転生したら八千年の遠回りをしていた件 〜生まれ変わっても、君と出会う〜   作:蠱毒は孤独

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書き直しました。
なので、初投稿です。

対戦、よろしくお願いしま〜す!


1.待ちわびた邂逅

 観光客で賑わう人混みを掻き分けながら進んだ。目に映る街並みは古めかしく、千年以上前の平安の都を想起させる。お祈りは済ませ、お店も何軒か梯子した。少し離れた寺まで足を延ばして旧友に挨拶し、今は散策後に公園で休んでいる。

 

 あとは、帰るだけ。

 

 「ここで、生まれるのか」

 『もう生まれてるはずだよ』

 

 ここには一人で来ているが、同伴者がいる。言葉にすると変だが、見たものや聞いたものを共有しているので間違ってはないだろう。ヤチヨ。僕の大切な人だ。

 

 耳に掛けたサングラスの位置を直す。

 

 京の都。以前見た街並みを残す場所もあれば、まるで見覚えのない景色も増えた。この辺りでは、その入り混じり方がより顕著だった。

 

 「直接見に行くのは怖いかい?」

 『……うん』

 「どんな子なんだろうね」

 『視過ぎちゃダメだよ。乙女のプライバシーなのです』

 

 視過ぎる。十分に気をつけていることだ。視えるからこその問題もあるから。慣れていくにつれて減っていったが、無くなることはないだろう。だが、視えるからこその恩恵もある。

 視界いっぱいに広がる緑の景色を鮮明に共有できている。これ以上の恩恵はないだろう。

 

 「戻ろうか」

 『準備しないとだね』

 

 一瞬、探そうかとも思ったが無粋に思えて、座っていたベンチから腰を上げる。そのまま駅の方へ歩き出そうとした。

 

 『あ……』

 

 歓喜とも驚愕ともつかない、ただ震えた声音だけが耳朶を打った。

 

 帰路の先には一組の親子がいた。

 男は垂れた目尻をいっそう緩め、女の子の話に相槌を打っている。父親なのだろう。歩幅を狭め、小さな足取りに合わせていた。

 その手を握る女の子は父親譲りの目を大きく見開き、思ったことも感じたことも「あんね、あんね」と声にしている。今にも跳ね出しそうな足取りで、幸せを振りまいていた。

 ここは住宅街も近い。周りを散歩している家族連れは珍しくもない。なんでもない親子だ。だが、ヤチヨにとってはそうではないと次の一言で分かった。

 

 『……彩葉』

 

 彩葉。いつも話には聞いていた女の子の名前。話ではすでに少女と呼ぶ年頃だったが、今目の前にいる子は見るからに幼子だ。

 それでもわかるものなのだろう。ずっと求めていた人に出会えた。その感動と驚愕は覚えがある。だからこそ、邪魔したくはない。

 

 だけど、この親子はどうにも眩しいな。

 

 「幸せそうだね」

 『……ぁ……ァ』

 

 思わず漏れ出た一言に対して返事はなかった。あるのは抑えるような呼気だけ。……もうしばらくはここに居ようか。そう決めて再び腰を下ろそうとした。

 

 でも、その呼気は段々と荒いものに変わっていった。

 

 ……様子がおかしいぞ?

 

 

 

 『(*´Д`)ハァハァ……彩葉だぁイツキ彩葉だちび彩葉だよぉ!見て見てほっぺがもちもちしてる! 髪もちっちゃい! 手も足もちっちゃい! なのに顔はちゃんと彩葉だぁ!』

 

 『待って今こっち見た見たよね!? 幼き彩葉と目が合った! 時空を越えて今ヤッチョが認知された!イツキ保存! 最高画質で保存して! 予備も! 三重くらいバックアップして!』

 

 『小さい彩葉が小さい靴で一生懸命歩いておる……これはいけませんなぁ尊さが五臓六腑へ染み渡りますぞああっ笑った! イツキ今の見た!?』

 

 思わず眉間を指で押さえる。そうだった、大人しい様子が増えたから勘違いしていたが、今日も振り回されていたんだった。しおらしくしていたと思ったのは大きな間違いだったらしい。

 

 『あぁ!イツキ、目を閉じないで!もっと彩葉見せてぇぇえ!』

 

 誰のせいだと。

 

 「おにぃちゃん、目ぇ痛いん?大丈夫?」

 「すみません、突然」

 

 ほら、優しい子だったばかりに声をかけてきたぞ。親御さんもこっちに申し訳なさと心配が入り混じった眼差しを向けてきている。いらぬ心配をかけてしまった。

 

 お~い、ヤッチョさんや~い。……尊死してしまったか。

 

 「いえ、大丈夫です。紛らわしくて申し訳ございません」

 

 頭を下げる。もっと深く謝罪したいが、今の相手には迷惑をかけるだけだ。親御さんが小さく頷くのを見て、頭を上げた。そして、最初に心配をかけてしまった彩葉ちゃんの前で片膝をつき、目線を合わせる。

 

 「心配してくれたおかげで、もう治ったよ。ありがとう」

 

 本当に優しい子だ。見ず知らずの男が眉間を押さえていただけで声をかけてくれたのだから。その気持ちはこれからも大切にしてほしい。この子自身のためにも、ヤチヨのためにも。

 

 「うん、よかった!えへへ……」

 

 そう言ってはにかむ。……なるほど。優しい分、一人で抱え込みそうで少し心配になる。

 

 「観光で?」

 「ええ、見ての通り。……いいところです」

 

 手に持つ紙袋と足元のキャリーケースに視線をやる。

 

 「でしょ!」

 

 自信満々に胸を張っている。自分の住む町や身近なものが褒められるのは誰だって嬉しいものだ。

 

 「ええ」

 

 本当にいいところだ。

 

 「これも何かの縁でしょうか。よろしければ、お二人に。旅先で買ったものですが」

 

 紙袋から取り出したのはビーズで出来た小さな青い鳥のキーホルダーと七色の厄除けストラップ。ヤチヨと僕が衝動買いした品たちだ。

 

 「よろしいので?」

 「わぁ、かわええ!…ええの?」

 「はい、袖振り合うも他生の縁と言いますし」

 

 彩葉ちゃんは真っ先に青い鳥を手に取った。こちらに確認しながらも、返さないぞとばかりに手で包み込んでいる。取らないよ。

 親御さんも、本当にもらっていいのかこちらに視線を向けてくる。土産物としては少し上等なものだが、他に渡せる小物はない。それに何も渡さずにさようならというのも、少し寂しく思えた。

 

 だからだろうか、受け取ってもらえるようにと、普段は言わないことを口に出してしまった。

 

 「あなた方の幸せと、再会を祈って」

 

 幸せの青い鳥。厄除けの七色。どうかこの人たちに幸多からんことを。

 

 言ってから気づく。いい歳をして、何をカッコつけているんだろう。

 

 「……少し気障でしたね」

 「いえ、堂に入っておりましたよ」

 「かっこよかった!」

 

 胸をなでおろす。さて、そろそろこの邂逅も終わりにしよう。帰りは遠いから。膝についた草を払って立ち上がる。

 

 「では、僕はこれで」

 「ありがとうございました」

 「またね、バイバイ!」

 

 彩葉ちゃんは元気に手を振り、親御さんは丁寧に礼をしてくれた。

 

 「バイバイ」

 『またね、彩葉』

 

 礼をして、手を振り返す。二人もそれに応えたあと、僕たちとは反対方向へ歩いていった。また元気な声が聞こえてくる。

 

 「ヤチヨ、落ち着いた?」

 『ごみぃん、イツキ。もう大丈夫だよ』

 「帰ってからも、頑張ろうか」

 『ヤッチョ元気フルパワー!彩葉のためにもマルモリ頑張るぞい!』

 

 そうだ、今の僕たちには僕たちの目標がある。守るべきものも。なら後は進むだけ。

 

 そう意気込み、最後に遠くなっていく二人に目を向ける。

 多くが切望する幸せを体現する様子は、やはり眩しい。だけど、あの家族にはこれから多くの苦難があるのだろう。出会いや別れなどもあるかもしれない。ヤチヨは彩葉ちゃんが将来、家族関係で悩むことになると言っていた。喧嘩もするだろう、泣くだろう。もしかしたら口をきかないこともあるかもしれない。でも、最後は笑い合えるように。

 

 僕もこの我儘で寂しがり屋な子をその輪に繋ぐために。繰り返さないために。これから来る子のためにも。

 

 

 今はただ、あの親子へ祝福を。

 少しでも助けになればと願い、道を覗いた。

 

 

 

 

 

 

 死相が視えた

 

 

 

 

 

 ◆

 

 

 

 

 

 どこに行ったんだ?

 

 探した。

 

 探して、探して、探して、探して、探して、探して、探して、探して、

 

 それでも足りなくて、何度も同じ場所を探した。

 

 探し続けた。

 

 家にも、大学にも行った。お気に入りの喫茶にだって、いつもの散策コースにも行った。

 

 一度では足りず何度も回った。時間を変えれば、道を変えれば、次こそ見つかる気がした。

 

 それでも、どこにもいなかった。

 隣にあるはずのいつもの笑い声が聞こえない。

 引っ張られる筈の手が空を切る。

 

 指先には、まだ手を取られた時の感覚が残っている。けれど、どれだけ伸ばしても触れるものはなかった。

 

 見つからないことと、いないことは違う。そう思い続けていた。

 けれど、何度同じ場所へ戻ってもその違いは少しずつ失われていった。

 

 時間の感覚が曖昧になる。

 理解とともに心に穴が開いていく。

 

 もう いないんだね

 

 目の前が暗くなる 何も見えない 聞こえない 感じなくなっていく

 

 君が好きだと言ってくれた この目だけは

 

 なくしたくないな

 

 また同じ目で 君を見つめたいな

 

 《確認しました。肉体構成情報の取得を試行……情報不足により再現不能。失敗しました。瞳の形質情報を固定……成功しました。》

 

 君が好きだった僕が 残る

 

 《続けて、現地生命種を基盤とする転生処理を実行…………成功しました。》

 

 姿が違っても いい

 

 思い出も 忘れたくないな

 

 《確認しました。ユニークスキル『追憶者』を獲得……成功しました。》

 

 これで君を 忘れずにいられる

 

 今度は 僕が君のところへ 行くよ

 

 《確認しました。エクストラスキル『転移』を獲得……成功しました。》

 

 どこへ行けばいいか分からなくても 立ち止まるつもりは ない

 

 絶対に 次は

 

 君と一緒に 僕たちが望んだ未来まで行くから

 

 僕が その道標になってみせるからね

 

 《確認しました。ユニークスキル『先導者』を獲得……成功しました。続けて、ユニークスキル『先導者』をユニークスキル『道標』へ進化……成功しました。》

 

 この願い だけは 沈まないように

 

 ああ いしきが とけていく

 

 

 




・藤原一継(フジワライツキ)
本作の主人公。
転スラ世界からやってきた男。
ヤチヨと八千年を共にした。
髪は黒のウルフヘア、瞳は淡い緑を帯びた橙金色。
ちょっと幸運を授けるつもりで視ただけ。
視るだけ!視るだけだから!

・月見ヤチヨ
皆さんご存じ、電子の歌姫。
幼き彩葉ちゃんとの邂逅で、情緒が月の彼方へ打ち上がった。
湿っぽいヤッチョ? そこにないならないよ。
代わりに五臓六腑で尊さを受信するヤッチョがいます。

・????
獲得能力
『転移』知覚した地点へ瞬間移動する。
『追憶者』既知の情報を記録する。
『道標』望む存在・場所・未来へ至る道筋を示す。
進化前能力
『先導者』自身と対象を、定めた目的地まで導く。
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