いつだったか説明したと思うが、見滝原は主要都市との格差是正を目指して様々開発がすすめられた都市だ。
そのおかげか結構でかい病院にあり、数年前までは遠方に入院しなければいけなかったようなケガや病気も市内で済むようになっている。
「ありがとうございました」
俺の様に風邪で健康診断が受けられなかった者も放課後にすませられるので大変ありがたいことだ。
手続きを終えて病院の外に行くとすると
「あ、小鷹……」
「美樹、だったな」
去年一年病気らしい病気にかかっていなかったから、恐らくは誰かの見舞いだろう美樹さやかとばったり会った。
鹿目ほど関りなかった彼女だが、結構話しやすい女子だったと記憶している。
「見舞いか?」
「うん、上条恭介って、覚えてる?」
「ああ。確か趣味がバイオリンの……」
「そうそいつ。幼馴染なんだ。小鷹もお見舞い?」
「いや、学校の健康診断の日に病欠だったから今日受けたんだ」
「へー、エージェントも風邪ひくんだ」
「エージェントも魔法少女も引くときは引くだろう?」
などと話しながら外に出る。
彼女はあたりさわりのない会話を斬り上げて、恐らくは俺を見かけた時から聞きたかったことを聞いて来た。
「一個知りたかったんだけど、エージェントとして戦うことで、見返りとかあるの?」
「……そうだな」
ここが病院だということもあり、能力の一例としてリカバリーカプセムを取り出そうとした時だった。
コードフォンから着信音がなる。
片手で詫びると、美樹も出ていいとジェスチャーを返す。
通知されたミッション内容を見て俺は思わず渋面を作った。
「どうしたの?」
「最悪のケースだ。
病院内のどこかに孵化しかけているグリーフシードが出現したらしい」
「っ!それって……」
「恐らくはケガや病気で弱っている人間を……永眠させる気なんだろう。
直ぐに魔法少女を呼べ。俺は……」
「私も探す」
「本気か?お前、戦う力はないんだろう?」
「この病院には恭介も入院してるの。
知ってて何もしないなんてできない!」
俺は少しだけ悩んだが、私用の携帯電話とバリアーカプセムを渡す。
「オレへの連絡はそのケータイで、そのカプセムはバリアーを張る機能がある。
何かあればそれで身を守れ。
あれはあっちから探す」
「わかった。マミさんにも連絡する!」
別れた俺たちは注意されない程度に急ぎながらグリーフシードを探した。
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日も暮れかかったころ、さやかからの連絡を受けたマミとまどかは見滝原市総合病院に来ていた。
マミは見つけたらすぐに離れるように言われたさやかだったが、賢政から渡されたバリアーカプセムを理由に途中で出会ったキュウべぇと共にグリーフシードのそばを動かないと言っており、賢政と合流できたかどうかも分からない。
(さやかちゃん……無事でいて!)
病院に辿り着くとコードフォンを片手に立つ賢政と出会った。
「小鷹君!」
「鹿目。それと巴先輩でしたね。ここです」
賢政がナイトインヴォーカーを装着し、右手をかざすと魔女結界の入り口が可視化された。
三人で中に入り、進んでいく。
「さやかちゃん、大丈夫かな?」
「一応バリアーのカプセムは持たせているから自衛はできるはずだが……」
「二人とも、おしゃべりは一旦そこまで」
マミの声に足を止めると、いつの間にか先回りしていたのか暁美ほむらがそこにいた。
「この件から手を引きなさい」
「エージェントにミッションを放棄しろと?無理な相談だ」
<イレイス!>
賢政が擬装の用意をすると、ほむらはいよいよ銃口を向ける。
「小鷹君のポリシーはともなく、美樹さんとキュゥべえを迎えに行かないと」
「その二人の安全は保障するわ」
「信用すると思って?」
マミとほむらはすでに賢政の見ていないところで険悪な関係になっているらしい。
賢政がまどかを守れるように立ち位置を変えようとした時、マミのソウルジェムが光った。
出現したリボンがほむらを縛り上げる。
「ば、馬鹿……。こんな事やってる場合じゃ……」
「もちろん怪我させるつもりはないけど、あんまり暴れたら保証しかねるわ」
「今度の魔女は、今までの奴らとはわけが違う!」
「何度も言わせるな、エージェントはミッションを放棄しない」
「さ、行きましょう」
マミに急かされて賢政、そして気になりはしているのだろうがまどかもその後に続いた。
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「さやかちゃん!」
「まどか!」
「どうやら大事ないようだな」
グリーフシードの完全な孵化こそ阻止できなかったが、さやかと無事合流は出来た。
「小鷹、結局使わなかったこれ貸してくれてありがとうね」
「ああ。無事で何よりだ」
返却されたバリアーカプセムを受け取り、ノクスナイトも援護に向かおうとするがマミの動きがあまりに良く見ているだけになってしまう。
(さっきの鹿目との会話が原因か?)
まどかは、魔法少女の契約にかなり乗り気なようだ。
その一方で願いを決めあぐねているようだが、彼女としては共闘できる仲間がいることのがうれしいのだろう。
「ティロ・フィナーレ!」
マミの必殺の一撃が炸裂する。
ずるり、とまるで脱皮するように魔女がかわいらしいぬいぐるみのような見た目から、ファンシーな芋虫のような見た目へと変貌を遂げる。
大きく開いた口には人間の前歯のような形の歯がずらりと並んでおり、人をかみ切るのに特化した形なのは一目瞭然だ。
(まずい!)
完全に虚を突かれた形のマミは全く反応できていない。
まどかやさやかに援護を期待できるはずもない。
<イレイス!>
賢政はカプセムを回してイレイスの固有能力ではなく、ミッションスーツ全体の性能を引き上げるとバリアーカプセムも手元で回す。
中空で造った足場を思い切り蹴ってマミを突き飛ばす形で跳んだ。
当然、着地地点は魔女が迫っており
「あ───」
ノクスナイトの姿が全員の視界から消える。
ゴクリ、と魔女が喉を鳴らす。
持ち主を失たブレイカムバスターだけが音を立てて地面に転がった。
〇エージェント道具解説。
・ヴォイドカプセム
…『(エラー音)』
『なんの力も込められていないカプセム……だと思う。
ナイトインヴォーカーでは擬装も技の発動も出来ないが、武器に使う分には問題ない。
……今更だが、カプセムは何をチャージしておく物なんだ?』