ではどうぞ
――Side 頼久
冬休み突入直後のケヤキモールにて、
冬休みに入ってちょっと気が抜けた状態でフードコートで黄昏ていたのだが……なんか来た。
「貴方が……ゲルマニアグループ総帥後継者候補筆頭の……」
「チガウヨ」
「違うのか?」
「嘘で彼混乱させないの」
なんか華琳が編入生のイケメソ連れてきたと思ったら既成事実化させようとしてきたので全力で拒否しただけなのに……。
「千手頼久だ。ゲルマニアグループ総帥後継者候補筆頭は全力でボイコットしてる凡夫だよ」
「なる……ほど? リィン・オズボーンだ。父から恐ろしくも味方なら総帥を除けばこれほど頼もしい男は恐らく居ないと言わしめた傑物に挨拶をと」
「ガラじゃないんだがなぁ」
「立場が人を作るとも言うが……」
「昼行燈してたいねぇ」
「昼行燈……ああ、つまり必要ない立場で悠々自適ってことか。欧州の貴族でマトモなヤツが聞いたらノブリス・オブリージュ云々で怒りそうだな」
なんて呑気に会話してると――他にもぞろぞろとやってきた。
Aクラスになったせいで他3クラスからタゲ取ってしまった龍園のところの殺生院、朝倉をネルが案内しており、Bクラスに落ちた一之瀬クラスのオルランドと帆波(と影の護衛の如く側にいる千尋)がこっちになんか来たんだけど。
「よぉ、頼久。女日照りのこっちが血涙流したくなるくらいモテモテ野郎め。元気そうで何よりだ」
「悪いが一度手にしたら手放せないのは知ってるだろう、ランドルフ」
オレの言葉にジト目を向けるランディ
「その名前で呼ばないでくれよ」「親不孝なやつ」「ほっとけ」
すると殺生院が口を開く。
「なるほど、なかなかどうして不思議な気配の人ですね。……欲と堕落の泥に塗れながらも聖者の様に清らか……少し興味湧きました」
「勘弁してくれ」
「あらあら、私美甘さんたちから匙を投げられた問題児です。放置したら……どうなるのかわかりませんよ?」
「それは困ったな。暴走されても何とか出来るように目を光らせておかねばならないようだ」
「以後、よしなに。殺生院キアラでした」「ナレーション???」
最後に朝倉が口を開く。
「貴殿が千手頼久殿か。……確かにキラア殿の言うとおり、色欲に包まれているのに、ブレを感じぬ不思議な御仁だ。リィン殿も剣聖と呼ばれる域に至って居るようだが、頼久殿も同様と見受けられる。……後日お手合わせ願いたいものだ」
「……オレの力はほとんど総帥から継承され隔世遺伝で目覚めた、いわば借り物の力だぞ、本来なら虎の威を借る狐と後ろ指さされる立場だ」
事実だ。
気がついたら閃いて、少し触れば大抵のことはできる。
コレは……オレの力じゃない。
あの男の持つ力を引き継いだからできるだけ。
競馬でジョッキーが馬と息を合わせてるように、オレは力の手綱である程度制御してるだけに過ぎない。
「……変なところで評価低いな。その人には過ぎた力に呑まれず、御してるその精神力は間違いなく自身のモノなのに」
「オレなら自慢してるんだがなぁ」
「こういう人なのよ。でも、ただ強くて正しくて、完璧すぎたら……一緒に居るのは、難しいでしょうし、コレくらいの歪みなら丁度良いんじゃない?」
リィンの言葉にランディが頷き、華琳が肩をすくめる。
「確かに、正し過ぎるのも、清過ぎるのも、人には毒。過ぎたるは猶及ばざるが如し、ですからね」
「悟りにたどり着き、剣聖に至ろうと、性欲はありますし、食欲も睡眠欲もあります、なんなら承認欲求もガンガン湧いてきますからね」
キアラが頷き、朝倉も同意している。
「あれ?なんか集まってる? もしかして私連絡見落としてた!?」
声の方向くとそこにはライザが桔梗に案内されていたのか2人で……後ろに一部の男子達が尾行していた。
「……いや? 単にオレが黄昏れてたら彼らが集まってきただけだ」
「先輩の周り不思議と人近寄りませんからね……逆に一定の友好度になってるとそこが居心地良く感じるから不思議なんだけど……」
なにそれ初めて聞いたぞ?
「……分身や影とはいえ、ゲルマニアグループ総帥直々に目をかけられている才女がわが国にいたというのに、知られてなかったのは驚きではある」
「ウチど田舎だし、私はあの人に田舎の暮らしを愚痴ってただけだからね……まさか日本まで来るなんて思わなかったけど」
リィンの言葉にからからと笑いながら答えるライザ。
うーむ、日本でドイツ人の2人が故郷を思い会話する風景は……なんとも言えないものがあるな。
「そう言えばランディ、リィン、ライザは箸とか使えるのか?」
「魚の骨は、まだきついかなぁ」「だいたいマスターした」「全然無理!」
三者三様の答え。
「まあ、ライザは気長にやればいいさ。……せっかくだ、腹もいい具合に空いてるだろうし、
「おお、先輩お大尽様〜」「なら遠慮なく」「たくさん食べても……良いので?」「いいのか?」「流石ここでも外でもお金持ち様だな。遠慮なく個々の一番高いの頼ませてもらうぜ!」
本当に遠慮なくて自重しろよ馬鹿!とツッコミしたくなったのはここだけの話。
――Side シャルロット
「本当に一之瀬さんじゃなくて――私を選ぶつもり?」
「ああ、そうする」「一之瀬さんは優しすぎる」「表は彼女がまとめ、裏で貴女が操ればいい」
カラオケボックスで、同室にいる彼らの言葉に私は口をとがらせる。
「なんだろなー、私体のいい神輿や黒幕に仕立て上げられてる気分。でも……ボク好き勝手動くけどお互い様だよね?」
「……まあ、そうなるか。オレは構わない」
「最終的に、私たちが生き残ってAクラスにのし上がれるなら」
「善過ぎるがゆえに後手を強いられるのにも限度がある、それだけだからな」
他の面々もうなずいている。
「……まあいいか。それだけ望まれたのなら……ね」
イザークもCクラス陥落から重い腰あげそうだし、アルもアルでなにか動いてるみたいだからね……ボクも動けるように下準備しておこう。
……逆に呪那やネル、チョウジたちは龍園君と葛城君に丸投げしてるからか、全然動く気配ないのが不気味ではあるんだけど……リーシャが敵対よりの中立だから調べるためには動いてもらえなさそうだし、どうしたものかな……。