個性「煙」の救煙レスキューヒーロー   作:ウルトラエックス

78 / 104
合同戦闘訓練 第ニ試合 がんばれ負けるな障子くん

「――これより、1年A組・B組合同戦闘訓練、第2試合を開始する!!」

 

第1試合での心操クンたちの劇的な大勝利の余韻が冷めやらぬなか、冬の冷たい風が吹き抜ける演習場に、ブラドキング先生のアナウンスが再び鳴り響きました。

 

「障子くん、がんばって!!」

「ファイトー!!障子くん!!」

 

モニター室では、白煙くんと隣に座る透ちゃんの見えない手をぎゅっと握りしめていました。緑谷くんや麗日さんもノートを広げ、真剣な眼差しで画面を凝視しています。

 

 

 

 

今回のA組チームのメンバーは、轟焦凍、常闇踏陰、飯田天哉、障子目蔵の4人。インターンでプロの最前線をくぐり抜けてきた、A組が誇る最高戦力のカルテットです。

対するB組チームは、拳藤一佳、小森希乃子、黒色支配、吹出漫我の4人。

 

「常闇、お前の新技で空を索敵しろ。……俺の氷結で、初手からステージ全体を完全制圧させて終わらせる」

 

轟クンがオッドアイの瞳を鋭く細め、右半身から冷気を立ち昇らせました。新ナンバーワンとなった親父(エンデヴァー)の初陣を見て以来、彼の放つ力は、かつてないほど高く、プロとしての確固たる覚醒を遂げていました。

 

 

 

ピィィィィィィッ!!!

 

開戦のホーンが鳴り響いた瞬間、轟くんは迷うことなく右足を地面へと強く踏み下ろしました。

 

「――凍れッ!!」

 

ドガァァァァァァンッッッッ!!!!!

 

彼の足元から放たれた最大出力の『氷結』の津波が、周囲のビル群、鉄骨、そして積雪の全座標を一瞬にして数メートルの分厚い氷の壁へと変え、演習場全体を完全な白銀の氷河期へと塗り替えました。B組の動きを初手で完全封殺する、圧倒的なトップクラスの暴力。

 

「ドガァァァァァァンッッ」

 

「何!?」

 

しかし、氷が襲ったのは具現化した擬音語。

吹出の個性「コミック」。

 

「――行くぞ、ダークシャドウ! 我が身を覆う、漆黒の衣となれ!! 必殺――『黒の堕天使』ッッ!!」

 

常闇くんが叫んだ瞬間、ホークスさんの元でのインターンで完全に覚醒させた、飛行機動奥義が発動。巨大化させた黒影を全身に『衣服』の形へと精密に纏い、背中に巨大な漆黒の「闇の翼」を出現させて大空へと力強く羽ばたく。

 

「待て、常闇。何かおかしい」

 

「何?」

 

障子くんが『複製腕』で探知する。

しかし、B組の隠密の天才、黒色支配(くろいろしほ)クンは、その絶望の氷の影の中で、不気味に、獰猛に笑っていた。個性『黒(ブラック)』。黒いもの、そして『影』の中に自在に飛び込み、それを操る能力。

 

「――フハハハハ! 轟焦凍、常闇踏陰! 君たちの作ったその氷の裏側、そしてその纏ったダークシャドウは、最高に濃密な『黒い影』なんだよォォォッッ!!」

 

 

 

ズズズズズズッ!!!

 

 

 

常闇くんが身に纏っていた黒影の支配権が、黒色くんの漆黒のオーラによって強引に略奪されました。

 

「なっ――!? 我が黒の堕天使が……支配された……っ!?」

 

常闇くんが必死に抵抗しますが、自分の個性に締め付けられるようにして動きを完全にロックされ、空中から雪原へと真っ逆さまに撃ち落とされてしまいます。

 

「常闇くん!! 今すぐ俺のレシプロで引き剥がす――」

 

飯田くんがマフラーの排気口から猛烈な黒煙を上げ、超加速で突撃しようとした、まさにその刹那でした。

 

 

 

ゴホッ、ゴホゴホッ……!!!

 

 

 

突然、飯田くんのマフラー、常闇くんの翼、そして轟くんの衣服の隙間、障子くんのマスクから、見たこともないほどの大量の『キノコの胞子(菌)』が、湯煙のように爆発的に噴出しました。B組の小森希乃子(コモリちゃん)の個性『キノコ』。

 

「んふふ〜! 湿気(水分)さえあれば、どこにだって私の可愛いキノコちゃんは繁殖しちゃうんだよ〜ん」

 

白銀の氷の表面、そしてヒーローたちのコスチュームの繊維、さらには喉の奥に至るまで、ミリ秒単位で数千、数万個の毒キノコがバリバリと爆発的に群生を始め、演習場全体が一瞬にして不気味な『キノコの森(監獄)』へと変貌していく。

 

「う、ぐへっ……! 喉の奥までキノコが……、呼吸が……っ!」

 

飯田くんが激しく咳き込み、超加速のエンジンが胞子の詰まりによって一瞬にして強制エンスト。常闇くん、障子くんも動きにくくなっている。轟くんも、左半身から炎を出して除菌しようとしますが、黒色くんの影の奇襲と小森ちゃんの広域胞子トラップのハメ殺しコンボの前に、肉体の自由を完全に奪われていきました。

 

「なんて数だ……! B組、手の内を晒していない分、戦術が完全に尖っている……っ!」

 

モニター室で緑谷くんが顔を青ざめさせ、隣の透ちゃんも「轟くんたちが、一瞬で大ピンチだよ……っ!」と、僕の手を強く握りしめて息を呑みました。

A組の誇る最強の隠密・機動力・火力を、完全に裏側からハッキングすり潰しにくる、B組の緻密な『日陰の逆襲』。

 

 

 

「――これ以上、俺たちの進軍を止めてたまるかァァァッッ!!!」

 

キノコの胞子によって喉を塞がれ、四方からの影の奇襲にハメ殺されかけていた絶体絶命の包囲網の中。学級委員長・飯田くんが、限界突破(プラス・ウルトラ)の爆発を見せる。

 

「兄さんの名を汚さぬため、俺は今ここで、さらなる新次元の加速を解禁する!!『レシプロ……ターボ(限界超加速)』ォォオオオッッッッ!!!!!」

 

 

 

バリバリバリバリィィィッッ!!!!!

 

 

 

飯田クンのふくらはぎのマフラーから、これまでの黒煙を完全に置き去りにする、まばゆい青い『超高圧の火花(プラズマ)』が噴出しました。10分間限定、肉体のリミッターを強引に引き剥がした究極の超加速機動。

 

 

 

シュパァァァンッッ!!!

 

 

 

音速を越えるほどのスピードとなった飯田くんは、地を滑るようにして疾走し、迫り来る小森ちゃんのキノコの弾幕を一瞬にして風圧だけで全て吹き飛ばしました。

 

「なっ――!? 胞子の群生(トラップ)が、追いつかない……っ!?」

 

小森ちゃんが驚愕する間もなく、飯田くんはその神速の体術のまま、隠密に徹していたB組の吹出漫我くんを一瞬にして抱きかかえ、そのまま捕縛用の檻の中へと目にも留まらぬ速さで強制送還していきました。

 

「――黒色支配! 俺のダークシャドウを弄んだ罪、その身に刻むが良い!!」

 

地上での飯田くんの無双に呼応するように、空中で自分の個性を略奪されていた常闇くんも、その中二病――いや、ホークスさんの元でのインターンで鍛え上げた『飛ぶ楽しさ(精神力)』を最大解放しました。

 

「我が魂の半身よ、深淵の闇を切り裂き、俺の元へ還れ!! 『黒の堕天使』、再臨ッッ!!」

 

「ガアァァァァァァッッッ!!! 常闇、ただいま!!」

 

常闇くんの絶対的な精神の覇気の前に、黒色くんの『黒』の個性の支配権がバリバリと拒絶・切断されました。自由を取り戻したダークシャドウの闇の翼が、上空から急降下を仕掛け、驚愕する黒色くんをその強固な爪でガチィィィン!!と力任せに捕らえていきました。

 

「させない!!」

 

「拳藤さん、きみは俺がここで止める」

 

「――それなら、私の拳で叩き潰してやる!!」

 

「良いだろう。オクトブロー!!」

 

 

 

ドガァァァァァァンッッッッ!!!!!

 

 

 

ステージの最奥、B組のリーダーである拳藤さんが、その両の拳をビルほどもある巨躯の質量へと『巨大化』させ、前衛にいた障子くんの『複製腕』を真っ正面から力尽くで圧殺・粉砕しにかかりました。

 

「轟、今だ!! 俺が拳藤を止める、お前は奥の小森を――」

 

障子くんが肉体を盾にして叫んだ、その瞬間。

 

「――『ジェット・バーン』ォォォッッッ!!!!!」

 

轟焦凍クンが、左半身から福岡の夜空を丸ごと赫く染め上げた、あの親父(エンデヴァー)直伝の『灼熱の炎』を最大出力で爆発させました。至近距離からの圧倒的な熱線。それは、演習場を埋め尽くしていた数万、数百万個の毒キノコの胞子を一瞬にして分子レベルで完全に焼き尽くし、白銀の雪原をドロドロのマグマの海へと変貌させていきました。

 

「ハハハ、熱いねぇ! だけど、私もB組の看板を背負ってるんだよォォォッッ!!」

 

拳藤さんが巨大化させた拳で轟クンの炎の圧力を強引に薙ぎ払い、轟クンの右半身の氷結と、拳藤さんの鉄拳が、ステージの真ん中で真っ正面から大激突しました!

 

 

 

ドゴォォォォォォォォンッッッッッッッ!!!!!!!

 

 

 

泥泥の終幕、そして引き継がれるリレータイムアップを告げる無慈悲なホーンの音が演習場中に鳴り響きました。激しい白煙と炎の余熱がパチパチと舞うなか、お互いに限界を超えて戦い抜いた轟くんと拳藤さんの二人は、泥と雪のなかに大の字になって、同時にドサリと意識を失って倒れ込みました。

 

「そこまで――!! 第2試合、生存者数、A組2名、B組2名!! ……だが、拠点の確保ポイントの僅差により、第2試合は1年B組チームの勝利ーーーっっ!!!」

 

ブラドキング先生の、誇らしげな実況が響き渡りました。結果としては一歩及ばずB組の勝ちとなりましたが、お互いに手の内を尽くし、1ミリの妥協もなく高め合ったその泥だらけの背中には、体育祭の時とは比べ物にならないほどの、確固たるプロとしての『敬意』が満ち溢れていました。

 

「轟くん、飯田くん、みんな……本当にかっこよかったよ……っ!」

 

観客席のモニター室の前で、麗日さんやデクくんたちが涙を流して惜しみない最大の拍手を送っていました。

 

「障子くん、大活躍だったね!」

 

「うん!!」

 

白煙くん、透ちゃんも一緒に拍手する。チーム放課後として、そして友達として誇らしい。これで1勝1敗。まだまだこれからだ。

 

 

 

 

「僕達も負けてられない。対戦相手の予測、対策を考えないと」

 

「エンちゃん、体育祭や文化祭の映像なら雄英公式チャンネルにあるよ!!」

 

「おおーっ、その手があったね。すごい、透ちゃん!!」

 

「えっへん」

 

B組の過去映像を見ながら、林間合宿の個性伸ばしも含めて予測と対策を進めるのであった。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定
▲ページの一番上に飛ぶ  X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。