デュエルカフェ ドミノへようこそ! 作:ジェム貯めナイト
きしゃさんとともに、お客の対応のためにレジ前まで向かう。
次の来店客は、仕事帰りの社会人と思われる男性だった。
「いらっしゃいませ。本日はどのようなデュエルをご所望ですか?」
「こんばんは。04環境は可能ですか?」
04環境……?
確か昔の環境でデュエルするんだっけ?
「はい、可能です。デッキも2つ用意してますので、良ければ使いますか?」
「よかった。ではお願いします」
男性の要望に応えると、きしゃさんと2人で席まで案内する。
「ナミコちゃん、04環境のデッキを2つ持ってきて」
「えっと……04環境って、どういうデッキですか?」
「簡単に言うと、04年までに発売されたカードのみで組まれたデッキよ。04環境って書いてあるからすぐ分かるわ」
説明を聞いた私は、カウンターの後ろの棚から目的のデッキを探す。
――あった。
04環境って書いてある。
もう1つ同じデッキを探し、2つを持って男性の元へ戻って来た。
「ありました。これですか?」
「ありがとう。こちらのデッキをご用意しました。内容も確認しますか?」
「はい。……標準的な04環境のデッキですね。十分です」
男性がサラッとデッキ内容を確認する。
「ではお借りします。ガチ対戦希望です」
「了解しました。ではご注文を――」
そして男性からのオーダーを聞き取り、厨房へと向かう。
「アイスコーヒーとオムライスお願いします」
注文を伝えると、ドリンクサーバーからコップにアイスコーヒーを入れてカウンターへと戻る。
「ご注文のアイスコーヒーです」
「あっ、どうも。……それで昔のカードももう一度集め始めたんです」
厨房から戻ると、きしゃさんと男性は会話に花咲かせていた。
「カードプールは増えていきますけど、昔の環境でも遊び続けられるようになるのは嬉しいですね」
「そうですよね! こうして子供の頃を再現できるこのルールが楽しくて仕方ないです!」
カードのシャッフルを終え、お互いに5枚の手札を引く。
「では始めましょう。よろしくお願いします」
「はい。デュエル――」
紗良LP8000 男性客LP8000
「では私の先行です。ドロー」
先行は男性客だ。
現行のルールとは違い、先行でもカードがドローできる。
「魔法カード強引な番兵を発動します。手札を確認させてください」
発動したのは、禁止カード!?
当時は許されていたのね……。
「魔導戦士 ブレイカーをデッキに戻してください」
「いいカードを選びましたね……」
きしゃさんは残念そうに、選ばれたカードをデッキに戻してシャッフルする。
「そしてモンスターをセット。カードを1枚伏せてターン終了です」
まずは裏側でカードを出してターンを終えた。
男性客手札3
場:伏せモンスター
魔法&罠:伏せ1
「静かな滑り出しですね」
「ええ……これが04環境よ。でも現状、情報という面で私が不利ね」
情報……?
きしゃさんの言葉の意味を考える。
「強引な番兵で私の手札は丸分かり。だけど彼がフィールドに出したカードはまだ分からないまま」
「確かに、今何を握っているかが分からないですね」
「そうよ。お互いのデッキ内容が分かっている以上、情報の差というものは大きいわ」
まだ分からない分、警戒するべきカードが多い。
それだけ動きにくくなるってことね。
「だけど巻き返せるわ。私のターンです」
きしゃさんがカードを引く。
引いたカードを確認すると、即座に発動させた。
「今引いた魔法カード苦渋の選択を発動します。……私が選ぶのはこの5枚です!」
デッキを手に取り、5枚のカードを選び出す。
選んだカード:押収 強引な番兵 強欲な壺 ファイバーポッド 増援
「これは難しい――」
まさに相手へ苦渋の選択を強いるカード。
ハンデスするカードと、更なる札を引き込むカードが2枚ずつ。
選ばなかった場合は、それらをデッキに戻しリセットできるファイバーポッドまである。
「――押収を選択します」
「じゃあ押収を手札に加えて、残りは墓地へ。早速使わせて頂こうかしら?」
LP1000をコストに、きしゃさんもハンデスカードで情報と手札を取りに行った。
紗良LP8000→7000
「心変わりを墓地へ送ってください。そしてイグザリオン・ユニバースを召喚します」
召喚されたのは、攻撃力を少々下げる代わりに、貫通効果を得られるモンスターだ。
まずは相手の伏せモンスターを探ろうというわけね。
「バトルフェイズです。イグザリオン・ユニバースで伏せモンスターを攻撃――」
「攻撃宣言時に罠カード炸裂装甲を発動。イグザリオン・ユニバースを破壊します」
だけど、伏せていた罠カードできしゃさんのモンスターは破壊されちゃった。
「……ターン終了です」
「では私のターンです」
紗良手札3
場:
魔法&罠:
「一気に攻めます! 伏せていた異次元の女戦士を反転召喚。更に霊滅術師カイクウを召喚」
男性客は攻めることを選んだみたい。
攻撃表示のモンスターが2体並ぶ。
「この2体できしゃさんを攻撃します」
紗良LP7000→5500→3700
「カイクウが戦闘ダメージを与えたため効果発動。墓地のイグザリオン・ユニバースとファイバーポッドを除外します」
LPがもう半分を切っちゃった……。
「これでターン終了です」
「まだまだこれからです。ドロー!」
男性客手札2
場:異次元の女戦士攻撃力1500 カイクウ攻撃力1800
魔法&罠:
「手札の異次元の女戦士を捨てて魔法カードを発動します! ライトニング・ボルテックス……!」
並べたモンスターを一掃した!
これでまだ、デュエルの行方は分からないわ。
「更にLPを800払い装備魔法早すぎた埋葬。捨てたばかりの異次元の女戦士を特殊召喚します」
紗良LP3700→2900
「続けて首領・ザルーグを召喚。バトルフェイズです!」
今度はきしゃさんが2体のモンスターで直接攻撃を仕掛ける。
「異次元の女戦士、首領・ザルーグで直接攻撃します!」
男性客LP8000→6500→5400
「首領・ザルーグが相手に戦闘ダメージを与えたため効果発動。手札をランダムに1枚墓地へ送ります」
男性客が握る手札2枚のうち、右のカードを選択した。
「くっ……早すぎた埋葬が――」
男性客は渋々と手札1枚を墓地へ送る。
「ターン終了です」
「では私のターン。……先程のお返しといたしましょう」
男性客が発動したのは、ライトニング・ボルテックスだ。
「手札の激流葬を捨てて、異次元の女戦士と首領・ザルーグを破壊します」
「激流葬をですか――」
「ええ。モンスターが並んだ後に引いても意味ないですから」
きしゃさんのフィールドからモンスターが一掃された。
激流葬を捨てた理由も、理にかなっている。
「ターン終了です。お互いに手札0……あとはドロー次第ですね」
「カードの引きで負けるつもりはありません。ドロー!」
男性客手札0
場:
魔法&罠:
「霊滅術師カイクウを召喚します」
先にモンスターを引き当てたのはきしゃさんだ。
「……トップ解決ですか。やりますね」
「バトルフェイズ! カイクウで直接攻撃します!」
男性客LP5400→3600
「カイクウの効果。異次元の女戦士とカイクウを除外。ターン終了です」
「まだ分からない。引いて見せる! 私のターン!」
紗良手札0
場:カイクウ攻撃力1800
魔法&罠:
「――来ました。装備魔法強奪をカイクウに装備!」
「なっ……!?」
「――装備したことで、カイクウのコントロールを得ます」
きしゃさんのモンスターが奪われた!
1枚で形勢が逆転する。
これもこのルールでの特徴なのね。
「バトル! カイクウで攻撃! 効果で女戦士と首領・ザルーグを除外します」
紗良LP2900→1100
「……そろそろマズいわね」
「このまま押し切ります! ターン終了」
男性客手札0
場:カイクウ攻撃力1800
魔法&罠:強奪
「私のターンです」
「相手スタンバイフェイズに強奪の効果。LPを1000回復して差し上げます」
モンスターを奪った代償として、きしゃさんに1000LPが与えられる。
紗良LP1100→2100
「カードを1枚伏せてターン終了です」
「では、ドロー」
紗良手札0
場:
魔法&罠:伏せ1
「……ここはターン終了です」
「攻撃、しないのですね?」
きしゃさんが聞き返すも、男性客は表情を取り繕っている。
「時には慎重になることも大事ですから」
伏せカードを警戒したのかしら?
ドローカードだけじゃ解決できないみたいね。
「では私のターンです」
男性客手札1
場:カイクウ攻撃力1800
魔法&罠:強奪
「再び強奪によってLPを回復します」
紗良LP2100→3100
「メインフェイズに罠カード発動。砂塵の大竜巻!」
「……どのみちダメでしたか」
「攻撃を躊躇してくれたおかげで、1000多く回復できました。強奪を破壊し、カイクウが戻ってきます」
デッキ内容を知り尽くしているだけに、警戒しすぎちゃったみたいね。
「バトル! このカイクウで直接攻撃します!」
男性客LP3600→1800
「ターン終了です。遂にLPが逆転しましたね」
「いいえ、ここから巻き返してみせますよ」
男性客はそう言ってデッキへ指をかける。
プルルルル――。
その時、厨房からの連絡が入る。
「料理ができました。少々お待ちください」
見学を中断し、自分の仕事へと戻る。
04環境――今の遊戯王に慣れた私にとって、新鮮な刺激だった。
同じデッキを使うため、純粋な実力が問われることになる。
デュエルの流れは緩やかながらも、カード1枚で戦況がひっくり返ったりして面白いな。
「右が2番テーブルのお客様のだ」
「はい。行ってきます」
厨房スタッフの相馬さんからオムライスを受け取った。
そのままきしゃさんと男性客の元へと戻る。
デュエルはまだ、終わっていなかった。
私は料理を手に、決着を見届けるべく2人の元まで戻ったのだった。