鹿目まどかにとって、小鷹賢政はそこまで意識したことのない同級生だった。
去年同じクラスだったので運動会や文化祭などで全く関りがなかったわけでもないが、特段悪いイメージもない程度だった。
知っていることと言えば、一回目の席替えで前後の席になった富士見と仲が良くて、運動や勉強は人並み以上に出来たくらい。
だから二年生になってしばらくたった今日、ものすごく真剣な様子で放課後に屋上に呼び出された時は本当に驚いた。
「俺はノクスナイト。
『組織』よりコードナンバー:4を与えられたこの世の悪を撲滅するエージェントだ」
そして彼の告白は想像とは全く違う方向からの物だった。
まどかとさやかが魔法少女の存在を知ったあの日、巴マミとはまた別で自分たちを助けてくれた胸にベルトを巻いた銀色の戦士。
彼がノクスナイト……賢政が擬装した戦士だったのだ。
「小鷹があの胸にベルトの人だったの!?
あんにゃろ~、まどかの純情を弄びよってからに!」
「確かに男の子としていただけないわね」
「私は気にしてないよ、助けてくれたことには違いないし。
それに大勢人がいる中で話すわけにもいかなかったことだし」
「まどかは人が好すぎるよ。
あの魔法少年だかなんだか分からないのに……ん?
てかキュウべぇ、男の人はキュウべぇと契約できないんだよね?
なんで小鷹はあのコミックの超人みたいなのになれたの?」
「残念ながら答えてくれなかったよ。
ただ前後の発言から察するに、彼を使っている組織が開発したとみるのが妥当じゃないかい?」
「そっか。じゃああのベルトがあれば、誰でもあの銀色のになれるのかな?」
「僕としてはノクスナイトの製造元よりも僕と契約してほしいけどね」
現在まどか、さやか、マミ、そしてキュウべぇの三人と一匹は街中をパトロールしていた。
マミの魔法少女としての活動を見学するためだ。
「普段はこうやってソウルジェムの反応する方に進んでいって……」
マミは未来の後輩になるかもしれない窓形に親切に説明してくれている。
だがまどかは全く聞いてないという程ではないが、脳裏にどうしても暁美ほむらや小鷹賢政の姿がちらついた。
暁美ほむら。
突如転校してきた謎の高校生。
小鷹賢政。
去年同じクラスだった普通の男の子。
険悪な邂逅になってしまった二人は今大丈夫だろうか?
そんな考えがどうしても離れなかった。
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<イレイス!フェイタル!>
ノクスナイト渾身の飛び蹴りが怪人……魔女の配下の頭部に炸裂して数バウンド跳ねたのちに爆散する。
配下と言っても、すでに小規模ながら悪夢を展開できるようになっていた奴は放っておけば悪夢を叶えていたことだろう。
「『
撃破と悪夢の消滅を確認した俺はコードフォンで現在地を確認する。
一度悪夢を展開しようとしたところを邪魔して追いかけたせいで隣市の
「あーあ。もったいないことすんなよ、イレギュラー」
擬装を解除しようとしたとき、頭上から声がした。
見上げると長い赤毛をポニーテールに束ねた少女が塀の上に立っていた。
「他人の縄張りで勝手に暴れた挙句にあと4、5人食わせれば魔女になったってのに。
グリーフシードを取りそこなったじゃんか。
どうしてくれんだよ、ご高潔な正義のエージェント様?」
ひらりと飛び降り、手にした槍先をこちらに向けてくる。
鹿目は巴先輩が先約だった様子だったし、どうやらキュウべぇかほむらのどちらかから話を聞いているようだ。
俺はさっきのきめ技で飛び蹴りを選択したためブレイカムバスターが彼女の背後の地面に刺さっている。
丸腰でもやってやれないことはないが、無理に敵を作ることもないな。
「縄張りとは知らずに失礼した。
なら、領土侵犯と無許可の戦闘行為への詫びはこれでいいかな?」
と、俺は今日鹿目や巴先輩たちに証拠推して見せるために持ってきていたグリーフシードを投げ渡す。
「おっと……お前まさかあたしが来るまでに魔女も倒してたのか?」
「それは見滝原で倒した魔女が落とした物だ。
エージェントとして風見野に来たのは今日が初めてで、さっきの成りかけ以外は倒してない」
「あっそう」
そう言って赤毛の魔法少女はコスチュームの胸元に付いた宝石にグリーフシードを押し当てる。
すると色を失っていたグリーフシードが宝石の穢れを吸い取って元の黒い色を取り戻した。
「確かに本物だな。……何じっと見てんだよ?」
「後から贋物だったと言われても困るから実子アに使っている所を見ておこうと思ってな」
「そうかい。ならもう用は済んだろ。帰った帰った」
「ああ。そうさせてもらう。
それと赤毛……俺はイレギュラーじゃなくてノクスナイトだ」
「赤毛って……
今度からはもっと手際よくやれよ、ナイトさん」
俺はブレイカムバスターを回収して擬装を解除すると路地裏を後にした。
そして一度家に帰って眠りにつく。
明晰夢の中で向かう先はもちろん見滝原中学校。
ほむらの正体を暴かなければならない。
教員室に潜入した俺は巴マミの時と同じ手順でファイルを開いて情報を閲覧する。
「親の都合と持病の悪化から入院、転院、そして転校を繰り返して先々週東京のミッション系のスクールから見滝原中学校に転校。
お勉強の方は兎も角、直前まで入院してたとは思えない身体成績だな」
多分、魔法少女としての力も理由の一つだろう。
なんて考えていると、頭の反対側で授業中以外で特定の人物の動向を探ることに心血を注ぐようなタイプでもないのに熱心だなと自嘲する自分が居るのに気付いた。
(一応、入院していた病院の方も探っておきたかったが、それは明日に回そう)
必要なデータをコードフォンに記録して俺は明晰夢から通常の睡眠に頭を切り替える。
ゆっくりと闇に溶けるように俺の意識は途切れていった。
〇エージェント道具解説。
・コードフォン
…『CODE』の開発したエージェント専用のガジェットだ!
『コードナンバーを与えられたエージェントに支給されるガジェットだ。
基本的な携帯電話の機能とエージェントがミッションを遂行するのに不可欠な機能がこれ一台に纏まっている』