個性「煙」の救煙レスキューヒーロー   作:ウルトラエックス

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イチャイチャ復活!!
イチャイチャ復活!!


ヒーロー仮免許を取ろう!
超豪華学生寮ハイツ・アライアンス お帰り日常


「う、うわああああ!! 広すぎる……!!」

 

「これがこれからの私たちの家……!? 贅沢三昧じゃないですか!!」

 

新しく完成した生徒宿舎『ハイツ・アライアンス』に一歩足を踏み入れた瞬間、A組のメンバーからは一斉に歓声が上がった。

広大なリビング、ピカピカの共同スペース、大浴場。あまりのスケールの大きさに、麗日さんはキャパオーバーで白目を剥いて魂が口から抜けかけている。一方で、八百万さんは周囲を見回しながら「あら、私の実家のクローゼット部屋(ひと部屋分)くらいの広さしかありませんのね」と天然の上級国民発言を炸裂させ、周囲を唖然とさせていた。

 

「よし、それじゃあ各自、荷解きをして自分の部屋づくりを始めろ。荷物の搬入が終わったら、今日のところは解散だ」

 

相澤先生の指示を受け、みんながワクワクしながら自分の部屋のプレートを確認しに向かう。

しかし、男子棟と女子棟の境界線、その一角の部屋割り表を見た瞬間――静寂を切り裂くような、ドスの利いた絶叫が響き渡った。

 

「――待てやァァァァァァァァ!!! 物申す!!! オイラは断固として物申すぞォォォォッッ!!!!」

 

叫んだのは、もちろん峰田くんだ。彼は血走った目で部屋割り表を指差し、怒りで全身をガタガタと震わせている。

 

「おいおいおいおい! おかしいだろオイ!! なんで白煙と葉隠だけ、ベランダ伝いに行き来できそうな『隣同士』の部屋配置になってんだよォォォォッッ!!! 他のみんなはきっちり男女別、階層別で隔離されてるっていうのに、何だこの不条理な超法規的措置はァーーーッ!?」

 

「あ、あはは……」

 

「え、えへへ〜〜」

 

腕に抱きついていた透ちゃんと共に、白煙くんが苦笑いしながら頭の白い煙をぽわぽわと揺らす。

 

「部屋割りを決めたのは、相澤先生だよなァ!? 先生、あんたさては賄賂をもらったな!? 白煙の家から『黄金色のお菓子(大判小判)』でも包まれて送られてきたのかコンチクショーーーッ! 職権乱用だ! 汚職だ! 弾劾してやるゥゥゥゥッ!!」

 

嫉妬と妄想で完全に狂ったように喚き散らす峰田くん。

その背後に、赤い眼光を妖しく光らせた相澤先生が、いつの間にか音もなく立っていた。

 

「……峰田。白煙はトリガーの薬物による精神的アフターケアと、個性の暴走の兆候を監視する必要がある。そして葉隠は、あの闇から彼を引き戻した唯一の精神的『錨』だ。医療班と相談の上、白煙の精神安定を最優先に考えた、極めて合理的な配置だ」

 

「言い訳を聞く耳は持たんねええええ!! オイラだって隣になれば麗日や八百万の精神の錨に――」

 

「――うるさい」

 

 

 

 

――シュルルルルッッ!!!!

 

 

 

 

 

「ぶべらっ!?」

 

次の瞬間、相澤先生の操る捕縛布が、目にも留まらぬ速さで峰田くんの全身を蓑虫のようにグルグル巻きにした。

「あがががが!?」と暴れる峰田くんを、相澤先生はそのまま天井の梁に向けて放り投げ、逆さ吊りの状態でカチリと固定する。

 

「荷解きが終わるまで、そこで頭を冷やしてろ。……他の奴らは、さっさと部屋に行け」

 

「「「は、はいっ!!!!」」」

 

天井で「理不尽だぁぁぁ! 羨ましすぎるんだよぉぉぉ!」と涙と鼻水を流しながらぶら下がっている峰田くんを置き去りにして、みんなは一斉に自分の部屋へと退散していった。

その様子を見上げていた白煙くんは、「送ってくれてありがとう、透ちゃん」と隣の部屋のドアを開ける彼女に微笑みかける。

 

「ううん、これから毎日、朝起きてすぐエンちゃんに会えるなんて最高だよ!」と、見えない透ちゃんは嬉しそうに声を弾ませた。

 

色々なことがあった。大きな傷も負った。

けれど、こうしてまたみんなで騒がしく笑い合える日常が戻ってきたことに、白煙くんは胸の奥がじんわりと温かくなるのを感じながら、自分の新しい部屋の扉を開けるのだった。

 

 

 

 

 

 

「せっかくだし、誰の部屋が一番イケてるか『部屋王』を決めようぜ!」という上鳴くんの一言から、なぜかA組全員で互いの部屋を査定し合う謎のイベント『お披露目大会』が始まってしまった。

男子部屋、女子部屋と色々見て回り、次はいよいよ男女の境界線エリアにある白煙くんの部屋へ。

「お邪魔します……!」と、緑谷くんを先頭にぞろぞろとクラスメイトたちが中へ入っていく。

 

「こ、これは……!!」

 

白煙くんの部屋は、一言で表すなら「とんでもなく機能的で真面目」だった。

部屋の中央には、まだ体調が万全ではない彼のために用意された少し大きめのベッド。その枕元には、バックドラフトさんやサイドキックの先輩たちと笑顔で写ったあの写真立てが大切に置かれている。

部屋の隅には緊急用の点滴スタンドが静かに佇み、本棚には『最新レスキュー技術総論』や『人命救助における医療知識』といった分厚い専門書がズラリと並んでいた。

さらにバックドラフト事務所で使用した訓練用マネキンやバックドラフトとサイドキック達が記録した貴重な書類も置かれている。

部屋の片隅には、隣の部屋から透ちゃんがいつでも遊びに来られるようにと用意された、彼女専用のマグカップやクッションなどの生活道具が綺麗に整頓されている。

 

「お、おう……なんというか……」

 

「真面目……! 圧倒的実用主義……!」

 

「あのマネキン、めちゃくちゃ怖いんだけど!?血まみれで縫ったあとが生々しい……!!」

 

集まった一同は、思わず圧倒されてしまった。

オシャレなインテリアも、高校生らしいポスターも、趣味の娯楽品も何一つない。

命を繋ぎ止め、これから本気でレスキューヒーローを目指すという白煙くんの「覚悟」が部屋全体からビシバシと伝わってきて、野次馬根性で盛り上がっていた上鳴くんや峰田くん(まだ少し縛られている)も、ところどころツッコミにくそうに冷や汗を流している。

 

「遊びが全くねえ……!白煙、お前ストイックすぎるだろ……!」

 

「あはは、何を持ち込めばいいか分からなくて、気がついたらこうなっちゃったんだ」

 

白煙くんが頭の白い煙をぽわぽわと揺らしながら苦笑いしていると、後ろから緑谷くんが「あの、白煙くん……!」と、大きな紙袋を抱えて前に飛び出してきた。

 

「これ、もしよかったら部屋に飾ってほしくて……っ!」

 

緑谷くんが袋から取り出したのは、バックドラフトさんが過去に大活躍した災害現場の特集雑誌(保存用・閲覧用の2冊)と、数年前に限定販売されたバックドラフトの超激レア・レスキュー仕様フィギュアだった。

 

「え、ええええええええええっっっ!?!?!?」

 

それを見た瞬間、白煙くんは目を見開いた。

 

「これ、バックドラフトさんが初めて単独で表紙を飾った伝説の増刊号!?しかもこのフィギュア、世界に500体しかなくて僕も手に入らなかった幻の……っ!!」

 

 

 

 

――ボッシャァァァァァァァッッ!!!!

 

 

 

 

白煙くんの興奮が最高潮に達し、頭の白い煙が天井を突き破らんばかりの勢いで大爆発を起こした。

「うわあああ! 白煙くんの煙で部屋が真っ白に!」「でもすっごく良い匂い!」とクラスメイトたちが大騒ぎする中、白煙くんは緑谷くんの両手をガシッと握りしめて涙ぐむ。

 

「緑谷くん……! ありがとう、本当にありがとう……!! 命より大切にするよ!!」

 

「う、うん! 喜んでもらえてよかった!僕のコレクション部屋に眠らせておくより、白煙くんに持っていてほしかったんだ!」

 

さっそく嬉しそうに、本棚の特等席へ雑誌とフィギュアを並べる白煙くん。

その様子を見ていた障子くんや梅雨ちゃん、そして見えない透ちゃんも、心からホッとしたように顔を見合わせた。

 

「良かった。これで少しは、この部屋にも高校生らしい『遊び』ができたな」

 

「本当にね。エンちゃん、そのフィギュアの隣に、今度私と一緒に撮った写真も飾ろうね!」

 

殺風景だった部屋に、新しく加わった大切な宝物。

悲しい過去を忘れるわけではない。けれど、新しくできた「遊び」と「仲間たちの想い」をその胸に抱いて、白煙くんのハイツ・アライアンスでの生活は、最高の笑顔と共にスタートするのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

皆が部屋に戻り、静まり返った『ハイツ・アライアンス』。

新しくあつらえられたベッドの中で、白煙くんは疲れ果てた体を休めるように、すやすやと穏やかな寝息を立てていた。

だが、静寂が満ちるその部屋で、異変は静かに起きていた。

白煙くんの頭部からふわりと立ち上る純白の煙。その中に、不純物が混ざるようにして、もくもくとドス黒い闇の煙が現れ始める。

 

「ーーー」

 

黒い煙は意志を持つかのように空中でうねり、やがて、一つの形を形成していく。

衣服のような闇を纏い、禍々しい気配を放つその姿――それは、神野区の地下アジトで白煙くんが薬物によって変貌させられたヴィラン、**『黒煙(こくえん)』**の精神の残滓だった。

 

「ーーーーー、ーーー」

 

最新医療と彼の個性の力で、トリガーの悪性(●●)は全て肉体から追い出されたはずだった。しかし、一度心の奥底に刻み込まれた深い闇の記憶までは、完全に消し去ることはできていなかったのだ。

黒煙は、ベッドで眠る白煙くんの顔を無感情にじっと見下ろした。

そこに殺意や害意はない。ただ、自らの本体である少年の寝顔を確認すると、黒煙は音もなく窓を開け、ベランダへと移動した。

夜風が吹き抜けるベランダのすぐ隣。そこには、相澤先生が意図して配置した、透ちゃんの部屋がある。

カーテンの隙間から、黒煙はするりと透ちゃんの部屋へと侵入した。

 

「ーーーー」

 

ベッドの中では、透ちゃんが幸せな夢を見ているのか、愛らしい笑顔を浮かべて眠っている。自分を地獄の底から引きずり戻してくれた、世界で一番愛しい少女。

黒煙は彼女の傍らに立つと、そのドス黒い漆黒の手をそっと伸ばした。

そして、あの地下アジトでそうしたように、彼女の頭を優しく、本当に優しく撫でる。

 

「……えへへ……エンちゃん……」

 

髪に触れる温もりを感じたのか、透ちゃんは夢の中で嬉しそうにえへへと微笑み、さらに深く眠りへと落ちていく。その笑顔を見届けた黒煙は、満足したようにそっと手を離した。

もう一度ベランダへと戻った黒煙は、雄英高校を囲む巨大なバリアの向こう、神野区の彼方にある昏い夜空を見つめた。

心の奥底に眠る悪意。消えないトリガーの記憶。

黒煙は、自らの身体をサラサラとした完全な黒い煙へと還し、夜風に紛れるようにして、静かに雄英高校を去って行った。

 

「ーーーーーーー」

 

彼が向かうのは、再び魔王の残党が集う闇の深淵か、それとも――。

体内の薬物は消えても、魂に刻まれた黒い影は解き放たれた。

これから、この光と闇の少年の運命に何が始まるのか。

今はまだ、誰も知らない。

 

 

 




黒煙も復活!!
でも、様子が前と少し違う?
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