暗闇の中、男が革張りの椅子に腰かけデスクに用意されていたコードフォンに手を伸ばし、ボタンを押す。
同時にパソコンの画面が付き、映像が再生される。
『コードナンバー:4、ミッションレコード。
見滝原におけるミッションの経過、及び収集した情報に関して報告する』
画面にエージェントの指輪に刻まれているのと同じ数字が浮かび、次いでノクスナイト視点での魔女との戦闘映像が映し出される。
『見滝原にて起こっている行方不明や不審死、不慮の事故といったブラックケースのほとんどの原因は魔女と呼称される存在によって引き起こされていることは間違いない』
映像が切り替わり、まどかと共に仁美に誘われ廃工場に向かう映像が映った。
カメラの視点が仁美の首筋を大写しにする。
『魔女とは特殊な結界を展開し口付けと呼ばれるマーキング、または使い魔と呼ばれる分裂体を用いて人間を自らの領域に呼び込み絶望の悪夢へといざなう』
映像はそのまま続き、人間を操り集団自殺をさせようとする映像が映る。
『魔女の叶える悪夢の傾向とその手口に関しては別途資料にて述べさせていただく。
任務開始当初、魔女の発生原因は不明であったが幾度目かの交戦にて有力な情報を得ることに成功した』
「他人の縄張りで勝手に暴れた挙句にあと4、5人食わせれば魔女になったってのに。
グリーフシードを取りそこなったじゃんか。
どうしてくれんだよ、ご高潔な正義のエージェント様?」
『魔法少女。
魔女と対を成すキュウべぇと呼ばれる存在と契約した少女が変貌する希望を叶えた者。
契約内容は個々人により差があるが、概ね何か少女一人ではどうしようもない問題を解決、解消することを願い魔法少女へと変貌していると推察される。
詳しくは、反不可知のイレギュラーキュウべぇに関する資料、及び巴マミ、暁美ほむらの手術入院時期と判明した限りの魔法少女としての活動期間に関する資料を参照いただきたい』
画面にマミ、ほむら、杏子、さやかの紋切り型のプロフィールが一瞬表示され、すぐに画面がノクスナイトの視点での使い魔との交戦記録に変わる。
『魔法少女は我々より詳細な魔女と使い魔に関する情報を持っていた。
それは多くの悪夢を叶えた使い魔は分裂元の魔女へと変貌しまた使い魔を造るということだ。
魔女と交戦する際は、可能な限り結界内に使い魔を止め主を失った魔女結界諸共倒す方法を模索するべきと考える』
画面がまた変わり、4人の魔法少女の静止画が表示される。
『魔法少女になった者は、必ずソウルジェムと呼ばれるアイテムを装備する。
これはエージェントのライセンスに等しい働きをするものであり、後述の魔法少女の特性と合わせて考えると魔法少女にとって第二の肺や心臓と言い換えてもいいアイテムである』
映像が切り替わり、杏子が自分のソウルジェムをグリーフシードで浄化する姿が映る。
『ソウルジェムは魔法の使用、精神の変化などで徐々に穢れていき、魔女の卵であるグリーフシードで浄化する必要がある。
グリーフシードの数は当然魔女と同数であるため、魔法少女は必然的に自身の力と命を維持するために縄張りを持つ。
時には縄張りを広げるために魔法少女同士で戦闘になることもある』
マミと対峙するほむらの映像が挟まれ、次いで落ち込み切ったマミの映像に変わる。
『そして満足な量のグリーフシードを確保できず、ソウルジェムが濁り切った者は魔女へと変貌……正確には濁り切ったソウルジェムはグリーフシードに変貌し、魔法少女の肉体が生体活動を停止する。
キュウべぇに事実確認を行ったところ、この現象はソウルジェムの仕様といってもいいらしく、キュウべぇが何か魔法少女に目的を秘匿したうえで奇跡に見合う対価を得ていると考えられる。
その他、戦闘ログ及び使用中の装備の所管に関しては別に報告させていただく。
報告は以上、ミッションを継続する』
記録が終わると男はパソコンを閉じてコードフォンを手に取りどこかに通信を始めた。
「私だ。ああ、見滝原に風見野も神浜やあすなろ、ホオズキと同様インキュベーター案件であったことが4の報告で確定した。
8の訓練のペースはもう少し速める。
今までのやり方では全てのブラックケースに対処できない。
マギウス案件に関しては、やはり3に全権をゆだねる形になりそうだ。
分かっている。当然ゼッツ計画は急がせる。
1と2は?そうか。分かった。ではその分……」
男は矢継ぎ早に指示を飛ばすと、革靴を鳴らして退室する。
極秘防衛機関『CODE』に休みはなさそうであった。
See you next mission.