第29話『このリングに賭けろ!』
スタジアムに、歓声が木霊する。
ここがエリ―都の地下で、非公式に行われているというのにこの盛り上がりよう。
(エリーの富裕層、暇人ばっかなのか……?)
そう思わないことも無いが、やっぱりこの世界には圧倒的に娯楽が少ないのだろう。
「さて、いよいよ本番な訳だが……我らがアレックス君。調子はどうかね?」
久し振りに見たヒューゴのキザな態度にため息をつくが……。
「悪くはない」
今までに無い調子を、俺は感じていた。
戦いに対する高揚感。
それを、俺は……。
「ならば結構!君の働き次第では俺達は楽ができるのでね」
「ハッ!言ってろ」
「アレックスさん!頑張ってくださいね!」
カリンが力強く拳を握る。
「……おう!」
俺はそれに応える。
「では、一足先に選手控室へ向かっていて下さい。我々は潜入の手はずを整えて参ります」
「アレックス。俺も変装するがくれぐれも正体をバラすような真似はしないでくれたまえよ」
「誰がするかっての……」
ヒューゴ達と別れて、控室に向かった……。
ん?この……RX·ウィングマンってのが俺のリングネームか……?
ここから先はマジで正体を隠す必要があるらしいな……。
ヒューゴから渡されたマスクを被る……これ、鳥か?
なんか餓狼伝説のグリフォンマスクみたいだな。
選手控室は、一人にひとつ。
流石に上流階級のお遊びということで金はかかってるんだな。
ノックがされた。
「……どうぞ」
「やぁ、待ったかね」
「………………!?」
入ってきたのは……黒人の紳士とでも言うべき風貌の男性だった。
ご丁寧に立派なヒゲまではやしている。
「ダッドリー……?」
その姿は、ストリートファイター3に登場したイギリスのボクサーを彷彿とさせた。
「……君にはまだ名乗ってなかったのだがね」
「え、マジでダッドリーなのか……?」
「そうとも、私はダッドリーだ。よろしく頼むよRX……もとい、アレックス」
「……お前、ヒューゴか」
「ああ、その通りだとも」
あっさりと認めた。
いや、これ変装か……。
明らかに体格変わってるじゃねぇか。
「しかし、この格好……君の知り合いにいたのかね?」
「いや……そんなことはないが……」
知ってはいる。
最も、そいつは常にグローブをはめているからそこだけは違うのだが。
「そういう訳だ。これから俺のことはダッドリーと呼べ。選手登録も済ませてきた。後は呼ばれるまで待機しているのだな」
「……ああ」
「あとは……差し入れだ」
ヒューゴ……もとい、ダッドリーから手提げ袋を渡された。
中には、栄養補助食品とスポーツドリンクが入っていた。
「小さなメイド殿からだ」
「……ああ。悪いな」
スポドリのボトルをひとつ取り出して、ひとくち。
……これ、まさか市販じゃない……?
「全く……手のかかることを……」
「愛されてるな?」
「からかうな」
「おっと、そう噛み付くな。俺はこれから挨拶回りをしてくる」
「おう」
さて、試合開始まで時間があるようだ。
今はリング周りで司会が開会式でもやっているのだろう。
『それでは!本大会の主催者、ハワード氏にご挨拶をお願いします!』
放送が繋がったのか、司会の声が控え室に届く。
「……ハワード?」
待て、KOFっぽい大会でしかも主催者の名前がハワード??出来過ぎだろ。
『ハワードコネクション代表取締役のギルス·ハワードだ』
「ギースじゃねぇか!!」
こんなんばっかだな。
え?じゃあこの大会マジでギースみたいなのが開いてるってこと……?
「めちゃくちゃ嫌な予感がするんだが……」
と言うわけで、リングオブファイターズ開幕。