――Side 頼久
11月最初の学校日放課後――
いつの間にか建設されていたすり鉢を半分にしたような半円型講堂にて、1クラス分くらいの人が集まっている。
すり鉢の底に当たる場所に教壇があり、そこに束がいて、半円のすり鉢の内側に当たるところに座席が規則的に並んでいる。
オレ+手を出した女子面々で固まって中間の隅の方を陣取る。
帆波や千尋はまだ隠蔽しておくつもりなのか、Aクラスの参加者たちと集まっている。
『座席は任意。今日はそこまで難しい話もしないし、仲いい子と固まってもいいからね〜』
束の言葉で生徒たちは各々好きなように席を取っていく。
南雲やホリー、橘先輩の姿も見えたが、オレの周りの女子率高いからか、そっと距離を取った。
『それじゃ、今日は情報学について説明するから、耳の穴かっぽじってよーく聞くようにね』
その言葉と共に、現代の情報社会についての説明と、情報を安全に守るための暗号の歴史やセキュリティとソレを破るクラッカーたちのイタチごっこについてを語っていき――
「とりあえず今日はここまで。今この講堂にいる全員の端末に私からURLリンクおくったから、そのサイトを開いて小テスト受けてね。有効期限は今夜の日付変わるまで。ちなみに基礎問題編と応用問題編を任意で選べるけど、応用問題編は凡人は解けないから無理しなくていいよ。ちなみに基本問題か応用問題の解答……正誤不問の提出を出席記録にしてあるからよろしく。まあ応用問題正解者にはクラス毎先着1名にCP+100チケットプレゼントしておくから頑張ってね」
チラッとコチラを見たあと去っていく。
オレはURLリンク開いて応用問題をみるが……
「RSA2048の暗号文を暗号文と鍵1つで平文に復号せよ……」
「流石にコレ無理。人にできる問題じゃない」
「スパコンでも莫大な時間かかるのに解けるので……?」
「ラマヌジャンかサマーウォーズの健二君でも連れてこないと無理だろうねぇ」
鈴音、清華、有栖、六花が冷静にそう告げてコチラを見る。
「アスナ先輩ならもう答え出してるでしょうね」
そういいつつトキが割り出しをしている。
オレは少し本気出して答えを出したあと入力する。
CP+100チケットが手に入った。
「……トキ、もういいぞ」
オレの言葉に手をとめるトキ。
「流石御主人様」「リアルサマーウォーズじゃんすっご」「スパコンでも相当時間かかるやつって言ってたよね……?」
周りがざわめく中、ネル、アル、エドがやってきた。
「一応聞くけど、最初の数字……82か?」
ネルの言葉に仮説が浮かぶ。
「オレは84で始まってる」「こっちは62」「オレ……というか1年間Bクラスは71だ」
「「「「……多分学年クラス毎別の暗号文だよなぁ(ねぇ)」」」」
ため息交じりにそう告げる。
「なんだよ問題内容違うのか」「CP+100だから解いたやつのを見ようとしたのに」
一部先輩たちが舌打ちして帰っていく。
そしてオレら1年間組以外はホリー、橘先輩、南雲会長だけになると南雲が口を開く。
「流石は紋章持ちといったところか……ならオレの分の応用問題解答してくれないか? 相応のPP……あるいは報酬CPの半分にあたる50CPをそのクラスに譲渡するから」
有栖のクラスにCP差100以下で迫られてる帆波がなにか言いたそうだが……オレたちはアイコンタクトしてから口を開く。
「だが断る」「無理」「ごめんなさい」「パス」
オレ、ネル、アル、エドの全員拒否に南雲が一瞬表情歪めたが、直ぐに余裕を取り繕った。
「……理由聞かせてくれ、納得しなきゃ引き下がれない」
その言葉にオレたちは口を開く。
「人に解かせるつもりない問題を解いてしまえば解答送ったヤツの頭脳水準をそこに設定されるから」「端末依存だぞプライバシーの塊な端末を人に預けられるのか?」「多分僕たち解ける側以外が正答送ると不正扱いされて先輩のクラスにCPダメージいきそうなので……」「オレたち化け物がどれだけ隔絶してるか、自分もそっち側だと上級生側に見せつけるためのアピール行為だ。CP+100は勝てないことを分からせるための釣り餌だろうさ」
「……なるほど。釣り餌でブラフとかなら最悪というわけか。本当に嘘なら高育側に虚偽申告で係争始めるしかないがな」
ある程度納得した様子の南雲。
「多分オレたち以外が正答したら確認メールが送られて、嘘つくと配布チケット額以上のCP没収とかそういうパターンだろ」
「ありそう」「束ならやる」「あの人頼久〉身内及び身内認定したやつ〉(世界隔てるレベルの壁)〉能力のあるのあるやつ〉(面倒だから無視するライン)〉その他だしな」
オレの言葉に納得する面々。
「……なるほど。ならうちの学年のDクラスが渡された問題を誰が解いてくれるか?PP50万、正答したあとはこっちの責任でいいから」
「……なら僕が解いていいかな?」「「「どうぞどうぞ」」」
オレたちはアルの挙手にダチョウ倶楽部のように譲る。
「お前に送ればいいんだな?」「はい!」
端末操作して南雲がアルに送る間にオレのところにホリーたちがきた。
「ん?2人はどうした?」
「何、南雲が変なことしないか見てるだけだ」
「……なら良いんですけど」
その後CP+100について確認した南雲(恐らく他クラス分のチケットをPPで買い叩いたのかアルが4問解いてた。普通にCP手にはいったのだろう)とホリーたちが帰り(こっそり裏で3年の4クラス分解答済み、500万PPをなんかくれた)、帆波は途中クラスメイトと別れてUターンしつつ南雲たちを回避して戻ってきた。
コレでオレの手を出した面々のうち鈴音、有栖、帆波以外と残ってた1年の殆ども帰っていったが……。
「ククッ、情報学の後でペーパーシャッフルの攻撃先談合があると耳にしたが、まさか本当とはなぁ」
なんか龍園がずっと残ってた。
隠れてたオレとかトキは知ってたけど、ほかの面々びっくりしてるぞ。
「おや、1人仲間外れで寂しかったですか?」
「蚊帳の外にされたらクラスとしては困るし、競争なのに仲良しこよしはダメだろ」
何もなかったように振る舞う有栖。
その煽りを回避する解答を投げ返す龍園。
「貴方からそんな殊勝な言葉が出るとは」
「……ちなみに龍園君は何処を攻撃したいのかしら?」
「何処でも構わない。そして攻撃先次第だが、払うもの払えば攻撃に使う問題と模範解答を攻撃先に渡してもいい」
「!?」「なるほど?」「でもお高いんでしょう?」
オレが茶化すように問いかける。
「3000万PPの分割か一括。どちらでも構わない」
「CP50……場合によっては100にたいしての対価釣り合わないなぁ」
CP100手に入ったとして、1万PP×40人×28=1120万。デメリットの方がデカい。
「払えないと言わないあたり札束でPP補充できる富豪様は余裕そうだな」
コイツ……やっぱりPPをリアルマネーでトレードできるの知ってるな?
「えっ?なにそれ初めて聞いた」
「あぁ?」
もちろん嘘だがすっとぼけかましておく。
「……まあいい。こっちは来ないなら容赦なく篩い落としするだけだ」
そう言って龍園はオレたちの近くの椅子にどっかりと座る。
あとは成り行きを見守る構えである。
「我々BクラスはAクラスへ雪辱戦として攻撃予定です。既にいくつかの科目は査定完了してることだけお伝えします」
「私たちはCクラス狙いかな。体育祭で良いようにされたし……今回のDクラスに攻撃したいわけでもないし」
「……私たちはBクラス狙いよ。退学しないラインでギリギリの点数取ってもらうわ」
ぶっちゃけ束のCP+100チケットで既に+100してるからペーパーシャッフルの結果がどうであれ、Dクラスとして見たら試験前と変わらないのである。
「……コレは真面目に対策会議しておかねばなりませんね」
「坂柳さんには申し訳ないけど、Aクラスは維持させてもらうから」
「ならオレのクラスはDを攻撃させてもらおうか。くくっ、PPで購入しておかなかったこと、後悔しないといいがな」
「私たちは全力を尽くすだけよ」
リーダー格4人は4月に比べるとかなり『らしく』なってきた気がする。
スタンスは4者とも違うけど。
さて……勉強会の方に合流しないとな。