同日、ブレイズウッド。
あれから町に帰還し、プルクラは猪突猛進へ戻りあのルートでの配達を済ませに向かった。
プルクラが戻ってくるまでの間、俺は暇人になるということだ。
「……っ!……っ!」
暇すぎて筋トレをしている。
ついさっき電撃をモロ浴びたのにも関わらず。
だって暇なのだから。
ひとしきり筋肉を苛め抜き、充実した達成感を得た後。
「……何やってるんだい?」
呆れたような声音のプルクラが戻ってきた。
「戻ったか」
「うわ、汗クサ……元気だねアンタ」
「体が、鈍っちまうからな……ん?」
改めてプルクラ見て気付く。
「……マスクは良いのか?」
彼女がいつも着けているゴツいマスクが無い。
アレは、荒野の粉塵対策と花粉対策とか言っていた気がする。
「別に……着けてない時があったって良いだろ」
「……?」
なんでこんな機嫌が悪いんだ……?
「まぁ良いさ。ほら、約束のブツだよ。受け取りな」
「お……」
プルクラがキーを投げ渡してきた。
Catch‼
「助かる」
「助かったのはこっちさ。売れなくて残ってた奴だしね、それ」
「……そうなのか?」
プルクラの持っている倉庫まで、二人で並んで歩いた。
「……」
「……」
無言。
特に二人で話すこともない。
「……あのさ」
プルクラが口を開いた。
「……ん?」
「昔……さ。ホロウの中でシリオンを助けたこと、あったろう?」
「……シリオンがどんだけ居ると思ってんだ」
「……そうね。忘れて」
それっきりまた黙る。
プルクラが何を言いたいのか……俺には分からないけど。
多分、こいつが俺の事を気に入ってるのは……確かなのだろう。
「……あの時」
「え?」
だから、俺も柄にもないことを言い始める。
「……ボコボコにされて大ブーイング受けてた時」
「……」
「一人だけ、ドリンク投げて寄越したシリオンが居たな」
「……なんだい、それ。シリオンがどんだけいると思ってるのさ」
「……そうだな。忘れろ」
そう言って、プルクラが笑い出した。
「くっ……くくく……!あっはははは!!フォロー下手過ぎだろ!」
「やかましいぞ。フォローでもなんでもない」
「くくく……」
涙目になりながら腹を抱えて笑うプルクラから視線を逸らす。
……まだ、俺が全然負け越していて首を切られる寸前だった頃。
猫系のシリオンの少女が俺にスポドリをくれた事がった。
俺の味方なんて誰もいなかった。
そのとき、初めて物を貰った。
いつまでも、覚えてる。
「……着いたよ」
プルクラが持っているガレージのシャッターが開けられる。
中に鎮座していたのは……結構大型のバイクだ。
真っ黒なボディにド派手な赤い稲妻のマークが施されている。
「……こいつは」
「サービスさ」
……後部に、小さく猫のシールが貼ってあるのはちょっと可愛らしすぎるがな。
「……良い」
「そうかい……持ってきな」
「プルクラ」
「なんだい」
「……ありがとな」
「……じゃ、また仕事手伝ってくれよ」
「……ああ」
俺はバイクに跨り、キーを差してエンジンを起動。
夕日の差す荒野へ前進した。
……どうしよう。
プルクラがめっちゃヒロインレース独走し始めてしまった……。
メインヒロイン一ミリも出てないのに……。