今回の計画と恋バナと理由。
少し遡って。
「それで?件の殿方との進展はどうなんですの?」
ある日の『猪突猛進』にて。
金髪のちんまい高飛車お嬢様がそんな事を言い出した。
「進展……?」
わたしは慌てずに返す。
「この前のプルにゃんの仕事ぶり凄かったよね〜。そんなにお休み欲しかったんだ」
久し振りに郊外に戻ってバーでやっていたら、コイツらに出くわしちまった。
悪い奴らじゃないのは知ってるんだけどね……。
踏み込み過ぎる気がある。
「うるさいよバーニス」
「プルにゃん、その人の事になるとマジになるよね〜」
「……そうでもないさ」
「そんな事は無いんじゃありませんの。あんなマジになって休みの調整するの、ちょっと引きましてよ」
「ぐぬぅ……」
思わず呻いてしまった。
そんなに必死だっただろうか……。
「そこまで貴女が入れ込む殿方、逆に見てみたいですわね」
「あ!私見たことある!遠目だけど」
「何!本当か!?」
今まで黙っていたウチの社長が身を乗り出してバーニスの言葉に食い付いた。
全員の視線が集まった瞬間、ハッと我に返って椅子に戻った。
お嬢様……ルーシーが咳払いをする。
「シーザー。興味があるなら話に入ってらっしゃいな」
「お、俺は……別に……」
「ほらほら〜シーザーもプルにゃんの恋バナ聞こうよ〜」
「恋バナって……」
私は心底うんざりしたね。
こうなると長い。
「私のアドバイスで同棲まで漕ぎ着けたのですから、あともう一押しですわよ」
「エッ!?同棲してんの??!」
「あー、シーザー知らなかったもんね」
「えっ?えっ?いつから……?」
「もうニヶ月くらい経ちますわね」
「ニカゲツ……!?」
シーザーのリアクションがいちいち大きくてげんなりする。
ルーシーに相談したのは私だけどこんな話を大きくするもんじゃないよ。
「……良いじゃん。プルにゃんの幸せがかかってるんだから」
「ちょっと、無でるな」
バーニスが私の頭を撫でてくる。
あまり、強く振り払えなかった。
「に、ニヶ月ありゃ……やることは……やって……!?」
シーザーの妄想が止まらない。
私はため息を吐きながら言った。
「それが、ぜーんぜん」
「えっ」
「えぇっ!?」
「うそー!?」
「アイツ、やっぱ目の前のファイトだとか……生活で手一杯なのかね。私も……他の女にもあんまり興味なさそう」
「……確認しますけど……その殿方、ゲイではありませんのよね」
「流石に無い。私の裸に普通に狼狽えてたし」
「は、裸ァ!?」
「シーザー、うるさいですわ」
「えぇ〜?プルにゃんスタイル良いし、流石にガバーってならなかったの?」
「なら……なかったね」
あの時は……アイツ、大会に向けて追い込んでたし……そんな中で迫るわけにもいかなかったし。
「格闘大会前でね。あんな燃えてるアイツの邪魔したくなかった」
「おお……プルにゃんが女の子の顔してる……」
「茶化すな……!帰るよ」
「ごめ〜ん!つづけて?」
「はぁ……私は、アイツが戦ってる姿見るの……好きだからさ」
「へぇ〜……ソイツ、強いんだな」
「強いよ」
私は断言した。
多分、シーザーには敵わないし、ライトにも届かないけど。
アイツの背中は……大きくて、カッコいいんだ。
「ねーねー、プルにゃんどうしてその人のこと好きになったの?」
「え……?」
キッカケ。
いつの話だったろうか……。
「昔、ホロウに落ちて彷徨ってたことがあったんだ」
我ながらよく生きてたと思う。
その中で、私と変わらないくらいの歳の男の子が必死に励ましてくれてたっけ。
そんな中、エーテリアスに襲われてさ。
その子、ずっと私のこと庇って怪我しまくってた。
終いには一体殴り倒したんだよ。
ボロボロだけど、その時私に向けられた笑顔を覚えてる。
「……なんて、柄じゃない話したね」
「うぅ……」
「げ……何で泣きやがりますので今の話で……」
「シーザーだもん」
「……ったく」
小っ恥ずかしくて体温が上がる。
「それで?そこから追い掛けて身元掴んだんですの?」
「ああ……そしたら郊外の奴隷闘士だったんだよね、ソイツ」
「えっ、賭博闘技場の?よく見付けたな」
「……まぁね」
匂いは覚えてたし。
「久し振りに再会したら私のことなんて覚えてなかったしなんならゴリゴリのマッチョになってたし、普通に腹立ったね」
「ゴリゴリのマッチョって……」
「凄いよアイツの腕。私の脚より太いもん」
「へぇ〜」
「お前さん達ぃ〜そろそろ寝なよ〜明日も仕事だぜぃ〜」
欠伸をしながら歩いてきた少女……パイパーが口を挟んだ。
時計を見ると、まぁ良い時間だ。
「プルクラ」
……寝床に向かおうとしたら、ルーシーがチケットを2枚差し出した。
「なんだいこれ」
「前に私が手伝ったリゾートのチケットですの。例の方と行ってらっしゃないな」
「……私、水苦手なんだけど」
「貴女の裸で取り乱すなら水着でも着て1日一緒にいれば良いんですわ。さっさと手に入れて来るといいですわ」
「………………」
「……ライバル、居るそうじゃありませんの」
そう言われて、つい私はチケットを取った。
ルーシーがにやりと笑う。
「健闘を祈りますわ」
チケットには、ファンタジィリゾート……そう書かれていた。
ルーシーの差し金で、ファンタジィリゾート行きが決まりましたわ!