プラチナから落ちたり戻ったり繰り返してましたけどやっと勝ち越して維持できました……道は険しい。
フラフラと、控室に向けて廊下を歩いていた。
あれから自己嫌悪と無力感で死にそうなほど気分が悪い。
通行人に怪訝な目で見られているが……マスクのせいで俺が選手だと分かり放置されている。
「アレックスさん……?大丈夫ですか……?」
気が付けば、リナに肩を支えられていた。
「……リナ、か」
「何か、ありましたか……?」
「………………」
話すか、迷った。
向こうは俺の近くにリナが居るのは把握している。
だが……これ以上家政側に懸念事項を増やすべきではない。
俺が人質を取られていることを伝えるべきではない。
「何も」
「……誰と、会ったんです?」
「知り合いだ」
「……嘘をつかないでください」
舞踏会用のベネチアンマスクを付けたリナにじっと見つめられる。
「……お前の負担を増やしたく、ない」
絞り出せた言葉は、それだけだった。
「一番大変なのは貴方なのですよ?貴方に負担が集中する方が……」
「やかましい。お前は黙って自分の仕事してろ」
「アレックスさん……!」
これ以上リナと問答していたらボロが出てしまう。
リナを押し退けて控室に戻ろうとする。
「アレックスだぁ……?」
「……あ?誰だお前」
俺と同じくらいの体格の男が、隣の控室から出てきた。
「てめぇ、アレックスじゃねぇか……!」
「今日は俺のことを一方的に知ってるやつばっかだな……」
「忘れたとはいわせんぞ……!前にプルクラと邪魔しやがって」
「……あぁ、あの時のケチなチンピラか」
猪突猛進へのケチな嫌がらせしてた集団の頭目だった大男か……。
ヘルメットのままだから分からなかった。
……ん?前会った時もヘルメットだったか。
「てめ……っ!……ハハッ」
「何がおかしい」
「いや?横に美女が居るから大分強気だな」
「……は?」
思わずリナを目線を送る。
「そいつ、お前の女か?」
「……だったら何だよ」
「次の試合、俺が勝ったら……ぐっ」
なんか面倒くさくなって地獄突きした。
「勝ってから言え」
「げほっ……!テメェ……」
「前に負けた奴がいきがってんじゃねぇぞ」
「ハッ……!あの時は2人がかりだったじゃねぇか!装備も無くタイマンなら俺の方が強い……!」
「そうかよ」
付き合うのもダルいからさっさと控室に戻ろうとして、
「なぁ姉ちゃん今から……」
「……触らないで下さいまし」
「そんな事言わずにさ」
「ちょっと、やめ……」
「チッ……」
そんなやり取りが後ろから聞こえてきたもんだからもうムカついた。
「やめろっつってんだろ」
チンピラの手を取ってそのまま捻り上げた。
「いっででで……!」
捻った腕を背中に回して後ろを向かせ、その背中を蹴っ飛ばした。
「この……!」
「さっさと行け」
「でも……」
「行けって」
「……はい。次の試合……頑張ってください」
リナをそのまま行かせて、今度こそ控室に戻ろうとする。
「アレックス……!」
「やかましい!アレは……オレの女だ」
……あれ?オレ今ヤバいこと言わなかった?
「決着はリングで付けてやる」
「……望むところだ。後悔させてやるぞ……!」
……リナ、聞いてないよな。
……ただまぁ……それよりもプルクラの安全の方が気がかりだ。
(何もされてなきゃ、良いんだが……)
以前絞め落としたチンピラが次の対戦相手。
メンタルに大ダメージ入った状態での試合……果たして?