――Side 頼久
翌日の放課後。
「Dクラスの出走表見せてほしいなー。お ね が い ♡」
「いっそ清々しいなシャル。見せないけど」
「ちぇー、だめかー」
頬をふくらませるのはシャルロット。
紋章持ちたちからあざといん呼ばわりされてるあざとさ発揮してすり寄ってきたが残念ながらソレは同性とオレ相手には発揮しないのである。
「チェンジだ。どうしてもオレ動かしたいなら一之瀬連れて来て同じようにやらせたらいい」
「――と言うと思ってスタンバイさせてた帆波ちゃんカモン!」
ファッ!? マジかよ。
顔真っ赤でプルプル震えてる一之瀬。
勇気を振り絞ったように
「Dクラスの出走表見せ「すまん、オレは出走表作成に関与してない」ええっ!?」
オレのインターセプトに一之瀬がコケかけて、シャルがすっ転ぶ。
「ちなみに後ろで控えてるひよりさんも残念でしたね。御主人様は今回リーダーの堀北さんのオーダー以外基本怠けるを選ぶ指示待ち人間状態なので」
トキの言葉に教室のドアから覗き見してた龍園とひより、BクラスCクラス面々が残念そうにしている。
「だから言っただろ。ある程度人間関係構築されて指揮系統できつつあるなら頼久は出場順とかに関与ほとんどしないって」
ネルが呆れながらそう告げる。
「そう上手くいったら苦労はしねぇってことだな」
ククッと笑う龍園。
「ううっ、今回は勝てないのかな……」
一之瀬の言葉にグラっと来たがこらえつつ
「そっちの巡り合わせ次第だろ」
とだけ答える。
「推薦全種目勝たせるつもりねぇくせに」
「そりゃやるならベスト尽くすさ。……それと競技中の事故とかについても……審議必要と思ったら遠慮しないし」
オレがノーモーションでジャッジ呼び出すとひっ、という声が聞こえたりする。
伊吹がなんかひよりの後ろに引っ付いてる。
ジャッジの出現に目を見開いたあと舌打ちする龍園。
「ガキの喧嘩に親呼び出すような真似しやがって」
「おいおい、賛成してるのは他でもないCクラスの面々だからな?賛成してくれる奴が居ないと呼び出せないから本当に助かる」
龍園に煽り入れると彼は舌打ちする。
そしてオレがジャッジを送還しようとしてネルが口を開く。
「んで、頼久。そろそろ2人くらい引き抜けるPP貯まってると思うが、ABCから引き抜きしないのか?」
「「「「!?」」」」
ネルの言葉に全員こちらを見る。
「やらない。本人同意で順当に引き抜いてもそのクラスの他面々から恨み買ったりしそうだしな。引き抜きしたいのは何人かいるけど」
……あー、ハメられたな。
「だよなぁ。紋章持ちはクラス移動できないし2千万使って引き抜いても後のこと勘案するとメリットないもんな。Aクラスならワンチャンか?派閥争いしてる2人のどっちか引き抜けば丸く収まるし」
「どっちを本人同意で引き抜こうと引き抜いた派閥から恨まれかねない」
「にしても意地が悪いよな、高育。アタシたちに別途支給されてるPPは『退学取り消しに使えない』特殊裁定のPPだし」
オレの遠い目に話題を切り替えるネル。
「オレたちの退学条件は『同学年に退学者0人以下か160人以上のときに退学条件を満たす』だから実質他人事でいいしな」
「今のところ0人だから気をつけておいたほうがいいがな……Aクラスだろうと卒業までに2人はクラスから脱落してないと卒業できないとかいう噂を聞いたがどう思う?」
「堀北生徒会長ですら叶わなかった生徒未脱落での卒業……TASればできるっぽいけど……できて1クラスで他クラスに数倍の退学者発生させることになりそうだから三年目が確実にキツくなるだろうな」
「ちなみにBCクラスで引き抜くなら誰なんだ?やっぱり一之瀬と椎名か?」
「……ノーコメント」
「ちっ、尋問モードじゃないからソレで回避できるか」
ネルの誘導失敗を横目にオレはジャッジを送還する。
「……そういえば2千万でクラス移籍できるってあるが……本人同意をやたらと強調してたが……本人が拒否した場合どうなるんだ?知ってるだろ」
ネルの言葉に龍園が興味の目線を向けてきた。
「さあな。南雲副会長とか堀北生徒会長、あるいは上の学年に聞いてみれば?副会長の学年一年で17人だが退学したし、その中でなんかあったかもしれないし、堀北生徒会長ならそのあたりも知ってるんじゃない?」
すっとぼけをかましておいた。
「ジャッジなら嘘かましてるなら反応したが送還されてるからわからねぇか……」
ネルはそうぼやいて去っていく。ソレに連動して他生徒も去っていく。
「やっぱり君は嘘つくの上手だよね」
「シャルほどじゃないさ」
そう言ってシャルが去り、他クラス全員が去ると……山内が動いた。
「お前そんなにPP持ってるならよこせよ」
「……? なんで?」
オレのすごく弱い威圧でたじろぐ山内。
「な、ないやつがかわいそうだろ!」
「欲望に負けてゲーム機や遊びに費やすやつに恵んでいたらPPでマネーゲームする必要が起きたときに身動き取れなくなる。最近アリーナでの負けが込んでてPP目減りしてるからここぞとばかりにタカリに来たか?」
「う、うるせぇ!」
「あとオレの追加PPは半分権限あるアンサラーによって高育敷地内全施設の電気代がチャラになってるからその浮いた分から支払われてるモノだからな。悔しければ高育の消費電力を十二分にカバーできる発電施設作ってソレを提供すればいい。万一キャパオーバーで止まろうものなら施設が受けたダメージ諸々がお前に将来的降り注ぐことになるがな」
オレの言葉に絶句する山内。
「ちなみに私たち他の紋章持ちは50万から100万PPの範囲でCP連動以外に毎月もらってますが、御主人様の余剰から貰ってる形なので私たちは御主人様の安寧を次50万から100万で請け負ってるとも言えますね」
「……さっきのやりとり、たしかネルだったわね。あの人の言葉で彼の安寧揺らいでる気がするけど……」
トキの言葉に対して鈴音がそうツッコむと
「アレはアレでイイのです。あのチビ従姉の言葉で御主人様が莫大なPPを持っててマネーゲーム始めたら反撃する資金力を蓄えてることを示唆する結果になりましたし、後先考えなければクラスの要を引き抜けると脅しになりましたからね。藪をつつけば何が出てくるか分からない、でも不干渉すると手痛い目にあいかねない。そんな注目が必要なのに踏み込みにくい立ち位置に御主人様がいることをBCクラスに対して教えられましたからね」
とトキが答える。
「Aクラスには釘指ししなくていいのか?」
須藤が首を傾げるが
「葛城派閥ならオブザーバーしてる華琳が釘指ししてるだろうし、坂柳派閥なら坂柳自身が知ってて釘指ししてるだろうからな。オレについてあまり調べてない2クラスだからこそ今回ネルが紋章持ちの道化として動いてくれたわけだ」
と解説しておく。
「なるほどな……」
「さて、あと2週間弱、赤組勝利のために練習しようか」
オレは強引に話をきり上げ、そのまま体育祭の練習へとクラスを促した。
「ソレで、こんな人気のない屋上に下校時刻も過ぎたというのに誘い出すとは……私に手を出す気になったのかな?」
妖艶な笑みを見せる高円寺。
「手を出さない理由はなくなったことだけ伝えておこうと思ってな。もし行き場がないなら拾うくらいするともな」
オレは間を空けて告げる。
「それはそれとしてみーちゃんを狙うけど構わないか?」
オレの言葉に目を細める。
「私に手を出した後、彼女についても責任取るなら皆まで言わない。それ以外は可能な限り邪魔するし、褥には乱入させてもらうよ」
「お優しいことで。それで……本当に我慢するつもりかな?」
夜、買い上げた部屋にて
「ということでよしなに」
「マジですか先輩」
「ハニトラに勝てなかったよ」
桔梗に目を丸くされた。
「平田ボーイとみーちゃんがくっつくのは正直リスクが高いからね」
「? どういうこと?」
「万一親父の後継者候補筆頭の平田の正妻になったら普通の人が死ぬほど胃に穴が空くからだろうか」
「それもある。まあ仲良くしようじゃないか」
はぐらかしてるけど、お互い様か……。