デュエルカフェ ドミノへようこそ! 作:ジェム貯めナイト
デュエルカフェでのバイト初日。
妹のミコが接客デュエルをしているカウンター席に、注文の品を持って向かう。
「お待たせしました。ご注文のケーキです」
「あっ、どうも……」
お客の男子学生は返事を返しつつも、盤面と手札を見ることに集中していた。
店員との真剣勝負で、流石に食べる余裕もなさそうね。
ミコ 手札1 LP5200
場:ヴァレルソード攻撃力3000
フィールド:リボルブート・セクター
魔法&罠:ヴァレル・サプライヤー 伏せ1
男子学生手札6 LP6000
場:ジャイアント・オーガ攻撃力3000 ツイストコブラ守備力0
魔法&罠:
「僕のターン! ドロー!」
「もう一度ヴァレル・サプライヤーの効果で、墓地のシルバーヴァレットを蘇生するよっ!」
先程破壊されたシルバーヴァレットが再び蘇る。
発射した弾丸が装填されたかのように――。
「更に墓地のデリンジャラスも特殊召喚!」
「なら僕は、手札の剛鬼マシン・スープレックスと剛鬼ライジングスコーピオを特殊召喚します」
またしても、剛鬼の展開が始まっちゃった。
「再び剛鬼再戦を発動! 墓地からスープレックスとヘッドバットを特殊召喚」
「じゃあここで、ヴァレルソードの効果発動! 対象となったシルバーヴァレットは発射! EXモンスター1体を除外させてもらうよ?」
再び銃と弾丸を思わせるヴァレットのギミックを使ってきた。
シルバーヴァレットは破壊され、彼のEXデッキを確認する。
「どうしよっかな~、じゃあ剛鬼ザ・パワーロード・オーガを除外するね?」
「……だけど、まだ僕の展開は終わっていない!」
男子学生はEXデッキからカードを抜きだす。
ここからも長くなる予感――。
「3体で剛鬼サンダー・オーガをリンク召喚!」
「ええ~? せっかくのリンク4なのに……」
妹の言う通りだ。
わざわざリンク4を使うなんて……。
「意味ならあります。いずれ分かりますよ。墓地へ送られた2体の効果で、デッキからスープレックスとムーンサルトを手札に加える」
そして彼は、サンダー・オーガのリンク先となるフィールドを示して更にモンスターを置いた。
「サンダー・オーガの効果で、リンク先に剛鬼マンジロックを召喚します。そしてこの2体で剛鬼ザ・マスター・オーガをリンク召喚します」
再びリンク4のモンスターがEXモンスターゾーンに現れる。
――なるほどね。
リンクマーカーの向きからして、EXモンスターゾーンに置かないと効果を発揮できないモンスターだ。
「更に効果で2体目のツイストコブラを手札に。もう一度スープレックスを召喚し効果発動。手札から剛鬼ムーンサルトを特殊召喚し効果発動!」
「……マジな顔じゃん。回すねぇ~」
妹が真剣にカードを動かす彼の様子に茶々を入れた。
長々とした展開にも、リアクションを返すのがサービスとでも言いたげね。
「そして2体で剛鬼ジェット・オーガをリンク召喚し、墓地へ送られた剛鬼の効果でマンジロックとヘッドバットを手札に加える。そしてリンク召喚!」
4体分のリンク素材を使い、EXデッキに戻したジャイアント・オーガが再びフィールドへ現れる。
「現れろジャイアント・オーガ! ジェット・オーガの効果で僕のフィールドにいる剛鬼の攻撃力はこのターン500アップします!」
「攻撃力は3300と3500……!?」
「更に永続魔法剛鬼闘魂を発動し、手札のマシン・スープレックスを特殊召喚。更に魔法カード剛鬼フェイスターンで剛鬼闘魂を破壊し、墓地からサンダー・オーガを特殊召喚です!」
次々と剛鬼が現れ出てくる。
だが、このターンの展開にもようやく終わりが見えてきた。
「コストを払い手札からヘッドバットを特殊召喚。2体で剛鬼デストロイ・オーガをリンク召喚。ヘッドバットの効果で最後の剛鬼再戦を手札に加えます!」
ようやく展開が終わった。
フィールドにはマスター・オーガ、ジャイアント・オーガ、デストロイ・オーガのリンク4モンスター3体に、マシン・スープレックスとヘッドバットまでいる。
「やばっ……リンク4勢揃いじゃん!」
「バトル! マスター・オーガは相手モンスターすべてに攻撃できる!」
このままじゃミコのモンスターは全滅してしまう。
「――攻撃?」
だが、妹は突如伏せていたカードに手を掛けて高らかに宣言した。
まさか――。
「底知れぬ絶望の淵へ沈めっ……!」
でた、リボルバーの名ゼリフ。
伏せていたカードが開かれる。
「罠カード、聖なるバリア -ミラーフォース-! 相手フィールドの攻撃表示モンスターすべてを破壊するよっ!」
妹の指がなぞるように男子学生のフィールドに並んだモンスターを指し示す。
よし! このまま通れば――。
「リンク先の2体を手札に戻してマスター・オーガの効果発動! ヴァレルソードとミラーフォースの効果を無効にする!」
「ええっ!? そんなぁ~!」
せっかく発動できたのに、効果を無効にされて墓地へ送られた。
「余程思い入れがあるカードのようだね」
「あっ! 分かりますぅ~? アニメで見てこのカード強いんだってなっちゃいました♪」
妹はミラーフォースのカードを自慢げに見せる。
「このミラーフォースも、初めて買ったリボルバーデッキのでぇ~」
「へぇ~、ミラーフォースといえば、あの回の盛り上がりは凄かったってこと知ってる?」
「もち! あれを見てこのカードとデュエルしたいってなったんだ!」
デュエルの合間にも、カード談義に花を咲かせている。
実際、ミコの部屋には初期版の貴重なミラーフォースが飾られているくらいに、熱中し入れ込んでいる。
発動には失敗したけど、カードそのものがお客との話のネタとして成立しているわね。
「――続けるよ? マスター・オーガですべてのモンスターに攻撃!」
ミコLP5200→4900→3200
「ううっ……全滅――」
「続けてジャイアント・オーガでミコちさんを直接攻撃! これで終わりです!」
ジャイアント・オーガの攻撃力は3500。
このまま受ければミコの負けだ。
「攻撃宣言時に手札のチェックサム・ドラゴンの効果発動っ! 守備表示で特殊召喚して守備力の半分だけLPを回復するよ!」
手札から出した壁モンスターが代わりに破壊され、何とかこのターンを凌げた。
ミコLP3200→4400
「じゃあ残るデストロイ・オーガで直接攻撃!」
ミコLP4400→1600
「これでターン終了。この布陣にどう立ち向かいますか?」
「まだまだ! シルバーヴァレットとエクスプロードヴァレットの効果発動だよ! ヴァレット・デトネイターとヴァレット・トレーサーを特殊召喚!」
新たに2体のヴァレットがフィールドに出た。
次のターンになれば。また剛鬼の展開が始まる。
――このターンが正念場みたいね。
ミコ手札1
場:デトネイター守備力2500 トレーサー攻撃力1600
フィールド:リボルブート・セクター
魔法&罠:ヴァレル・サプライヤー
「ミコのターン! ……これなら!」
果たして、逆転のカードは引けたかしら?
「ヴァレット・シンクロンを召喚し、効果発動。墓地のアブソルーターを特殊召喚するよ!」
「レベル合計は8……!」
「ミコはアブソルーターとヴァレット・シンクロンで、ヴァレルロード・S・ドラゴンをシンクロ召喚!」
早速シンクロ召喚。
新たなヴァレル・ドラゴンだ。
「S召喚したS・ドラゴンの効果! ヴァレルロードを墓地から装着!」
墓地のヴァレルロードが装備カードとして装備され、ヴァレルカウンターが4つ置かれる。
これを取り除けば無効効果を使用できる。
「アブソルーターの効果でマグナヴァレットを手札に。そしてデトネイターの効果で装備状態のヴァレルロードを特殊召喚! ……ただし攻撃と効果は封じられる」
「これでヴァレルが2体――」
「更にぃ! デトネイターとトレーサーでソーンヴァレル・ドラゴンをリンク召喚! 手札のマグナヴァレットを捨てて効果発動! 破壊するのはぁ~」
妹は呼び出したばかりの自らのモンスターを指し示した。
「ヴァレルロードを破壊! そしてそのリンクマーカーの数と同じ4体のヴァレットを墓地から特殊召喚するよっ!」
「一気に4体も……!?」
ヴァレットを知り尽くした妹のプレイングは、まだ終わらない!
「ミコは3体のモンスターでヴァレルガード・ドラゴンをリンク召喚!」
モンスター3体を使い、現れたのは更なるヴァレル・ドラゴン。
「ヴァレル・サプライヤーを墓地へ送ってヴァレルガードの効果発動! このターンに破壊されたヴァレルロードを特殊召喚!」
さっきのヴァレルロード破壊がここで生きてくるのね!
「残るヴァレット2体でヴァレルロード・X・ドラゴンをエクシーズ召喚! X素材を使ってX・ドラゴンの効果! マスター・オーガの攻撃力を600ダウン! 更に墓地のヴァレルソードを特殊召喚……!」
ようやくミコがカードを動かす手を止めた。
リンク4のヴァレル3体に、シンクロとエクシーズのヴァレルまで揃えちゃうなんて!
「なんて展開力だ……」
「バトル! ヴァレルソードでジャイアント・オーガを攻撃! この時ヴァレルソードの効果発動!」
前のターンのように、ヴァレルソードの攻撃力は4500に上がり、ジャイアント・オーガの攻撃力は1500に下がる。
「ジャイアント・オーガの効果発動! 攻撃力を1000アップさせます! さらに戦闘では破壊されない!」
「だったらヴァレルロードの効果も発動! 攻撃力を500ダウン!」
「くっ……手札のマンジロックを捨てて効果発動! 戦闘ダメージは半分になる!」
お互いに効果の応酬が交わされ、ジャイアント・オーガの攻撃力は何度も変動する。
しかし足りない。攻撃力は覆らない。
男子学生LP6000→4750
「続けてS・ドラゴンでジャイアント・オーガを攻撃!」
男子学生LP4750→3750
「S・ドラゴンを守備表示にしてヴァレルソードの効果! このターン2回攻撃できる! もう1回ジャイアント・オーガを攻撃!」
「くっ……」
男子学生LP3750→1250
「X・ドラゴンで攻撃! ……戦闘で破壊されないことが仇になったね」
「そのセリフは、僕を倒した時まで取っていて欲しいものですね」
すでに勝敗は見えているけど、彼は余裕を崩そうとしない。
そっか、乗っているんだ。
妹に要望したアニメのような駆け引きがあるデュエルに――。
男子学生LP1250→250
「分かってきたでしょ? デュエルカフェでのデュエル――」
ミコの言葉に小さく頷く。
お客の提示したシチュエーションを演じきってデュエルする。
それが妹の提供するエンタメなんだと――。
「最後だよっ! ヴァレルロードでジャイアント・オーガを攻撃っ!」
ジャイアント・オーガの攻撃力は2000。
ヴァレルロードの攻撃で決まりだ。
「天雷のヴァレル・カノン……!」
妹が攻撃名を叫んだ。
その宣言とともに、男子学生は悔しげな表情で対戦への感謝を告げる。
「……ありがとうございました」
男子学生LP250→0
「やった! 対戦ありがとう~♪」
妹はその場で軽くお辞儀をし、お互いを称える形になった。
「デュエルが終わったら、店員さんとチェキも撮れるよ? どうするぅ?」
「お願いします! 今日は楽しかったです!」
彼もすっかり妹のデュエルに魅せられたみたいだ。
カードを片付け、お店のインスタントカメラで2人の写真を撮る。
「はいっ、どうぞ!」
プリントした写真にサインを書き込み、男子学生へと渡す。
「ここまでがデュエルカフェでの接客ねっ! お姉ちゃん大丈夫?」
「うん――大体流れは分かった」
初めて見たデュエルカフェでの接客デュエル。
お客を盛り上げる会話を途切れさせないようにしつつ、デュエルも手を抜かない。
言うのは簡単だが実際は難しそうだ。
「ではゆっくりおくつろぎください~。……じゃあお姉ちゃん、次はあっちの接客デュエルも見て学んでいこ~!」
妹が指した方向では、ゆや君と男性客がデュエルを始めようとしていた。
これも学びだと、私は仕事に戻る妹と別れて、2人が対戦するカウンターへと見学に向かうのだった。