今月も毎日18時更新予約投稿しています
これからもよろしくお願いします
チームアップミッション最終日
チームアップミッションもいよいよ最終日。白煙くんと透ちゃんのペアが派遣されたのは、第6位のプロヒーロー・クラストの事務所だった。
情に厚く、常に豪快に熱血涙を流すクラストから与えられた本日の任務は――「街で迷子になった黒猫の捜索」。
「ね、猫?」
にゃーん?
「クロちゃんをさがしてくださいっ!」
依頼者は幼稚園の女の子。
「ヒーローの仕事に大小などない! 困っている市民がいれば、猫一匹だろうと全力で救う! それがヒーローだ!!行くぞ、スモークドラフト!!インビジブルガール!!」
熱く拳を握りしめるクラストに「はいっ!」と元気に答える二人。ヴィラン退治とはかけ離れた平和な依頼に、白煙くんと透ちゃんもどこか和やかな心地で街の捜索を進める。
「クロちゃーん」
「口田くんが居てくれると助かるのになー」
黒猫の名前はクロ。
口田くんの個性は生き物と話せる。
動物探しは口田くんの十八番。
「黒猫発見!」
「フシャー!!」
「いだだだだ!?」
「クラフトさん、その子はクロちゃんじゃないよー」
黒猫違い。
クラフトさん爪で顔を引っかかれる。
透ちゃん、クロちゃんの写真と見比べる。
「ごめんね」
「フニャ」
白煙くん黒猫を放す。
「猫さん多いね」
「このあたりはテリトリーなのかな」
しかし――平和な時間は、裏路地の一角で突如として破られる。
遭遇――『影』と『解放』
「――あ、いた! 黒猫ちゃん!」
透ちゃんが路地の奥で丸くなっていた猫を見つけ、駆け寄ろうとしたその瞬間。
路地の影から、ぬっと現れた黒い人影が猫を優しく抱き上げた。
「……探していたのは、この子ですか?」
「……っ!?」
白煙くんの全身に、強烈な鳥肌が立った。
黒い学ラン。テレビ越しでしか見たことがなかった存在――**「黒煙」**が、すぐ目の前に立っていた。
さらに黒煙の隣には、高級なスーツを隙なく着こなし、知的な眼鏡をかけた一人の男が佇んでいる。彼は表向きは大手IT企業の役員でありながら、裏では密かに勢力を拡大する『異能解放軍』の幹部であった。
「きみが、黒煙……」
「初めましてホワイト。私は黒煙。以後お見知りおきを」
丁寧に頭を下げる黒煙。
「本当に僕そっくりだ」
「そっくりも何も、貴方から分裂したので当然です」
「ぶ、分裂!?」
「寮生活が始まってから身体の調子が良くなったのを覚えていますか?あれは私が抜けたからです」
そういえば、身体が急に楽になった。
あんな時から黒煙は存在していたのか。
「……エンちゃん……!」
透ちゃんが白煙くんの前に庇うように立ち、警戒を露わにする。
「黒煙……! なぜ君がこんなところに……!?」
白煙くんが問い詰めると、黒煙は仮面の奥で静かに目を細めた。
「ただの散歩ですよ。……ですが、せっかく『本物』の私にお会いできたのです。少しお話し(テスト)でもいかがですか?」
「何を企んでいる……! 子どもたちから離れろ、ヴィラン!」
状況を察知したクラストが、生徒二人を守るために前に躍り出た。しかし、異能解放軍の幹部は冷徹な笑みを浮かべ、胸ポケットから手袋を取り出す。
「おっと、プロヒーロー。私のプライベートを邪魔しないでいただきたい。素性を明かすつもりはありませんが……お相手しましょう」
「透ちゃんは離れていて! クラストさん、あのヴィランをお願いします!」
「任せろスモークドラフト! 無理はするなよ!」
裏路地と広場を舞台に、二つの戦闘が同時に勃発する。
クラストは自らの個性『盾』を全身から生成し、圧倒的な耐久力と熱血な突進で幹部へ肉薄する。しかし、素性を隠した異能解放軍幹部が放つ未知の異能攻撃と巧妙な体術は極めて巧みであり、ナンバーシックスのヒーロー相手にも一歩も引かず、戦況は拮抗・混戦を極めていく。
一方――白煙くんと黒煙の戦い。
「もぎもぎスモーク!」
白煙くんは自らの体を白い煙へと変え、相手の視界を奪いながら死角からの粘着性のある煙玉を連射する。自分と全く同じ個性『煙』を持つ相手。物理攻撃が効かないならば、同じ個性の扱いと戦術で上回るしかない。
だが――。
「……甘いですね、ホワイト」
黒煙の動きは、白煙くんの想像を遥かに超えていた。
白煙くんが煙となって背後に回り込んだ瞬間、黒煙はそれ以上の密度と速度で漆黒の煙を全域に展開。白煙くんの「煙」そのものを、黒煙の冷たく重い煙が力任せに圧迫し、侵食していく!
「くっ……!? 煙が……押しつぶされる……!?」
同じ個性だからこそ分かってしまった。
個性の熟練度、出力、そして相手を害することに対する「迷いの無さ」――そのすべてにおいて、黒煙が圧倒しているという事実を。
「ホワイトスマッシュ!!」
「――ブラックスマッシュ」
白と黒の拳を模した煙がぶつかり合う。
重い!
僕のスマッシュより強い!
「君は優しすぎる。だから、その力の真価を発揮できない」
黒煙が濃縮された黒い煙の拳を振り下ろす。白煙くんは必死に煙化して受け流そうとしたが、黒煙の煙は白煙くんの煙の粒子そのものを捉え、物理的な衝撃を超えた「密度の暴力」となって白煙くんの体を打ち砕いた。
ドカッ――!!
「がはっ……!!」
激しく壁に叩きつけられ、実体に戻ってしまう白煙くん。
「弱いですねホワイト」
「くっ」
「それでは透さんを護れない。身体の主導権を貸しなさい。私なら透さんを力で護れる」
「僕は弱い。それは認める。誰かに負けるのは良い。でも、自分にだけは負けたくない!」
「では、その言葉が本物かどうか。引き続き楽しみましょう」
黒煙。
戦闘再開。
「ホワイトスマッシュ!!」
「――ブラックガード」
「まだまだァ!!拳藤さん流、インパクト・ホワイトスマッシュ!!」
拳が当たる直前に巨大化。
B組の拳藤さんの必殺技を煙で再現した。
パワー不足を補っている。
黒煙が吹き飛ぶ。
「やりますね。それなら面白いものをお見せしましょう――『プルスケイオス・赤煙(セキエン)』」
「赤い、煙……?」
「私達、煙は燃やせば燃やすほど煙が噴き上がる。己の肉体を燃やしエネルギーを循環させる。ホワイト、弱い貴方では成し得ない境地」
黒煙がまるで赤く燃えているように見える。
まるでSL。
蒸気機関車だ。
「――赤煙ブラックスマッシュ」
「がはっ!!」
「エンちゃん――――っ!!」
透ちゃんの悲鳴が響き渡る。白煙くんは立ち上がろうとするが、全身を打撲し、呼吸すらままならない。完全な敗北だった。
残された爪痕
「スモークドラフト! くそっ、これ以上好きにはさせん!」
クラストが叫び、必殺の盾を構えて白煙くんの救出に割って入ろうとする。
しかし、異能解放軍の幹部がそれを静かに制した。
「ここまでです、黒煙。長居は無用。警察や他のヒーローが集まってくる」
「……ええ、そうですね。お行きなさい」
黒煙は追撃を止め、抱えていた黒猫をそっと地面に降ろした。
「ナァー♪」
黒猫は怯えることもなく、黒煙の足元をひと撫でしてから透ちゃんの方へと走っていく。
「ホワイト……。今の君では、これから訪れる『大災害』の波に呑み込まれて消えるだけです。……強くおなりなさい。私のために」
謎めいた言葉を残し、黒煙と幹部の姿は、黒い煙の渦とともに忽然と消え失せた。
「ハァ……ハァ……っ……大災害……?」
冷たい地面に倒れ伏す白煙くん。傷ついた体を抱きしめるように、透ちゃんが泣きそうな声で駆け寄ってくる。
「エンちゃん! 大丈夫!? エンちゃん……!」
「……ごめん、透ちゃん……。僕……負けちゃった……」
自分の無力さと、黒煙という存在の底知れぬ恐怖。
楽しかったチームアップミッションの最後に突きつけられた圧倒的な敗北感は、白煙くんの心に深く、重い影を落とすのだった。
(強くならなきゃ……! 僕が……あいつを止められるくらいに……!)
遠くから響くサイレンの音を聞きながら、白煙くんは悔しさに強く拳を握りしめていた。
「おにーちゃん、おねーちゃん、ありがとー」
「ナァー」
「うん……」
幼稚園の女の子。
白煙くんはあまり元気がない。
自分自身に負けるのは他の人に負けるより堪える。
「エンちゃん。元気出して」
「透ちゃん……」
「黒煙くんが出来たなら、エンちゃんだって出来るよ!!特訓あるのみ、だよ!!」
「透ちゃん……うん、がんばるよ」
打倒『黒煙』。
白煙くんの新しい挑戦が始まる。
それが黒煙の望みであることに白煙くんは知る由もなかった。
黒煙のパワーアップ『赤煙(セキエン)』
ワ○ピースのギア・セカ○ドと同じ原理です
チームアップミッションはこれで終わりです
次回はA組VSB組