とある提督の日記   作:Yuupon

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 前章(第二章)に勘違いが少ないという言葉をもらったから今回はマシマシにしましたぜ(含み顔)
 それから文章の書き方を原点回帰してセリフを殆ど削ってみました。試験的に数話この書き方で書きますので好評ならこちらに切り替えます(あれ、37話もやって今更かよというコメントが聞こえる……)



37 とある提督の日記

 

 

 

 S月J日、ハハッ! レイニーだよっ!

 

 

 なんか、見知らぬ人に絡まれた。白っぽい身体色だったので深海棲艦側うんぬんの人なのかと思っていたらどうやら違っていたらしい。

 ほっぽちゃんを探していたとか言っていて、ほっぽちゃん自身も喜ぶような素振りを見せていた。ちなみに美人である。

 

 ヤケに雷ちゃん達や金剛さんが警戒していたがどうしたのだろう。俺を守るように手を広げられても意味分からないぜ。……マジでなんだあれ。

 

 それからほっぽちゃんを連れ戻しに来たとか言っていたので、彼女がほっぽちゃんの保護者であると分かった。「オ世話ニナリマシタ」と言われて少し照れくさい。名前は空母棲姫(くうぼせいき)と名乗っていた。

 ……最近思ったんだが、深海棲艦や艦娘の名前を付けるのが流行っているのだろうか。電、雷、暁、響にしても第六駆逐隊という駆逐艦の名前だし、北方棲姫だとかも敵の名称が載った名簿に書かれていた。

 

 まさか本当に艦娘や深海棲艦な訳が無いし……それに俺がまともに出会った深海棲艦も志島鎮守府奪還の時に見た敵だけだしな。

 

 まぁそんな馬鹿なことは置いておこう。

 ほっぽちゃんと良く似た白髪をした、ボンキュッボンッ! な美人さんはほっぽちゃんを愛おしそうに抱きしめていたが、やがてお礼の言葉を言ってから帰ると伝えられた。

 にしても良かった。親御さんが見つかってホッとした。

 もしかしたらもう身寄りがないんじゃないか、なんて事も考えていたから良かったと心から思う。

 

 が、いざ別れるとなった時ほっぽちゃんがグズリだした。まだ別れたくないと言うのだ。

 正直言うと嬉しかったが、お母さんからしたら微妙だろう。ようやくの再会なのだ。一緒に居させてやりたい。

 それを伝えると、空母棲姫さんは「ジャア、今日一日ダケ遊ンデオ別レニシマセンカ? 帰リ道モ同ジデスシ」と代案を出された。

 

 結局その提案を呑んでネズミーランドで遊んだんだけど、やっぱり楽しいな。流石親子三世代遊べる遊園地。

 その日一日は遊び尽くして、夜間バスで帰ることにした。明日鎮守府に帰るときがお別れの時だ。

 雷ちゃん達は空母棲姫さんとほっぽちゃんの様子を見て目を丸くしていたが、やがて暗い、陰りのある表情で何やらつぶやいていた。

 ……もしかしたら。彼女達も寂しいのかもしれない。そう言えば雷ちゃん達も親御さんと離れ離れなのだ。なら、一度親御さんの元へ帰してあげるべきかもしれない。

 ……それとフラグ回収しなくて良かった。

 

 

 

 S月K日、別れの雨はまたねの証

 

 

 今日は空母棲姫さんとほっぽちゃんとのお別れ、だったのだが面倒が起こった。

 

 突然見知らぬ白い男達が現れ、ほっぽちゃんを攫う! と攻撃を仕掛けてきたのだ。雷ちゃんと響ちゃんと金剛さん。それから空母棲姫さん達がその対処をしていたんだけど、何だろう。

 普通、男である俺がやらないといけないのに寧ろ邪魔になっている気がするというか気しかしない。というか空母棲姫さんは何故そこまでの戦闘スキルを持っているのかが謎だ。

 

 ついでに街中で砲撃するな。一番小さい銃でも銃刀法違反だぞ。思わず叱ってしまったけど。まぁ流石に見過ごせない。人間相手に銃は駄目だ。志島奪還の時のはノーカン。

 

 それはさておき、瞬く間に変人の群れは撃滅した。一応こんな俺でも海軍としての地位があるので、最寄りである横須賀鎮守府に連絡をしておいた。

 恐らくこいつらがこの前、横須賀提督が言っていた深海棲艦側の人間に違いない。ぶっちゃけ俺は何もしてねーけど。

 

 銃を使った時に怒ったせいかシュンとしていた二人に罪悪感を覚えた。でも、お兄さん犯罪はいけないと思う。過剰防衛した俺が言えることじゃねーけど!

 で、横須賀鎮守府からの援軍を待っていたわけだが、そこで更に問題が発生した。

 雷ちゃんが叫んでようやく気付いたのだが、姫級の深海棲艦が現れたらしい。あれ、一日遅れのフラグ回収? と思ったのは内緒で。

 

 にしても本土に姫級の深海棲艦とは。海軍の失態になるのか? そんなことを考えつつ、港湾棲姫が沈んでない!? どうしてッッ!? って慌てる二人を落ち着かせてから俺は空母棲姫さん達に声をかけた。

 まぁほっぽちゃんと空母棲姫さん達は一般人だ。こんな戦争に巻き込むわけにはいかない。だから避難するように言い、雷ちゃん達も巻き込みたくなかった俺は二人をボディーガードとしてつけるという名目で四人を避難させたのだが、この判断は合っていたのか。

 雷ちゃんと響ちゃんの反発は凄かったけど、適当に言いくるめた。

 

 それからしばらく街の中に敵らしい不審者が居ないか金剛さんと二人きりで走り回っていたのだが、その途中ではぐれてしまった。

 裏路地の方を見回っていたせいか。迷子になってしまったのだ。うん、恥ずかしい限りだけど。

 ……で、しばらく歩いていたら荒れている女の人を見つけた。これまた真っ白な肌の人だ。ついでに美人。荒れている彼女は探している人がいる、と言っていた。

 

 気になって尋ねてみたら、最近鎮守府に着任したばかりのくせに功績を立てまくっている天才の話をされた。どうやら彼女はその天才を探しているらしい。

 うーん、俺には縁のない話だ。一瞬、もしかして氷桜かなと思ったけど違うようだし。そこで横須賀提督に聞いた天才君の話を思い出したが、具体的な人は知らなかった。申し訳なく思いつつ俺は丁重に断ったのだが、その頃には彼女はだいぶ落ち着いてくれたらしい。

 「話ヲ聞イテクレテアリガトウ」と。お礼も言ってくれた。

 まぁ殺すとか物騒なことを叫んでいたからね。前向きに生きてくれると良いな。

 ちなみに翌日も探しに来るらしい、用があるので他には危害を加えないと話していた。それからもし良かったら愚痴に付き合ってくれとも。まぁ愚痴くらいならね、本土にいる間は聞いてあげることにした。

 

 

 

 S月L日、ナンドデモ……ナンドデモ(雨が)降っていけ

 

 

 ほっぽちゃん達が帰るのは延期になったらしい。危険、という事もあって空母棲姫さんが一度帰宅して安全を確認する事にしたらしい。帰り道を海軍の方で護衛しましょうか、とも声を掛けたのだが断られてしまった。

 そしてその間ほっぽちゃんを頼むとの事。

 ……二つ返事で引き受けたんだけどそうホイホイと娘を任せても良いのだろうか? まぁ引き受けたからにはキチンと守り抜くつもりではある。知らぬ間に雷ちゃんと響ちゃんとは和解したらしく、楽しそうに話していた。

 

 それから金剛さんに怒られた。

 昨日、途中ではぐれた事に関して物凄い怒られた。心の底から俺の身を案じてくれる彼女はきっと良い人なのだろう。罪悪感がある……。でも少しくらい信用してほしいな。俺だって男だから一人でも大丈夫だし……ね。

 ついでになのだが、昨日現れた姫級の深海棲艦は何もせず撤退していったらしい。目撃証言によると一人の男性が説得していたのを見たとの報告を受けた。

 うーん、その人勇気があるな。深海棲艦、しかも姫級を説得するなんて。こりゃそのうち表彰されるんだろうな。

 つか俺よりソイツの方が提督として適任だと思う。そもそも俺みたいな不法侵入者雇うくらいならソイツを雇えよ何やってんだ海軍。

 

 んでとりあえず危険は去ったとはいえパトロール代わりに昨日歩いていた道をぐるりと歩いていたら、昨日会った白い女性に会った。名前は港湾棲姫さんらしい。

 昨日のように怒り狂った表情ではなく、普通だった。怒ってはいないようだった。表面上は。内面は分からん。つーか出会って一日、二日そこらの俺が内面を理解してるってのもおかしな話だと思う。

 愚痴を聞いていたんだが、なんでも昨日探していた天才は見つからないらしい。どうして探しているのか、と尋ねてみると友達がその鎮守府に捕らえられたそうだ。

 犯罪者か何かかと思ったんだけど、違うらしい。で、話を聞いていて分かったんだが港湾棲姫さんには二人の友達がいるらしく、その一人が天才君の鎮守府に囚われた子で、もう一人が深海棲姫さんだったらしい。で、深海棲艦さんが何か友達を裏切るような行動をとり、それが原因でもう一人の友達が捕まってしまったと。

 で、友達を助けるためにその鎮守府に向かったが、その途中でほっぽちゃんの仲間に邪魔されたらしい。それを強引に突破して鎮守府に来たものの、あっさりと撃破されたそうだ。流石天才だと言いたいが、無実の人を捕まえたと聞いてからは何も思えない。

 事実死にかけたらしいから笑えない。

 

 邪魔した理由をほっぽちゃんが知らない様子だったところを見ると、多分大人の人か何かが止めようとしたんだろう。天才相手に勝てない、みたいな感じかな?

 

 んで、今はその天才を探してそこから友達を助ける方法がないか模索しているとの事。

 うーん、大変なんだな。友達を何とかしてやりたいけど。……元帥さんにでも尋ねてみるか?

 

 そのあと、金剛さんが合流した。港湾棲姫さんが目に見えて分かるほど敵意を発していたけど何なのだろう。とりあえず落ち着かせてから金剛さんに事情を話したのだが、彼女も彼女で警戒心を解いていない様子だった。ねぇ、ちょっとそのオーラ消してよ怖いから。

 

 でも話を聞いているうちに金剛さんも納得の表情をしていた(ただし不穏な顔つきで)。

 ちなみに港湾棲姫さんが金剛さんの事を艦娘呼ばわりしていたけど変な事を言わないでほしい。そして金剛さん、深海棲艦呼ばわりは止めろ。失礼だろ。

 

 本気で胃が痛くなってきた。

 とりあえず宥めすかして落ち着かせる役に徹したのだが、何というか辛い。というか最近思ってたんだけどなんつー休日だ。もうこれ休日じゃない気がする。

 とにかく明日は平和に一日が過ぎればいいな。

 

 

 

 

 S月M日、こっから先は大雨だァ! 無様に元の居場所へ引き返しやがれェッ!!

 

 

 今日は朝から元帥さんの元へ向かった。金剛さんと一緒に。昨日あんな話を聞いては流石に捨て置くことは出来なかった。その事を話そうとアポを取って大本営まで来たのだ。で、結構待たされるんだろうなとか思ってたら顔パス並みの早さで通された。それで良いのか大本営。俺仮にも不法侵入者なんですけど、余罪もあるし。

 

 で、話を聞くとなんでも今日は会議があるらしく、それに参加すると思われていたらしい。というか参加してくれと頼まれた。

 うん、何の会議をするのか分からないけど置いてけぼりだよ。説明がほしい。

 

 そう思って尋ねると、戦艦棲姫の事に関してだから当然だろうと言われた。意味が分からない。捕まえたのは俺じゃなくて桐谷理沙提督と聞いたんだけど。それから元帥さんと武蔵野提督らが俺の名前を出したらしい。あと石蕗(つわぶき)大将という人も。

 

 誰だよ石蕗(つわぶき)さんって。会ったことないんだけど。それと元帥さんと武蔵野提督さんは俺に何を求めてるの? もしかして見せしめ? 海軍に対して犯罪を犯したらこうなる的な? 何それ怖い。……なんか逃げたくなってきた。

 初めに会った時妙に優しかったのを思い出す。うわぁ。

 ……本気で逃げようかと思ったけど諦めた。すぐ後ろに般若のごとく辺りを睨み散らす金剛さんが居たからだ。怖い、何を言うよりも先に怖い!

 

 で、その戦艦棲艦の会議? なんだけど大本営の会議室、と書かれた場所で行われた。なんか周りには警備員さん的な人がいっぱいいて逃げられそうにない様相だ。

 入っていきなり元帥さん達に今回の主役だとか言われた。違うと言いたかったけど言える雰囲気じゃなかった。だって皆こっち見てるし! 知らない人ばかりだし皆階級が高そうな感じの人達だったし! 完全に場違いだ。

 それで辺りを見回すと横須賀提督や氷桜の姿もあった。少し安堵した。何かあったら助けてもらおうと勝手に思う。

 

 で、まず初めに『姫級の深海棲艦が本土に上陸した』事に関してを話していた。

 一度でも本土侵攻を許したことに対する対策と、それを説得したとみられる青年が話に挙げられた。

 ……こう書くと世も末だな。海軍が手をこまねいている間に一人の一般人が命をかけて日本を救ったんだから。出された飲み物を飲みながらそんなことを考えていた。

 

 あとなんか、説得した青年の話の時にイケメンのおじさんがこっちを見てた。後から知ったが、彼が石蕗(つわぶき)さんらしい。『陸軍の大将』さんだそうだ。皆が石蕗(つわぶき)さん、と呼んでいた。やっぱ知らない人だった。というか陸軍の元帥的存在とか言っていたが何故俺はそんな人に知られているんだろう。俺のプライバシーはどうなってんだ。

 それから金剛さん、何だか不機嫌だけどどうしたのだろう。もしかして退屈なのかな? そう思ってたけど、真剣な表情をしていただけらしい。良かった。

 それから話が進んで、元帥さんが今回の件で陸軍から重圧をかけられるようになったと話していた。これまでは艦娘を拝する海軍が上とみなされていたが、この度の失敗で海軍全体が低く見られるようになったらしい。

 石蕗さんがこう言っていた。

 

 ーーーー今や、艦娘を拝するのは海軍の特権ではない。我が陸軍も艦娘を所持している。今まで陸の仕事は日本の防衛だった。だがそれではこのような事がまた起こってしまう。何故なら海軍は強力だとしても万能ではないからだ。

 

 正論だと思う。というかなんでいがみ合うのは分からん。協力すれば早いのに。

 ともかく世紀末な世の中にならない事を願うばかりだ。

 でしばらく俺の知らない事に関する事を話していて、俺の存在不必要なんじゃねーの? とか思い始めた頃だった。

 

 テロリストが襲撃してきたとの報告が飛んできた。俺は艦娘とかを持っているといっていたし他の方は皆その道のプロだから大丈夫だと思っていたのだが、状況は予想外に悪かったらしい。警備は万全にしていたが、単純にそれ以上の力を持つ存在が強襲してきたとの事。

 なんでも、戦艦棲姫さんを奪いにきたらしい。それで付近の海まで侵攻してきたらしいんだけど。でもこちらには精鋭が揃っている。バンバン砲弾が飛び交う中、全員でボコボコに返り討ちにしていた。哀れになるレベルで。

 それからしばらくして石蕗さんの連れてきた少女、後で名前を知ったがあきつ丸さんが主犯と思われる敵と交戦して帰ってきた。

 

 港湾棲姫に邪魔されたとかなんとか。まさかと思うけど昨日の彼女じゃないよね? とりあえず怖かったから皆の邪魔にならないように戦艦棲姫の居るところを守ろうと移動(避難)しつつそう考えた。

 で、テロリストの主犯らしいが名前は戦艦水鬼(せんかんすいき)だそうだ。この前の戦艦棲姫ではない。

 その能力は戦艦棲姫を格段にパワーアップしたものらしく、周りの敵艦もかなりの練度を誇っていたとのこと。どうやら防衛の穴を突かれて攻め込まれたそうだ。薄い部分を。

 

 その話を聞いてもしかしたら姉妹なのかな? と少し思った。それから戦艦棲姫がいる場所なんだけど結局誰も来なかった。仕方ないから戦艦棲姫さんと会話した。

 で、意外と話せることに気づいた。元々あのゴツい怪物みたいなのに操られているのかと思っていたのだが、アレが無いだけで普通の(肌白の)女性にしか見えないのだ。最初のうちはそっぽを向くばかりで反応しなかったが、昨日の話とかをしていたらびくりと反応した。確か港湾棲姫さんの愚痴を話していたっけな。

 

 それからしばらく会話していたのだが、俺がいない事に気付いた金剛さんに無理やり掴まれて引き戻されてしまった。まぁ何しても無事でよかったよ。

 こんなテロはやめて欲しい。次に会うことはなければいいな。だって俺普通の人間だし。

 訓練した軍人と一緒にしないで欲しい。

 

 

 

 S月N日、雨は全てを受け入れるわ

 

 

 翌日だった。なんだかんだ言って敵を追い返したことで今度こそほっぽちゃん達とのお別れである。

 空母棲姫さんが申し訳なさそうに『本当二、オ世話二ナリマシタ』と言っていたのでいえいえ、と返す。

 雷ちゃん達+ほっぽちゃんは俺に会うなり抱きついてきた。よしよし、可愛いやつらめ。その時金剛さんの後ろに般若が見えたのは気のせいだろう。

 それから何故か大本営に表彰されたけど何だったんだろうかアレ。

 

 と、話を戻してっと。

 まぁ折角ほっぽちゃん達とは仲良くなったのだ。

 いつでも遊びに来ていいからね、と言うと笑顔で二人は帰っていった。海の方へ行ったことでようやく深海棲姫さんのように海で暮らす珍しい人達なのだと気付いた。

 




 
『一言』陸軍まで絡み始めました(軍知識〇)
 それとUA四〇万突破しました。ありがとうございます。

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