2052年4月 イースター直前
「ぬわあああああん疲れたもおおおおおおおん」東京都世田谷区下北沢にある豪邸、通称「野獣邸」の一室に一人の男の叫び声が響き渡った。彼の本名は田所浩二といい、野獣のような力強く荒々しい技を繰り出すことから、周囲からは野獣先輩、または野獣と呼ばれていた。ここからは彼のことを地の文でも野獣と表記する。なお、余談だが彼は幼少期に実母と死別しており、大学入学後に父が再婚し、父の側が姓を変えたので、彼の姓は鈴木から田所に変わっている。
「チカレタ…」その場にいた坊主頭の男がそう返した。彼の本名は三浦智将といい、作中の地の文ではMURと表記する。「いやもうキツかったっすね今日はー」と野獣が言うと、MURが「あぁもう今日は…すっげえキツかったゾ~」と返答した。「ホントに…」とその場にいたもう一人の男が言った。彼の本名は木村直樹といい、作中の地の文ではKMRと表記する。彼ら三人は学部や学年は違えど、同じ大学の空手部に属する部員であり、先輩後輩の関係であった。そして、その日も彼らは部活を終え、部活終わりに野獣の自宅である野獣邸でたむろしていた。
「何でこんなキツいんすかねぇ~も~…」と野獣が言い、KMRが「キツいですね…」と返した。
野獣が「やめたくなりますよなんか部活ぅ~」が言うと、MURも「どうすっかな~俺もな~」と言い、はぁ・・・とため息をついた。
「そういえば、MURさん夜中腹減んないすか?」と唐突に野獣が切り出し、MURが「腹減ったなぁ」と返した。それに野獣が「ですよねぇ」と同意し、「この辺にぃ、うまいラーメン屋の屋台、来てるらしいっすよ」と言ってラーメン屋に後から行こうと誘った。
それを聞いたMURは、どうやら話を聞いていなかったらしく、「あっ、そっかぁ…」と意味の分からない返事をした。しかし野獣は、そんなことは気にしていないのか、「行きませんか?」とMURに畳みかけた。畳みかけられたMURははっと我に返ったようで、「あっ、行きてぇなぁ」と返事をした。それに「行きましょうよ」と野獣が返し、「じゃけん夜行きましょうね~」という野獣の一言で夜にラーメン屋に行くことが決まった。そしてMURも「おっ、そうだな」と同意して、この話は終了した。
「あっ、そうだ、おいKMRァ!」MURが唐突にKMRに話しかけた。「あっ、はい」KMRが返事をすると「お前さっき俺らが部活で着替えてる時チラチラ見てただろ」MURが因縁をつけた。「いや、見てないですよ」KMRは否定したが、MURは「嘘つけ絶対見てたゾ」と、さらに因縁をつけてきた。KMRは「何で見る必要なんかあるんですか」と反論し、3人の間には微妙な空気が漂いかけた。
その時、ウーウーと大きなサイレンの音が突然鳴り響き、防災無線から、「下北沢地区にケイブ反応を確認しました。一般市民は直ちに指定避難所へ避難してください」という声が繰り返し流れてきた。その直後、迫真空手部の師範である秋吉亮から電話がかかってきた。以後、彼のことを地の文ではAKYSと表記する。
「おいお前ら、この近くにケイブが発生したぞ。早く避難しろ(語録無視)」電話口からAKYSが言った。ケイブとは、人類の敵たるヒュージが移動に用いる異次元ワームホールのことである。「とりあえずお前ら、最寄りの避難場所まで来い。避難場所に着いたら連絡しろ。」とAKYSは続けて言った。それから、「お前ら、新しい避難場所に変更されているから気をつけろ!」とAKYSは言ったが、途中で電話が切れてしまい、迫真空手部の三人にはその声は届かなかった。