、文字通り泥にまみれ、悲鳴を上げながら肉体を酷使していた。
他のクラスメイトたちも、それぞれが己の限界を叩き潰すための、壮絶な自傷行為に近い特訓に身を投じていた。
そして、白煙くんの特訓もまた、凄惨を極めるものだった。
彼に与えられた課題は『煙の容量増加、及び回復速度の極限化』。
「出せ出せ出せェ! 体の中の煙を全て絞り出すんだニャン!」
ピクシーボブの容赦ない大声が響く中、白煙くんは広場の中心で、ひたすら全力の煙を周囲に噴射し続けていた。もくもく、どころではない。まるで大規模な火災現場かのような濃密な白い煙が、彼の身体から絶え間なく溢れ出す。
「う、うあぁぁぁ……!!」
限界まで出し尽くし、体内が完全に「すっからかん」になると、白煙くんの個性が一時的に強制解除される。
その瞬間、周囲の煙がサーッと引いていき、汗だくで肩を震わせる彼の『超絶美少年の素顔』が、朝日の光の中に露わになった。
「「――ッッ!!!?」」
その場にいた、特訓中のB組女子(拳藤さんや小大さん、トカゲちゃんたち)は、初めて目にするその眩すぎる美貌に「ぶはっ」と息を呑み、一斉に心臓に両手を押さえてその場にしゃがみ込んだ。あまりの破壊力に、特訓の集中が完全に削がれてしまっている。
近くで見守るマンダレイやピクシーボブも「いやぁねぇ……朝からなんて極上の目の保養かしら……合宿の疲れが吹き飛ぶニャン……」と、うっとりしながら頬を染めていた。
しかし、地獄の特訓は美少年を甘やかさない。
「おい白煙!! 隙を晒してんじゃねえ、吸い込みやがれェ!!」
隣のエリアから、爆豪くんが放った最大出力の爆風と、それに伴う凄まじい「爆煙」が白煙くんに向かって容赦なく吹き付けられる。体育祭でガチバトルしてから、爆豪くんは白煙くんを認めていた。
「ごほっ……う、うん! 吸収、開始……!」
白煙くんはすぐさま息を整え、迫り来る爆豪くんの黒い爆煙を、ダイレクトにその胸へと一気に吸い込み始めた。他人の煙や有害な成分を体内に取り込み、それを己の純粋なエネルギーへと「変換・濾過」して即座に回復する特訓。
すっからかんになっては素顔を晒し、爆豪くんの爆煙を吸い込んでは再び白い煙を爆発させる――その気の遠くなるような苦痛のサイクルを、白煙くんは涙目になりながらも必死に、何度も何度も繰り返していた。
「お前たち! 隣の美少年を見る暇があったら筋肉を動かせッ!!」
泥まみれになりながらスクワットを繰り返す透ちゃんは、虎の怒号を聞きながら、チラリと煙の隙間から見える白煙くんの横顔を盗み見ていた。
(エンちゃん……あんなにボロボロになりながら頑張ってる……! 私も、絶対に負けてられないんだから……!)
好きな人の圧倒的な頑張りと、時折覗く格好良すぎる素顔は、過酷なブートキャンプに心が折れそうになっていた透ちゃんにとって、何よりの、そして最高のエネルギー源になっていた。
絶叫と爆音、そして時折混ざる黄色い悲鳴。
それぞれの想いと限界が激しくぶつかり合いながら、雄英高校1年生の地獄の個性伸ばし合宿は、まだ始まったばかりだった。
凄惨極まる地獄の訓練場。相澤先生はクリップボードを片手に、鋭い眼光で1年A組一人一人の進捗を厳しくチェックしていた。
相澤先生の「チーム放課後」査定
* 障子くん:『複製腕』で周囲を全方位索敵しながら、超高負荷の筋トレを黙々とこなしている。知覚と肉体の同時強化、順調だ。
* 梅雨ちゃん:限界まで伸ばした舌を崖の上の突起に絡ませ、自力で垂直の崖を登っている。蛙の特性をフルに活かした素晴らしい粘り。
* 透ちゃん:『虎』の無慈悲な超ド級ブートキャンプに悲鳴を上げつつも、もともとの身体の柔らかさが虎の格闘センスと絶妙にマッチし、驚くほど良い動きを見せ始めている。
相澤先生は3人の名前の横に、小さく「丸(合格点)」をつけた。
「問題は……白煙だな」
相澤先生の視線が、爆煙を吸い込んでは吐き出し続ける白煙くんに向かう。
煙の容量増加と回復速度の極限化――確かに重要だが、実は白煙くん自身が自覚していない事実があった。彼は現在のA組において、レスキュー・実戦経験の面で頭一つ抜けて「トップ」の領域にいる。プロのバックドラフトが即戦力、かつ給料を払ってでもサイドキックにしたいと認めるほどの実力なのだ。
(今の特訓だけでは足りん。奴にはもう一段階、誰も到達していない『上の壁』をぶち破らせる必要があるな……)
相澤先生は白煙くんの欄を見つめ、次なる過酷なメニューを静かに思考し始めた。
夕方:地獄の特訓、終了
「きょ、今日で本当に死ぬかと思った……」
夕方になり、ようやく特訓の終了が告げられた。広場には、昨日以上にボロボロになり、もはや指一本動かせないほどくたくたになったA組・B組の生徒たちが転がっている。
白煙くんも完全に限界を超えており、体内の煙がすっからかんすぎて、とうとう頭の煙が顔を隠しきれないほど薄くなってしまっていた。
夕暮れ時の淡い光に照らされる、汗の滴る超絶美少年の素顔――。
「ああ……神様……」
「合宿の地獄に舞い降りた天使……」
もはや悲鳴を上げる元気すら残っていないA組・B組の女子陣は、疲れ果てた目で白煙くんをただひたすらに見つめ、両手を合わせて尊ぶように「崇拝」の視線を送っていた。
夕食の時間:思わぬ因縁
しかし、休む間もなく夕食の時間が始まる。今日からは「自力」でご飯を作らなければならない。
戦闘やレスキューでは天才的な白煙くんだったが、実は「料理」に関してはポンコツの極みだった。
「うぅ……目が、目が痛いよぉ……っ!」
慣れない手つきで包丁を握り、玉ねぎを切った瞬間、強烈な刺激臭に襲われて大号泣。頭の煙まで涙色にうるうると波打たせている。
「え、エンちゃん大丈夫!? 誰か、誰かお水ー!」
包丁を持ったまま泣きじゃくる白煙くんに、透ちゃんがオロオロと周囲を巻き込んで大パニック。
見かねた障子くんが、静かに自分の予備のゴーグルを差し出した。
「白煙、これを使え。少しはマシになる」
「あ、ありがとう障子くん……!」
美少年にゴーグルという謎のスタイルで、チーム放課後はなんとか調理を進めていく。
苦労の末、みんなで協力して作った特製カレーがようやく完成した。
それぞれがカレーを皿に盛り付けて席に着く中、マンダレイの隣に、あの赤い帽子を被った小さい男の子がポツンと座っているのが見えた。
「あの子はね、緑谷くん。私の従甥の『洸汰』くん。……ヒーローだった、ウォーターホースの息子なの」
マンダレイが静かに告げたその名前に、白煙くんの手がピクリと止まった。
――カラン……。
力なく、白煙くんの手からスプーンが滑り落ち、床に寂しい音を立てて転がった。
白煙くんの身体がガタガタと小刻みに震え出し、頭の煙が一瞬にして真っ白に硬直する。その目は、完全に呆然と洸汰くんを見つめていた。
「エンちゃん……? どうしたの? 顔色がすごく悪いよ……?」
隣にいた透ちゃんが、異変に気づいて心配そうに覗き込んでくる。
白煙くんは、震える唇を必死に動かし、掠れた声で呟いた。
「ウォーターホース……。あの、2人組のヒーロー……。僕の家がヴィランに襲われて、大火事になっていた時……炎の中から、僕の命を救ってくれたヒーローなんだ……」
かつて自分を救い、そして殉職してしまった憧れのヒーロー。その遺された息子が、いま、目の前にいる。
迫り来るヴィラン連合の影を知らぬまま、合宿の夜、白煙くんの過去と未来を繋ぐ思わぬ「因縁」が、静かに交錯しようとしていた。
葉隠さん魔改造その3
プッシーキャッツの虎によるブードキャンプ
身体が柔らかい透ちゃんは、虎のブードキャンプと相性が良いと思いました
そして久しぶりの白煙くんの過去
火事の原因はヴィラン。屋内戦闘訓練で少し触れたお話。USJでヴィラン相手に怖がっていたのは、幼い頃のトラウマでした。