デカかわいいダウナーロボ娘と田舎大豪邸2人暮らし戦中スローライフ 作:4645 (ケモ系大量生産クリーチャー)
「あ…」
「…」
暗くなりかけた庭をじっと眺める彼女の青い瞳に、空を燃え堕ちる橙色の輝きがぐるりと煌めく。
取り留めもない時の流れの中のある夜、僕とナギサは遠いどこかの空を見知らぬ艦が墜落してゆく様子を見つけてしまった。
幾重にも重なる夏の風情も終わりかけ、少し肌寒い夜風が風鈴を擽る宵の口を、なんとも言えない死の予感が通り過ぎる。
「
「そう、だね…」
彼女の落ち着いた声に僕が反応して、数秒後。
ドーンとも、ガーンともつかぬ遥かな墜落音が静かな鈴虫の歌声に微かに混じり、そして涼風に揺れる木々のざわめきにかき消された。
「…見に行ったほうがいいかな」
「むいみ」
…人命救助を目的としているのなら。
そう枕詞が付く彼女の言葉は一見冷徹なようにも聞こえるが、実際は僕の心が傷付かないように守ろうとしているのだ。
「だよね…」
ナギサと同じ縁側に並んで座る僕は、2人の間に置かれた三角切りの西瓜が乗ったお盆を避けるように腕を伸ばすと、そっと彼女の大きな手に自分の手のひらを重ねる。
彼女の手はひやりと冷たい。
しかし、この家の2階の色褪せた子供部屋にぽつんと置かれていた古びた恋の雑誌には、手が冷たい人は心が優しい人だと記されていた。
真偽は分からないが、でも、彼女は心優しい
僕にはその確信があった。
「…お墓参りだけでも、しよっか」
「する」
彼女は僕の提案に即答すると、自身の手に重ねられた僕の手をもう片方の手で包み込み、なぜか一度きゅうと握ってから、その場にすっくと立ち上がった。
「うん…いこう」
僕も遅れて立ち上がり、そして彼女のお腹に背中を預ける。
すぐに2つの大きな手が僕の体を抱き上げ、そして大事そうに包み込み、そして浮かび上がった。
「ナギサ、僕宇宙服着てないよ」
「だいじょうぶ」
…20メートルか、30メートルほど。
その場で上昇し続けたナギサはふとその動きを止めると、僕を空中に差し出し、ぽんと手を離す。
「もう呼んでたんだ」
「…」
空中に棄てられるようなことがあるはずもなく、僕はクローク状態で上空に停泊していた居住艦の非閉鎖式エアロックの中に、いつの間にか立たされていたのだった。
◇◇◇
「…あ、さっきの艦」
「たのしげ」
…音を、光を、写像を、テッセラクトを、本棚の隙間を、砂を、そしてユニティさえも。
そんな些末な気にすべきこと全てを前と後ろの間に置いてしまうことで、僕とナギサは時間を超越したその先に存在することができていた。
ようは、格別な移動方法によって数百光年離れた宇宙のどこかの観測ポイントに飛び降り、そして浮かんで、それらしき光子をひとつぶ手のひらに載せ、それによって過去を今として見ていた。
単純な話で、僕とナギサは地球から凄く離れたところに行って、すごく離れた分だけ昔の地球を眺めているのだ。
「…にしてもここは、止まった場所だね」
「わからない」
ふと今から目を背け、辺りを見回してみると、そこには新旧様々の大小無数の遺骸達が僕らと同じように後ろ背を恒星に照らし出されている。
考えることは皆同じ。
…都合よく今を取捨選択できるポイントは宇宙の中でも限定されるため、ここは同じように墓参りに来た人や艦が集結し、そして都合の良い今に浸るために自害する場所である。
「…ああ、堕ちる前は二人で旅行していたんだ」
「…」
先程堕ちた艦は、どうやら不慮の事故か、それとも突然片方が発狂でもしたのか。
分からないが、光の中の機械の彼と人間の彼女はほんの数分前まで僕らと同じように仲睦まじくしていたようなのに、何故か突然…
「…僕に人の心は分からないよ、ナギサ」
「めんたるへるす」
彼女はいつも通り平坦な声色かつ真顔で、変なことをぽつりと漏らした。
…彼らのと、地球の。
その両方を兼ねた墓参りは、辛気臭いから数時間でやめてしまった。
僕とナギサに自害する気はまだない。
少なくとも、まだ。
「すいか」
「あ。置いてきちゃったね…」
…僕らの敵前逃亡は、まだ始まったばかりなのだから。
おわり
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ありえないほど人気ないけどロボ娘を布教させてください