12月、冬のひだまりデート
すっかり季節は冬となり、空からはたまに思い出したように、ちらちらと白い雪が舞い降りてくる。
激しい戦闘訓練やヒーロー科の厳しい日々から少しだけ離れた、待ちに待った久々の休日。
白煙薫(エンちゃん)と葉隠透(透ちゃん)の二人は、街の街路樹が冬の装いを見せる中、並んで歩いていた。
待ち合わせと服の褒め合い
「エンちゃ〜ん! お待たせ〜!」
マフラーに顔を埋めるようにして走ってきた透ちゃん。その姿を見て、白煙くんはぽっと頬を緩ませた。
「透ちゃん! ううん、僕も今来たところだよ。……あ、その服……!」
今日の透ちゃんは、この日のために新調した最新の「勝負服」。冬らしいふわふわの白いニットに、チェックスカートと可愛らしいコートのコーディネートだ。姿は見えなくても、服のシルエットと動きだけで飛び切りの可愛さが伝わってくる。
「ふふ〜ん! どうかなエンちゃん? 今日は気合い入れて最新の勝負服で来ちゃったんだけど……似合ってる……?」
「すごく似合ってるよ! ふわふわしてて、雪の妖精みたいで……本当に可愛い」
「わぁ……! 直球で褒められると照れちゃうな〜! エンちゃんの方こそ、今日のコートすごくシックでカッコいいよ! 背が高くなったから、大人っぽく見えてキュンとしちゃう!」
「えへへ、ありがとう。透ちゃんにそう言ってもらえると嬉しいな」
照れくさそうに微笑み合う二人。白煙くんがそっと手を伸ばすと、透ちゃんの指先が重ねられる。
「手、繋いでもいい……?」
「もちろん! ……あ、エンちゃんの手、あったかいね」
「透ちゃんの手は少し冷たいね。僕のポケット、一緒に入れる?」
「入る入れるー! えへへ、これすっごく温かいや」
ポケットの中でぎゅっと手を繋ぎ直す。今日はヒーロー活動も訓練も一切お休み。ただの「男の子」と「女の子」に戻る特別な一日だった。
「う〜、ヒーローのお仕事がない日って、こんなにのんびりできるんだねぇ」
「そうだね。毎日訓練続きだったから、こうやって透ちゃんと並んで散歩できるだけで……すごく幸せだよ」
透ちゃんはご機嫌にステップを踏みながら、白煙くんの腕に擦り寄る。冬の冷たい空気が、二人の距離を自然と縮めてくれていた。
「今年ももうすぐ終わりだねー」
「うん。今までで1番濃い1年だった。良いことはあったけど、辛いことが多すぎた……」
「エンちゃん……」
透ちゃんと話しながら歩く白煙くん。
高校受験、個性把握テスト、ヴィラン襲来、体育祭、職場体験、期末試験、林間合宿、闇堕ち誘拐事件、仮免試験、インターン、そして共同授業。
「でも、透ちゃんと出会えたのが僕の1番の幸運だよ。僕の恋人になってくれてありがとう。大好きだよ」
「エンちゃん!!私はもっと大好きだから!!任せて、私が幸せにするから!!」
透ちゃんの好き好きアピールを受け止める白煙くん。
お互いに顔は真っ赤っ赤だけど、想いは真剣。
街のカフェの前を通りかかった時、お店の前の看板が二人の目に留まった。
『期間限定! らぶらぶカップル専用♡ 超巨大ラブラブいちごパフェ(※お二人でスプーンを突つき合って召し上がれ☆)』
ハートマークが散りばめられた、あからさまに「頭の悪い商売」の看板。
「な、なんだかいかにもなパフェだね……あはは……」
苦笑いする白煙くんだったが、透ちゃんは看板を食い入るように見つめ、見えない目を輝かせた。
「エンちゃん! これ食べよ!!」
「えっ!? こ、これって……カップル専用って書いてあるよ!?」
「私たちカップルじゃん! 何の問題もないよ! ほらほら、行こ行こ〜!」
店内に入り、運ばれてきたのはハート型の巨大なグラスに盛られた真っ赤ないちごパフェ。スプーンはなぜか持ち手がハート型で繋がった「二人用スプーン」まで添えられている。
「うわぁ……すごーい! いちごがいっぱい!」
「う、うん……でもこれ、すごく目立つね……周りの視線が……」
店内の客からの温かい(そして少しからかうような)視線に、白煙くんは顔を真っ赤にする。
「ほらエンちゃん、あーんしてあげる! あーん!」
「と、透ちゃん……! 自分で食べるから――」
「だーめ! 今日はデートなんだから! ほら、あーん!」
「……あ、あーん……(モグッ)。……美味しい……」
「でしょ〜! じゃあ次はエンちゃんが私にあーんして!」
「えっ、あ、うん……はい、あーん……」
「パクリ! ん〜〜〜っ! 甘くて最高〜〜!!」
真っ赤な顔になりながらパフェを突き合う二人。バカバカしいほどの甘い演出も、大好きな人と一緒なら最高の思い出に変わっていく。
パフェを食べ終え、再び街をまったりと散歩する二人。空からはひらひらと、小さな雪の結晶が舞い落ちてきていた。
「あ、雪……少し強くなってきたね」
「本当だぁ。冬のデートって感じがしてロマンチックだね」
透ちゃんは繋いだ手をポケットの中でぎゅっと握りしめた。
「ねえ、エンちゃん」
「なあに、透ちゃん?」
「私ね、エンちゃんと一緒にいる時が一番楽しいよ。ヒーローとして戦ってるエンちゃんもカッコよくて大好きだけど、こうやって一緒に笑って、美味しいもの食べて、手繋いで歩いてる時間が……一番宝物だな」
透ちゃんの温かい声が、静かに白煙くんの胸に染み渡る。
白煙くんは立ち止まり、繋いだ手に少しだけ力を込めて、見えない透ちゃんの瞳をまっすぐに見つめ返した。
「……僕もだよ、透ちゃん。僕も、透ちゃんと一緒にいる時間が世界で一番楽しくて、一番大切なんだ。透ちゃんが隣にいてくれるから、僕は強くなれるし、優しくいられるんだと思う」
「エンちゃん……っ」
「これからもずっと……こうやって一緒に散歩しようね」
「うんっ! 絶対だよ!」
舞い散る雪の中、二人はポケットの中でしっかりと手を繋ぎ直し、幸せそうに微笑み合いながら、ゆっくりと冬の街を歩み進めていくのだった。