戦っている敵の正体を知る。
その為にはじめて現実でのパトロールを行ってみた俺だが
「……そううまくは行かないな」
少なくとも学校は東京からの転校生が隣のクラスに来たこと以外は特に何か変わったことはなく、通学路の途中にある大型ショッピングモール内も何かわかりやすく事件が起きている気配はない。
(一応通学路の範囲とは言え、ざっと見て回ったが特に異常なし。
コードフォンにも特に新しいミッションは来てない。
やはり連中に接触しようと思ったら夢に入ってから探すか、警察のデータベースを洗う方が速いか?)
夢に入るというのは、俺がナイトインヴォーカーを装着しながら眠ることで行える特殊な状態のことだ。
明晰夢の予知夢の中に入った俺は夢を介してある程度現実に干渉することが出来る。
昨晩みたいに怪獣共の出現場所が分からない場合もあるので、その時は警察に潜入して交通事故の発生率の高い場所などを調べてから連中の出そうなところを探して見つけているのだ。
(だが今から夜までとなると時間がもったいなさすぎるな。
実家暮らしだからあんまりに早く寝すぎると普通に心配されるし、外で寝るわけにも……)
などと考えていると、同じ見滝原中学の制服を着た桃色の髪の少女とすれ違った。
(確か去年同じクラスだったシカメ……じゃない、
一切の躊躇なく工事中で立ち入り禁止になっているエリアに向かおうとする彼女を俺は追いかけることにした。
例の怪獣共の中には人間を夢現な状態にして自身のテリトリーに引き込んで食おうとするタイプもいる。
あそこまで直接的な行動をとらせるのは珍しいが、もしかしたらということもあるかもしれない。
俺はイレイスカプセムを片手に後を追う。
案の定、鹿目は立ち入り禁止エリアの奥に入っていた。
「どうやら寝る時間まで退屈しなさそうだ」
俺はナイトインヴォーカーを装着する。
するとサラリ、と俺の視界の端に白い髪が一房垂れてきた。
首から下も白いズボンにジャケット、黒いシャツに襟に派手な飾りのついたエージェント衣装になっていた。
(……寝巻の時は変わらないのに昼間だと変わるのか?)
今まで一度も起こらなかった変化に少し戸惑いながら彼女の後を追う。
しばらくすると、周囲の景色が何とも形容しがたい空間に塗り替わっていく。
(やっぱり怪獣共の悪夢に侵食されているか)
俺はブレイカムバスターを構えて怪人共を撃ちながら進んでいく。
実際の身体を動かして戦うのは初めてだが夢の中と同じように動ける。
ナイトインヴォーカーを装着しているからだろうか?
(こいつらに大体共通してた特性は夢で見たのとそう変わらないな)
悪夢で寝食し、そこに人間を誘い込み、怪人を使役する怪獣がいる。
「今日のも今までのも、俺の正夢とかじゃあないよな」
そんなことを考えながら進んでいると、見覚えのある後姿を見つけた。
(鹿目に……あっちの短い青髪は
いつの間にか二人に増えた彼女たちは怪人たちに囲まれていた。
仕方ない、今回は俺が俺自身に指令を下すとしよう。
<イレイス!>
「擬装!」
カプセムを回して擬装を実行しながら飛び出す。
<インヴォーク!ナイトシステム!イレイス!>
擬装完了と同時に攻撃を受け止め、返す刀で切りつける。
「『
「新しいの来たと思ったらしゃべった!」
「早く逃げろ。ここはどこも安全じゃない!」
俺の声に美樹が鹿目の腕をつかんで、先ほど何体化倒したことで空いた包囲の穴を潜り抜けて走り去っていく。
何体かは二人を追いかけようとしたが
「お前たちの相手は俺だ」
俺はその背中を容赦なく撃ち抜いた。
仲間がこうもやられたとあって怪人共は物量頼みでこちらを圧倒しよとしてくる。
「集まってくれるなら好都合だ」
<ランチャーモード!>
形態を切り替えたブレイカムバスターを片手に俺は飛び上がる。
そしてカプセムソケットにイレイスでもバリアーでもない俺の手持ちのカプセムの中で唯一戦闘に向かなそうな名前のカプセムをセットする。
<リカバリー!>
待機音を待ってカプセムを回転。
俺は連中が集まる場所の大体中央に向けて銃撃を放つ。
<ブレイカムキャノン!>
攻撃は悪夢空間の地面を貫いて大穴を開けると、そこに怪人たちは重力に従って落下していき、瓦礫だけが録画の巻き戻しの様に重力に逆らって再び集まり始める
俺が着地する頃には完全に元の地面に戻っていた。
「さて、鹿目たちは……ん?」
向かおうとした俺だったが、悪夢が崩れ始めているのを見て、元来た道を引き返した。
悪夢の外に出ると、俺は立ち入り禁止のエリアから外に出る。
(悪夢が消え後言うことは、夢主である怪獣が倒されたということ。
もし何らかの理由で自滅したわけでないなら、ノクスナイトと同等の力を持った何かが居るということになる)
鹿目と美樹が無事かつ最後まであの中に残っていた前提の話だが、変数と共に出てくる可能性は十分ある。
そう考えた俺はモールその物の出口に行こうと思ったら必ず前を通るCD屋の中に入り、視聴ブースや棚を眺めるふりをしながらガラス越しに通路が見える位置に立った。
しばらく待つと鹿目に美樹、そして先輩らしき見滝原の女学生が三人連れ立って歩いて来た。
俺はコードフォンでメールをチェックするふりをしながらその横顔を撮影して店を出る。
このガジェットの性能なら多少荒くても簡単な編集ですぐに見れる物にすることが出来る。
「変数は彼女か」
俺は早速今晩学園と、通院歴入院歴が有ればだが病院の方も調べることを決めてその日は家に帰った。
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先日夢の中で調べた情報を頭で反芻しながら俺は校門の脇で
確か、一年生の時と変わっていなければ鹿目、美樹、それから
俺は彼女たちの到着を待って、背後を付けるように下駄箱に向かう。
そして、彼女たちが外靴を脱いだタイミングで声をかけた。
「鹿目まどかさん」
「え?」
「ん?」
上履きを取り出したばかりの二人がこちらを振り返った。
俺は彼女の瞳をまっすぐ見て言う。
「去年同じクラスだった小鷹賢政です。
覚えていますか?」
「うん。確か、富士見君や
「とても大切なお願いがあります。
どうか、話だけでも聞いてくれませんか?」
嘘は言っていない。
だが、誤解を与えやすい言い回しをあえて選んでいるのは否定しない。
鹿目の柔らかそうな頬が桜色に染まる。
「え、ええ~!?そ、それって……」
「今は、あまり時間がないので放課後にお時間を戴けませんか?」
少し推しが強いか?とも思ったが、鹿目は
「う、うん。じゃあ、放課後に……」
と、了承してくれた。
俺は場所を屋上に指定すると、頭を下げて自分の靴箱に向かう。
背中越しに美樹が「さっきの去年同じクラスだった小鷹だよね?まどかやるぅ~!」なんて声が聞こえてくる。
去年一年仲良くも悪くもないなりに重ねた会話を思い返す限り、子の誘いを彼女が断ることはあり得ない。
一人で来いとは言っていないし、彼女がその気でも他の誰かが勝手に来る可能性はあるが、ひとまず大丈夫だろう。
「『
すでに視界の絶妙に外から感じるチクチクとした視線を覚えながら俺は放課後を待つことにした。
〇エージェント道具解説。
・リカバリーカプセム
…回復の力を司るカプセムだ!
『この俺、コードナンバー:4がブレイカムバスターの必殺技に使うカプセムだ。
物体の修復や怪我の回復が可能だが、恐らく失った命までは戻せないだろうな……』