指輪については、防水完備で住んでる部屋のインターホンとかと連動できる束さんの自信作だったりする。
それではどうぞ
――Side 恵
私の朝は比較的遅い。
ゆっくりと目を覚まして、回らない頭で起きて、洗面所へ顔を洗いに行く。
出したての水は夏だからか温くて、すこし待ってから手で皿を作り、顔にかける。
頼久と付き合いだしてから、肌艶もメイク(といってもナチュラルメイクレベルだけど)の乗りも良いから、軽く水洗い。
洗顔料とかも使うとむしろメイクのノリ微妙になるから最近は使わない。
私服に着替えたら、部屋の片隅にある姿見に頼久からもらって右手の薬指につけてる指輪を軽く当てる。
映る景色が変わり、ある部屋になったので、そのまま入る。
部屋には愛里が幸せそうに眠っている。
他に人がいないけど……何かあったのかな?
キッチンの方からいい匂いがしたので向かうと、頼久がスープ鍋で何か作ってて、隣で恋がコーンを乗せた葉物野菜サラダを、もう一つのコンロでトキがチーズリゾットを作っていた。
「……恵、おはよう」
「あ、うん。おはよう、恋、頼久、トキ」
「おはようさん」
「おはようございます、恵さん」
恋が最初に挨拶したから、私も返すと、頼久もトキも返してくれた。
「もうすぐできるから待ってろ」
「できれば愛里さんを起こしてもらえると」
「ん……お願い」
私は頷いて寝室に向かう。
毎回思うけど朝になったら汚れらしい汚れが人からもベットからも消えるこの部屋は新手の謎空間な気が来てならない。
まあ頼久や束さんのビックリドッキリメカかオカルト方面の何かなのだろうけど……本人達が教えてくれないから今のところ謎である。
「ほら、起きて愛里」
「ん……あ、おはようございます……」
「朝食はチーズ系のリゾットとスープに葉物野菜にコーンのサラダみたいよ。スープは頼久が作ってたわ」
「それは……出来立てたべないと……」
のそのそと起き上がる愛里。
何がとは言わないけど一糸纏わぬ姿だからか、すごく揺れてる。
「……やっぱりデカいわね」
「はえ?」
「何でもない。ほら、コレくらい羽織っておきなさい」
頼久の白い無地半袖Tシャツを渡すと愛里はのそのそと着る。
そして伸びをすると洗面所へ向かっていった。
「うう……飲みすぎた……」
「またグロッキーになるまで飲んで……頼久に怒られますよ」
先に姿見から出てきた千秋が茶柱先生を見て呆れ顔。
こういう大人にはなりたくないわね……。
「いただきます」
「「「「「いただきます」」」」」
トキの作ってたチーズリゾットに頼久の作ってた透明すぎるのに旨味の固まりみたいな不思議なスープ、恋の用意したサラダに、追加でローストビーフが中央に置かれている。
「にしても……すこし手狭ね」
「部屋増築したいが、空間操作系は後始末が面倒だしなぁ」
私の言葉に頼久が遠い目をする。
「いっそ左右の生徒追い出して壁ぶち抜くとか……どうかな?トキ」
「人の心ないんですかね、束博士。そもそも禁止されてますし」
「ちなみにソレやろうとしたやつ過去にいるらしい。もちろん住居破壊で退学したがな」
「「「えっ、いたの??」」」
言い出しっペの束さんも茶柱先生の言葉に目を丸くしている。
「私のいくつか上のクラスでな。だから寮の規則に壁の破壊禁止が追加されてる」
「はえー」「探せばいるもんですね、束と同系のトンチキな人って」「どーいうことかな???」
束さんは基本的にこちらが関わらない限りコッチに介入してこない。
代わりに?トキや恋、頼久という気に入ってる相手(コレ同じ祖を持つ血縁者だからでは?)にはよく自発的に絡んでいる。
恋には露骨に嫌がられ、トキには無表情に口撃され、頼久には鈴音と共に首輪つけて露出徘徊プレイさせられて喜んでるし。
……普通の時は優等生って感じなのに首輪つけられて裸であちこち連れ回されて喜んでるある意味一番ぶっ飛んでる鈴音と同じだし……いや、やめておこう。
なんかこっちを束さんがチラッと見たのを知らんぷりしながらスープを飲む。
……旨味の奔流が頭を揺らすような気がして顔を伏せる。
だらけきった顔を頼久には見せたくないし。
なんでか頼久や恋、トキも束さんも普通に食べれてるあたり、4人とも規格外なんだな、と改めて思わされる。
取りあえず佐藤や篠原、前園あたり連れて買い物へ行ったのだけど……。
「あっ」
「「「「…………」」」」
伊吹……無人島試験で穴倉使ってた女子の下着盗んで男子のカバンに混入させた恩知らず。
そそくさと逃げていく。
「……もう過ぎたことだし、忘れましょ」
「そうね」
「ちゃんと戻ってきたし、千手君が始末つけてくれたし」
「……」
1人反応ないけど……変につついて藪蛇になったら困るし、このままでいいか。
カフェで甘いものつまんで、カラオケで好きな歌を歌い、植物園に併設されてるビニールハウスで私が指輪見せたら格安で買えたメロンを私の部屋で食べて流れ解散になったあと。
「……で、千手君とはどうなの?指輪貰ってるくらいだし、もう将来勝確?」
佐藤が何故か部屋に残って、そう問いかけてきた。
「慎ましく暮らすならね。アイツの正妻ポジはゲルマニアグループ総帥のファーストレディポジに近くで心労まったなしみたいだし」
「でも羨ましい。生活には困らないみたいだし、フェナスエリアならその指輪で割引してもらえてるし」
……佐藤、アンタ……
「……アイツのカキタレになりたいわけ?」
「言い方〜。でもゲルマニアグループ総帥の血縁者に囲われた女って、総帥とか上層部の人正妻以外大体幸せそうだし、そこらの有象無象より高い生活水準で過ごせるし……」
「ちなみに浮気しようものならジャッジによる強制自白付き吊し上げ裁判で破滅するし、相手に話通してないのにグループ企業とかにコネ入社させようとするとかしても総帥がやってきて『行方不明』になったりするけど……そういう誘惑に靡かない自信は?」
「うっ……それは……」
「ちなみに好きな人出来たと伝えたら過去遡って浮気してないか調べられた上でセーフなら放流、アウトなら裁判ルート。まあセーフでも支援なくなって生活水準維持できなくて身を持ち崩すし、相手に話通していても通してくれるのは最初の書類審査だけであとは本人次第だからそこから先は自己責任なのにはいらなかったと逆恨みされて面倒な二次災害おきたりするらしいわよ」
「……よくそれでアンタ千手君の妾?ルート選べたわね」
「それ差し引いてもメリットしかないもの。困ったとき呼べば頼久が基本きてくれるし、来れないときも恋やトキが来てくれて、助けてくれるし、頼久たちが作ってくれたご飯や弁当はそこらのものより良い。それにベッドの上では優しいし、気持ちよくしてくれるし……」
……あっ
「え゙っ、もしかして不純異性交遊……!?」
こういうときは慌てずに……
「……こっちから別れない限り将来保証してもらえてるのに不純になるのかはさておき。……別に言ってもいいけど、芋づる式にうちのクラスの2割くらい退学するし、女子の主力級がかなり抜けるから今後大変になるけど、それでもよければ?」
「……茶柱先生とかにバレたら……まずくない?」
「頼久から預かってたPP横領した前科もあるし、芋づるの1つなんだから言わないし言えないと思うわよ。それに高育側はこの指輪着用について申請さえすればペナルティ無しって通達きてるから実質黙認してるし……あ、コレは余程華美じゃないなら普通のものでも申請すればオーケーみたいよ」
思い出したので補足するも効果はない。
「……取りあえず黙っておくけどさ、たしか櫛田さんも……」
「小学生時代から面識あって、なんか知らないけど脳焼かれてて入学時点で手遅れだったらしいし、遅かれ早かれってところでしょうね。本人的には平田とともにクラスのバランサーと頼久に代わって学校内の人脈担ってるから、いなくなったなったらクラスはガタガタになると思うわ」
「……あれ?もしかしてうちのクラスの命脈が千手君に握られてる?」
「クラスだけじゃなくて高育全体かな。何ならあの宇宙に浮かぶオバケ傘や火星テラフォーミングや宇宙関連握ってるゲルマニアグループ最高技術顧問も頼久のために母親が作ったとかいう高育のシステム引き継ぎして頼久の周りを囲ってるし、何ならフェナスエリアは頼久がここに入るから千手理事がアジア方面のリソース割いて作らせたまであるし、摘発したらブチギレした2人も手を引いて大混乱不可避じゃないかな」
「ヒエッ」
「……頼久と話する?」
「……お、お願いしようかな」
私は頷いて部屋の姿見の前に来るよう促す。
そして姿見へ私が指輪を当てると――
『この反応、恵ですね? すみませんが御主人様は愛里が連れてきた井ノ頭という娘を愛里と可愛がりしてる最中でして……』
『夕飯なら恋が運ぶけど』
なんか声が返ってきた。
トキと恋2人とも姿見近くにいるなんで珍しいとおもったけど、それより手を出してる娘、たしか愛里が誕生日祝うとが言ってたけど、頼久に差し出すのがプレゼントとかじゃ……ない、わよね?
それはそれとして
「……私たちも混ざっていいかしら?」
『私たち……? 少し待っててください。……………貴女ともう一人くらいなら行けるそうです。ちなみに何方で?』
「佐藤麻耶よ」
『ん、来ていいから』
その言葉と共に頼久が絶賛やってる所が映る。
「えっ!?どうなって……うわ、井ノ頭だっけ、エグいのでやられて……」
「ここまで来たら後戻りできないしさせないから」
私は麻耶の手を掴み姿見へ飛び込む。
あとはどうなったかは……言うまでもないか。
ちなみに麻耶が翌日から右手薬指の指輪について触れ周り、おしゃれの一環として男女問わず一部の生徒が申請して認可取って着け始めた。
ケヤキモールやフェナスエリアのモールで指輪関連の突発セールが始まったのは……たぶん束や千手理事が動いてるんだろうなぁ……。
ちなみに頼久はフェナスエリアの一角にある従業員用団地の1つを買い取り、いくつか部屋をぶち抜いて改造したりすることで話がついたとか。