デカかわいいダウナーロボ娘と田舎大豪邸2人暮らし戦中スローライフ 作:4645 (ケモ系大量生産クリーチャー)
攻撃開始。
その意を込めて許可を送信した直後。
目の前が2度ほど真っ暗に明滅すると、少し先に浮く戦闘衛星の背部から蒸発した金属が霧のように吹き出し、そして音もなく沈黙した。
複合型光学誘導装置。
彼女の胸元に目立たぬように内蔵されている地味な4枚1組の積層式回転レンズの調光結果であるそれが、音も煙も銃口もなく、収束偏光装置の微かな駆動音と共に瞬く。
安楽に命を失った機械は静かな慣性を保ち続け、同時に無限の宇宙へ向けた宛もない永遠の旅路を歩み出した。
「・・・」
攻撃を終え恒星を背に浮遊する航宙戦闘艦は、可視光通信を行い、解読可能な発光パターンをもって艦長である僕との交信を試みる。
矮星ガガーリンⅠの逆光の中から奥行きのある蒼い光が明滅し、人型兵器様の影が稼働中の機械であることを空間全体に知らしめた。
しかし、宇宙空間にシルエットとして浮かび上がる頭頂高3.5mのマイクロユニットは微動だにせず空間に立ち尽くすばかり。
動く必要がないからだ。
その身に受けてきた幾重もの恒星の輝きによって、今もジリジリと照らされている彼女の白く美しい流線的な樹脂プレートは、少し経年劣化様に日焼けしているように見える。
「ナギサは攻撃を終了した」
操縦席の対光フレーム入りウィンドウにパターン自動読み取り装置の結果が表示されると、僕は青緑色の合成レザークッションに深く腰を沈め、ほうと一息つく。
戦闘行為が発生した時はいつも緊張する。
見た目からでは相手がどんな機能を持ったいつの年代の装置なのかが全く分からないからだ。
運悪く相手が大戦初期型であれば、それが金色の放熱版を生やしたスラスター付きのアルミ箱の見た目であっても、僕とナギサは欠片も残さず蒸発させられるだろう。
「・・・」
そんな緊張感もつゆ知らず、彼女はその算盤のような可視光照射リズムを絶やさず応えを求め続ける。
計器の光読取中ステイパターンがもどかしそうに揺れた。
「
かなり長い質問であったのにも関わらず、意訳後にコールに表示された言葉はたった二言。
…次は?
僕は答えられなかった。
◇◇◇
「…敵前逃亡、しよっか」
確率機を回し続ける恐怖に耐えかね、僕は艦長に有るまじき発言をした。
ここは僕とナギサの独立完結型母艦であり、要するに宙飛ぶガレージ付きワンルームだ。
「なぜ?」
ナギサは壁に背をつけて鋼板の床にぺたりと脚部を崩して座り、微動だにしない。
その槍のように尖った足先にはドアストッパー状の重力下用簡易歩行補助装置が付いているのだが、彼女は暇を感じている時にそれを無意味に動かす癖がある。
そして彼女は今それをパタパタと開閉させている。
つまりは暇なのだろう。
あるいは指示入力待ちか。
とにかく、彼女は耳も鼻も口も無く、ただ深い蒼に光る無感情な目様装置が適切な場所に配置されているのみの女性型ロボットらしいかんばせから、アーモンド型の瞳を部屋の隅でぽわりと光らせていた。
「もう、いいんだ」
「なぜ?」
僕が泣きそうな声で不明瞭な回答を出力しても、ナギサは動かない。
落ち着いた年上の女性のような疑問符付きの合成音声が空間全体へ向けてぽしょりと広がる。
充電も補給も修理も清掃も、本来は母艦すらも必要ない彼女にとって、艦長と共にこの船の中でただ座る時間は不思議なものであった。
「…飽きちゃったから」
「そう」
静かな船内へ定刻作動式の空調コンプレッサーによる断続的な作動音が染み渡るように沈澱する。
彼女と僕の間には静寂が合ったが、そこに緊張は無く、お互いにただいるだけでいいという感覚があるような気がした。
さらには、その平坦な声色の中に勝手な理解されている感覚を見出している自分の存在にも気付かされた。
高性能AIなどと説明できる存在ではなく、なぜ彼女は彼女で居られるのかを誰も知らない。
そんな現代では普遍的な不可解存在である航宙戦闘艦の彼女は、その何故アイデンティティを持っているのかがまるで謎のブラックボックスを実用的に稼働させると、全てを理解したような声色で承知の回答を生成したのだ。
◇◇◇
「…地球へ行こう」
僕は彼女の方を見ながら提案した。
この戦中の現代において、地球は不可侵領域的な聖域として完全に保護されている他、出入りも自由だからだ。
宙で知り合った数少ない既知の人間達が特定のタイミングで好き勝手に降りて行き、そして二度と戻らない場所。
今まではそういう認識だった。
でも今は違う。
今は彼らの気持ちが手に取るようにわかる。
飽きるのだ。
自動制御の空調がリレーの音を立てて断続的に動作し、たまに鋼材がギシギシと歪む音を立て、ごく稀に数秒で生死の決まる無人機相手の早撃ち勝負が発生するだけの日常を好き好んで続ける人はいないだろう。
「・・・」
船内の目立つところに掲げてある司令盤を見やっても、やはり何の指示もない。
最終更新日は僕がナギサと共に無人出生管理施設から出荷された日。
内容は今も昔も変わらない「敵を探し、排除せよ」の二言のみだ。
当たり前である。
だって軍は僕の出生施設をずっと昔から既に放棄しているらしいのだから。
「なぜ?」
いつの間にか僕の目の前に移動し、部屋の隅にへたりこんだ艦長をしゃがみながら見下ろしていたナギサは、またしても具体的回答を求めた。
しかし会話によるコミュニケーションを図られている側であるはずの僕は、更なる思考のどん詰まりに自らを追い込み続けてしまう。
「・・・」
心の中に言葉を紡ぎ、自分の感情をログに残すかのような言語化を行う。
シナプスの交換が加速度的に増加し、目は開いているのに視界が頭に入らなくなる。
持続可能な頂上決戦は遠い昔に破綻したようだけど、両軍の総司令官は今もなお宇宙の両端の入ることも出ることもできない宇宙要塞の中で永遠の将棋を続けているのだろうか。
だとすれば、僕とナギサ、そして無数の同義存在は、彼らにとってNPCみたいなものなんだろうか。
そうでなければ残り数万人の人類がどんどん宇宙から地球へ漏れていっている現状を放置したりはしないんじゃないか。
彼らは裸の王様であり、僕らは自らがなんという名前のどのようなルーツを持つどんな組織に属しているのかも分からないまま生まれの一言に従って一方に肩入れし続けている未定義存在なんだ。
前者はその実在すら判断できないので批評できることではないとしても、後者の人任せな判断に終始していたと言える自分達の動向に関してはそうするしかなかったと言いたい。
意味を失った機械に毒にも薬にもならない同じく無意味な教育を提供されながら等品質に育てられ、ある日突然この個体は完成したと判断される。
そして宇宙の果ての小石の上に放り出されて、そこから何をすれば?
困惑しながら船内の壁を見ると、光る板に敵を倒せという指示がある。
…敵?
敵ってなんだ?
とりあえずその「敵」を探すために宙に上がり、何となく全自動に近い目標捕捉装置に身を任せ、有り余る余暇を僚機の航宙戦闘艦と親睦を深めることに使う。
そのまま時の流れが一方向に向かい、同じような日々が万華鏡のように繰り返され、それでも僅かに日常の中に滲み出る「学び」を貪欲に啜り続けていると、ある日突然僕は僕になった。
そしてその僕になった日を感覚的に定義するならば、それは今この瞬間である。
自分に向けたレポートの作成が終了し、僕は視覚情報の脳内搬入を再開すると共に、ナギサの疑問に対する適切な返事を生成することに成功した。
「…僕、そこに行ってみたいから」
「いこう」
それを聞いたナギサは何を思ったのか、その場にすっくと立ち上がると、金属の床材の上をコツコツと硬質な足音を立てて歩み、非閉鎖式の力場型エアロックに向かってその身をぽんと放り出してしまった。
彼女は庭園を泳ぐ鯉のように無重力空間を撫ぜ進むと、そのまま幼児がお気に入りの玩具の車を引くように、船の先端を静かに摘む。
すると、それほど間を置かずにコクピットの方から様々な機能の始動を意味する自動音声が歌のように漏れ聞こえ始め、窓の外が極彩色に光り…
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立ち絵は練習がてら頑張って書いてみました。
画力が足りないので胴体から上はご想像におまかせスタイルです。
ドロッセルお嬢様とブレザーメイツちゃんを混ぜてアラサーにした感じを目指した模様
ふとももが太すぎましたね
なろうにも投稿します。