転生したら八千年の遠回りをしていた件 〜生まれ変わっても、君と出会う〜   作:蠱毒は孤独

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18日は2本投稿します
みんなムビチケは持ったか!復活上映、行くぞぉ!

世紀の竹取合戦、開戦!



19.世紀の竹取合戦、第一戦

 

 ツクヨミ特設スタジアムの中央に僕たち三人が並んでいた。

 

 右には竹束をまとめた巨大なハンマーを担ぐかぐや。左にはいつもの狐の着ぐるみに収まったいろP――彩葉さん。そして僕は葛原イッキとして二人の隣に立っている。

 

 葛原イッキとして、かぐやと同じチームに入るのは今日が初めてだ。

 

 その初共演がよりにもよってブラックオニキスとの三対三、三本勝負。

 

 世紀の竹取合戦。

 

 随分と大きなところから始まったものだと思っていると、隣のかぐやが急にこちらを向いた。

 

 「ねえ、二人とも手出して!」

 「手?」

 「うん。三人のやつ作る」

 「今から?」

 「今思いついたから今やるの!」

 

 狐の頭がゆっくりとかぐやへ向く。

 

 「そういうのって普通、事前に考えておかない?」

 「今から考えたら、ここから先は事前じゃん」

 「何?その理屈」

 「まあまあ。とりあえずやってみようか」

 「さすがイツキ! ほら、彩葉も!」

 「はいはい」

 

 三人で片手を中央へ寄せる。

 

 まずかぐやが人差し指だけを伸ばした。

 

 「いち!」

 

 僕と彩葉さんも合わせる。三本の人差し指の先が中央で軽く触れた。

 

 「次、に!」

 

 そのまま中指を開いてVサイン。三つのVを揃えたところで、かぐやが一度だけ手を外へ開く。僕たちもそれに合わせた。

 

 「で、最後――さんかく!」

 

 中指を畳み、代わりに親指を開く。

 

 親指と人差し指。三人がそれぞれ一つの角を受け持つように指先を合わせると、中央に小さな三角形が完成した。

 

 「いち! に! さんかく! ほら、完璧!」

 「今思いついた割には、ちゃんとできてるね」

 「でしょ?」

 「そこはちょっと悔しい」

 「なんで!?」

 「勢いだけで始めたのに成立してるから」

 「彩葉ひどーい。イツキはいいと思うよね?」

 「僕に判定を振るんだ」

 「三人のやつなんだから、三人で決めるの」

 「じゃあ一票。いいと思うよ」

 「ほら!」

 「二対一にするのずるいわ」

 

 そのやり取りを拾った実況席からすぐに声が飛んできた。

 

 『開始前から彩葉! イツキ! 今日もかぐや選手、活動名よりリアル側の名前を優先しております!』

 『もう恒例ですね』

 『伝統芸です! 誰も止められません!』

 

 彩葉さんが狐の頭のまま小さく天を仰ぐ。

 

 「……もうそこは諦めてる」

 「え、諦められてたの?」

 「かぐやに聞かせる方をね」

 「じゃあ問題なし!」

 「そうは言ってない」

 

 三人の手が離れる。

 

 僕たちの準備はこれで終わった。

 

 問題は――。

 

 「……黒鬼は?」

 

 かぐやが正面を見る。

 

 顔合わせのために用意された中央ステージ。その向かい側だけがきれいに空いていた。

 

 『えー……ブラックオニキスの姿が見えません』

 『時間には入っています。中継、確認できますか?』

 

 一拍置いて上空の大型モニターが切り替わった。

 

 Black onyx、帝アキラ。雷。乃依。

 

 三人とも映っている。

 

 しかもそれぞれ一台ずつ虎バイクに乗っていた。虎がバイクのタイヤを前脚と後脚で挟み込み、そのまま走行する、あの独特な移動手段だ。

 

 『いた! ……いや、どこだそこ!?』

 『位置情報を確認します』

 

 さらに一拍。

 

 『……ステージ内ですね』

 『ステージ内!?』

 『本戦では使用しない区画を走っています』

 

 直後、遠くから響いてきた走行音が一気に大きくなり、次の瞬間には三台の虎バイクがステージ脇から飛び込んでくる。

 

 アキラさん、雷さん、乃依さん。

 

 三台が勢いよく中央へ滑り込み、僕たちの正面でほぼ同時に止まった。

 

 『ブラックオニキス、派手に到着です!』

 

 アキラさんが虎バイクから降りる。

 

 その瞬間、隣でかぐやが一歩前へ出た。

 

 「どらあぁ、帝おぉ! おっそい! 王者だろうがなんだろうが、今日はかぐやたちがボッコボコにするから!」

 

 アキラさんが口元を上げる。

 

 「いいねえ、その前傾姿勢。かわい〜」

 「かわいい言うな!」

 「そこまで前のめりなら、真正面から潰し合えそうだなって」

 「先に潰れるのはそっち!」

 「じゃあ試合で証明してよ」

 「言われなくてもするし!」

 

 二人の視線が真正面からぶつかる。

 

 軽口ではある。でもそこに遠慮はない。

 

 目の前にいる相手を倒して、自分たちが勝つ。その一点だけできれいに噛み合っていた。

 

 「かぐや、まだ試合始まってないから」

 「分かってるって!」

 「ハンマー持って一歩前に出ながら言われても」

 「殴ってないからセーフ!」

 「基準がおかしい」

 

 アキラさんが今度は僕へ視線を向ける。

 

 「イッキさんも今日はよろしく」

 「こちらこそ。せっかく同じ試合に入るんだから、ちゃんと勝ちに行くよ」

 「それでこそ」

 

 雷さんも虎バイクから降り、乃依さんは最後までこちらを眺めてから地面へ降りた。

 

 短い顔合わせはそこで終わる。

 

 転送の光が視界を覆った。

 

 次に開けたとき、そこはもうSENGOKUの戦場だった。

 

 三本のレーン。両陣営の天守閣。櫓、その前を守る牛鬼。そこへ続く道を阻むミニオン。

 

 僕は大剣の柄を握る。

 

 『第一戦、開始!』

 『配置がはっきり分かれました。トップは帝選手一人に対して、かぐや・いろPの二人。ボトムには雷選手と乃依選手。葛原イッキ選手へ二枚を当てています』

 『初手からイッキ対策に二人!』

 『単純な人数差ではありません。雷選手は進路を制限できる。乃依選手は射線と状態変化で選択を迫れる。イッキ選手に自由に仕事をさせないための組み合わせに見えます』

 

 なるほど。

 

 ずいぶん分かりやすく狙われたものだ。

 

 正面から来たミニオンを大剣の横薙ぎでまとめて払う。そのまま刃を返し、奥へビームを走らせた。

 

 光線の向こうで雷さんが動く。

 

 芭蕉扇が大楯へ変形し、僕の進路へ正面から滑り込んだ。

 

 剣を振り下ろす。重い衝撃が腕へ返ってくる。

 

 盾は退いた。けれど崩れない。

 

 そこへ斜め後方から矢が飛んできた。

 

 身体を捻ってかわす。

 

 二射目。

 

 今度は避けた先へ来る。

 

 足を止めず大剣の腹で弾く。視界の端で乃依さんがすでに次の矢をつがえていた。

 

 「イッキさん、忙しそう」

 「二人掛かりで来てる側に言われると、あんまり同情されてる気がしないな」

 「してないよ? 忙しくするために二人で来てるし」

 「やっぱりそうだよね」

 

 雷さんの盾が前へ出る。真正面から押し返すのは時間がかかる。なら狙うのは盾じゃない。

 

 僕は大剣を引き、横へ踏み込んだ。

 

 雷さんも追う。

 

 一歩。

 

 二歩。

 

 僕を塞ぐために盾の角度が変わった瞬間、その脇を抜くようにビームを撃つ。

 

 乃依さんが射線から外れた。

 

 「おっと」

 

 その一瞬で前へ出る。

 

 大剣を振り上げる。

 

 乃依さんへ届く――直前、横から大楯が割り込んだ。

 

 剣と盾が激突する。

 

 「そう簡単には通さん」

 「分かってる。だから通すんだよ」

 

 足を踏み込み、さらに押す。雷さんの身体がわずかに下がる。

 

 その向こうから乃依さんの矢。

 

 顔を逸らす。頬のすぐ横を光が抜けた。

 

 剣を引き戻すより先に雷さんが盾を前へ押し込んでくる。

 

 僕は受けずに横へ逃がし、そのまま盾の側面へ回って大剣を振る。

 

 今度は雷さんが身体ごと向きを変えて受ける。

 

 乃依さんは撃つ。雷さんは塞ぐ。

 

 僕が一人を攻めれば、もう一人の自由が増える。

 

 だから二人とも放っておけない。

 

 『激しい! イッキ選手、二人相手でも前へ出ます!』

 『雷選手の盾を正面から崩そうとせず、位置をずらして乃依選手へ圧を掛けています。ただそのたびに雷選手が射線と進路の間へ戻ってくる』

 

 乃依さんの矢が三本、間隔を変えて飛んでくる。

 

 一射目を剣で弾き、二射目を踏み込んで避ける。

 

 三射目を大剣で受けた瞬間、雷さんが突っ込んできた。

 

 盾を正面から受ける。

 

 押される。

 

 けれど後ろへは下がらない。

 

 剣の柄を両手で握り直し、盾ごと押し返す。

 

 「重いな」

 「そっちこそ」

 

 雷さんが低く返す。

 

 その背後で乃依さんが少し位置を変えた。

 

 「配信で見てたときから思ってたけど、イッキさんってよく見てるよね」

 「褒めてくれるなら素直に受け取っておくよ」

 「自分の前だけじゃなくて、味方も、敵も、マップも。今もそう」

 「見なくていい状況なら、もう少し楽なんだけどね」

 「じゃあもっと忙しくしよっか」

 

 弓の向きが変わった。

 

 僕じゃない。

 

 トップ側。

 

 直接届くのか、どこまで通るのか。ここからでは判断しきれない。それでも無視する理由はない。

 

 「かぐや、彩葉さん。乃依さんがそっちへ射線振った。気をつけて」

 「りょーかい!」

 「こっちは見ます」

 

 オープンチャットへ短く伝える。

 

 同時に僕は雷さんの盾へ大剣を叩き込んだ。

 

 もう一度。

 

 さらに一撃。

 

 盾の向きを外へ押し、空いたところへ身体を滑り込ませる。

 

 乃依さんへ詰める。

 

 「二人で僕を見てるなら、そっちだって余裕はないだろ」

 「うん。だから――」

 

 乃依さんが僕を見る。

 

 さっきまでトップへ向いていた弓が、もうこちらを向いていた。

 

 「今がいちばん楽」

 

 矢が放たれる。

 

 避けようと足へ力を入れた瞬間、動作が鈍った。

 

 けれど雷さんはもう動いている。

 

 逃げようとした側へ大楯が滑り込み、進路を完全に閉じた。

 

 反対へ切り返す。

 

 乃依さんの二射目。

 

 大剣を振り上げて弾く。

 

 三射目。

 

 さらに雷さんが詰める。

 

 前。

 

 盾。

 

 横。

 

 矢。

 

 後ろへ下がれば、そのまま囲われる。

 

 なら前だ。

 

 「まだ!」

 

 大剣を振り抜き、雷さんの盾へ全力で叩き込んだ。

 

 衝撃で雷さんが半歩下がる。

 

 その隙間へビームを撃つ。

 

 乃依さんが身を引く。

 

 届かない。

 

 でも二人の形は一度崩れた。

 

 そこへ踏み込もうとした。

 

 「惜しい」

 

 乃依さんの声。

 

 次の矢が横から入る。

 

 身体を捻る。

 

 完全には避けきれない。

 

 残ったHPが大きく削られる。

 

 雷さんが再び前へ出る。

 

 今度は盾で殴るためじゃない。

 

 僕が乃依さんへ届く道を身体ごと塞ぐ。

 

 「ここは通さん」

 「……徹底してるな!」

 

 剣を振る。

 

 盾が受ける。

 

 もう一度。

 

 その向こうで乃依さんが弓を引いた。

 

 最後まで剣を止めるつもりはなかった。

 

 大剣を横薙ぎに振り切る。

 

 雷さんの盾が大きく流れる。

 

 同時に乃依さんの矢が僕へ届いた。

 

 視界いっぱいに撃破表示が開く。

 

 『葛原イッキ、撃破――!』

 『取り切った! 雷・乃依ペア、第一戦でイッキ選手を落としました!』

 『簡単な二対一ではありませんでしたが、最後まで役割を崩しませんでしたね。雷選手が進路を塞ぎ、乃依選手がその外から選択を迫り続けました』

 

 復帰待ちの表示が出る。

 

 やられた。

 

 手を抜いたわけじゃない。

 

 二人とも、ちゃんと強い。

 

 その間にも試合は止まらない。

 

 トップ側のオープンチャットから、アキラさんの声が聞こえてきた。

 

 「いろPさあ。やっぱ中、彩葉だろ」

 「チガウ。オレイロハチガウ」

 「いや、彩葉だって」

 「イロPデス」

 

 彩葉さんの声は妙に淡々としている。

 

 『ん? 帝選手、いろPを彩葉だと断定していますが……』

 『彩葉という名前自体は、かぐや選手が以前から何度も呼んでいますよね』

 

 「彩葉〜、そっち行った!」

 「……かぐや。今その名前で呼ぶ?」

 「え? いつも呼んでるじゃん」

 「……そうだったね」

 

 少しして、実況の声が跳ねた。

 

 『いろP、狐の着ぐるみを脱いだー!』

 『この状況なら、ヒットボックスを小さくして動きやすさを取った形でしょう』

 

 ため息交じりの彩葉さんの声。

 

 「もういい。この状態で大きい当たり判定まで背負う方が面倒」

 「やっと脱いだ。そんなに警戒しなくてもいいのに」

 「誰のせいだと思ってるの」

 「お兄ちゃんがよしよししてあげようか?」

 「いらない。試合中」

 

 ――お兄ちゃん。

 

 一瞬、思考が止まった。

 

 『……お兄ちゃん?』

 『帝選手、今そう言いましたね』

 『えっ。帝アキラと、いろPが兄妹!?』

 

 アキラさんが、彩葉さんの兄。

 

 それは知らなかった。

 

 新しい情報を頭へ入れた直後、別の鐘の音が戦場へ響いた。

 

 『ボトム、ブラックオニキスが取ったぁぁぁ! 雷・乃依ペア、そのまま牛鬼から鐘まで押し切りました!』

 『これでブラックオニキスが一櫓。イッキ選手を落とした時間を、そのまま櫓へ繋げましたね』

 

 復帰表示が消える。

 

 僕は大剣を握り直し、すぐに走り出した。

 

 でも、マップを見た瞬間に分かる。

 

 トップも、かなり厳しい。

 

 アキラさんが鐘へ迫っている。かぐやと彩葉さんも追っているけれど、ほんの少しだけ距離がある。

 

 『イッキ選手、復帰! ですがトップも決着目前!』

 『帝選手は対人戦へ付き合わず、もう鐘を見ています!』

 

 「帝、待てー!」

 「待つわけないでしょ」

 「むかつく!」

 

 僕もトップへ進路を取る。

 

 間に合わないと分かっていても、止まる理由はない。

 

 翼を広げる。

 

 その直後。

 

 鐘が鳴った。

 

 『帝選手、取ったぁぁぁぁ!』

 

 二つ目。

 

 『両櫓、ブラックオニキス! 第一戦はコールド決着です!』

 

 視界に結果表示が開く。

 

 第一戦。

 

 ブラックオニキス、勝利。

 

 





葛原イッキのKASSENスペック(第一戦終了時点)
【プレイヤー名】葛原イッキ
【ポジション】前衛寄りアタッカー(兼・保護者枠)
【今回の役割】ボトムレーン単騎担当(※なお相手はプロの二人組)

◆ メイン兵装:大剣(ビーム射出機能付き)
「大剣の切っ先からビームが出たら最高にかっこいい」という男児のロマンを詰め込んだ完成形ロマン武器。
デカい・斬れる・ビームも出る。斬撃とビームの使い分けで大体の相手は完封できるが、第一戦では雷の盾が想像以上に硬かった。

◆ 特殊装備:烏羽モチーフの大型コート
漆黒の羽をあしらったトレードマーク。
翼として展開・飛行でき、移動に大変便利。
第一戦でも颯爽と飛んでいった。
そして落ちた。

◆ ウルト(必殺技):【□□□】
第一戦では未使用。
詳細はもう少しお待ちください。

◆ 戦闘スタイル:
・基本は「味方が動きやすい盤面を作る」職人気質。
・今回は普通に勝ちたかったので、手加減なしで勝ちに行った。
・一拍置いて戦況全体を見る癖がある。

◆ 第一戦終了後の本人コメント:
「手加減なしで行ったんですが、普通に二人掛かりで落とされました。雷さんの盾が硬いし乃依さんの矢が痛い。あと復帰待ちの間に櫓落とされたの、普通に悔しい」

見ていただきありがとうございました〜
次回、第2戦
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