第28話『頑張れカリンちゃん』
また1週間が経過した。
今日はヴィクトリア家政に連れてこられたホロウの中でひたすらエーテリアスの相手をしていた。
「ワーオ!!」
ビッグブーツでエーテリアスを蹴散らす。
雑魚しか居ないので身体が訛りそうだ。
「Slash!!」
スラッシュエルボー。
エーテリアスと戦うのも大分慣れてきた気がする。
あらかた殲滅し終えると、カリンがパタパタと走ってきた。
……大きな丸鋸状の武器を難なく振り回しているのを見ると、この子も相当にパワーが有るのが分かる。
「お、お疲れ様です……!素手でこんなに戦えるなんて……」
「下手な武器使うほうが俺には向いてないからな……」
「そ、それにしても……凄いフィジカルだと思います」
「お前も、相当に力を隠し持ってるな」
「カリンは……その、まだまだです……皆さんみたいに、上手くやれなくて」
上手くやれないのは当たり前だ。
この子はまだまだ経験値が足りない。
だから、
「だから、頑張ってるんだろ」
「……はい!」
カリンが力いっぱい応える。
いつの間にか忘れてしまった情熱を、この子から感じる。
(……らしくない。俺も頑張らないとなって思っちまう)
思えば、ヴィクトリア家政の連中はどいつも人をその気にさせるのに長けた連中だ。
リナもライカンも容赦ないが俺を焚きつかせてくる。
(俺の中で闘志が燃え上がるのを感じる)
かつて燻っていた感情が再び燃え上がる。
未知の戦いに震える自分がいる。
「……アレックスさん?」
「何でもない」
怪訝そうな顔をするカリンに首を振り、前を見据える。
中型のエーテリアスが出現する。
「I'm Ready!!」
――――――――――
「ど、どうでしょうか……?」
ホロウから出たあと。
カリンが昼食を用意したと言うのでご相伴に預かることにした。
唐揚げをひとつ口に放り込む。
しっかり味付けもしてあって食感が良い。
「………………旨い」
「!」
カリンの顔がぱあっと明るくなる。
卵焼きとウインナーも旨い。
「あの」
「うん?」
「ブロッコリー、嫌いなんですか……?」
「………………」
ちなみに、アレックス·ウィンガーは嫌いな食べ物にブロッコリーをあげている。
なので……俺も何故かブロッコリーを苦手としている。
食べようとすると身体が言う事を聞かない。
「野菜も食べないと駄目ですよ!」
「アレは……野菜って言うより木だろ……」
「同じ植物です!」
「むがっ……!?」
結局カリンにブロッコリーを詰め込まれた。
「アレックスさんは……凄いですね」
「げほっ……ごほっ……な、何が……?」
思っていたより力が強く、抵抗虚しくブロッコリーをたらふく詰め込まれた。
「トレーニングで、一度も弱音を吐きませんでした」
「まぁ……鍛えるのは、好きだからな」
「カリンは……」
「おっと」
「むぎゅ」
ちっちゃい口に、俺は卵焼きを突っ込んだ。
カリンが目を丸くしたが、大人しく咀嚼して……飲み込んでから抗議の目線を俺に向けてきた。
「酷いです。カリンはすごく悩んでるのに、アレックスさんはそういうことするんですね」
「後ろ向きなこと言う口はこうやって塞いじまうぞ」
「えぇ……」
「あのな、カリン。お前はよくやってる。ライカンもリナも、そう思ってるぞ」
「それは……」
「事実だ。お前は、強いし、料理だって掃除も上手い。出来るんだ」
「………………」
引っ込み思案な性格で、自分にイマイチ自信が持てないのだろうか。
でも、光るものは持っている。
胸を張れ。
まだ難しいかも知れないけど……。
「飯、美味かったぞ」
「……ありがとう、ございます!」
「ここまでしてもらってるんだ。俺も……」
優勝、目指してみるか。
「頑張るか」
立ち上がり、目の前を流れる川に向かって叫ぶ。
「優勝、してやるぜ!!!!」
「……ふふっ」
そんな様子を見て、カリンは笑った。
俺も、カリンの方を見てにっと笑う。
「出来ると思うか?」
「出来ますよ、アレックスさんなら」
「おうとも」
俺が拳をカリンに突き出すと、目をぱちくりしながら恐る恐るグータッチした。
トレーニングパートはこの辺で終わらせて、そろそろ大会に向かいます。