デュエルカフェ ドミノへようこそ! 作:ジェム貯めナイト
面接デュエルを経て採用された次の日。
放課後になると妹のミコと合流し、デュエルカフェ ドミノへと出勤する。
「ナミちゃん、緊張してる?」
従業員用の勝手口に来ると、妹が声をかけてきた。
「……少しね」
初めての接客業。
お客に喜んでもらえるかまだ自信が無い。
「大丈夫! 初日はまだ研修だし、お客さんは優しい人ばかりですぐ慣れるよ!」
そう言うと、妹は鍵を開けてもらうためインターホンを押した。
「ミコちでーす!」
「はい。今開けます」
そのまましばらく勝手口の前で待つ。
しばらくして鍵が開けられる音とともに、ドアが内側にゆっくりと開いた。
「おはようございま~す!」
挨拶する妹に続き、私もお店に入る。
「ミコちさんおはよう。そちらは新人の方ですね?」
オーダースーツに身を包んだ若い男性の問いかけに、私は頷いて答えた。
「経理の白石です。早速だけど、出勤カードを打刻したら着替えてホールに向かってください」
「はい。分かりました」
白石さんに案内され、妹とともにスタッフルームへと向かった。
「あっ! そうだ白石さん! 来週のシフトですけど……」
「決まりましたか? 帰りにまた伺いますね」
妹と白石さんが自然に会話していた。
バイトとの関係も良好みたいだし、働きやすそうなお店に感じた。
そして入り口近くにある出勤カードを打刻する。
「制服は色々種類がありますから、好きなのを選んで大丈夫です」
「私が教えるねっ! 行こっナミちゃん」
妹に手を引かれ、更衣室へと2人で入る。
思ってた以上に、制服の種類が多い。
――けど、私が着るのならこれかな。
「お待たせしました」
着替え終わり、更衣室から出ると、スタッフルームでは秋月さん――きしゃさんが一息ついていた。
「――あら、よく似合っているわよ」
私と妹の姿を見て、笑みを浮かべてそう言ってきた。
「お揃いがよかったのに……」
「こっちの方が気に入ったの」
妹は私が選んだ制服に不満があるようだ。
妹みたいに、キャラを作るのは性に合わない。
だから妹が着ているレースがたくさんついたエプロンドレスとは違い、ゆや君が着ているようなカッチリとしたスーツに袖を通した。
「それでは早速向かってください」
「は~い! 私が教えます!」
妹が新人の私の教育係を申し出た。
まだ不安だけど、初めての仕事も、妹の教えならすぐに覚えられる気がする。
「いよいよ初仕事――頑張ろう」
休憩するきしゃさんに代わって、私と妹がホールへと向かう。
ホールに入るとすぐに、入口の方から来店を告げるチャイムが聞こえてきた。
「こんにちは~」
来店したのは、他校の制服を着た男子学生だった。
初めてのお客さんだ。
うまく接客できるかな……?
「いらっしゃいませ~!」
接客中に出す甘く弾む声で妹が呼びかける。
普段は聞かない声で少し新鮮だ。
私はともかく、妹も少し声が震えていた気がした。
自分も入ったばかりなのに、いきなり新人教育を任されるとは思ってもいなかっただろうな。
「……もしかして姉妹ですか?」
男子学生は、私に話しかけてきた。
「えっと――」
「はい! お姉ちゃんの方は、今日が初めてなんですよ~!」
言葉に詰まる私を察して、妹が助け舟を出してくれた。
妹が私の腕にギュッと抱き着き、姉妹だとアピールする。
「そうなんです。ナミコといいます」
「ミコはミコちだよ~。それではご案内します~」
妹にリードされる形で、男子学生を席へと案内する。
「ご注文はいかがなされますかぁ~?」
「えっと、今日が初めてなんですけど……」
「じゃあ簡単に説明するねっ! デュエル前にまず、ドリンクかフードは注文してね!」
妹が念押しするようにメニュー表を差し出す。
「じゃあショートケーキと、オレンジジュースを」
「OK~。そしたらガチかカジュアルかを選んで、対戦したいデッキがあれば言ってね」
「――お任せもできますか?」
「もちろん! デッキなら一通り揃っているから、いくらでも合わせられるよ~!」
「じゃあカジュアルで! アニメ遊戯王みたいなデュエルがしたいです」
「了解~。じゃあお姉ちゃん、ケーキは厨房スタッフに頼んで、ドリンクを淹れてきて」
妹と男子学生の会話を聞いて、改めて仕事の段取りを確認する。
「うん、分かった」
焦らなくていい。
言われたことを着実にこなせば大丈夫。
注文のメモを取り、男子学生の注文を厨房まで伝えに向かった。
「ショートケーキ、お願いします」
調理台を拭いていた相馬さんへとメモを渡す。
「今日からの新人だな」
受け取ったのは、バイトの大学生さんだ。
「……きれいな字だ。見やすくて助かるよ」
彼は私が書いたメモにさっと目を通し、ケーキを作り始めた。
「あっ、ありがとうございます」
その一言だけで、少し肩の力が抜けた。
私もドリンクの用意をする。
ドリンクサーバーからコップに注文されたオレンジジュースを注ぎ入れた。
トレイに乗せ、ホールへと戻る。
「ご注文のオレンジジュースです」
「あっ、戻ってきた! じゃあミコの接客デュエル見せてあげる!」
妹はシャッフルしたデッキをテーブルへと置き、男子学生とともにデュエルの準備を整えていた。
接客デュエルが始まる――。
妹を見て早く覚えないと。
そう思い観察していると、ふとあることに気付く。
見覚えがあるスリーブだ。
もしかして、いつものあのデッキなの……?
「それじゃ、始めるよっ! デュエル――」
妹がデュエル開始を告げる。
こうしてデュエルカフェでの接客デュエルが始まったのだった。