デカかわいいダウナーロボ顔ロボ娘と田舎大豪邸2人暮らし戦中スローライフ 作:4645 (ケモ系大量生産クリーチャー)
「地球へ行こう」
僕は彼女の方を見ながら提案した。
この戦中の現代において、地球は不可侵領域的な聖域として完全に保護されている他、出入りも自由だからだ。
宙で知り合った数少ない既知の人間達が特定のタイミングで好き勝手に降りて行き、そして二度と戻らない場所。
今まではそういう認識だった。
でも今は違う。
今は彼らの気持ちが手に取るようにわかる。
飽きるのだ。
自動制御の空調がリレーの音を立てて断続的に動作し、たまに鋼材がギシギシと歪む音を立て、ごく稀に数秒で生死の決まる無人機相手の早撃ち勝負が発生するだけの日常を好き好んで続ける人はいないだろう。
「・・・」
船内の目立つところに掲げてある司令盤を見やっても、やはり何の指示もない。
最終更新日は僕がナギサと共に無人出生管理施設から出荷された日。
内容は今も昔も変わらない「敵を探し、排除せよ」の二言のみだ。
当たり前である。
だって軍は僕の出生施設をずっと昔から既に放棄しているらしいのだから。
「なぜ?」
いつの間にか僕の目の前に移動し、部屋の隅にへたりこんだ艦長をしゃがみながら見下ろしていたナギサは、またしても具体的回答を求めた。
しかし会話によるコミュニケーションを図られている側であるはずの僕は、更なる思考のどん詰まりに自らを追い込み続けてしまう。
「・・・」
心の中に言葉を紡ぎ、自分の感情をログに残すかのような言語化を行う。
シナプスの交換が加速度的に増加し、目は開いているのに視界が頭に入らなくなる。
持続可能な頂上決戦は遠い昔に破綻したようだけど、両軍の総司令官は今もなお宇宙の両端の入ることも出ることもできない宇宙要塞の中で永遠の将棋を続けているのだろうか。
だとすれば、僕とナギサ、そして無数の同義存在は、彼らにとってNPCみたいなものなんだろうか。
そうでなければ残り数万人の人類がどんどん宇宙から地球へ漏れていっている現状を放置したりはしないんじゃないか。
彼らは裸の王様であり、僕らは自らがなんという名前のどのようなルーツを持つどんな組織に属しているのかも分からないまま生まれの一言に従って一方に肩入れし続けている未定義存在なんだ。
前者はその実在すら判断できないので批評できることではないとしても、後者の人任せな判断に終始していたと言える自分達の動向に関してはそうするしかなかったと言いたい。
意味を失った機械に毒にも薬にもならない同じく無意味な教育を提供されながら等品質に育てられ、ある日突然この個体は完成したと判断される。
そして宇宙の果ての小石の上に放り出されて、そこから何をすれば?
困惑しながら船内の壁を見ると、光る板に敵を倒せという指示がある。
…敵?
敵ってなんだ?
とりあえずその「敵」を探すために宙に上がり、何となく全自動に近い目標捕捉装置に身を任せ、有り余る余暇を僚機の航宙戦闘艦と親睦を深めることに使う。
そのまま時の流れが一方向に向かい、同じような日々が万華鏡のように繰り返され、それでも僅かに日常の中に滲み出る「学び」を貪欲に啜り続けていると、ある日突然僕は僕になった。
そしてその僕になった日を感覚的に定義するならば、それは今この瞬間である。
自分に向けたレポートの作成が終了し、僕は視覚情報の脳内搬入を再開すると共に、ナギサの疑問に対する適切な返事を生成することに成功した。
「…僕、そこに行ってみたいから」
「いこう」
それを聞いたナギサは何を思ったのか、その場にすっくと立ち上がると、金属の床材の上をコツコツと硬質な足音を立てて歩み、非閉鎖式の力場型エアロックに向かってその身をぽんと放り出してしまった。
彼女は庭園を泳ぐ鯉のように無重力空間を撫ぜ進むと、そのまま幼児がお気に入りの玩具の車を引くように、船の先端を静かに摘む。
すると、それほど間を置かずにコクピットの方から様々な機能の始動を意味する自動音声が歌のように漏れ聞こえ始め、窓の外が極彩色に光り…