――Side 頼久
12月某日の帰りのホームルームにて
「テスト終わった翌日で済まないが、試験結果を発表する」
アレから手出した娘と遊んだり、勉強会で真面目に教えたり、龍園に1千万PPと『賢い選択を期待する』とだけ送りつけたら金田担当してる数学と理科2科目以外の問題を送ってきたとか色々あったが……気にすることでもないのでテスト後まで割愛である。
「……総合点でCクラスに勝利かつ、Bクラスを上回った。そして退学者は……0! よくやったな」
口元に笑みを浮かべる茶柱先生の言葉に生徒たちが沸き立つ。
「ちなみに結果は以下のとおりだ」
Dクラス→Bクラス Dクラス側の勝利
Bクラス→Aクラス Bクラス側の勝利
Aクラス→Cクラス Cクラス側の勝利
Cクラス→Dクラス Dクラス側の勝利
つまり変動は……
坂柳 (Bクラス):1002(変動なし)
一之瀬(Aクラス):1130→1030(-100)
龍園(Cクラス):973(変動なし)
堀北(Dクラス):771→871(+100)
僅差だが、まだ一之瀬たちがAクラスのままのようだ。
「かなり迫ってきたな!」「Aクラスが射程圏内に!」
ざわめく中、ドアが開く。
「随分と騒がしいですね」「何を言う。元気があって大いに結構ではないか」
「!? 貴方方は……?」
茶柱先生が目を丸くしており、予想外の登場、といった所だろう。
1人は中肉中背のアラフォーにも見える男、もう1人は腰まで伸びた長い黒髪の帝国時代の軍服を纏う100の齢を重ねたとは思えぬ若き男。
「始めまして、私は月城。坂柳理事長不在により代理として赴任してきました。以後よしなに」
「私は甘粕正彦。かつて大日本帝国軍にて大尉をし、今は歴史の語り部として生き恥を晒している凡夫だ。千手理事の代行として赴任してきた。活きの良い生徒が多いようでなによりだ」
2人の理事たちの言葉に困惑する生徒たち。
「さて、試験終わって浮き足立ってる君たちには申し訳ありませんが、明日簡単な試験を受けてもいます」
「!? そんな話私は聞いて「黙りたまえ茶柱先生」!?」
月城理事長代理の言葉に茶柱先生が口を挟もうとしたが甘粕が威圧して黙らせる。
「……何、クラス内で完結するので簡単な試験です。――内容はそう……試験名は『クラス内投票』。君たちにはクラス内で『称賛票』と『批判票』を3票ずつ使って、人気投票をしてほしいというものです」
「称賛票は1つ1ポイントで批判票が-1ポイント……つまり称賛票と批判票は相殺される。そしてその差し引きが終わったあと、最も得点の高い3人には上から10万、6万、3万PP、そして人気1位にはプロテクトポイントという1クラス1人までの、退学を1回無効化する使い捨ての保険が手にはいる」
甘粕のメリットに一部生徒が喜ぶが、高育仕草を忘れてない残りの面々は警戒心見せている。
「――代わりに、人気投票の下位3位の該当者についてはクラスにて退学か保留を決めてもらう。……安心するといい、保留は退学の救済と違って、2千万PPもCPも不要だ」
この言い方絶対アカンと警戒心が跳ね上がるクラスの過半。
「そして……この試験の結果、生徒数が43人以上の場合、CP半分喪失し半年間のCPによるPP取得が0になります。42人ならデメリットとメリットはなし。逆に41人以下ならCP+50と残ったクラス生徒全員に20万PPを、40人以下ならCP+200と生徒全員に40万PPを贈呈します。あと43人以上で回収されたCPは、43人未満のクラスに別途等分されますのでよしなに」
「……っ!」
クラスメイトを守りCPとPPを失うか、2人切り捨てて損得を無くすか、3人切り捨ててCPを狙うか……。
……平田のメンタルもだが、佐枝のメンタルもガタガタだな……。
「ああそれと……各クラス紋章持ちの3名は試験当日、投票の対象及び投票行為、不人気3人の退学と保留についても干渉されず、干渉できない。自由行動を認めるが校舎内立ち入り禁止とする」
「質問を受け付けます。質問者は挙手して下さいね」
理事長代理の言葉に平田が真っ先に手を挙げる。
理事長代理が発言を許可すると立ち上がり叫ぶように言う。
「クラス人数的にCクラスが一番有利な内容になっていると思います!」
「そうですね。しかし……こちらに移籍した椎名ひよりさんは学年全体を見ても学力が高く、坂柳理事長からはCクラスのリーダー候補として龍園君がつぶれたときのサブプランとして動くことを期待されていた生徒です。Cクラスは葛城君という生徒をAクラスとのトレードで手に入れたとは言え、引き抜かれた分人数差が生まれ不利を背負うことになっているのは事実。コチラとしては人数が少ない場合のデメリットが少ない試験を今回くらい用意するのが公平と判断したまでのこと」
「……」
「何か追加で質問ですか?」
「いえ……回答、ありがとうございます」
よろめくように座る平田代わりに桔梗が動く。
「……人気、不人気で同率が発生した場合はどうなりますか?」
「人気同率1位が複数でた場合、プロテクトポイントは高育側でランダムに配布します。同率1位が3人以上等の場合は本来1位から3位までに配布される予定のPPを山分けしてもらい、端数は切り捨てになります。1位2人、3位16人みたいな場合は同率1位で1位2位のPPを折半、3位のPPを16人で山分けとなります。雀の涙になりますが、まあそれはそれとしてよろしくお願いします」
「逆に人気下位3位が複数人いた場合、最下位から順に退学か保留の話し合いをしてもらう。退学確定した生徒は教室を出てもらい、下位3位の生徒の進退が確定したら試験は終了。明日の残り時間は他学年の授業横目に優雅な半ドンとなるわけだ。同率3位のがたくさんいる場合は、時間かかりそうではあるがな」
「は、半ドン?」「む?最近の学校は土曜日半日学校ではないのか?」「私の時代はまだ半ドンあったんですけどね」
池の言葉に甘粕が時代の流れを感じ、理事長代理もジェネレーションギャップを感じたらしい。
続いて鈴音が口を開く。
「賛成票、批判票は44……いえ、41人に投票のようですが、1人に複数票投じることや投票しないことは可能でしょうか」
「票は賛成批判問わず『3人に対して1票ずつ』入れねばならない。無論批判票と賛成票を同じ3人に入れても構わないし、自分に入れるのも問題はない。しかし各3票計六票は必ず投票せねばならず、投票の拒否は自主退学の意思表示と見なす。このとき人気下位で退学になる場合以外は試験結果後の人数カウントによる調整後に処理される。無論通常の自主退学措置と同様に、CP-100される。また投票拒否した場合通常行われる該当生徒の退学後ケアは一切行われない」
「他に質問は? ……なさそうですので、説明が終わってるであろう他のクラスへ質疑応答向かいますのでコレにて失礼」
そう言って去っていく理事長代理と甘粕。
「ホーム……ルーム、は、い、上……だ」
倒れかけた佐枝をすかさずささえる。
「茶柱先生!?」「大丈夫かよ!?」
「オレ……いや、恋、先生を保健室へ連れて行ってくれ」
「ん、わかった」
恋が抱え上げて教室を出ていく。
「……さて、平田……どうする?」
「ど、どうって……?」
「退学者を出さないならCP半減の上、半年間実質PP0、2人切り捨てれば現状維持、3人切り捨てればCPが手にはいるが……」
「誰も切り捨てられないよ!」
「……言っておくがソレを選ぶならオレはオレの思惑で動くことにする。PPの援助も一切当てにしないでくれ」
「そ、そんな「あのさ」」
ん?男子の東に市橋、本堂か……どういう組み合わせだ?
「その批判票3つ、オレたちに集めてくれ。それで……退学するから」
「!? どうしてだい!?」
平田の問いかけに3人は目をそらす。
「……言えない」「ごめんよ」「もう無理だから……せめてここで役に立ちたいかなって」
その3人の男子からある女の残滓を感じた。
「そんな、ダメだよ!高育に入ったのに!CPはまた集め直せるし、PP0でも生活できる!半年間我慢すればいいんだから!」
平田が叫ぶが……他の生徒は同調しない。
「まあ良いんじゃないか?そいつら夏休みから向こうリーシャちゃん嫌がってるのに粉かけてたし。おかげでオレが頼ってもらえてラッキーだけどよ」
リーシャの名前でビクッとする3人。
……?
リーシャが山内に頼る?おかしいな。
リーシャがその気なら曲がり角とかで気配遮断して追手を掻い潜れるし、なんならその身体能力ですり抜けて逃げるくらいできる。
大人しいのは目立たないようにするためだけで普通なら「ほっといてください!」って相手一喝して、それでも絡んでくるなら暗殺者仕込みの技でカメラのないところで半殺しくらいやるはずなんだけど……。
「御主人様、私も同じこと気になりました。コチラは私が見ておきますので、リーシャに確認を」
「え? あ、ああ」
オレはA……Bだっけ?とりあえず帆波のいるクラスへ向かうことにした。