そして……現れる、最大の危機。
「……あ?」
気が付くと、俺は民家の中に立っていた。
俺は……さっきまでホロウで戦っていたはず。
……ふと、周りの家具がデカいことに気が付く。
俺の目線より高い机や化粧台がある。
「……ん?」
鏡に映る自分の姿に違和感を覚える。
……背が、低い。
いや、若返ってる……?
どういうことだ。
この姿はどう見てもガキだ。
「アレク」
呼ばれたので、振り向く。
身体が勝手に動いた。
「父さん」
口が、勝手に動いた。
「おいで」
父親と呼んだ男に、俺はついて行く。
俺が居た部屋は2階にあったようだ。
階段を降りていく。
居間のドアを開けた先で、女性が何かを愛おしそうに抱えていた。
「……何?」
これ、とは言わない程度には自制心はあったらしい。
「新しい家族だよ」
「家族……?」
「そうよ。ほら……アレクも、見てご覧」
恐る恐る近付く。
布に包まれた家族と呼ばれたものに触れる。
……柔らかい。
「この子が、お前の妹になるんだよ」
「いもうと……」
寝息をたてている、緑の髪の女の子。
「こんな時代だもの。血は繋がってないけど……生きてる私たちが、この子を守らなきゃ」
「アレク……俺たちに何かあったときは、お前がこの子をまもるんだ」
「……俺が?」
「お前は身体も丈夫で力も強い。強い男の子だ」
「この子を……」
「アレク。この子を……カリンを、頼んだぞ」
……カリン?
……カリンが、俺の妹……!?
そもそもこれは何だ!?
なんで俺はこんな物を見せられている!?
これは、俺の本当の記憶なのか……?
そして、映像がこの場面で停止した。
視界が暗転する。
――――――――――
「カリン!!」
勢いよく跳ね起きた。
身体の痛みで悶える。
「ぐ、おっ……!?」
「ああ、起きたか。お前さん」
「え……?」
ふと、周囲を見渡す。
見覚えのない部屋。
六分街で見たことない様式だ。
ベッド脇で誰か立っていた。
白髪の……ワーオ……超美人……めちゃデケェ……。
「お前さん、ミアズマに極端に弱い体質の様だな」
「ミアズマ……?」
「ここらのホロウでよく見かける……まぁ精神を汚染するものとでも思っておけ」
「は、はぁ……?」
「アキラの奴がお前さんを連れてきたときは驚いたが……なるほど」
美人さんに顔を覗き込まれる。
流石に心臓が跳ねてちょっと後退り。
「お前さん。記憶が2つあるな?」
「へ……?は……?記憶??」
記憶が、2つある?
「お前さんの今の人生と、前の人生……2つの記憶が混ざっている」
「……なんだと?」
前世の記憶があるのが、バレてる……?
「だから、ミアズマの影響を倍受ける」
「……イマイチ話が飲み込めないが」
「まぁ、私の戯言だと思ってくれても構わん……が、ミアズマには気を付けろ」
「そもそも何なんだよミアズマって……」
「お前さんが相手していたエーテリアスが撒き散らしていたものがあるだろう?それだ」
「………………」
確かに、赤い煙のような物を撒き散らしていた。
「それがミアズマだ。汚染されると過去にちなんだ幻覚を見る作用がある」
「……過去に、ちなんだ?」
「そうだ。多少の脚色が入るかも知れんが、紛れもなくお前さんの過去にちなんだ幻覚を見る」
「………………」
じゃあ、カリンは……本当に俺の……妹……?
「………………そうだ」
あれから、どれだけ経った?
「俺が運ばれてから、どれだけ経った」
「3日だ」
「……なんだと?」
「弟子たちではお前さんのミアズマの影響を取り除くことは出来なかったからな。だが、私の下に来た時は……ミアズマが一部抜け落ちていた」
「……訳がわからん」
「それは私もだ」
「……で?アンタ誰だよ」
ビビるくらいの絶世の美女と同じ部屋で正直気後れしまくってる。
このクラスになるともう男女の関係とかそう言うレベルの話は無理だ。
ていうかまたアキラかよ。
アイツの顔広過ぎだろ。
「私か?私は雲嶽山の十三代目宗主、
「は、はぁ……」
「お前さんのことは弟子……アキラから聞いている。表にお前さんのバイクもあるからリゾートに戻るなら戻っても良いぞ」
「あ、ああ……助かる」
特に怪我は負っていないのか……身体は特に問題はなかった。
「生命が惜しければ、ミアズマには近付かないことだ。ヤバいぞ」
「……肝に銘じておく」
そんな仙人みたいな見た目や役職でヤバいとか言うんだな……。
――――――――――
アレックスが去った後。
儀玄は考え事に耽っていた。
(あのアレックスとか言う男から抜け落ちたミアズマ……あれは、どこへ行った?)
そもそも、始まりの主とのいざこざでミアズマら沈静化していたはず。
アレックスが即ダウンするするほどのミアズマが何故今更湧き出たのか。
「少し、調べる必要があるな……」
――――――――――
……ホロウ内。
アレックスから抜けたミアズマが、漂っていた。
そして、エーテルの塊……ドッペルゲンガーと呼ばれるエーテリアスがそれを吸収する。
ドッペルゲンガーは、対峙した相手の知り合いを模倣するたちの悪いエーテリアスとして知られている。
しかし、その限りでない場合が存在する。
……敵対者の恐怖を模倣するのだ。
「……!?!!?!!」
ドッペルゲンガーが真っ赤に染まる。
そして、形を様々なものに変化させながらのたうち回る。
……しばらくして、ドッペルゲンガーはある男の姿を模した。
凄まじくボリュームのある、天へと逆立つ金の髪。
そして……左と右の半身で色の違う肌。
赤と青の、奇妙な肌の色をした男は空を見上げた。
「生と死、破壊と再生、愛と憎悪……。あらゆるものは調和のもとに」
男はそう呟く。
周囲にいたエーテリアス達が、男を見る。
「私が、お前たちを導こう」
……エーテリアスが、男へ恭しく頭を下げる。
「穢れは、ここまでだ」
男の手から、炎と冷気が迸った。
というわけで、この作品のラスボスが登場です。
アレックスを主人公に決めた時点でラスボスはこいつだと決めていました。
アレックスの前世の記憶と現世の記憶から生まれたドッペルゲンガー、ストリートファイターⅢのラスボスであり、アレックスが戦いに身を投じる理由となったあの男。
感想、評価お待ちしております。
いつも読ませて頂いて、作者の原動力になってます。
あともう少しで完結しますので、どうか最後までお付き合い頂けると助かります。