文化祭前夜:届ける準備は万全!
文化祭前日――。
今日まで戦闘訓練にインターン、そして文化祭の準備と、文字通り目が回るような大忙しの毎日を駆け抜けてきた1年A組。ついに、待ちに待った本番が明日に迫っていた。
「音楽チーム、セッティング完了! 機材のチェックもバッチリ!」
「ダンスチーム、振り付けと隊列の最終確認オッケーだよ!」
「演出チーム、光と氷の角度、それにスモークのタイミグも完璧さ!」
各チームが全力を尽くし、できることのすべてを詰め込んできた。
そんな中で、一番ガチガチに緊張していたのはボーカルを担当する耳郎ちゃんだった。バンドのフロントであり、いやでもステージの中心として大勢の視線を集めるポジション。
「……ハぁー……ダメ、緊張で胃が痛くなってきた……」
震えるマイクを握りしめる耳郎ちゃんに、八百万さんや芦戸さん、そして上鳴くんや常闇くんたちが一斉に駆け寄る。
「大丈夫だよ耳郎! 耳郎の歌はめちゃくちゃ格好いいんだから!」
「そうですわ、私たちが後ろから最高の音でバックアップいたします!」
「自信を持て。お前の歌声こそが、我らの闇(音)を照らす光だ」
仲間たちの温かく力強い言葉に、耳郎ちゃんは「……ふふ、みんなサンキュ。全開で行くわ!」と、ようやくいつもの頼もしい笑顔を取り戻した。
騎士とお姫様のステップ
体育館の隅では、白煙くんと透ちゃんがカップルダンスパートの最終調整に励んでいた。
明日の本番で着る衣装に身を包んだ二人は、まるで物語から飛び出してきたかのような華やかさだ。
白煙くんは、白と銀を基調としたシックで品のある**「王子様風」の衣装**。
透ちゃんは、フリルとリボンが可憐に揺れる**「お姫様風」のドレス**。
「エンちゃん、ステップ早くなっちゃわないように、お互いしっかりテンポ合わせようね」
「うん、透ちゃん。僕の手に合わせて……ワン、ツー、スリー……」
見えない手と手をそっと重ね合わせ、息を揃えて踊る二人。透ちゃんのドレスの裾が可憐にひらひらと舞い、白煙くんの肩からはうっすらと幻想的な白いスモークが揺らめく。
すると、ダンスの終盤で透ちゃんがキュートに首を傾げ、おねだりするように囁いた。
「ねえねえエンちゃん! ドレスに合わせて何かカッコいい台詞、言ってほしいな!」
「えっ!? せ、台詞……!? うーん、じゃあ……」
白煙くんは耳まで真っ赤にしながらも、意を決して透ちゃんの手を優しく取り、片膝をつくようにして凛とした声で囁いた。
「――お姫様。Shall we dance?」
「うっ……!!」
あまりの破壊力に、今度は透ちゃんの方が自分の胸(心臓)をぎゅっと押さえて撃沈した。見えない顔がリンゴどころか熟し切ったトマトのように沸騰しているのが、空気の温度で伝わってくる。
「(か、カッコよすぎるよエンちゃん……! 自分のリクエストだけど心臓が保たない……!!)」
ぽわぽわと幸せな甘いスモークが二人の周りに漂う、完全な二人だけの世界。
しかし、その激甘な光景を血涙を流しながら見つめていた男がいた。
「学校で!! 本番前日に!! イチャイチャすんじゃねえええええーーーーーッッ!!!!」
峰田くんの魂からの叫びが体育館に響き渡り、周囲の生徒たちは爆笑。
いよいよ明日、1年A組の全力をかけた「音と光とダンスのステージ」の幕が上がろうとしていた!
文化祭当日――波乱の幕開けと決意
文化祭当日の朝。1年A組の控え室で、演出用の小道具のロープがちぎれていることが発覚する。
「僕、朝一番で近くのホームセンターへ買いに行ってきます!」
緑谷くんはそう言い残し、ダッシュで買い出しへと向かった。
しかしその帰り道、ロープの袋を抱えて走る緑谷くんは、紅茶のボトルを持った怪しげな人物とぶつかってしまう。
「すみません!」
「気をつけたまえよ。ゴールドティップスインペリアルの余韻が損なわれるところじゃあないか」
サングラスにマスクをつけた中年男性と、同じく変装した小柄な女性。
「さあ行こう、ラブ……ハニー」
「ハニー!? そう、私はハニー!」
あからさまに怪しい二人組み――彼らこそ、ネットで話題のヴィラン「ジェントル・クリミナル」と「ラブラバ」だった。彼らの目的は、雄英高校に侵入してその一部始終を収める「やってみた動画」の撮影。
警報が鳴れば文化祭そのものが中止になってしまう。雄英の安全とみんなの努力、そしてエリちゃんの笑顔を守るため、緑谷くんの誰にも知られない単独の死闘が始まった!
ステージ裏――ふたりだけのおまじない
一方、体育館の舞台裏。A組のメンバーが出撃の準備を進める中、白煙くんはガチガチに緊張していた。
「あわわ……ど、どうしよう……。人前で大勢の視線を浴びて踊るなんて、僕、初めてで……っ」
あまりの緊張で頭の白いスモークがうまくコントロールできず、ポワポワとぼやけては、その下から整いすぎた美少年の素顔がチラチラと覗いてしまうほどだ。
そんな白煙くんの隣で、お姫様ドレスを着た透ちゃんがそっと手を取り、顔を近づけた。
「ふふ、エンちゃん落ち着いて。……よしっ、じゃあ私から、特別な『おまじない』をあげちゃいます! みんなには絶対内緒だよ?」
「え……おまじない……?」
透ちゃんがフッと集中すると、彼女の『光の屈折(透明化)』の個性が一瞬だけバグを起こすように揺らいだ。
すーっと透明な空気が熱を帯び、その向こうから現れたのは――
光を弾くような透き通る肌、キュートで愛らしい瞳と弾けるような笑顔を持った、超絶美少女の素顔だった。
「――っっっ!!!!」
愛の告白した以来となる透ちゃんの「本物の素顔」。
あまりの眩しさと可愛さに、白煙くんの心臓はドックン!! と跳ね上がり、ステージへの緊張など一瞬でどこかへ吹き飛んでしまった。
「エンちゃん、上手くできても、もし失敗しちゃってもさ。私とエンちゃんが一生懸命練習したこのダンスは、私たちにとって最高の思い出になるんだよ!」
無邪気で、あたたかくて、眩しいくらいの優しさ。
透ちゃんはすぐに透明化を元に戻すと、ふふっと楽しそうに微笑んだ。
「透ちゃん……。……ありがとう。すっごく、勇気が出たよ」
(僕には……僕には本当にもったいないくらいの恋人だよ、透ちゃん……!)
心の中で感動に打ち震えながら、白煙くんはしっかりと透ちゃんの手を握り返した。
開演――音で殺るぞ!!
そこへ、汗だくになった緑谷くんがギリギリで駆け込んできた!
「みんな、ごめん! ロープ買ってきたよ! 補強も済ませた!」
「ナイスだ緑谷! これで小道具もバッチリだ!」
間一髪で機材の準備が全て整い、幕が上がる直前。A組全員が円陣を組む。
中心に立った爆豪くんが、ドラムスティックを頭上に掲げて吠えた。
「雄英全員、音で殺るぞ!!!!」
「「「「Yeahーーーー!!!!」」」」
観客席には、ミリオ先輩に連れられたエリちゃんの姿もある。
照明が一斉に落ち、重低音のドラムが鳴り響く。
1年A組の全力をかけた、最高に熱い「ライブ・ダンス・ミュージック」の幕が、ついに切って落とされた!
緑谷くんVSジェントルはカット
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