――Side 頼久
その後オレの記憶が船上追加試験の時のように抜け落ちており、気がついたら購入した部屋で呆然としていた。
「あ、ようやく我に返った」
「御主人様はショック受けると心停止したりショック死したりするので、呆然自失で2時間は短いほうです」
恋とトキが世話を焼いてくれたらしく部屋着になっている。
ついでに鈴音に貸しっぱなしの指輪もオレの右手薬指に嵌ってるな……ヨシ!
「先輩、結果確認します?「頼んだ」心停止しないでくださいよ?」
洗濯物を別部屋で干して戻ってきたらしい桔梗がそう言って端末見せてくれる。
体育祭結果
優勝 白組
1年内順位
1位 Bクラス
2位 Cクラス
3位 Dクラス
4位 Aクラス
CP変動
Aクラス:1124→924(-200)
Bクラス:982→1032(+50)
Cクラス:874(変動なし)
Dクラス:817→667(-150)
「……コレは荒れるな」
「葛城君主導で無人島、船上、体育祭と連敗してますからね。葛城君の派閥が崩壊したも同然です」
いつの間にかいた有栖に軽くビクッとする。
「……私も最初から居ましたからね?」
「あっはい」
「ああ……いいところまできたのに……知恵の煽り倒しがまだ聞こえてる気がする……」
姿見から佐枝が頭痛そうにしながらやってきた。
「……まだ一年目なので様子見しててくれよ佐枝」
「わかってるが、あの知恵の煽り倒しはなんとかならないのか……?」
こっちに縋りつこうとする佐枝にトキが割り込んでディーフェンスする。
「話を聞く限りソレに匹敵するストレスを数年にわたり星ノ宮先生に与えていたようなので我慢してください」
「ううっ、ここまでひどかったのか……?」
バッサリ切り捨てたトキの言葉に、佐枝はここにいない星ノ宮先生に問いかけるが、答えは返ってくることもなく……虚しく部屋の中に問いは溶けていった。
「……ん?」
オレは端末を開き、とある通知の連絡を見る。
「……んー……」
オレはメールの送り主に1つ提案とひよりに確認のメッセージを手早く入力して送る。
直ぐにひよりからメッセージが返ってきた。
予想通りだったのでこちらも事前に下書きしてた通りの内容を送ると、納得してくれた。
あとは……よし、ひよりが承認すればオーケーだな。
「何してるの?」
清華が問いかけてきた。
「イザークと龍園が裏取引してて、葛城の肩身狭そうだから別クラスへ逃がそうとしてる思惑と、龍園の金田以上の参謀欲しいが合致したから移籍に関して手伝って欲しいって連絡来た。んで手引きしてくれるならひよりをDクラスに移籍認めてくれるって痛い!」
ベッドに置いてる手の甲を有栖が抓った。
「勝手に葛城君引き抜かないでくださいよ、私と敵対してますが、有能なのは間違いなのですから……」
「でもあの針の筵で残るのは無理があるでしょ。さっき貴女も派閥瓦解してるとか言ってたし」
「それは……そうですけど……」
桔梗の言葉に言葉をつまらせる有栖。
「ついでにひよりに移籍オーケーか聞いたらオーケーもらえたので移籍処理進めて――」
通知が2件。
片方はイザークから、もう片方は移籍に伴う2千万PP引き落としの通知だ。
「ちょっくら出かけてくる。ひより引き抜いた分の仕事はしないとな」
――Side イザーク
「ふむ……生徒交換という裏技があったとは……」
とある公民館のような共有スペースを借りてCクラスの龍園と話を詰めていたら頼久から斜め上の裏技があることが書かれていた。
最初は頼久から2千万PPを借り、それで葛城をCクラスに移籍させ、その他諸々で1人あたり2万PPを毎月割譲の話を解消する方向で話進めていたが……よもやよもやだ。
「……こっちの担任にも裏は取れた。伊吹をそっちに移籍するかわりに葛城を移籍させる。当事者の同意2名分、担任それぞれの同意2名分、クラスの過半数同意2クラスの6個の要件のうち、4つが取れればいいらしい。……んで、担任1つとCクラス過半数同意に伊吹本人の同意が取れた。あとはそっち次第だ」
「……」
葛城は沈黙している。
「お前が3年生後半になってもこちらのクラスに戻りたいなら手引きするし、残るのを良しとするなら戻ってくればいい。2千万PPは何とかしよう。もしその気があるなら、源頼朝のように、耐えて戻ってくることを期待している」
「……ああ、そうさせてもらう」
私の言葉でそう答え――同意を選ぶ葛城。
「話まとまりそう?」
頼久が出てきたが、葛城が通知見ているあたり、もう手続き完了したようだ。
「纏った。2千万PP使わずに済んだが、借りができたな」
「オレとしてはひより引き抜けたからオーケーです。問題なさそうだし、龍園に100万渡しておいたからソレをついでに伝えててそのまま帰らせてもらう」
そう言って去っていく頼久。
「……ウチのクラスは人数減らなかったが頭脳面では微妙に下がった。龍園のところは非協力的な人が減ったが葛城という頭回るやつ加入した、頼久のところは椎名ひよりという頭脳派が加入したと……比較的丸く収まったか……?」
「問題は月曜日ね。Aに昇格したクラスはともかく、他3クラスがざわめくことになるでしょうね。……中間テストはともかく、期末テストまでに一波乱あるでしょうし」
エドと華琳がそういう中、龍園と葛城はこの公民館モドキから去っていく。
さて、葛城の分仕事しないとかな。