――Side 頼久
テストからの当日返却の翌日。
久しぶりに自分の部屋に自分以外いない状況を作り出して指定の時間を迎えた。
チャイムが鳴り、オレは玄関でチェックしてからドアを開ける。
「本日はよろしくお願いします、頼久君」
「……本当にいいんだな?」
オレが坂柳に問いかけると、彼女はキョトンとしたあと、笑みを浮かべる。
「身体を隅々まで見られることですか? それとも……身体をあなた好みに染められることですか?」
「前者は必要だからだし後者は言い方ァ……まあいいや、入れ」
オレがドアを開けるとそのまま杖をついて入ってくる。
「そっちで下着……ブラとショーツまででいい。そこまで脱いでくれ」
「ええ、わかりました」
とりあえずちゃぶ台を下げ、ベッドが問題ないかかく……恵が持ってきてそのままの電マをタンスにしまい込み、出迎え準備ヨシ!
「お待たせしました」
「ねえ、なんで全部脱いでるの?ブラとショーツはつけてていいって言ったよね??」
一糸纏わぬ坂柳の姿にオレが思わず頭抱える。
「まででよい、と仰ったということは、本来なら何もつけてないほうが好都合と判断しましたが……ダメでした?」
「年頃の娘が必要無く年頃の男の前で真っ裸はまずいだろ。襲うぞ?」
「体力持たなくて潰れてしまうかもですが、それもいいかもしれませんね」
こっちが手を出さないというか出せないのいいことに言いたい放題である。
「まあいい。さっさとチェックと施術しちまうか」
「肺もダメ、心臓も衰弱してる末期のそれ、栄養吸収の効率性だけバカ高くてそれ以外消化器官系も常人の数分の1以下……筋肉系も殆ど麻痺状態。……よく生きてたなコレ」
ちょっと施術の関係で見せられない状態の坂柳から目を逸らしつつ、データをゲルマニアグループに送っておく。
「……っ! せ……施術……終わりました……?」
「ああ。身体動かしてみればいい。」
目を覚ましたようなので背を向けたままそう告げる。
「……これが、私の身体……?」
「移植したばかりだから一般人より少し下くらいだ。これから適度に細胞移植と同化のプロセスを繰り返すことで、肉体を蝕むデバフは完全に剥がせるだろうさ」
「なるほど……」
背中に抱きつく感触。
……サイズが小さいから分からな「今私の胸が小さいから、抱きつかれてもわからない、とか思いませんでした?」
うっそだろ心が読ま「いえ、なんとなく……わかると言うか……」想定外なんだが「私に言われても……」
オレはすかさず彼女をベッドの上に座らせる。
たぶん……坂柳側からの接触が条件なのだろう。
「?」
首かしげているし……大丈夫やろか(疑心暗鬼)
「しかし……コレが概ね普通の人が感じてる感覚なのですね。首から下が自分の動かそうとする動きの数分の1以下だった施術前が嘘のようです」
「身体的に一般人並みになる代わりに知力上限突破が無くなってないといいな」
「……一度チェスで手合わせを「先にシャワー浴びて服着ろおバカ」私の体力が人並みに近づいてるのに、手を出さないので??」
オレはクソデカため息つく。
「病み上がりにフルマラソンさせるようなことはしない。治したのに症状悪化させたら理事長になんて言えばいいんだ?」
「それは残念です」
とりあえず某スパロボ名物クスハ汁モドキ飲ませて意識を刈り取り、目覚めたところでクスハ汁おかわりか帰宅の二択を突きつけ、帰宅を選ばせてひとまずの平穏を取り戻す。
うらみつらみの書かれたメッセージが坂柳から送られてきたが、知ったことではない。
と思ってたら、既読スルーにキレた坂柳が、クスハ汁等の表現誤魔化した一部始終を理事長に密告した。
そのせいで手を出したと勘違いした理事長による凸が発生。
理事長にもクスハ汁飲ませて速攻気付けし、納得させてお帰りいただいた。
……ああ、あと自発的に裸になったのも服脱がされたと説明してたのを訂正し、情操教育どうなってるのかとツッコミいれると「娘が選んだのであれば……見守るだけです」とか言い出したので、娘案じて凸しとるやないかとは言わず余計なこと言われる前にお帰りいただいた。
理事長が生徒の寮に凸したの、明日には噂になってるだろうなぁ(手遅れ)
「……D組をほぼ掌握終えたから今度はA組の支配に取り掛かり始めたか?」
昼過ぎにトキ経由でイザークから紋章持ちによる茶会の招集(お誘いではない)がされ、各クラスの面々がケヤキモールの一角、フードコートに一堂に会した。
なんでここ?
それはさておき開口一番がイザークからの口撃だった。
「あの酷い有様みて治せると口滑らせただけだ。それとも気に入ってたのか?」
「高育という組織の考える『競争による生徒の研磨』、この誘導になるであろうクラスの取り纏めするものが腑抜けては、高育としても不都合だと案じてるだけだ」
「最悪坂柳がダメでも葛城、最悪華琳が取りまとめればA組は問題なさそうだがな」
「あら、あなたが取りまとめてもいいのよ、エド」
エドワードの言葉に華琳が返すが
「オレそんなの柄じゃねぇし」
と肩を竦める。
「そっちはいいよね。C組は龍園とかいうのが王様気取って面倒くさい」
「チョウジ君が動けば良い話じゃない?」
「シャルロット、君みたいにB組リーダーの一之瀬さんの影に隠れてシンパ増やすのも、リーシャみたいにC組の連中追い払って一之瀬さんやサブリーダーたちの信用稼ぎするのも、アルみたいにイケメンスマイルで女の子たちに黄色い歓声あげさせるのも得意じゃあないんだ」
「「「風評被害!!」」」
B組3名の息ぴったりである。
「個人的にはチビ従姉が龍園とかいうのを処してないのが不思議なのですが」
「トキ、はっ倒すぞお前。……まあC組を牽引できそうなのが、あの暴君器質ともう一人……権力欲皆無の読書家女だけ。アタシが矢面に立てばアタシらでの競争になる。お前らがリーダーになるなら話は別だが、そうでなければ上に立つつもりはねぇよ。龍園がやりすぎたら適度に締めて抑えるくらいはするがな」
ダルいけど、と言いつつ紅茶を淑女のお手本みたいに飲むネル。
「そういう意味だとあーしたちC組3人は龍園を抑えられそうな面々だなーって思ったり」
「チビ従姉とチョウジが実力で組み伏せて、呪那が呪いや降霊でトドメですか」
「そうそう。……んで、イザーク。あーしらもBもDもとりあえずあれこれ陣頭指揮しないってことで満足?」
「ああ。それと『後継者殿』の気の多さは引っかかるが、総帥も似たような過去をお持ちのようだから気にしなくても良いだろう」
「後継者って柄じゃないんだがな……」
オレの言葉で一区切り。
長閑な時間が少し続く。
とりあえず用事は終わったからか、流れ解散になる。
そのあと聞いた話だと、茶会の周辺の空気が歪んでたらしい。
オレたちに話しかけようとした生徒副会長が歪みを超えられず、生徒会長が肩に手を置いて静かに首を横に振った姿が目撃されたとか。
どういうこと……?