白黒南海決戦、開幕!!
絶壁の決戦場――魔王と継承者
無人島の断崖絶壁。吹き荒れる暴風の中、覚醒した緑谷くんと爆豪くんの威圧的なプレッシャーがナインを圧迫していた。
「**『テキサス……スマッシュ』**ッッ!!!!」
「『APショット』!!! 死ねぇッ!!」
緑谷くんの放つ凄まじい風圧の拳と、爆豪くんの掌から撃ち出されたピンポイントの貫通爆破。二人の必殺の一撃がナインの胸元を捉えた――そう見えた瞬間。
シュンッ……!
「「!?!?」」
手応えがない。ナインの肉体が瞬時に薄黒い煙へと霧散し、二人の攻撃はむなしく空を切った。
「くっ……白煙くんの『煙』!!」
「ちっ……攻撃を透過させて回避しやがったか! だったら、戦法を変えるだけだァ!!」
緑谷くんは着地と同時に素早く思考を巡らせる。個性の分析ノートを網羅してきた緑谷くん、そして体育祭で白煙くんと激闘を繰り広げた爆豪くんには、この能力の構造と致命的な弱点が見えていた。
「かっちゃん、煙の弱点は……『風』と『拡散』だ!」
「言われなくても分かってんだよ!! **『爆風跳躍(ストレイフキャノネード)』**ッッ!!」
緑谷くんが空中で放つ旋風の蹴り込みによって凄まじい上昇気流を発生させ、爆豪くんが拡散させない一点集中の連続爆破で大気を激しく震わせる!
気圧の急激な変化と暴風によって煙の粒子が強制的に押し払われ、無防備なナインの本体が露わになった。
ガアッ!!
「グッ……!? 小賢しい真似を……ッ!」
緑谷くんの蹴りと爆豪くんの爆破の追撃を受け、ナインの口から鮮血が飛び散る。本体を傷つけられたことで、ナインの冷酷な瞳に初めて不快感と焦燥が混じり込んだ。
(この『煙』は細胞の崩壊を食い止めるための最高の緩衝材……。だが、奴らはこの能力の性質を完璧に理解している……!)
ナインは瞬時に思考を切り替えた。爆豪くんが繰り出す攻撃の「爆煙」を、奪った煙の個性で強制的に吸引。爆風の威力を削ぎ落としつつ、体内の崩壊速度を物理的に抑え込む。
「ダメージ覚悟で強引に押し潰すまで……! 理想の未来のため、ここで貴様らを滅ぼす!!」
山頂の頂。活真くんと真幌ちゃんを庇うように立つ白煙くん、透ちゃん、そして黒煙。
遠く下層の戦場を見下ろしていた黒煙が、ニヤリと凶悪で美しい笑みを浮かべた。
「あぁ……それは見過ごせませんね」
黒煙が不敵に指先を鳴らすと同時に、白煙くんもまた、傷つく胸を押さえながら強く瞳を光らせた。
「僕の個性を……そんな凶悪な使い方はさせない!!」
ジュッ……!!
「なっ……何……!? 煙が……動かん……!?」
ナインが取り込もうとした爆煙と、自ら変化させた煙が、突然ナインの意思を無視して拒絶反応を起こした。
白煙くんと黒煙は、元々は一つの根源から分かたれた存在。たとえ距離が離れていようとも、自分たちの「本源」である煙の主導権をナインから奪い返すことなど容易かった。
「ガハッ……!? 体内の……細胞崩壊が……ッ!!」
煙による保護を完全に妨害されたナインは、逃げ場を失った強烈な反作用によって体内の細胞が一気に破壊され、絶叫とともに膝をついた。
「よし! やっと……ガタが来た!!」
「ダメージが蓄積されてきたぞ……オール・フォー・ワンのモドキ野郎がァァァッ!!!!」
緑谷くんと爆豪くんが一気に間合いを詰め、絶望的な窮地に追い込まれたナインを見下ろす。
膝をつき、己の血で汚れた手を見つめるナイン。その瞳から人間らしい感情が完全に消え失せ、底知れぬ深淵のような「絶対的な悪」の冷酷さが宿った。
「……黙れ」
地に響くような低い声。それだけで周囲の温度が凍りついたかのように下がっていく。
「私を破滅へ導くというのか……? 奪い、支配し、新世界の支配者となるこの私の夢を……そのような弱者の戯れで邪魔するなァァァッッ!!!!」
ナインが天地を裂くような咆哮とともに両手を天に掲げた。
ゴゴゴゴゴゴゴゴガガガガガッッ!!!!
ナイン本来の絶対的な個性――『気象操作』。
快晴だった那歩島の空が、一瞬にして漆黒の暗雲で覆い尽くされた。雲同士が激しくぶつかり合い、紫色の不気味な放電が天を焼き尽くす。
「ハハハハハ! 灰も残さず消え去るがいい!!」
ドガァァァァァァァァンッッッ!!!!
天から降り注ぐのは、島一つを容易に削り取るほどの超特大の極太の落雷!
光と破壊の柱が、逃げ場のない緑谷くんと爆豪くんの頭上へ向かって、圧倒的な絶望とともに叩きつけられた!
「うわっ!?」
「チィッ!?」
ドガァァァァンッッ!!!!
天から降り注いだ圧倒的な紫の雷光。緑谷くんと爆豪くんの二人が凄まじい爆風とともに遥か下層へと吹き飛ばされる。事前に島内に配置していた上鳴の能力を応用した避雷針システムで電撃の直撃こそ逃れたものの、大気を引き裂く莫大な衝撃波までは殺しきれず、二人は全身に激しい不整脈と灼熱の痛みを追って激突した。
「あばばばばばばばばばば……っ! ちょ、直撃じゃなくてもこの威力かよ……!」
上鳴が髪を逆立てて痺れに悶絶する。
「これ以上は……!」
「上に行かせない!!」
ナインは緑谷くんと爆豪くんを倒して再び頂上を目指す。
頂上へと続く唯一の石橋の袂。砂藤くんが砂糖を貪り食って限界まで筋力を引き上げ、尾白くんが強靭な尻尾を叩きつけて橋脚を粉砕する! 瓦礫がガラガラと滑落し、道が絶たれた――はずだった。
「身の程を知れ……塵芥共が」
ナインの背中から吐き出された漆黒の巨龍が咆哮し、巨大な顎で二人を抉り取るように薙ぎ払う!
「ぐはぁぁぁっ!?」
「うわぁぁぁぁっ!?」
砂藤くんと尾白くんが赤い血を噴き出して倒れる。道など関係ない。ナインは一歩一歩、死神の足取りで階段を登りつめていく。
「ぐうううう……ッ! 身体が……壊れていく……!」
ナインの体内で細胞消滅の激痛が跳ね上がった。限界はとうに越えている。だが、生命の維持に必要な「細胞活性」の個性を持つ少年・活真くんの奪取――それだけが彼を突き動かしていた。
ついにナインは山頂の開けた広場へと到達する。
そこには、怯える活真くんと真幌ちゃんを背中に庇う透ちゃん。そして、その前に整然と立ちはだかる二人の青年――白煙くんと黒煙の姿があった。
「ナイン……!!」
「私は初対面ですね。私は黒煙。以後お見知りおきを」
白煙くんが殺気を滾らせて身構える横で、黒煙は優雅に胸に手を当て、寸分の狂いもない綺麗な動作で一礼してみせた。死線を前にしても、その態度は不敵そのものだった。
「誰でもいい……邪魔をするなら死ね。その少年を渡せ!!」
ナインの瞳が怪しく発光する。相手の個性の質や弱点を一瞬で見抜く『個性眼』が発動し、黒煙の肉体構造を透視した。
しかし、ナインの顔から余裕が消え、凄惨な驚愕へと変わる。
「……なんだ、お前は……? 貴様……人間ではないな……!?」
「はい?」
「個性が……意思を持って肉体から独立しているだと!? あり得ない! たとえ煙の性質で自己修復を施していようと、貴様の生命活動は極めて短い! 概念としてあまりにも歪……私以上に脆く、すぐに消え去る儚い存在ではないか!!」
ナインは絶叫した。自らも人工的な実験体として不完全な肉体に苦しんできたからこそ、目の前にいる「黒煙」という存在のあまりの異常さと命の不確定さに、激しい恐怖と嫌悪感を覚えたのだ。
「黒煙……」
「黒煙ちゃん……っ」
命の期限を突きつけられた黒煙を思い、白煙くんと透ちゃんが息を呑む。
だが、黒煙はフッと鼻で笑うと、心底呆れたように肩をすくめた。
「それが何か? 私は透さんを守ればいい、ただそれだけです。……だいたい、ヴィランが戦闘中に敵の素性を知って動揺するなど、お里が知れますね。貴方はヴィランに向いていませんよ。どうです? 今からでも公共職業安定所で就職先でも探しますか? 志望動機は『新世界を作ること』。……おっと失礼、そんな社会性ゼロの不適合者、誰も雇用しませんでしたね」
「キ、サマ……!! どこまでもその減らず口をぉぉぉっ!!」
煽り切られたナインの額に激しい青筋が浮かぶ。
「ねぇ透ちゃん……あれ、本当に僕の半身なのかな?」
「うーん。エンちゃんが本気で怒った時に似てるけど、あそこまで性格悪くはないよー」
「だよね。黒煙って変なところで煽り性能高いんだ」
「「ねー」」
「そこ、陰口を叩くなら黙りなさい。透さんはともかく、ホワイトには言われたくありませんよ」
「「はーい」」
「戯言はここまでだ……!! 命の次などない……ここで全てを終わらせてやる!!」
ナインがバックパックの生命維持装置を全て破棄した。体内の能力が暴走を起こし、ナインの全身から血が吹き出す。
ゴオオオオオオオオッッ!!!!
空が割れた。那歩島全体を覆う超巨大な竜巻が何本も発生し、無数の雷が地上を焼き払い、激しい暴風雨が大気を引き裂く。ナインの全存在を賭けた、終末の気象操作。
「あちらは全てを使いきるようですね。手負いの獣、追い詰められたヴィランこそ最も恐ろしい。……準備はいいですか、ホワイト」
「覚悟なんて、とっくの昔に出来てるよ……ブラック」
白煙くんと黒煙が互いに顔を見合わせる。二人の瞳に、宿命の絆と決意の火花が宿った。
「「透ちゃん/透さんを、守る。それが――僕/私の、オリジンだ!!!!」」
「「白黒融合!!!!」」
シュワァァァァァァッッ!!!!
白煙くんの純白の煙と、黒煙の漆黒の煙が激しく渦を巻き、一つに混ざり合っていく!
それは元々の「一つ」に戻る姿でありながら、互いを補い合い、幾重もの激闘を経て覚醒した『完全体』への昇華。
煙が晴れた中心に立つ一人の青年。
右半身は聖なる白煙を滾らせ、左半身は魔なる黒煙を纏う。互いの戦闘経験、知略、感情が一つに結実した無敵の姿。
「「救煙ヒーロースモークドラフト、参上!!!!」」
「消え去れぇぇぇぇッ!!」
竜巻と落雷を同時に解き放つナイン!
白と黒の煙の翼を広げ、スモークドラフトが超絶的な速度で天へと跳翔する!
島全体の運命を賭けた、本当のラストバトルが始まった!
虚空の死闘――天変地異と白黒の閃光
「「ナイン、お前はここで打倒(たお)す!!」」
「口程もない虫ケラが……!! 消えるのは貴様だァァァッッ!!!!」
ドガァァァァァンッッ!!!!
天を覆う漆黒の暗雲の下、二つの光芒が超高空で激しく衝突した。
スモークドラフトの放つ白煙を纏った右拳と、生命維持装置を破棄し筋肉を肥大化させたナインの右拳。互いの拳が真っ向からぶつかり合い、その余波だけで周囲の雲が同心円状に吹き飛ぶ!
「「むううっ……!」」
「チィッ……押し切れんというのか……ッ!」
互角。命の残り火を極限まで燃え上がらせたナインの全開出力に、融合したスモークドラフトのパワーが完全に拮抗していた。
「「とおっっ!!」」
スモークドラフトは衝撃を利用して空中で身を翻すと、右半身の白煙を瞬間的に噴射! 爆発的な推進力でナインの視界から消え去る。
「速い……!? どこへ行った――」
「「**『ホワイトスマッシュ』**ッッ!!!!」」
背後から放たれた右の白拳が、ナインの顔面を捉える! 衝撃でナインの視界が歪んだ瞬間、今度は左半身の黒煙が爆発した。
「「**『ブラックスマッシュ』**ッッ!!!!」」
「グハッ……!?」
間髪入れずに放たれた左の黒拳がナインの腹部を深く抉り抜く。左右で質の異なる重打に、ナインは猛烈な血反吐を散らして超高空から叩き落とされた!
だが、魔王の執念は折れない。落下しながら死神のような鋭い眼光をケムリンに向けた。
「調子に乗るなァァァッ!! 貴様の弱点は……その不快な『煙』の構造にある!! 吹き飛べ……**『大竜巻(メガトルネード)』**ッッ!!!!」
天変地異の気象操作が暴走する。スモークドラフトを支える白黒の煙を力任せに散らし、本体を剥ぎ取るべく、島一つを呑み込むほどの巨大な竜巻が牙を剥いた!
風に巻き込まれれば、煙は拡散し、スモークドラフトの肉体は維持できなくなる――はずだった。
「「甘い!!」」
ズドォォォォンッッ!!
スモークドラフトの左足から放たれた一撃が、螺旋を描く大風の軸を真っ向から粉砕した!
スライスとの激闘で生まれた焦土、キメラの熱線によって焼き尽くされた森林、そしてナイン自身の雷によって崩落した無人島の瓦礫――。
いまや戦場全体は、無数の「爆炎」「爆煙」「熱風」で満たされていた。
スモークドラフトはその広大な戦場に満ちるあらゆる「煙と熱エネルギー」を、全身の毛穴からリアルタイムで超高速吸引。使えば使うほど、空っぽになる端から戦場の煙を取り込み、瞬時に完全回復を果たしていく!
「なっ……!? 戦闘規模が拡大すればするほど……エネルギーを補給し、際限なく強くなるだと……!? 貴様……人体で循環しているというのか!?」
「「正解!! 花丸をあげよう」」
「ふざけるな……ふざけるなァァァァァッッ!!!!」
ナインの『個性眼』がもたらす解析結果に、ナイン自身が恐怖で顔を歪ませた。
他者の能力を奪い、己の肉体を改造して頂点に君臨しようとした自分に対し、目の前の敵は「戦場そのものを己の肉体の一部」としてエネルギーを自給自足している。あまりにも理不尽で、あまりにも圧倒的な無敵の循環システム。
「奪うことでしか満たせぬお前には……みんなが紡いだこの戦場の熱は奪えない!!うおおおおおおお!!!!」」
「殺してやる……殺してやるぞォォォッ!! ウオオオオオオオオオ!!!!」
空中を縦横無尽に超高速飛翔しながら、二人の死闘は過熱していく!
ナインは指先から連射される高出力ビーム、高密度の絶対防御バリア、全方位へ放たれる衝撃波、そして背中から溢れ出す無数の黒龍を全解放し、猛攻を仕掛ける!
対するスモークドラフトは、白煙の柔軟な回避と黒煙の冷徹な軌道計算により、その絶望的な攻撃の数々を紙一重で叩き落とし、受け流し、破撃していく。
死の嵐が吹き荒れる天空。スモークドラフトは焦らず、確実にナインの肉体が崩壊する「たった一瞬の隙」を冷徹に見定めながら、決着の時を待っていた――!
決着――閃光と奪還の深淵
「グッ……!! ぐあああッ!?」
空中戦の渦中、ナインの肉体を支えていた限界の境界線が崩壊した。
胸を掻きむしり、激痛に顔を歪めるナイン。過剰な負荷に耐えきれなくなった体内の細胞が、一気に死滅へと加速する。その動きが――ほんの一瞬、完全に停止した。
「「融合解除!!」」
シュワァァッ!!
空中で融合を解き、白煙くんと黒煙の二人に分裂!
隙を逃さず、死角から同時にナインへと躍り出る。
「せいやっ!!」
「ハァッ!!」
「「オラオラオラオラオラオラオラオラッッッ!!」」
白煙くんのしなやかで鋭い連撃と、黒煙の冷徹で確実な重打!
左右から絶え間なく叩き込まれる拳、蹴り、肘打ちの嵐。防御の暇すら与えず、ナインの肉体を苛烈に砕いていく。
「調子に……乗るなァァァッッ!!」
追い詰められたナインは、逃げ道を作るべく全身を瞬時に「煙」へと変化させ、攻撃を透過させようとした。
だが――それこそが二人の描いた真の勝利の方程式だった。
「「その瞬間を、待っていた!!」」
二人の心が、思考が、完全にシンクロする。狙いは最初から、ナインが回避のために煙の能力を使ったその一瞬!
「僕の個性……返してもらう!!」
「『個性奪還』!!」
「やめろ……やめろぉぉぉぉぉッッ!!! 私の……私の力を奪うなァァッ!!」
通常、物質ではない煙を手で掴むことなど不可能。しかし、同じ根源を持ち、同じ波動を纏う「煙」であれば――相手の煙を捉えることができる!
黒煙が両手を漆黒の爪に変え、ナインの身体から押し出された煙の因子を力任せに掴み引き抜く!
「ホワイト、受け取れぇぇぇッ!!」
黒煙が奪い返した煙の束を、白煙くんの胸へと力任せに押し込む!
「受け取ったよ、ブラック!!お帰り、僕の大切な個性!!」
オール・フォー・ワンの遺伝子を複製した絶大な「個性を奪う個性」。だが、限界を迎え弱体化したナインに対し、本来の持ち主である白煙くんの魂が勝った。失われていた個性の核が、一気の逆流とともに白煙くんの体内へと戻っていく!
「おのれ……おのれぇぇぇ!! 虫ケラどもが、許さん……許さんぞおおおーーッ!!」
個性を奪い返された絶望と狂気。ナインは血走った瞳で地上を見下ろした。
(奴らの弱点は明確だ……! あの細胞活性化の餓鬼を狙えば、思考は完全に停止する!)
「「しまった!!」」
ナインは急降下! 活真くんの『細胞活性』を奪い、自らを再構築するため、超高速で地上の山頂へと牙を剥く!
「活真!!」
「お姉ちゃん……っ!」
絶望的な速度で迫る死神の前に、必死で立ちはだかる真幌ちゃん。
「「させない!!白黒融合!!」」
ふたたび融合したスモークドラフトが、超高速で真幌ちゃんたちの前に先回りする。だが、ナインの口元には不気味で残忍な笑みが浮かんでいた。
「ハハハッ! 貴様らヒーローの浅はかな思考など、全て織り込み済みだァァッ!! 死ねぇぇぇッ!!」
人命救助を最優先にするヒーローの習性。ナインは先回りすることを見越し、すでに胸腔に極大のエネルギービームを溜め込んでいたのだ!
ドガァァァァァァンッッ!!!!
至近距離から放たれる絶望の極太光線! 逃げ場のないケムリンの肉体が焼き尽くされる――そう思われた瞬間。
スモークドラフトの前に一人の少女が飛び出した。
「そうはさせないよ!!」
「「透ちゃん/透さん!?」」
「エンちゃんを守る!! それが私の……私だけのオリジン!! 『プルスウルトラーー集光屈折ハイチーズ』!!!!」
ズキュゥゥゥィィィンッッ!!!!
絶対的な破壊力を秘めた極太ビームが、透ちゃんの透明な肉体に接触した瞬間――光の屈折率が狂い、ビームが斜め上空へと大きく軌道を変えて逸れていく!
白煙くんと共に戦い、大好きな彼を守り抜くために努力を重ね、己の個性を極限まで磨き続けてきた透ちゃんの執念の技!
「なに……!? 光を……ビームの軌道を曲げただと……!?」
ナインが絶叫する。完璧だったはずの殺戮の計算が、一人の少女の絆によって破綻した。
「「透ちゃん/透さん……きみは、最高のヒーローだ!!」」
「ふふっ、2人もね!! 大好き!!」
「「これで……決める!!」」
スモークドラフトが両手を広げると、焦土と化した島全体の爆炎と爆煙が、津波のようにスモークドラフトの全身へと凝縮されていく。白と黒のオーラが灼熱のエネルギーと混ざり合い、神々しいまでの光輝を放つ。
「私は……私は新世界の神となる男だァァァァッッ!!!!」
ナインが残された全生命力を引き絞り、上空から島を一つ丸ごと消滅させるほどの特大の落雷を撃ち下ろす!
「「『プルスウルトラ/プルスケイオス』――」」
「「**『ダブル、キーック』**ッッ!!!!」」
ズドォォォォォォォォンッッ!!!!
スモークドラフトが大地を蹴った。脚部の爆煙が爆発し、音速を超えて天へと飛翔!
上空から振り下ろされたナインの絶望の雷を、白と黒の双脚が真っ向から叩き割り、引き裂き、穿ち通す!
「グ……ガ……ハッ……!?」
スモークドラフトの渾身のダブルキックが、ナインの腹部へ深く深く突き刺さった。
音速の衝撃波が天空の雲を全て吹き飛ばす。ナインの肉体は折れ曲がり、遥か彼方の水平線の先――深い海へと弾丸のように吹き飛んで落ちていった。
激しい風が止み、那歩島の空に青空が戻ってくる。
手を取り合い、着地した白煙と黒煙、そして透たちの頭上に、温かな太陽の光が降り注いでいた。
救煙ヒーロースモークドラフト
白煙くんと黒煙が融合した姿
最終回ネタでもある
見た目の元ネタは仮面ヒーローのファングなジョーカー
個性を奪い返せたのはナインがかなり弱っていた、同じ個性が2人いて力勝ちしたから、などです
ここだけのオリジナルです