――Side 頼久
茶会の翌日……。
フェナスエリアの待ち合わせスポットにて。
佐倉に施設見回りの同行を何故か頼まれ、請け負ったのでやってきたのだが……
佐倉に加え、みーちゃんに高円寺が予定の30分前に到着していた。
1時間前に来たときに居なかったから油断して施設を軽く確認してたのが仇になったか?
それはそれとして……
「佐倉はともかく、後ろ2人は何でいる??」
「愛里ちゃんに変なことしないか見張りに来ました」
「Mr.が暴走しそうな時の足止め要員かな。みーちゃんに頼まれたから」
「……」
なぜだか佐倉の背中にチベットスナギツネが見える……。
「ソレで、Mr.は何処に行くのかな?」
「特に決めてないな」
オレの言葉に高円寺とみーちゃんが眉をひそめる。
「デートなのにレディをエスコートしないのかい?」
「コレはマイナス評価不可避ですね……」
下心出したり、ズレてたりしても辛口評価されそう(こなみ)
「わ、私は何処でも……楽しいよ!」
佐倉がそう告げると、更に高円寺とみーちゃんの目が冷たくなる。
「今日は見て回るだけだし……モールのフロア見たらアリーナか水族館、植物園に行こうか」
「よ、よろしくお願いします……!」
――Side 軽井沢恵
「何よ私たちにはデートとかしてくれたことないのに……」
「いや、アンタ寄生目的だったでしょうが。私は小学生や中学生の頃いろんなところに行ったし。2人っきりにはなれなくて、無表情系がついてきたけど……」
自傷ダメージ負ってる桔梗見て、よく教室で男たち騙せてるなと、改めてなんとも言えない気持ちになる。
それはさておき。
頼久が『今日は出かけるから』とだけ言って朝一番に出かけたからこっそりトキがつけてるGPSで追跡したのはいいけど……。
まさかデートとはね……しかも相手は佐倉……あの地味娘のほうがいいのかしら?
「……どうせ自分のほうが……とか思ってるようだから言うけど、あのコ擬態してるだけでグラビアやれるくらい顔もスタイルも良いわよ?」
しれっとスマホで垢抜けてる娘の水着写真を見せてきた。
グラビア写真らしく、芸名が載っていた。
「雫……」
「4月末に清華がストーカーの手紙見て困ってるあのコ見つけて、先輩がそのストーカーの脳破壊ついでに自分の腕にカッターナイフ刺させて相手を実刑判決と接近禁止令と損害賠償で破滅させたとかなんとか。懐に入った相手には甘いのよ、先輩は……」
「清華が懐に入れたのに?」
色々ツッコミたいけど、それしてたら時間が足りないから一つだけ……。
「女の子には甘いのよね……私が逆レの通報したせいで中学生中退したことも怒ってなかったし……」
「全然知らない話が突然出てきた!?色々ツッコミどころあるんだけど???」
「それより先輩動いたし、追わなきゃ」
ああもう! 恋もトキも清華も桔梗も!
どうして頼久のエピソードとかこっちがつつかないと出てこないのよ!
――Side 頼久
なーんか色々見られてるような……
「自覚症状が無さそうだね、どうしようか」
「どうしましょうかね……」
「……えへへ……」
本屋、生活雑貨店、靴専門店にエキゾチック系インテリア等を見て回り、ちょうど良くアイス屋があったのでそれぞれ好きなアイスを買って一息ついてるのだが……。
ベンチで並んでいるせいかな?
客である生徒たちがこちらを見たりしているのだが……。
ふむ……?
あ、佐倉くれるの? おかえしにあげるね。
――Side 桔梗
「先輩! 相手とあーんし合ってる時点で、端から見たらカップルにしか見えないって!」
声を押し殺しながら隠れて覗き見する私。
「毎晩誰かしらと寝てるせいで完全に距離感バグってるわね。間接キスにも全く動じてないというか……意を決してあーん敢行した佐倉がなんかかわいそうになってきた……」
結果として自分にもあーんされて本人が喜んでるからいいんじゃないかな……。
「それはそれとして、みーちゃんが高円寺と佐倉の後方保護者面してるのはスゴクシュール」
「それはそう」
高円寺……あの何考えてるかどーも読めない女だが、みーちゃんには割とわかりやすく力を貸してるあたりなんかあるのだろう。
恩がなんとか言ってたらしいけど、先輩は聞き流してたからよく知らないらしいし……。
――Side 頼久
た す け て
今オレは何故か……ランジェリーショップに居る。
正確にはショップ内にいくつかある試着室の前で、試着室には佐倉が入ってる。
何を試着室に持ち込んだか分からないが、ひとまず周囲の女性からの目線が痛い。
「Mr.に居心地が悪いと感じる機能があるようでなによりだ」
「喧嘩売ってるのか?」
よほどがなきゃやらないがオレのスタンス的に割と殴るときは男女平等だぞ。
「アイス屋の前であんなバカップルみたいにしてた人への評価としては妥当ですよ天然ジゴロさん」
みーちゃんが辛辣である。
「にしても……佐倉ちゃんレベルのサイズまでデザイン豊富なんですね、こっちのお店」
「ゲルマニアグループは欧州がホームだ。彼女くらいのサイズも需要はあるが、耐久性とデザイン性の両立はかなり難しい。それこそ、ゲルマニアグループだけが製造・販売してる成分上普通のシルクと変わりないのに異様な耐久性や虫食い耐性のある絹糸があってこそ、だろう」
みーちゃんの言葉に高円寺がうなずきつつこちらを見る。
「……産業スパイは愚か、仕事辞めたあとで金積まれたり脅されたりして喋ろうとしても総帥が現れるから、未だに製造方法が割られてない最もミステリーな素材の一つだな」
「うっかり喋っても総帥が現れそう」
オレの言葉にみーちゃんはありそうと笑い話にしようとしたようだが
「出るぞ」「えっ……」
「秘密を聞いた方は良くて該当の記憶だけ消されて解放、最悪行方不明だ。喋ったほうは……ノーコメントで」
「ひえっ」
「機密保持や契約履行ということについてゲルマニアグループは総帥という最強の抑止力兼制御装置がいるからね。高円寺グループも一番信用してる」
「……えっと、着替えたから、見てほしい……かな……」
その言葉と共に会話を切り上げるオレたち。
そっとカーテンを開ける佐倉は……
「ふむ、ピンク系……可愛らしい感じのデザインか。悪くないと思うよ私は」
「ブラ側の装飾少なめでハーフカップですか……男の人的にこの零れそうで零れないのは目線吸い寄せられるのでは?」
2人がこちらを見て、佐倉もオレの感想待ちと言わんばかりにこちらを見る。
「もう少し高円寺たちと雑談してここがランジェリーショップだと忘れてたら悩殺されてたかもしれない」
「!?」
「おや、かなり高評価だね」「ストライクど真ん中だったのでしょうか?リップサービスには見えませんし……」
顔真っ赤の佐倉に対して後方保護者面2名は冷静に聞いていた。
「よくお似合いですね。購入されます?今ならリップクリームのおまけ付きです」
「オレが出そう」「頼久君!?」
店員の言葉にオレは即決。
「男から女に送るリップクリームや口紅には自分と合うときはソレを使ってほしい、転じて貴女とキスをしたいという意思表示になるとか」
「えっちなのはだめ!死刑です!」
主文後回しでの死刑宣告……ブルアカのコハルじゃないんだから……。
「ふ、不束者ですが、宜しくお願いしましゅ」
「愛里ちゃん!? 脳内で恋人すっ飛ばして嫁入りしたよね!?」
「お嫁さんなんてそんな……」
みーちゃんの言葉で暴走加速してる気がする。
ああもうめちゃくちゃだよ……!
取りあえず冷静取り戻した(?)佐倉はみーちゃんを追いはらい、みーちゃんありきなので自然と高円寺が離脱したのを見計らうと……
「部屋に上げられるとは想定外だな……!」
何故か彼女の部屋に連れてこられた。
カメラやいくつかの雑誌以外に小物があるが……ストーカー事件の慰謝料とか諸々で得たPPは使ってないのか……?
そしてリビングで待ってるよう言われ、冷静に素数数えていたら
「お、お待たせ……」
声の方を向くと先ほど買ったブラとショーツに普段つけてる眼鏡外して本来の姿で――
「……ど、どう……かな?」
恥じらう姿でリップ音と共に投げキッス……だと……!?
「とてもよい……素晴らしいものを見せてもらった……その覚悟含めこちらも抜かねば無作法……ではあるんだが、本当にいいのか? オレ複数人相手居るんだけど本当にいいの?」
オレの言葉に顔真っ赤で頷く佐倉。
「恩人で、勉強も教えてくれて、せん……頼久……君のおかげで、仲良くなれた人増えたし……お返し……したいし、卒業しても……一緒がいいって……思って……きゃっ!?」
オレは佐倉を抱き寄せお姫様だっこからのベッドに置いて覆いかぶさる。
「手加減できるか分からんから宜しく」
「お、お手柔らかに……」
翌日足取りが覚束ないためオレや清華たちの補助を受けた、自分を隠すことを辞めた佐倉……もとい愛里の姿があった。
山内が自分に乗り換えるよう愛里にナンパしかけてきたが、4月に地味とか根暗とか願い下げ云々を吹聴してたことを上げてお断りしたのはクラスに波紋を齎したが……まあ細かく語るまでもない。
ナンパ仕掛けた本人以外愛里側に同意あるいは同情向けてたし……。