転生したら八千年の遠回りをしていた件 〜生まれ変わっても、君と出会う〜 作:蠱毒は孤独
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18日は2本投稿します
みんなムビチケは持ったか!復活上映、行くぞぉ!
世紀の竹取合戦、開戦!
ツクヨミ特設スタジアムの中央に僕たち三人が並んでいた。
右には竹束をまとめた巨大なハンマーを担ぐかぐや。左にはいつもの狐の着ぐるみに収まったいろP――彩葉さん。そして僕は葛原イッキとして二人の隣に立っている。
葛原イッキとして、かぐやと同じチームに入るのは今日が初めてだ。
その初共演がよりにもよってブラックオニキスとの三対三、三本勝負。
世紀の竹取合戦。
随分と大きなところから始まったものだと思っていると、隣のかぐやが急にこちらを向いた。
「ねえ、二人とも手出して!」
「手?」
「うん。三人のやつ作る」
「今から?」
「今思いついたから今やるの!」
狐の頭がゆっくりとかぐやへ向く。
「そういうのって普通、事前に考えておかない?」
「今から考えたら、ここから先は事前じゃん」
「何?その理屈」
「まあまあ。とりあえずやってみようか」
「さすがイツキ! ほら、彩葉も!」
「はいはい」
三人で片手を中央へ寄せる。
まずかぐやが人差し指だけを伸ばした。
「いち!」
僕と彩葉さんも合わせる。三本の人差し指の先が中央で軽く触れた。
「次、に!」
そのまま中指を開いてVサイン。三つのVを揃えたところで、かぐやが一度だけ手を外へ開く。僕たちもそれに合わせた。
「で、最後――さんかく!」
中指を畳み、代わりに親指を開く。
親指と人差し指。三人がそれぞれ一つの角を受け持つように指先を合わせると、中央に小さな三角形が完成した。
「いち! に! さんかく! ほら、完璧!」
「今思いついた割には、ちゃんとできてるね」
「でしょ?」
「そこはちょっと悔しい」
「なんで!?」
「勢いだけで始めたのに成立してるから」
「彩葉ひどーい。イツキはいいと思うよね?」
「僕に判定を振るんだ」
「三人のやつなんだから、三人で決めるの」
「じゃあ一票。いいと思うよ」
「ほら!」
「二対一にするのずるいわ」
そのやり取りを拾った実況席からすぐに声が飛んできた。
『開始前から彩葉! イツキ! 今日もかぐや選手、活動名よりリアル側の名前を優先しております!』
『もう恒例ですね』
『伝統芸です! 誰も止められません!』
彩葉さんが狐の頭のまま小さく天を仰ぐ。
「……もうそこは諦めてる」
「え、諦められてたの?」
「かぐやに聞かせる方をね」
「じゃあ問題なし!」
「そうは言ってない」
三人の手が離れる。
僕たちの準備はこれで終わった。
問題は――。
「……黒鬼は?」
かぐやが正面を見る。
顔合わせのために用意された中央ステージ。その向かい側だけがきれいに空いていた。
『えー……ブラックオニキスの姿が見えません』
『時間には入っています。中継、確認できますか?』
一拍置いて上空の大型モニターが切り替わった。
Black onyx、帝アキラ。雷。乃依。
三人とも映っている。
しかもそれぞれ一台ずつ虎バイクに乗っていた。虎がバイクのタイヤを前脚と後脚で挟み込み、そのまま走行する、あの独特な移動手段だ。
『いた! ……いや、どこだそこ!?』
『位置情報を確認します』
さらに一拍。
『……ステージ内ですね』
『ステージ内!?』
『本戦では使用しない区画を走っています』
直後、遠くから響いてきた走行音が一気に大きくなり、次の瞬間には三台の虎バイクがステージ脇から飛び込んでくる。
アキラさん、雷さん、乃依さん。
三台が勢いよく中央へ滑り込み、僕たちの正面でほぼ同時に止まった。
『ブラックオニキス、派手に到着です!』
アキラさんが虎バイクから降りる。
その瞬間、隣でかぐやが一歩前へ出た。
「どらあぁ、帝おぉ! おっそい! 王者だろうがなんだろうが、今日はかぐやたちがボッコボコにするから!」
アキラさんが口元を上げる。
「いいねえ、その前傾姿勢。かわい〜」
「かわいい言うな!」
「そこまで前のめりなら、真正面から潰し合えそうだなって」
「先に潰れるのはそっち!」
「じゃあ試合で証明してよ」
「言われなくてもするし!」
二人の視線が真正面からぶつかる。
軽口ではある。でもそこに遠慮はない。
目の前にいる相手を倒して、自分たちが勝つ。その一点だけできれいに噛み合っていた。
「かぐや、まだ試合始まってないから」
「分かってるって!」
「ハンマー持って一歩前に出ながら言われても」
「殴ってないからセーフ!」
「基準がおかしい」
アキラさんが今度は僕へ視線を向ける。
「イッキさんも今日はよろしく」
「こちらこそ。せっかく同じ試合に入るんだから、ちゃんと勝ちに行くよ」
「それでこそ」
雷さんも虎バイクから降り、乃依さんは最後までこちらを眺めてから地面へ降りた。
短い顔合わせはそこで終わる。
転送の光が視界を覆った。
次に開けたとき、そこはもうSENGOKUの戦場だった。
三本のレーン。両陣営の天守閣。櫓、その前を守る牛鬼。そこへ続く道を阻むミニオン。
僕は大剣の柄を握る。
『第一戦、開始!』
『配置がはっきり分かれました。トップは帝選手一人に対して、かぐや・いろPの二人。ボトムには雷選手と乃依選手。葛原イッキ選手へ二枚を当てています』
『初手からイッキ対策に二人!』
『単純な人数差ではありません。雷選手は進路を制限できる。乃依選手は射線と状態変化で選択を迫れる。イッキ選手に自由に仕事をさせないための組み合わせに見えます』
なるほど。
ずいぶん分かりやすく狙われたものだ。
正面から来たミニオンを大剣の横薙ぎでまとめて払う。そのまま刃を返し、奥へビームを走らせた。
光線の向こうで雷さんが動く。
芭蕉扇が大楯へ変形し、僕の進路へ正面から滑り込んだ。
剣を振り下ろす。重い衝撃が腕へ返ってくる。
盾は退いた。けれど崩れない。
そこへ斜め後方から矢が飛んできた。
身体を捻ってかわす。
二射目。
今度は避けた先へ来る。
足を止めず大剣の腹で弾く。視界の端で乃依さんがすでに次の矢をつがえていた。
「イッキさん、忙しそう」
「二人掛かりで来てる側に言われると、あんまり同情されてる気がしないな」
「してないよ? 忙しくするために二人で来てるし」
「やっぱりそうだよね」
雷さんの盾が前へ出る。真正面から押し返すのは時間がかかる。なら狙うのは盾じゃない。
僕は大剣を引き、横へ踏み込んだ。
雷さんも追う。
一歩。
二歩。
僕を塞ぐために盾の角度が変わった瞬間、その脇を抜くようにビームを撃つ。
乃依さんが射線から外れた。
「おっと」
その一瞬で前へ出る。
大剣を振り上げる。
乃依さんへ届く――直前、横から大楯が割り込んだ。
剣と盾が激突する。
「そう簡単には通さん」
「分かってる。だから通すんだよ」
足を踏み込み、さらに押す。雷さんの身体がわずかに下がる。
その向こうから乃依さんの矢。
顔を逸らす。頬のすぐ横を光が抜けた。
剣を引き戻すより先に雷さんが盾を前へ押し込んでくる。
僕は受けずに横へ逃がし、そのまま盾の側面へ回って大剣を振る。
今度は雷さんが身体ごと向きを変えて受ける。
乃依さんは撃つ。雷さんは塞ぐ。
僕が一人を攻めれば、もう一人の自由が増える。
だから二人とも放っておけない。
『激しい! イッキ選手、二人相手でも前へ出ます!』
『雷選手の盾を正面から崩そうとせず、位置をずらして乃依選手へ圧を掛けています。ただそのたびに雷選手が射線と進路の間へ戻ってくる』
乃依さんの矢が三本、間隔を変えて飛んでくる。
一射目を剣で弾き、二射目を踏み込んで避ける。
三射目を大剣で受けた瞬間、雷さんが突っ込んできた。
盾を正面から受ける。
押される。
けれど後ろへは下がらない。
剣の柄を両手で握り直し、盾ごと押し返す。
「重いな」
「そっちこそ」
雷さんが低く返す。
その背後で乃依さんが少し位置を変えた。
「配信で見てたときから思ってたけど、イッキさんってよく見てるよね」
「褒めてくれるなら素直に受け取っておくよ」
「自分の前だけじゃなくて、味方も、敵も、マップも。今もそう」
「見なくていい状況なら、もう少し楽なんだけどね」
「じゃあもっと忙しくしよっか」
弓の向きが変わった。
僕じゃない。
トップ側。
直接届くのか、どこまで通るのか。ここからでは判断しきれない。それでも無視する理由はない。
「かぐや、彩葉さん。乃依さんがそっちへ射線振った。気をつけて」
「りょーかい!」
「こっちは見ます」
オープンチャットへ短く伝える。
同時に僕は雷さんの盾へ大剣を叩き込んだ。
もう一度。
さらに一撃。
盾の向きを外へ押し、空いたところへ身体を滑り込ませる。
乃依さんへ詰める。
「二人で僕を見てるなら、そっちだって余裕はないだろ」
「うん。だから――」
乃依さんが僕を見る。
さっきまでトップへ向いていた弓が、もうこちらを向いていた。
「今がいちばん楽」
矢が放たれる。
避けようと足へ力を入れた瞬間、動作が鈍った。
けれど雷さんはもう動いている。
逃げようとした側へ大楯が滑り込み、進路を完全に閉じた。
反対へ切り返す。
乃依さんの二射目。
大剣を振り上げて弾く。
三射目。
さらに雷さんが詰める。
前。
盾。
横。
矢。
後ろへ下がれば、そのまま囲われる。
なら前だ。
「まだ!」
大剣を振り抜き、雷さんの盾へ全力で叩き込んだ。
衝撃で雷さんが半歩下がる。
その隙間へビームを撃つ。
乃依さんが身を引く。
届かない。
でも二人の形は一度崩れた。
そこへ踏み込もうとした。
「惜しい」
乃依さんの声。
次の矢が横から入る。
身体を捻る。
完全には避けきれない。
残ったHPが大きく削られる。
雷さんが再び前へ出る。
今度は盾で殴るためじゃない。
僕が乃依さんへ届く道を身体ごと塞ぐ。
「ここは通さん」
「……徹底してるな!」
剣を振る。
盾が受ける。
もう一度。
その向こうで乃依さんが弓を引いた。
最後まで剣を止めるつもりはなかった。
大剣を横薙ぎに振り切る。
雷さんの盾が大きく流れる。
同時に乃依さんの矢が僕へ届いた。
視界いっぱいに撃破表示が開く。
『葛原イッキ、撃破――!』
『取り切った! 雷・乃依ペア、第一戦でイッキ選手を落としました!』
『簡単な二対一ではありませんでしたが、最後まで役割を崩しませんでしたね。雷選手が進路を塞ぎ、乃依選手がその外から選択を迫り続けました』
復帰待ちの表示が出る。
やられた。
手を抜いたわけじゃない。
二人とも、ちゃんと強い。
その間にも試合は止まらない。
トップ側のオープンチャットから、アキラさんの声が聞こえてきた。
「いろPさあ。やっぱ中、彩葉だろ」
「チガウ。オレイロハチガウ」
「いや、彩葉だって」
「イロPデス」
彩葉さんの声は妙に淡々としている。
『ん? 帝選手、いろPを彩葉だと断定していますが……』
『彩葉という名前自体は、かぐや選手が以前から何度も呼んでいますよね』
「彩葉〜、そっち行った!」
「……かぐや。今その名前で呼ぶ?」
「え? いつも呼んでるじゃん」
「……そうだったね」
少しして、実況の声が跳ねた。
『いろP、狐の着ぐるみを脱いだー!』
『この状況なら、ヒットボックスを小さくして動きやすさを取った形でしょう』
ため息交じりの彩葉さんの声。
「もういい。この状態で大きい当たり判定まで背負う方が面倒」
「やっと脱いだ。そんなに警戒しなくてもいいのに」
「誰のせいだと思ってるの」
「お兄ちゃんがよしよししてあげようか?」
「いらない。試合中」
――お兄ちゃん。
一瞬、思考が止まった。
『……お兄ちゃん?』
『帝選手、今そう言いましたね』
『えっ。帝アキラと、いろPが兄妹!?』
アキラさんが、彩葉さんの兄。
それは知らなかった。
新しい情報を頭へ入れた直後、別の鐘の音が戦場へ響いた。
『ボトム、ブラックオニキスが取ったぁぁぁ! 雷・乃依ペア、そのまま牛鬼から鐘まで押し切りました!』
『これでブラックオニキスが一櫓。イッキ選手を落とした時間を、そのまま櫓へ繋げましたね』
復帰表示が消える。
僕は大剣を握り直し、すぐに走り出した。
でも、マップを見た瞬間に分かる。
トップも、かなり厳しい。
アキラさんが鐘へ迫っている。かぐやと彩葉さんも追っているけれど、ほんの少しだけ距離がある。
『イッキ選手、復帰! ですがトップも決着目前!』
『帝選手は対人戦へ付き合わず、もう鐘を見ています!』
「帝、待てー!」
「待つわけないでしょ」
「むかつく!」
僕もトップへ進路を取る。
間に合わないと分かっていても、止まる理由はない。
翼を広げる。
その直後。
鐘が鳴った。
『帝選手、取ったぁぁぁぁ!』
二つ目。
『両櫓、ブラックオニキス! 第一戦はコールド決着です!』
視界に結果表示が開く。
第一戦。
ブラックオニキス、勝利。
葛原イッキのKASSENスペック(第一戦終了時点)
【プレイヤー名】葛原イッキ
【ポジション】前衛寄りアタッカー(兼・保護者枠)
【今回の役割】ボトムレーン単騎担当(※なお相手はプロの二人組)
◆ メイン兵装:大剣(ビーム射出機能付き)
「大剣の切っ先からビームが出たら最高にかっこいい」という男児のロマンを詰め込んだ完成形ロマン武器。
デカい・斬れる・ビームも出る。斬撃とビームの使い分けで大体の相手は完封できるが、第一戦では雷の盾が想像以上に硬かった。
◆ 特殊装備:烏羽モチーフの大型コート
漆黒の羽をあしらったトレードマーク。
翼として展開・飛行でき、移動に大変便利。
第一戦でも颯爽と飛んでいった。
そして落ちた。
◆ ウルト(必殺技):【□□□】
第一戦では未使用。
詳細はもう少しお待ちください。
◆ 戦闘スタイル:
・基本は「味方が動きやすい盤面を作る」職人気質。
・今回は普通に勝ちたかったので、手加減なしで勝ちに行った。
・一拍置いて戦況全体を見る癖がある。
◆ 第一戦終了後の本人コメント:
「手加減なしで行ったんですが、普通に二人掛かりで落とされました。雷さんの盾が硬いし乃依さんの矢が痛い。あと復帰待ちの間に櫓落とされたの、普通に悔しい」
見ていただきありがとうございました〜
次回、第2戦