転生したら八千年の遠回りをしていた件 〜生まれ変わっても、君と出会う〜 作:蠱毒は孤独
足を下ろそうとして、着地できる床の隙間が見当たらずに爪先を止めた。
別に、本当に歩けないわけじゃない。身体を斜めにして足元を凝視しながら器用に体重移動を繰り返せば、部屋の反対側まで渡り切ることはできる。ただ、自分の家の中で毎回障害物競走のコース取りを本気で計算しなければ移動できない時点で、生活空間としてたぶんもう限界だった。
配信用のマイクスタンドに、予備のケーブルケース。仕事用のキーボードスタンドの足元には、かぐやがどこからか連れてきた巨大な深海生物のぬいぐるみと、用途不明のパーティーグッズが転がっている。
収納スペースはとっくの昔に飽和状態だ。しかも、最近は私自身の音楽機材や作業用の資材も確実に増えているから、この惨状のすべてをかぐやのせいにして責め立てるわけにもいかない。
いかないけれど。
足元のぬいぐるみを拾い上げて机の端へ避難させると、その下から見覚えのない派手な紙吹雪クラッカーの残骸が顔を出した。
「……かぐや」
「なにー?」
「これ、そろそろ生活空間として無理じゃない?」
「何が?」
何が、じゃない。
私が無言で足元を指し示すと、布団の上でゲーム機を握っていたかぐやが、首を左右に傾げて周囲を見渡した。右を見て、左を見て、自分の足元を確認する。
二秒ほど大真面目に考えてから、屈託のない顔でこちらを見上げた。
「まだ歩けるよ?」
「その遭難寸前みたいな判定基準、そろそろやめようか」
「でも実際歩けてるじゃん!」
「毎回コース取りをシミュレーションしながら歩く家なんて嫌なの。私、部屋の中で反復横跳びしたいわけじゃないんだけど」
言いながら、改めて部屋の隅々まで視線を走らせる。
ヤチヨカップを終えても、活動の勢いを落とすつもりはない。むしろこれからもっと本格化していくなら、機材も備品も必要に応じて増えていくだろう。そして何より、目の前で首を傾げているこの宇宙人の荷物が、自然に減る気配なんて微塵も感じられない。
だったら、導き出される答えは一つしかなかった。
「引っ越そうか」
「…………え?」
「もう少し、広いところに」
「引っ越す?」
「うん」
「新しい家?」
「そう」
「広い家!?」
「今よりは、ちゃんと床が見えるところを探す」
「うわーーーーーいっ! やったぁ! 床が見えるおうちだーーーっ!」
かぐやが両腕を勢いよく突き上げて跳ね起きた。その着地の勢いで床のクラッカーを踏み抜きそうになる。
「ほら危ない!」
「セーフ!」
「何がセーフなのよ! 今まさに『引っ越さなきゃいけない理由』を完璧に実演したでしょ!」
「でも新しいおうちなら、こんなトラップハウスになんないじゃん!」
「それ、かぐやがこれ以上荷物を増やさなかったらの話だからね」
「増やさないとは言ってない!」
「そこは嘘でもいいから言って!」
かぐやの耳には、もう私の小言なんて届いていなかった。その頭の中では、既に新しい生活の青写真が猛スピードで組み上がっているらしい。
「配信部屋、広くできるじゃん! 彩葉も作業机二つ置けるし、歌うときもケーブルに足引っかけなくていいし、ぬいぐるみも全部並べられるし――あ、前に見たとこ! あそこのタワマンにしよ!」
「いきなりあそこまで飛ぶ?」
「だって広かったもん! お風呂も大きかったし!」
「家賃、三十五万円よ」
「払えるじゃん!」
「出せる金額と、気軽に出していい金額は違うの」
「でも彩葉、今ちょっと『住めたら便利だな』って顔してる」
「他人の顔色で勝手に賃貸契約進めないで」
けれど、以前内見した時とは前提条件がまるで違う。あの時は、払えないから見送ったわけではなかった。二人で活動していけば払える見込みはあったけれど、この部屋で暮らせているのにわざわざ身の丈に合わない家賃を払う意味が、私の現実的な金銭感覚として見出せなかったのだ。
でも今は、この部屋そのものが活動と生活の両面で容量をオーバーしている。
防音を利かせた配信部屋と、集中できる作業スペースを物理的に分ける。増え続ける機材と小道具をちゃんと収める場所を確保する。そして何より、生活する場所を生活する場所として綺麗に残す。
そのための経費として計上できるなら、話はまったく別だった。
「……まあ、前の物件も候補の一つとして見直すくらいはしようか。他のところともちゃんと比較するけど」
「よっしゃあ!」
「まだ決まったわけじゃないからね」
「でも候補に復活したんでしょ?」
「復活はした」
「一歩どころか三歩くらい進んだ!」
「その独特な歩幅計算は分からないけど、検討には入るよ」
かぐやが満足そうに破顔する。その嬉しそうな顔を見ていると、呆れていたはずの私の中にまで、少しだけ弾むような感覚が伝染してくる。
引っ越しなんて、手続きと荷造りと契約の面倒くささの塊だ。それなのに、新しい部屋で何をどう配置しようかという実務的な想像の方へ、頭が先に転がっていく。
「配信用と作業用のスペースはきっちり分けたいね。今みたいに全部を同じ空間でやり繰りするより、絶対に効率がいいし」
「でしょでしょ! あとかぐやの部屋も欲しい!」
「それはもちろん一人一室で確保する」
「で、彩葉の部屋もあって」
「うん」
「イツキの部屋も作れる!」
「……待って。急に世帯人数が増えたんだけど」
かぐやは、何を当たり前のことを聞き返されたのかと言わんばかりに目を丸くした。
「イツキも一緒に住めばいいじゃん。広いんでしょ?」
「広いかどうか以前に、一継さん本人の生活があるんだから、私たちが勝手に決めることじゃないでしょ」
「今だってすぐそこに住んでるじゃん! だったら今度は同じ家の方が、ご飯も一緒に食べられて便利じゃん!」
かぐやのその屈託のない言葉に、私の思考がふっと足を止めた。
私とかぐやが引っ越す。
それはつまり――このアパートを出るということだ。
今は、玄関を出て外階段を一つ上がれば、一継さんの部屋のドアがすぐそこにある。困った時も、何かあった時も、物理的に数歩の距離にあの人が暮らしている。
ここを出て別の建物へ移ったら、その距離感は当たり前になくなる。
そんなの、引っ越しを考えた瞬間に気づくべき当然の前提なのに、部屋の狭さや家賃の計算ばかりに気を取られて、頭からすっぽり抜け落ちていた。
「彩葉……?」
「……いや。そうだよね。今は、お隣さんなんだよね」
「そだよ?」
「うん」
どうしてそこで胸の奥に小さな引っかかりを覚えたのか、自分でもうまく整理がつかない。ただ、かぐやが一継さんと離れたくないと思っていることだけは、痛いほど伝わってきた。
「かぐやは、一継さんにも近くにいてほしいんだね」
「うん! 三人の方が楽しいもん!」
何の迷いもない即答だった。私は小さく息をこぼして笑う。
「じゃあ、本人に直接聞いてみよう。私たちが外野でどれだけ部屋割りを妄想したって、一継さんの意思が一番大事なんだから」
「今聞く!」
「落ち着きって言葉を辞書で引きなさい」
「善は急げって言うでしょ!」
言うが早いか、かぐやはスマホを操作して本当に連絡を入れてしまった。思い立ってから実行に移すまでの速度だけは、本当に誰にも止められない。
数分もしないうちに、トントン、と遠慮がちなノックの音がして、一継さんが部屋へ入ってきた。玄関のたたきから一歩踏み出したところで立ち止まり、足元の惨状と私たちの顔を交互に見比べる。
「……前にお邪魔した時より、床の露出面積が減ってないかい?」
「減ってます。着実に侵食されてます」
「なってないもん! まだちゃんと通れるし!」
「かぐや、今まさにその判定基準で私に論破されたばかりなんだから黙ってて」
「勝負だったの!?」
一継さんは苦笑交じりに肩をすくめると、機材の隙間を器用に避けてリビングの中央へ腰を下ろした。
「それで、二人で揃ってどうしたんだい? 何か緊急の相談かな」
「引っ越すことにしたの!」
「おお、それはいい決断だね」
「広いタワマン! 前に見たとこも候補! で、イツキも一緒に住む!」
「……うん。最後の条件だけ、僕の耳に届いていなかった気がするな」
「今言った!」
「それは相談じゃなくて一方的な通告」
思わず横から突っ込むと、かぐやが「細かいこと気にしない!」と口を尖らせる。まったく細かくない。
「部屋を移ること自体は、本格的に進めようと思ってます。機材も増えましたし、ここで生活と制作を両立させるのはもう限界なので」
「うん、この足元の状況を見れば完全に納得できるよ」
「で、かぐやは三人で住みたいって言い張ってて」
「イツキも来て!」
「ずいぶんと熱烈なオファーだね」
「オファーじゃないよ、本気!」
一継さんは困ったように口元を緩め、かぐやに返事をする前に、すっと顔をこちらへ向けてきた。
「一継さんは、どうしたいですか?」
すぐには言葉が返ってこなかった。一継さんは顎に指先を当て、ほんの少しだけ考えるように間を置く。
「……僕も、今くらいの距離にはいたいかな」
静かな、短い返答だった。
過剰に飾り立てるわけでもないのに、妙にその一言が耳の奥に残る。
今くらいの距離。
さっき私の胸の中で小さく引っかかっていた隙間へ、その言葉が驚くほど滑らかに落ちてくる。私は何か相槌を打とうとして、結局、喉の奥に引っ込めた。
一継さんは穏やかなトーンのまま言葉を続ける。
「ただ、三人で同じ家に住むよりは、僕は自分の部屋が別にあった方がいいと思うな」
「えーっ! なんでぇ!」
「近くにいることと、完全に同じ屋根の下で暮らすことは別だからね」
「広い家でもダメなの?」
「うん。どれだけ広くてもね」
「イツキの専用部屋作っても?」
「それでも、だよ」
かぐやが露骨に頬を膨らませる。
一継さんは柔らかく笑いながらも、そこだけは絶対に譲らない姿勢を崩さない。
けれど、かぐやもそこで諦めるようなタマではなかった。
「……じゃあ、同じ建物ならいい?」
「自分の部屋が別にあるなら、僕は構わないよ」
「じゃあ同じ階!」
「一気に条件を詰めてきたね」
「だって、同じ建物なら近い方がいいじゃん!」
かぐやは完全に外堀を埋め切ったような顔をして、勢いよく私を振り返った。
「ね、彩葉! 同じ階!」
私は頭の中で、その生活の形を具体的に思い描いてみる。
同じタワーマンション。同じフロア。別々の玄関ドア。
お互いのプライベートな境界は守られたままで、会おうと思えばサンダル履きで数秒で行き来できる。今のアパートの上下階の関係を、そのまま横の並びへとスライドさせたような距離感。
「うん、それがいい」
「彩葉?」
自分でも驚くくらい、すんなりと声が出た。
「同じ部屋に三人で住むより、絶対にその方がお互い気楽だし暮らしやすいと思う。一継さんもそれでいいなら、私は同じフロアの別室にする案に賛成」
「むー……」
「かぐやは、そんなに不満?」
「同じ家の方が楽しそうだったもん」
「気持ちは分かるけどね」
「……でも、同じ階ならご飯は一緒に食べられる?」
「今だってちょくちょく一緒に食べてるでしょ」
「すぐ遊びに行ってもいい?」
「それは一継さんに聞いて」
「イツキ!」
「常識的な時間に来てくれる分には、いつでも構わないよ」
「じゃあ、できるだけ隣に近い部屋!」
「そこは物件の空き状況次第だね」
「イツキがなんとかして!」
「僕に空室を生み出す力はないよ」
「イツキ、そういうの得意そうな顔してるのに!」
「どういう偏見なんだい、それは」
たまらず吹き出してしまった。
「不動産屋の空室管理まで解決させようとしないの」
「だってイツキだよ!?」
「理由になってないから」
かぐやはまだ少し名残惜しそうに唇を尖らせていたけれど、最初に比べれば明らかに納得の色が勝っていた。腕を組んで二、三秒考え込んでから、人差し指をピンと立てる。
「じゃあ、同じフロア! これは絶対条件!」
「部屋が空いていればね」
「なるべく近く!」
「それも空き次第」
「ご飯は一緒に食べる!」
「そこはもう分かったってば」
「よし! じゃあそれで決定!」
ようやく商談成立、といった顔でかぐやが胸を張る。
「広い家になって、配信も歌もやりやすくなって、ぬいぐるみも綺麗に置けて、イツキもすぐ近く。めっちゃ最高じゃん!」
「ぬいぐるみの優先順位が相変わらず高いし」
「大事だもん!」
「別に否定はしないけど、引っ越した先でまた床を埋め尽くしたら本気で怒るからね」
「大丈夫! 今度は床が広いから!」
「何一つ改善する気がない発言が出たわね」
「えへへ〜」
「笑って誤魔化さない」
呆れ混じりに溜息をつく私の横で、一継さんが声を忍ばせて笑っている。
その穏やかな空気を感じながら、私はもう一度、足の踏み場もない部屋を見渡した。
散らかり放題の機材に、増えすぎた荷物。窮屈になったのは、単に物が増えたからじゃない。この部屋で私たちが引き受ける役割そのものが、何倍にも膨らんだからだ。
だったら、今の私たちの生き方に合わせて、生活の器を大きく更新すればいい。
「よし、決まり。引っ越す方向で本格的に物件を探そう。前に見たタワマンも含めて、条件に合うところをちゃんと精査する」
「やったあーーっ!」
「今ここで跳ぶなよ」
「まだ跳んでない!」
「顔が跳ぶ準備運動してるの」
「どんな顔それ!」
かぐやが笑い、私も笑いながら、頭の中で次に必要な実務の段取りを組み立てていく。
物件情報の再確認。二人が活動できる間取り。同じフロアに一継さんが借りられる空室があるかどうか。
そこまで思考を進めたところで、ふと胸の奥に一つ忘れていたものが落ちてきた。
……今の家賃のことだ。
日々の生活費も、高校の学費も、私はバイトと音楽の副業で全部自分で賄ってきた。けれど、この部屋の家賃だけは違う。上京する時、どうしてもそれだけは自分で払うと言い張る私に、お父さんが絶対に譲らなかった一線。
「……あ」
「どうしたの?」
「お父さんに、連絡しなきゃ」
「引っ越すこと?」
「うん。それと、家賃の話」
口に出した瞬間、胃のあたりがキュッと引き締まるのを感じた。けれど、避けて通るわけにはいかない。
「今から電話してくる」
「おー! いってらっしゃい!」
「電話だから部屋の隅に行くだけだけど」
「気持ちの送り出し!」
「はいはい」
スマホを手に取り、二人から少し離れて窓際へと移動した。
連絡先アプリを開く。
画面に並んだ『お父さん』の文字を見つめ、親指が一瞬だけ宙で止まる。それから、迷いを断ち切るように通話ボタンを押した。
耳に当てたスピーカーから、規則正しい呼び出し音が四回鳴る。
不意にプツリと切れ、聞き慣れた、少し掠れた声が鼓膜を震わせた。
『もしもし』
「お父さん。今、話せる?」
『彩葉か。大丈夫やで、ちょうど手ぇ空いてたところや。どうしたんや?』
「ちょっと、報告があって。……近いうちに、引っ越すことにしたの」
『引っ越すんか。もう場所は決めたんか?』
「まだ具体的には決めてない。今の部屋が手狭になってきたから、かぐやともう少し広いところに移ろうと思って探してるところ。候補はいくつか目星をつけてる」
『そうか。保証人はどうするんや?』
「お兄ちゃんに頼もうと思ってる。まだ本人にはちゃんと話してないけど」
『朝日にか。なら、そこは先にちゃんと相談しときや』
「うん、分かってる」
そこまでは、滞りなく言葉が出てきた。
問題は、今日この電話をかけた本当の用件だった。一度小さく息を吸い込み、喉の奥を整える。
「あとね、今の家賃のことなんだけど」
『うん』
「今まで、ずっとお父さんが出してくれてたでしょ」
『そうやな』
「新しい部屋の家賃は、私とかぐやで払うことにする。二人でやってる活動の収入でちゃんと賄えるから」
スピーカーの向こう側が、ふっと静まり返った。
一拍の沈黙。
『……無理、してへんか?』
「してないよ。生活費も学費も今まで通り自分で出せるし、その上で家賃を出しても十分にやっていけるところを選ぶから」
『そうか』
お父さんの返答は、短かった。
電話の向こうで衣擦れの音が微かに響き、少し間を置いてから、静かに言葉が継がれる。
『東京行く時、家賃だけはこっちで持つって話にしたやろ』
「うん」
『彩葉、あん時も全部自分で出すって言って聞かんかったからな』
「言ったね。お父さんがどうしてもダメだって突っぱねたけど」
『あれはな……そこまで全部、お前一人に背負わせる気には、親としてなれんかったからや』
「……分かってる」
昔の私なら、きっとそこで会話を終わらせていただろう。「分かってるから大丈夫」「じゃあね」と、それ以上踏み込ませないように壁を作って電話を切っていたはずだ。
でも、今は違った。
「だからね、本当に助かったよ。今まで家賃を出してくれて、ありがとう」
自分の口から出た言葉は、思ったよりも震えていなくて、ごく自然な温度をしていた。
電話の向こうが、完全に静寂に包まれる。お父さんが息を呑む気配さえ、受話口越しに伝わってくるようだった。
『……そんなん、改まって言わんでもええのに』
「言いたかったから言ったの」
『そうか』
「うん」
『新しいとこ決まったら、また連絡しいや』
「分かった」
『無理だけは、絶対せんようにな』
「しないよ。大丈夫」
『なら、ええよ』
「じゃあね。また」
『うん。またな』
ツーツー、と無機質な電子音が鳴り、通話が終了した。
耳元からスマホを下ろそうとした瞬間、指先が強張ってうまく動かなかった。数秒遅れて、肩からすとんと重い力が抜け落ちていく。息を深く吐き出した途端、喉の奥がキュッと熱く狭くなって、視界の端が微かに滲んだ。
……え、何これ。今になって?
話している最中は、あんなに淡々と、当たり前のことみたいに喋れていたのに。
私は画面が暗転したスマホを両手で強く握りしめたまま、その場から動くこともできずに、ただ静かに立ち尽くしていた。
【彩葉の賃貸電卓メモ:隣人の経済力】
お父さんへの感謝でホロリとしていた感動の余韻は、リビングへ戻る途中で一瞬にして吹き飛んだ。
「同じ階に住む」ということは、一継さんも単身であのタワマンの家賃を払うということだ。
勢いで巻き込んでお隣さんを経済的破滅へ引きずり込むところだったと真っ青になって詰め寄ったのだが、当の本人は社会人としての給与と配信の収入があるから生活破綻はないと、至って涼しい顔で私の懸念を一蹴した。
……そうだった。近所のお兄さん感覚で接していたけれど、この人、普通に社会人をやっている上にトップライバー『葛原イッキ』だった。最初から経済力の桁が違ったのだ。
私の胃痛を返してほしい。