――Side 清華
遠くから聞こえるセミの鳴き声で目を覚ます。
3週間ほどの船旅+無人島生活が終わり、9月まで残り1週間と少しになってる今日。
朝食をどうしようかと冷蔵庫を確認。
ゼリー飲料とお茶とかしかない。
頼久と寝た日の翌日は頼久やトキ、稀に恋が作ってくれるけど、そうじゃない日は頼久の部屋に行くかあり合わせのモノでなんとかするかの二択。
昨日は……桔梗、千秋、束さんか。
ちょっと謎の鞘当て始める面々で胃痛してくるから行くのやめておこう。
さて、今日はどうしようか……。
「……ジムにでも行こうかな」
頼久や恋が小まめに調整を手伝ってくれるけど、やっぱり自発的な負荷トレーニングとかして弛まないようにしておいたほうがいい。
私が望むなら、
「アンチマテリアルでものけぞる程度、酷いと列車砲直撃しても核喰らっても無傷……物理学に喧嘩売ってるような規格外になるのは……」
彼や恋たちには恩があり、好意もある。
そうでなければ身体を許したりしない。
だが、人として生まれたなら、人として死んだほうがいいような気もする。
彼ら側は衰えることを知らない。
黄金の獣ですらその怪物ぶりは千年という年月を経ても翳りを見せず。
彼らの系譜で死んだ者たちは、いずれも数日、早ければ数が月前に死を予感し、昨日まで元気だったのに眠るように死ぬという。
衰え知らず、ある程度したら老いも止まるある意味あのクソ親……いや、多くの権力者やアスリート、人々が欲する性質……だが、私には羨ましいとは思えなかった。
本格的に老いかやってきたら、変わるのだろうか。
「……また思考がずれた」
私はあり合わせのものを食べ、トレーニング用のウェアや必要なモノを用意し、フェナスエリアにあるジムへ向かうことに。
「あれ?綾川さん?」
「一之瀬さん……と白波さん?」
「……どうも」
ジムの前で意外……というほどでもない組み合わせの2人と遭遇。
「2人もジム通うんだ……」
「通い始めたのはこっちに戻ってきてからだからまだ短いけどね」
「ある女の敵を正面からぶん殴るために鍛えてます」
「……頼久なら殴ったほうが腕折れるからやめておこうね」
「そっちも何れ倒しますよ。今の敵は南雲とかいう生徒会副会長です。高育戻った直後私の帆波ちゃんに生徒会引き入れる代わりにオレの女になれとか言ってきたらしいんで」
「私千尋ちゃんの相手になってないからね?フリーだよフリー」
ヤバいな白波さん。
彼女から「必ず成し遂げる」という強い意思を感じる。
「……にしても、コッチ使うんだね? 私後見人とかのもろもろのおかげで安く済んでるけど、ケヤキモールのジムより高いよね?」
「ケヤキモールの方が月あたりの会費安いんだけど、そっちの須藤君とAクラス葛城君にCクラスの山田君とかで男密度が高くて……」
「あとコッチはメインとサブの2つトレーニングルームあって、曜日で男女交代でケヤキモールより整った環境を女子だけで使えるから……トレーナーさんも同性にしてくれるから話しやすい……」
そういえばそうだったっけ。
甘露寺とかいうお姉さん筆頭にスタイルから想像困難な怪力持ちばっかりだから、たぶんあの人らもあっち側なんだろうな……。
そう思いつつ受付で会員証を見せる。
今日はメインの方が使えるのでロッカーで着替える。
「……綾川さんもでかいね」
「? 藪から棒にどうしたの?」
なんか突然の白波さんの言葉に困惑する私。
「帆波ちゃんもなかなかだけど、綾川さんもなかなか……」
「私は安くないからだめ」
私が断ると肩をすくめる白波さん。
「仕方ない、帆波ちゃんで我慢するか」
「私妥協点扱い?? 私も安くないんだけど??」
「いいや、だめっ! ……我慢できない! 揉む!」
ジョジョかカイジかどっちかに寄せたほうがいい。
中途半端だと思う(名推理感)
2人がにぎやかにしてるのを横目に着替え終えてトレーニングルームに。
「補助必要かな?」
「だ、大丈夫……まだいける……から!」
「よろしい。ならもう5回、行ってみようか」
私と張り合えるくらいスペック高い高円寺と、勉強こそできるが体育とかではいつも後ろから数えたほうが早いみーちゃんが一緒にいる。
インストラクターが遠巻きに見てるあたり、高円寺がみーちゃん補助を買って出たのだろうか……。
「あの2人いつも一緒だね……」
「仲いいんですね」
「鏡をみながらもう一度同じ発言したらどうかな?」
思わずツッコミいれたの、私悪くないよね?
トレーニングしてたら高円寺に絡まれてどちらが施設の高負荷耐えられるか張り合いになったが、Cクラスのネルが規格外数値で私たちをKOしたので有耶無耶になってしまった。
いつの間にか一之瀬たちがトレーニング終えて帰っていたけど、私は高円寺(と何故か最後まで踏ん張ってたみーちゃん)と夕方までトレーニングに勤しみ、まず自分の部屋に帰宅する。
そして頼久からもらった右手薬指の指輪を姿見に触れさせて、姿見が映すものが変わったらそのまま姿見の中に入る。
「ただいま」
「お帰り」
姿見から頼久の部屋に行くと何やら(念のためなのか)電卓とノートで数字とにらめっこしてる頼久に、マ◯オカートをやってる鈴音、愛里、波瑠加に茶柱先生がいた。
勝率は……やや先生が低いといったところかな?
……鈴音たちと戦って一喜一憂してるあたり、先生の精神年齢が低いのか、鈴音たちが高いのか……。
「清華、遠巻きに見てないでお前も混ざってこい」
「え?」
頼久がいきなりそんなことを寿司職人みたいな格好で告げてきた。
……ツッコミ待ち?
「若いうちは笑い話で済む程度のことなら混ざってバカやっておいたほうがいい。変に大人ぶって一歩離れた所にいると後々惜しかったかもしれない、と思うぞ。ソースはオレ、総帥、親父あたり」
なんていう無駄に豪華なメンバーの経験則なの……。
「ソレに言うだろ、『踊る阿呆に見る阿呆、同じ阿呆なら踊らにゃ損損』ってな」
…人工の天才を作るホワイトルーム、そこの最高傑作と呼ばれてる私を阿呆と同列扱いなんて……いや、同じ人間なら人生楽しまなきゃ損って意味だから他に意図無いんでしょうけど。
「なら偉大な先輩たちの意見に従うとしましょうか」
――まだ私はあの白い箱庭に心の欠片を残してるのかもしれない。
原作と違い女の子なので三馬鹿とかと絡み少ない分初期鈴音レベルに交流が受け身よりです。
が、この数ヶ月で頼久経由ですが活動したりしてるようです。