個性「煙」の救煙レスキューヒーロー   作:ウルトラエックス

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破天荒文化祭 その4 ショータイム!!

ドォンッ!! と重低音を腹の底まで響かせる、爆豪くんの圧倒的な爆破ドラムからライブはスタートした!

 

「よろしくお願いしまぁぁす!!!!」

 

その狂おしいほど正確で力強いリズムに合わせ、芦戸さん率いるダンスチームが一斉に躍動する。フロントでキレッキレに踊る芦戸さん、青山くん、そして可憐にステップを踏む透ちゃんと白煙くん。緑谷くん、砂藤くん、麗日さん、梅雨ちゃん、飯田くん、障子くん、峰田くんも全力を弾けさせ、尾白くんと芦戸さんは個性を活かしてダイナミックに空へと跳び上がる!

 

背景を支える重厚な音。常闇くんのディストーションの効いたギター、上鳴くんの軽快なカッティング、八百万さんの優雅かつ力強いキーボード。そしてステージの中央、マイクを固く握りしめた耳郎ちゃんが、腹の底から魂の歌声を解き放つ。その響きは、かつてヒーロー科へ向けられていた観客たちの冷ややかな視線を、一瞬で熱狂へと塗り替えていった。

 

序盤の怒涛の展開を終え、ステージは息を呑むような演出パートへと突入する。

緑谷くんがワン・フォー・オールの跳躍力で青山くんを上空へと投げ飛ばすと、青山くんはお腹から『ネビルレーザー』を全方位へと射出! まるで巨大なミラーボールのように、会場全体に眩い光のシャワーが降り注ぐ。

そこへ轟くんが息を呑むほど美しい氷の結晶を打ち上げ、光を何重にも乱反射させた。瀬呂くんが放ったテープを切島くんがその腕力で豪快に引っ張り弾けさせ、口田くんが呼んだ白いハトたちが光の粒の中を美しく舞う。仕上げとばかりに八百万さんが創造した無数のカラフルなテープが空に舞い散り、体育館はもはや一つのテーマパークのような幻想空間へと変貌した。

 

 

 

そして――曲は間奏へと突入する。

ステージの照明が一段と落ち、ドラムとベースのチルな重低音だけが心地よく響く中、観客の視線がステージ中央の一点へと注がれた。

いよいよ、白煙くんと透ちゃんの「カップルダンス」の出番だ。

闇の中から現れた二人の姿に、観客席から「えっ……!?」と驚きと感嘆の声が漏れる。

 

白煙くんはなんと、自らの個性を限界まで精密に操作して『顔の煙すら完全に透明化』させ、**透ちゃんと全く同じ「服だけが浮いている状態」**で登場したのだ!

 

白煙くんは、白銀の手袋に、凛とした王子様の衣装、そして靴だけが優雅に浮いている。

透ちゃんは、白い手袋に、可憐なお姫様のドレス、そして靴だけが浮いている。

姿が見えない者同士の、雄英高校ヒーロー科だからこそ成し得る究極の演出。

 

「Shall we dance ?(一緒に踊りませんか?)」

「Yes,let’s.(はい、喜んで)」

 

肉体は見えない。それなのに、手足の角度、ステップのしなやかさ、互いを慈しむような滑らかな空気感が、観客全員の目を惹きつけて離さない。ふたりは寸分の狂いもないテンポで優雅に交差し、ステップを重ね、互いの手と手をそっと取り合う。

そして間奏のラスト、ふたりが重なり合うようにして取った――決めポーズ!

その瞬間、演出チームの光が最高潮に跳ね上がった。

計算された強烈な光の屈折と、白煙くんの煙の粒子が弾けた奇跡の「一瞬」――。

光のヴェールの向こう側に、息を呑むような白煙くんの美少年の全身と、とびきりキュートな透ちゃんの超絶美少女の全身が、ほんのコンマ数秒だけ、はっきりと浮かび上がった!

 

「「きゃああああああああ―――ッッッ!!!!」」

 

観客席の女子生徒たちから、体育館を揺らすほどの黄色い悲鳴が爆発する!

その幻想的で美しい光景に、ミリオ先輩の隣で目を丸くしていたエリちゃんも、ハッと息をのんだ。

 

「あ……おばけさんじゃない……! すごく……綺麗……!」

 

 

 

曲はついに、最高潮のラストサビ――クライマックスへ!

梅雨ちゃんが伸びる舌で麗日さんを空中へ豪快に投げ渡すと、麗日さんが観客席の生徒たちにタッチして『無重力(ゼログラビティ)』を発動! 浮き上がった観客たちが、光と音の海の中でふわふわと宙を舞う。

ダンスチームは轟くんがフロアに作った滑らかな氷の上へと飛び出し、スケートのように滑走しながら最高にハイなダンスを繰り広げる!

 

ステージの上だけじゃない。観客席も、天井も、体育館のすみずみまでが、ひとつの巨大なダンス会場と化していた。

その圧倒的な熱量と、「誰かを楽しませたい」というA組全員の純粋な想いが、ついに奇跡を起こす。

ずっと表情を無くしていた小さな少女――エリちゃんの頬がゆるみ、瞳が輝き、その口元が……満面の、最高の「笑顔」へと弾けたのだ!

 

「あ……笑った……! エリちゃんが、笑った……ッ!!」

 

その隣で、エリちゃんの手を握っていた通形ミリオ先輩の目から、ボロボロと大きな涙が溢れ出した。個性を失い、傷つき、それでも守り抜いた命が、今こうして救われたのだ。

曲の最後の音が、爆豪くんの力強いドラムの打音とともにピタリと弾けて終わる。

 

「ありがとうございましたぁぁぁ!!!!」

 

会場全体を包み込む、割れんばかりの万雷の拍手と歓声!

ステージ上に一列に並んだ1年A組の20人は、汗だくになりながら、胸を張って深々と頭を下げた。

心も、音も、想いも、すべてが届いた。

1年A組のライブ・ダンス・ミュージックは――文句なしの大・大・大成功を収めたのだった!

 

 

 

 

祭りの余韻と、小さなお客さま

大成功を収めたステージの興奮冷めやらぬ体育館で、最初に待っていたのは「お掃除」だった。

散らばったカラフルなテープや氷の溶けた水滴、演出の小道具を、1年A組の面々は汗を拭いながら手際よく片付けていく。

 

「いやー、マジで凄かったぞヒーロー科!」

 

「音で殺られたわ……! 最高だった!」

 

掃除の最中も、片付けを手伝いに来てくれた他科の生徒たちから次々と絶賛の声が掛けられた。かつて廊下に漂っていたトゲトゲした空気は、爆豪くんの言った通り、音と圧倒的な熱量によって綺麗に吹き飛ばされていた。

そこへ、通形ミリオ先輩に連れられて、エリちゃんがとてとてと歩み寄ってくる。

その表情には、先ほどまでの怯えは一切なく、可憐な笑みが浮かんでいた。

 

「煙のお兄さん、見えないお姉さん……凄く綺麗だった。絵本の王子様とお姫様みたいだった」

 

透き通るようなエリちゃんの言葉に、白煙くんと透ちゃんは顔を見合わせ、思わず目元を緩ませた。

 

「ありがとう、エリちゃん。楽しんでもらえて本当に良かった」

 

「えへへ、エリちゃんにそう言ってもらえるのが一番嬉しいな!」

 

二人はしゃがみ込み、エリちゃんの頭を優しく撫でた。あたたかな手の温もりに、エリちゃんは目を細めて嬉しそうに目を細めるのだった。

 

 

 

 

 

はじめての文化祭デート

片付けも一区切りつき、ここからはA組のメンバーも私服に着替えて文化祭を自由に楽しむ時間に突入した。

白煙くんは、少し緊張した面持ちで透ちゃんの前に立った。

 

「透ちゃん。……もし良かったら、一緒に回らない?」

 

「うんっ! もちろんだよエンちゃん!」

 

二人は手を繋ぎ、賑わう雄英高校の校内へと繰り出した。

B組の本格的な演劇に感嘆し、サポート科のブースでは最新のヒーローアイテム展示に目を輝かせ、心操くんのいる普通科のお化け屋敷では、エリちゃんを驚かせた「お化けコンビ」として大はしゃぎ。甘いクレープを二人で分け合って頬張り、ミスコンのステージでは圧倒的な華やかさを誇る拳藤さんに大きな拍手を送った。

だが、校内を歩いていると、すれ違う女子生徒たちから次々と声を掛けられる事態に。

 

「あのっ! ステージ見ました! 凄くカッコよかったです!」

 

「あの煙の中から一瞬見えた顔、ヤバすぎませんでした!?」

 

一瞬にして女子生徒たちに囲まれ、白煙くんは「あ、ありがとうございます……!」と大慌て。透ちゃんは思わず嫉妬と焦りで白煙くんの前に立ちはだかり、彼を庇おうとした。

 

「エ、エンちゃんは渡さないよー!?」

 

すると、女子生徒たちは目を輝かせて黄色い悲鳴を上げた。

 

「キャーッ! 違うんです彼女さん! 彼女さんも一瞬見えた素顔、めちゃくちゃ超絶美少女で綺麗でした!!」

 

「そうなんです! 一瞬のあの二人、尊すぎて完全に私たちの『推し』になりました!」

 

「推しカプ尊い……」

 

「てぇてぇ……本当にごちそうさまです……!」

 

興奮気味にそれだけ言い残すと、女子生徒たちは満足そうに嵐のように去っていった。

残された二人は、ぽかんと口を開けて佇むしかない。

 

「……推しカプ? てぇてぇ……? えーっと、どういう意味かな、透ちゃん」

 

「う、うん……いろんな世界(文化)があるんだねー……」

 

「うん。世界、広いね……」

 

二人で顔を見合わせ、ふふっと苦笑いを漏らすのだった。

 

 

 

 

残された記録、切り取られた日常

そんな二人の様子を、少し離れた場所から静かにカメラで収める影があった。障子くだ。

彼の大きな手には、撮ったその場で写真が印刷されるポラロイドカメラが握られている。

 

「障子くん? 何してるの?」

 

「白煙か。文化祭の準備期間から、記録としてクラスの様子を撮っていたんだが……撮っているうちに、写真を残すこと自体に興味が湧いてな」

 

障子くんはそう言うと、レンズを白煙くんと透ちゃんへと向けた。

 

「せっかくだ。二人も一枚、撮らせてくれないか?」

 

「えっ、僕たちを? うん、良いよ! 透ちゃん、撮ってもらおう!」

 

「うん! 障子くん、お願い!」

 

「では、いくぞ。三、二、一――」

 

カシャッ、とシャッター音が響くその一瞬。

白煙くんは頭のスモークを完全に消し去り、透ちゃんも光の屈折をほんの少し解いて、最高の笑顔を浮かべた素顔の二人で、仲良く並んでダブルピースを決めた。

ジーッと音を立ててカメラから吐き出される二枚の写真。

徐々に浮き上がってきた浮世離れした美少年と超絶美少女のまぶしい笑顔に、障子くんも「……いい写真だ」と満足そうに頷いた。

 

「はい、一枚ずつだ。文化祭の記念にな」

 

「ありがとう、障子くん! 大切にするね!」

 

「うん、宝物にする!」

 

写真を受け取り、嬉しそうに胸に抱きしめる白煙くんと透ちゃん。

過酷な戦いを乗り越えた先に掴み取った、かけがえのない青春の1ページが、一枚の写真として二人の手元に優しく残されたのだった。

 

 




白煙くんと透ちゃんの見えないカップルダンスでした
2人の顔が見えたのは偶然です
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