……共生とは言えホロウを消すってことの重さが改めてのしかかってきましたね。
サンブリンガー……アンタ本当に……。
「……ん?」
ある日の六分街。
仕事帰りにラーメンでも食っていこうかなと考えていると……。
ビデオ屋、RandomPlayから客がひとり出ていった。
ビデオ屋なのだから当たり前なのだが……目に止まってしまった。
黒いドレスと、同じくらい黒い翼。
黒いレースのマスクで顔を隠しているが、そんな奴ひとりしか知らなかった。
(……レミエール、ダン……だっけ)
教科書に乗ってるため、新エリー都で教育を受けた人間は皆知っている偉人。
そんな遠い存在か目の前に居た。
「あ。アレックスさん……久しぶり。元気そうだね」
「まぁな」
「……あ」
レミエールの視線が俺の着ているシャツに向けられた。
……今日は黒地に白文字でディゲンヌと書かれた奴を着ている。
「懐かしい、ディゲンヌTシャツだ」
「……!?知ってるのか……!?」
思わず食い付いてしまった。
だって俺の前世の情報だぞこれ。
「昔居たストリーマーが作ってた奴だよね」
「……昔??」
「え?知らなかったの?」
「え、あー……いや」
昔……?
まさか、居たのか……?
「それは……100年前の話か……?」
「そうそう。懐かしいなぁー。私もフードファイター始めたばっかりでいろんな配信者見てたっけ」
「マジか……」
100年前にどぐにゃん存在してたんだ……。
「見たところそのシャツ新品だね。へぇー、ファンが旧都陥落も生き延びてるんだ」
「……みたいだな」
「私の目に映る景色はみんな変わっちゃったけど……ちょっと安心しちゃった。変わらないものもまだまだあるみたい」
「そうかい」
ビデオ屋のドアが開いて、中からアキラが出てきた。
「おや、帰ったと思っていたのだけど」
「ちょっと話込んじゃって」
「よう」
アキラに軽く手を振る。
「何と言うか……意外な組み合わせだな」
「そう?そんなこと無いよ。アレックスさんもフードファイターだもん」
「そうなのかい?」
「え?あー、俺もやってたから」
……フードファイターじゃなくてストリートファイターだけど。
そこで、俺の腹が空気を読まずに空腹を訴えた。
「あ……ごめんなさい。私引き止めちゃったね」
「気にすんな。もとよりラーメン食いに来ただけだ」
「ハハハ……引き留めて悪かったね」
「じゃあな」
二人に背を向けてラーメン屋の椅子に座る。
……ふと、アキラ達の方を見ると何やら話し込んでいて……そして、レミエールがアキラの腕を抱いて引っ張って行った。
「デートか」
「やはりそう見えますか」
「!?」
突然声をかけられて俺は箸を取り落としかけた。
慌てて振り返る……そして、面食らった。
顔の半分以上をバイザーで覆った女が俺の背後に居たからだ。
鍛えられた靭やかな身体に……治安官とはまた違う装備を身に纏っている。
「あ、あんた……軍人か?」
すっとその択が出てきたのは……ファイターの中に軍人がいたから。
なお、その軍人はかなり特徴的な髪型をしていた。
「おや、よく分かりましたね」
「見たまんまじゃねぇか」
「……そうでした」
「それで?そう見えるってどういうことだよ」
「いえ……以前アキラさんが長く不在していた時期がありました」
おそらく、ロスカリファで治療を受けていた期間の話だろう。
「行き先に目星は付いていたのですが……私はそちらに向かうのは難しかったので」
「そうか……」
「そして久しぶりにお会いしようとしたところ……あの女性が現れました。一体どこのどなたなのでしょうか……」
バイザーの端に付いているライトが赤く点灯した。
「調べたところ、ラミル、と言った名前しか分からず……」
「ラミル……」
……まぁ普通は思わないだろうな。
100年前の初代虚狩りです、なんて言われても。
「同業者に確認しても、彼女も分からないと」
「同業者?」
「はい……パエトーン様に近付くあの女、一体誰なのです……?」
「うわっ!?」
驚いてがたたっ、と椅子から転げ落ちた。
いつの間にか軍人の女の隣に紫の髪の少女が居たからだ。
まるで気配がなかった。
「これはビビアンさん」
「御機嫌よう、トリガーさん……こちらの方は?」
「アキラさんのお客さんのひとりですよ」
「……あ?ビビアン?」
名前を聞いて思わず少女を見た。
そう言えば以前ビデオ屋に来た時に……リンにべったりくっついていた奴がいた。
コイツか……。
赤く輝く目が俺にピントを合わせる。
「……貴方、ヒューゴの仕事で確か一緒に居た……」
「……あー、そんな事もあったな……」
ヴィクトリア家政とモッキンバード、ハワードコネクションが協力して行ったおとり捜査。
そう言えばそんな事もあった。
「あの女性とも面識がある様なので声をかけさせて貰った次第です」
「なるほど……」
「それで、あの女は誰なのです?」
「その話」
「私も気になるな」
「今度は誰だよ……」
すっかりラーメンが伸び切ってしまい、チョップ大将に睨まれてしまった。
泣きそうになりながら振り向くと……。
「……星見雅と、姉弟子……」
現虚狩り、H.A.N.D対ホロウ6課星見雅と、同じく現虚狩り、雲嶽山の葉瞬光が居た。
心臓が弱かったから1回止まりそうなメンツだ。
「久しぶり、アレックス。無事に退院したみたいね」
「ふむ。お前がホロウを消滅させた話も聞きたいところだが……今はあの女の方が優先だ」
軍人にモッキンバードに虚狩り×2。
本当にアイツの交友関係どうなってんだよ。
ただ……。
(アレがレミエール·ダン中佐だってのは……本人が明かすべき話だし俺が吹聴する訳にもいかないよな……)
100年前の本人です。
なんて言った所で誰も信じないだろう。
なので、俺が取れる選択肢は……。
「ごちそうさん。悪い大将、迷惑かけた」
「おう。また来いよ」
「サンキュー」
大将に会計を済ませて女四人組の所に戻る……と見せかけてバイクに全力で走った。
「「「「逃がすか!!」」」」
「あっ!アキラ!戻ってきたか!」
「「「「なっ……!?」」」」
追跡する足音が一瞬止まった。
勿論ブラフである。
そのスキにエンジンを始動して俺は全速力で離脱……。
「油断した。お前も中々小手先が巧いな」
「ウソだろ……!?!!」
俺のバイクと星見雅が並走している。
いや脚速すぎるだろ……!?
「痛い目を見たくなければ止まれ」
「く、くそ……」
六分街のど真ん中で法定速度ぶっちぎる訳にもいかず、俺は渋々停車して星見雅のお縄についた。
恨むぞアキラ……。
そう言えばこの話が本小説の100ページ目になります。
本来は一ヶ月とか50ページもいかずに完結させようかなーって思っていたのですがまぁズルズルと伸びてしまい遂に三桁突入しました。
着地地点を測りかねてるのでまだまだ続くと思います。
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