とある提督の日記   作:Yuupon

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今回、少し話が動きます。
にしても日記は書きやすい。


34 とある提督の日記

 

 

 

 

 

 

 

 S月G日、大雨子供の雷と電

 

 

 ……なんだこの題名は。

 と、まぁそれはおいておこう。

 昨日、結構ゴタゴタしてしまったのでその事もまとめて日記に書いていこうと思う。

 

 まず、昨日なんだけど。

 『学校には行けた』、行けたんだよ! 学費もちゃんと支払われていたみたいで良かった!

 ……真面目な話、最悪だと退学扱いされているかと思っていたし。

 雷ちゃんと響ちゃん。それにほっぽちゃんも上手いこと丸め込めたからね。その代わり近くにいた白い人、ごめんなさい。

 で、ケータイで連絡すると言ってしまった以上しなくてはならない。

 でも流石に学校では電話は論外だ。そもそも雷ちゃん達はケータイを持ってなかったし。

 それで連絡するのに丁度良いアプリがないかなー、と適当に机の下で弄ってたら……、

 

 

 ありました(、、、、、)

 

 

 見た所GPS機能っぽい。雷ちゃん達の場所にそれぞれの名前と現在地点が表示されていた。

 レーダーなんとかみたいな名前だったかな? ともかくにも雷ちゃん達以外にも、『敵』の表示と横須賀鎮守府の艦娘の反応がチラホラとあったんだよね。

 ちょっと敵の表示が気になったけど、とりあえず横須賀鎮守府のメンバーのところに合流させるべきだと思ったから三人ともそこに向かわせたんだけど。

 

「敵発見。どうやら横須賀鎮守府も探知していたみたいで、様子を見ながら本部に対策を仰いでいるみたい」

 

 

 急にケータイから雷ちゃんの声が聞こえたのにはビビった。

 しかも授業中に。

 大慌てで断りいれて授業から抜けたけど。

 

「司令官、敵の位置を教えて欲しい」

「待て、一度待って。とりあえず学校まで戻ってきてくれ」

「何で?」

 

 まさかあのアプリ、通話とかのモード切り替えしなくてもリアルタイムで話が出来るとは思っていなかった。

 そしてそのアプリを完全に使いこなしている三人には一度説教をしなくてはならない。

 何故なら、授業中だと言ったのにまだ『ごっこ遊び』を繰り広げているからだ!

 だが、説教と言われて来る奴はいないだろう。だからこそ理由をでっち上げる。

 

 

「果たして深海棲艦がこんなケータイのアプリ程度に引っかかるか?」

「ッ!」

 

 そう、聡明な彼女達は分かってくれたようだ。俺のでっち上げた理由の意味を。

 敵にこの電波を傍受されているかもしれない。ついでに、この探知システムから逃れた敵も居るはずだ。

 『ごっこ遊び』をしているあの子達ならそう読み取ることだろう。

 

 でも、その途中で問題が起こったんだよね。

 

「ミツケタゾォォオオオオッ!!」

 

 校門を出たところ。

 変な白い人に追いかけ回された。うん、ガチで。

 警察に連絡したけどね。ってか五人も誘拐犯? が居るみたいな感じになったから、説教どころじゃなくなってね。

 とにかく三人を保護しようとレーダーを頼りに動いてたら、

 

 

「……目的ハ、ホッポダヨネ! ナラ二人ニハ手ヲ出サナイデ!」

 

 とんでもないものを見てしまったぜ。

 

「フン、裏切リ者メガ」

 

 ボロボロの幼女三人にゴツくて白いおっさん。

 完全に事案です本当にありがとうございます。

 と終わった今だからこそ冗談を言えるけど、

 

「……警察ですか、えぇ。◯丁目で変なおっさんが子供を相手に暴れていて」

 

 まずは通報。から、結構ガチでブチ切れました。

 

 

「マ、待テ、話セバ分カーーーー」

 

 意識が戻ったのはこの辺りだった。

 最初に感じたのは『怒りで昂った気持ちの氷解』。そして見えたのは倒れ伏した白いおっさんの姿。

 ここで俺は冷静になって気付いた。

 

(……やっちまった)

 

 明らかに正当防衛の域は超えてしまっている。過剰防衛だ。

 というか戦艦棲姫と戦闘した時から持つようにしている対深海棲艦用の武器が突き刺さっている事から完全に犯罪である。

 つまり、立派な犯罪者の仲間入りをしてしまったのだ。

 

(…………、あぁぁああああああああああッッッ!!)

 

 情けない事に、俺は三人を抱えて逃げ出してしまった。

 ひき逃げ犯並みの悪党っぷりにその時の俺は半ば絶望しかけていたが、とにかく三人だけはちゃんと安全な場所まで送ってやらねばという気持ちで一杯だった。

 

 

 

 

 で、気が付いたら翌日だった。

 どうやら俺は無事に横須賀鎮守府のメンバーのところまで三人を送り届ける事が出来たらしい。

 医療室に寝かされていた。

 ほっぽちゃんについて横須賀提督から問いただされたが、彼女は悪くない旨を告げた。

 それから事の顛末を聞かされたのだが、

 

 俺を追いかけてきた五人組は仕留めたらしい。

 逮捕、ではなく仕留めた、だそうだ。

 何故かと聞いてみると、どうやら彼らは深海棲艦側の人間だったそうだ。

 まだ詳しくは不明だそうだが、少し前に居た黒鎮守府提督が深海棲艦が擬態したものでは、と疑われていたところから話は遡るらしい。

 

 身体検査などで今も詳しく調べているが中々情報が集まらず、結果として可能性があるというところで落ち着いていたらしいが、今回の件でまた新たな意見が生まれたらしい。

 それが、あの白い人間は深海棲艦側の人間ではないか、という説だ。

 

 実際に俺が交戦した人もその疑いの中に含まれており、こちらは捕獲したとの事。

 他の人達は捕らえられる前に全て自殺した上に、溶けるように消えたため。証人として残っているのは俺が相手した人だけだそうだ。

 大手柄だなんだと騒がれてたが、そんな気はしない。

 

 それから医務室に雷ちゃん達三人が来てくれたが、泣いていた。

 背後から突然現れ、三人とも殴り倒されて艤装を剥ぎ取られたらしい。深海棲艦なのか操られている人間なのか判断が付かず、何が起こったのか考える間もなくの事だそうだ。

 

 『レーダーに何故かかからなかった』とも話していた。

 

 まぁ武器が無ければ子供には太刀打ち出来ないというものだろう。

 まだ『艦娘ごっこ』は続いていたのか、艦娘失格だなんだと言っていたので、提督として振舞った。

 

「無事でよかった」

 

 まぁ、提督以前の言葉だけどね。

 それを言うとまた泣き出してしまったので心が痛い。

 怖い思いをさせてしまっただとか、そもそも俺が学校に来る事を許可していれば良かっただとか。

 ともかく、落ち着いてから昨日回収したモノ。ほっぽちゃんの帽子とかを渡してあげると、喜んでくれたので良かった。

 

 

 

 

 

 S月H日、雨共には丁度いい目くらましだ。ハーッハッハッー!

 

 

 朝起きたら、布団の中に雷ちゃん達三人が居た。

 正直ビビった。

 女の子がそんなはしたない真似をするんじゃないと叱ろうとしたが、今度こそ司令官を守るんだから! と元気の良い声で言われては何も言えなかった。

 とりあえずそれとなく叱っておいたけれど。

 

 それから、怪我が完治した!

 

 かなり自然回復力があるのか、それとも治療が凄いのか。

 まぁ今日一日は大事をとって休まされたけどね。

 ついでに罪も無くなった(半殺しにした事については後悔していない)ので、気分も晴れ晴れ。

 なのだが……、どうも釈然としない。

 

 横須賀提督の話を聞く限りでは、この前の深海棲艦の地上侵攻は深海棲艦側の人間のように聞こえた。

 それに関しては異論はないし、海を泳ぐ深海棲艦が地上を侵攻出来た理由にも納得がいく。

 ただ、そうなると気になる部分が生まれるのだ。

 

 そう、同じように身体が白いほっぽちゃんや深海棲姫さんだ。

 あり得ない話だけど仮に彼女達が深海棲艦だと仮定しても、それならそれで俺とかを殺すはず。仮といえ提督には変わりないし。

 それなのに、彼女達は俺に対して友好的だ。

 

 まさか雷ちゃん達に話した、『深海棲艦にも人類との和平を望んでいる奴がいる』なんて事があるわけないし。

 つかそれを言うなら戦艦棲姫には殺されかけたし。

 ただ色白なだけにしても、タイミングが良すぎる。

 まぁ二人を疑う気はないけどね。

 

 それから、昨日の侵攻。

 敵の目的がまだ不鮮明な事も気になった。

 俺狙いだなんて考えにくいし、仮にほっぽちゃんが深海棲艦の裏切り者(俺が倒したおっさんが言ってた)だとしても、理由としては甘い。

 それならそれで、回りくどい事はせずに本土に渡るタイミングを狙えば良いのだ。

 

 何か、何かが抜けている気がしてならない。

 

 

 

 

 S月I日、雨デース、デース、デース

 

 

 

 本土から金剛が来た。どうやら今回の件を受けて俺の周りの守りを増やすらしい。

 女の子に守られるのは男としてどうかと思うのだが、金剛の嬉しそうな顔に思わず嬉しくなってしまう。

 壮絶なジャンケン大会デシター、とか言っていたが鎮守府で何があったのか気になるところである。

 

「hey! 提督ゥー、会えなくて寂しかったデース! デートの約束、ちゃんと覚えてマスカー?」

「あぁ、俺も金剛に会えて嬉しいよ。それとちゃんと覚えてるから安心してくれ」

 

 何せ初デートだ。

 もう一度言うが、人生初デートだ!

 

 まぁその場の流れだったとはいえ、そんな大事な事を忘れるわけがない。

 思えばその約束をしたのは志島鎮守府奪還の前だったんだよな。

 死亡フラグじゃねーかと当時思ったのは内緒、

 

 とは言ってもこの休み中にデート出来るかね? 今回の件で休みがさらに一週間伸びたとはいえ、まだまだ危険があるのも問題だし。

 それ以上に怖いめにあったあの三人も慰めてやらないといけない。

 それを言うと、

 

「分かってマース。だから提督、今日は皆でshoppingしましょう!」

「買い物? 何か買いたいものがあるのか?」

「そうではありまセーン。そもそも、今回私達は休暇中の提督を守るのが役目デース。なので、しっかりと守れた事実を作り、共に楽しませてあげれば良いのデスよ。それにまだまともに遊んで無いでしょ? 聞きましたよ、仕事ばかりしていると」

 

 そうなのか? 俺が働いてるのなんて一四時間程度だぞ? いつもの一八時間よりかなりサボり気味なのに。

 ぃゃ、寝る時間はそんなに多くないけれども。

 

「……、志島鎮守府奪還の時のが溜まってたし」

「言い訳無用デース。そもそも提督は働き過ぎなんデース! 本当なら私や大和さんがこなす書類や、他の子のものまで全て仕事を持っていったそうじゃないデースか! 鎮守府ではあまりに仕事が無くて仕方なしに資材集めやら攻略やらを進めるだけになってるんデースよ?」

「仕方なしにって……つか攻略出来てるんならいいじゃねーか」

「分かってませんネー。私達は提督が体調を崩す事を恐れてるんデース! そもそも何ですか。怪我が完治した一週間後にまた大怪我なんて貴方は何処の幻想殺し(イマジンブレイカー)なんデースか!?」

「知るか! こんなイベントが起こるのが悪い!」

 

 そもそも入院したくて入院してるわけではない。

 まぁ確かに身体検査された時に相手を殴った左手の骨が折れてるとか言われたが。

 それだってあと数日すれば完全に完治することだろう。

 

「まぁともかくデース、提督は働き過ぎ! 休暇中に仕事漬けになる人がどこにいるっ!!」

 

 ここに居ます、と言えば怒られそうなので止めておく。

 なんと言うか、やはり年上お姉さんの押しは凄いなと思った。

 

 

 

 で、だ。俺は幼女三人組と金剛と共に朝一で千葉まで来た。

 横須賀が神奈川あたりなので結構な移動である。

 何故ここまで移動したのかというと、金剛曰く『横須賀付近が危険ならそこから遠ざかれば良いじゃないデースか』との事。

 それから行き先は何処なのかと尋ねると、

 

「千葉まで来たら決まってるじゃないデースか。東京ネズミーランドに」

 

 ……、

 …………。

 ……………………!

 

「ネ、ネズミーランド!? shoppingじゃなくて!?」

「反応遅くないデースか? それと、ネズミーランドのお土産をshoppingするんデース」

 

 まさか某ネズミの王国に来る事になろうとは。

 というか来ると言うなら鎮守府に残してきた暁ちゃんや電ちゃんも連れてきたのに!

 何だか不公平な感じがある。

 

 ……ま、まぁ。今度連れて行ってやろう。大和さんや島風、間宮さんも連れて。

 というか良いのか。

 そもそも今日は平日で、俺学校あるんだけどという発言もしたいのだが。

 

「学校なんて、海軍の権限で一発じゃないデースか。何なら今すぐ卒業も出来ますよ?」

「……何だかなー。俺の青春ラブコメが終わるのは間違っている気がする」

「千葉だからといって無理やりそのネタねじ込まなくても良いと思いマースが……」

 

 そんなこんなでネズミーランドに突入した。

 ちなみにチケット代は俺持ちである。まぁ海軍から金額見てビビるくらいもらったし。

 一ヶ月で五〇〇万ってあんた……、それに特別ボーナス云々合わせたら一〇〇〇超えるんですけど桁間違ってない? 絶対に間違っている気がする。

 

「わぁ、凄いのね」

「うん、初めてきたよ」

「ほっぽも……人、凄い」

 

 初めて来たネズミーランドに子供達も興味津々な様子だった。

 某ネズミや、黄色いクマさんことプさんをチラチラと見ている。

 ……だが、何処か警戒は抜けていないのが悲しかった。とりあえず彼女達を楽しませるために、

 

「よし、じゃあ皆で写真を撮ろうか。おーいミキッー!」

 

 俺から率先して動くことにする。こう言えば彼女達も写真に写らざるを得ないからだ。

 それからアトラクションに乗ったり、(身長制限でいくつか引っかかった)

 お化け屋敷的なアトラクションに行ってみたり、(意外にも雷やほっぽが平気で、響が涙目になるほど怖がっていた)

 パレードのようなイベントを見たり、

 

 幸いにも邪魔が入ることもなく一日中楽しんだ俺たちは、ホテルへチェックインした。

 折角来たのだから、泊まりがけにしたのだ。

 まぁ金には困ってないし、一日じゃネズミーランドを楽しみ尽くせないというのもあったが。

 そのためお土産は明日買うことにして、ともかく三人のご機嫌取りとリフレッシュに勤しもうという考えである。

 

 

 

 

 ……今日一日を見る限りでは、かなり楽しんでくれたようだった。

 とても嬉しく思う。

 あんな子供が、あそこまで怖い目に遭わされたのだ。トラウマになっているかとも思ったがそうでもないようで良かった。

 

 

 

 

 …………明日も、無事に一日が過ぎてくれたらと切に思うのは、フラグだろうか?

 

 

 

 




金剛のデートのくだりが分からない方は14のデースノートを読むことを推奨いたします。
それから今回ツッコミどころ満載な九条君。

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