ヴィクトリア家政にて。
「……困りましたね」
オオカミのシリオン、ライカンが呟く。
「……参りましたわね」
その正面で頬に手を当てて微笑むメイド、リナ。
「……市長殿からの依頼なのだから……無碍には出来ん。何とかしなくてはな……」
長身痩躯の金髪の男性が続ける。
「しかし、何でまたこんな面倒な話を受けたんだ……お前は」
「言うなライカン。オレだって受けようとは思わなかったさ……だが、善良な市民として悪党に奪われた秘宝を奪い返すのもやぶさかではないだろう?」
「どの口が………………」
「しかし、参りましたわ。わたし共は顔が割れておりますので選手として潜入するのは難しいですし……」
「顔の割れていない、選手になれそうな人材が居れば良いのですが……」
三人は黙り込んでしまったが……ふと、ライカンとリナが心当たりを思い出した。
「……心当たりか?」
「恐らく、ライカンさんと同じ人ですわ」
「ほう?紹介してもらおうか?」
リナとライカンが顔を見合わせる。
リナがスマホを取り出してメッセージを送った。
「少し前まで郊外に居たのですが……都合の良いことに、今は六分街にお住まいになっております……あ、既読が」
――――――――――
リナからメッセージが来た。
今日は珍しくプルクラも居ない。
『こんにちは、アレックスさん』
『どうした?』
『少し困った事がありまして……お力を貸して頂けないでしょうか?』
……仕事の依頼だろうか。
しかし、ヴィクトリア家政が俺みたいな流れ人の助力が必要になるだろうか。
『……俺か?人選ミスってるんじゃないか?』
思わずそう送り返してしまった。
『いいえ、アレックスさんが適任なのです』
「俺が……?」
ちょっと嫌な予感がしてきた。
――――――――――
「非公認格闘技大会だァ……?」
リナに呼び出された場所に行ってみればまさかの行きつけのビデオ屋。
そして裏に通されればアキラ、ライカン、リナ、そして……見知らぬ金髪の男が居た。
「なるほど。それでアレックスにお呼びがかかったわけか」
アキラが納得したように言う。
「……何で俺なんだよ」
「私共は顔が割れている上に……無手での戦いに長けているわけではありませんので」
ライカンは義足で戦うからルールに反しているってワケか。
「目的を聞いていいか」
「それは、君が俺達に協力してくれなければ話せん」
「………………」
金髪の男が横から割り込んできた。
さっきから思っていたが……こいつ、胡散くせぇな。
「コイツは?」
「彼はヒューゴさん。画廊のオーナーなんだ」
「……餓狼?」
「美術品の展示と販売が出来る施設のオーナー、とでも思っていてくれたまえ」
「美術品、ねぇ……」
つまるところ上流階級絡みの話ってわけか……。
気乗りしねぇな……。
「お仕事、受けてくださいませんでしょうか……?」
「うっ……」
リナが、そう訴えかけてきた。
やめてくれ、アンタにそう言われると弱いんだ……。
「……アキラ、何笑っていやがる」
「いや……ずいぶんと分かりやすいなと」
「虚狩り二人侍らせてる色男が何言ってんだ」
「彼女たちは友達さ……そういう関係じゃない」
「そのうち刺されるぞお前」
まぁ、コイツらには世話になってるし仕方ない……か……。
「……引き受けよう」
「ならば結構!君もこれで共犯者だ」
ヒューゴと紹介された男が芝居臭く話を続ける。
「ライカンが連れてきた男がまさか君のような無法者だとは思わなかったのでね。こちらも慎重にならざるを得なかったのさ。許してくれたまえよ」
「……俺からすりゃ、身なりは整っちゃいるがお前も同類の匂いがするがな」
何だか上から目線の話し方にムカついたので思っていたことを指摘した。
そう言うと、ヒューゴは笑い出した。
「粗暴な見た目のくせして中々見る目があるじゃないか!ライカン、いい拾いものだな」
「……やめろヒューゴ。こちらが協力を要請してる手前、あまり彼の気を害するな」
「ごめんなさい、アレックスさん」
なんかもう面倒くさいから流す事にした。
「いい加減中身を話してくれ……」
「では、僭越ながら私が。こちらを」
ライカンが机のうえに広げたのは……上質な紙で作られた招待状。
「……リングオブファイターズ?」
キングじゃないのか。
SNKはあまり馴染みがない。
KOFのMiとか15、餓狼MOWとCtoWくらいしかやったことなかったな。
ロック・ハワードってキャラが好きでそいつが出てた作品は触ってた。
ああ、そうだ……分かりやすく言うとテリーや舞の出身タイトルだ。
……ってそんな話は今するべきじゃなくてだな。
要約すると、金持ちが地下でやる闘技大会で勿論賭博も発生する裏興行だ。
「……そういうのは郊外もエリ―も同じなんだな」
「ほう?郊外にもそういったものが?」
「あー……ヒューゴさん。アレックスは……元々郊外の違法闘技場の選手だったんだ」
「これはこれは……好都合もここまでくるとこわいものだな」
「……で?俺は選手として出場して優勝してくりゃ良いのか?」
「そうだ……と、言いたいがそう簡単な話ではなくてな」
「あ?」
曰く、盗まれた美術品を探し出して奪還するのが今回の目的だった。
「なんだそれ……これもヴィクトリア家政の仕事なのかよ」
「私共のご主人様からの命令ですので」
「と言うわけで、俺が君のオーナーとなり会場へ潜入する手筈だ。君にはこれを渡しておこう」
渡されたのは……覆面だ。
「顔は、隠せと……」
「その通り。よろしく頼むよ、アレックス」
「はぁ……」
リナがこの場に居なかったら絶対に引き受けなかったな……これ。
ちらりとリナに視線を向けると、それに気づいてか微笑まれた。
慌てて視線をそらす。
「最終的に荒事になりそうな予感がするぜ……」
「そうならないよう、お互い全力を尽くそうではないか……なぁ?店長殿」
「……そう言えば何でアキラがここに?プロキシの手が要るのか?」
明らかに俺ほどではないが、アキラもついている気がする。
「逃走ルートにホロウを選ぶ可能性があるからね。僕にも声がかかったのさ」
「なるほどね……アキラ、お前さてはかなり名のあるプロキシだな……?」
そう言うと、この場に居た全員が何とも言えない顔をしていた。
なんでだよ……。
「そうと決まれば……アレックス。トレーニングに精を出してもらおうか」
「……は?」
トレーニング??
と言うわけでヒューゴ登場。
いざ、リングオブファイターズへ。