まぁ今更か……!
衛非地区、適当観。
ここでの生活も1ヶ月となった。
俺のVトリガーの習得も上手く行き、ブロッキング技能を身に着けた。
そんな中……カリンから連絡があった。
久し振りに会うことになる。
六分街に戻るか。
「あ……!アレックスさーん!」
「……おう」
ルミナスクエアの駐輪場にバイクを停める。
駅の前で待ち合わせだと言うのに、カリンは何故かここに来ていた。
「わざわざ出迎えか?」
「は、はい……」
「そうか」
バイクに鍵をかけて、カリンの元へと歩いていく。
今日は黒のシャツにベストとニット帽だ。
そう毎日ディゲンヌTシャツを着てるわけじゃない。
……まぁこのシャツ、下矢印と拳のマークが2つ描かれてるがな。
「今日は、いつもの制服じゃないんだな」
「その……お母様が……着てほしいと」
今日のカリンは、髪を下ろして黒のキャスケット帽を被っている。
そして、メイド服ではなく……カッターシャツの上にカーディガンを羽織り、黒のスウェットを履いていた。
「可愛いぞ」
「!」
「……ど、どうした……?」
「い、いえ……えへへ……」
薄く化粧もしてるのだろうか。
頬に朱がさしていた。
「えっと……喫茶店に行きましょう。報告したいことがあります」
「良いぞ」
ルミナスクエアの『COFF CAFE』で注文して2階のテラス席に腰を落ち着けた。
……そういやここの店主もティンさんだけど……まさか、あの人たくさんいるんじゃなかろうか。
「……さっき、お母様って言ってたけど」
出されたホットコーヒーに口を付ける前に、俺は気になっていたことを聞いた。
……あんまりコーヒーは飲まないけど、飲むときは基本的にブラックだ。
「えっと……その、カリンは……本当は『ロロット·ハワード』って名前……だそうです」
「………………」
ロックの要素何処だよ。
まぁロックが女性名として不適なのは確かにそうなんだけどさ。
「ギルス様がカリンのお父様……と言うことになるみたいです」
「……俺も、驚いたよ」
カリンが放ったオーラは、間違いなくレイジングストームだった。
食らった俺が言うんだから間違い無いと思う。
「アレックスさんは……知ってたんですか?」
「ギルスに生き別れの娘が居るのは本人から聞いてた。だが……あの日、お前が暴走するのを見るまでは夢にも思わなかったさ」
「あれから……お父様とお母様に会いました。カリンは二人のことを覚えていませんでしたけど……お母様が泣き出してカリンを抱きしめたら……カリン、泣いてしまって」
「……そうか」
コーヒーに口を付ける。
……どんな結末よりもコーヒーの方が苦いに越したことはない。
「……カリンは、二人と暮らすのか?」
「……すぐ、じゃないです。カリンは、ヴィクトリア家政のカリンです。すぐにロロット·ハワードにはなれません」
「まぁ……時間が解決するさ」
「カリンは……ヴィクトリア家政が大好きなんです。でも……カリンが無くした筈の家族もいて……嬉しいんですけど……苦しいです」
「……良い。それは幸せな苦しみだ」
「苦しいのに……幸せなんですか?」
「生きていくのは苦しい。でも良い苦しみ方と悪い苦しみ方がある。同じように苦しいなら、良い苦しみ方をしたほうが良い」
「……ふふっ。励ますの……下手ですね」
「……うるせぇ」
俺はそっぽを向いて残ったコーヒーを飲む。
「まだ答えを出せなくても、大丈夫だ」
「……ありがとうございます」
……俺がカリンと過ごしていた時期があったのは、このまま有耶無耶に出来そうだな。
「アレックスさん」
「なんだ」
「その……お兄様って呼んでも……」
「ぶふっ!?」
飲んでいたコーヒーを吐き出した。
「げほっ!!げほっ!!」
「あっ、だ、大丈夫ですか……!?」
「な、何でいきなり……」
「え、えへへ……その……アレックスさんみたいなお兄さんがいたら……嬉しいなって」
「………………いやいやそんなことはないだろ」
こんなガサツで無骨で筋肉ムキムキマッチョマンの悪人面は流石に。
「リナさんが惚れ込んでる人です。顔は……確かに怖いですけど……本当は優しいって、カリンも知ってます」
「やめろ……そういうのは」
「褒めるとすぐ照れますよね」
「慣れてねぇからだ!!」
あんまり褒められ慣れてないからよくからかわれるんだホント。
カリンまでしてこられると困るぞ俺は。
「あはは……じゃあ、お兄ちゃんの方が良いですか?」
「……好きにしろ」
「そうします」
「はぁー……まぁ、なんだ。良い方向に進めてるよ、お前は」
「……はい」
俺も、前に進もう。
ギルを倒して、ロスカリファでの格闘大会に出て。
今度こそ優勝を掴むんだ。
「俺も、頑張らないと」
「お兄様は頑張ってます」
「まだだ。まだ足りない」
Vトリガーも覚えた。
ギルのコマンドも思い出してる。
だが……まだ経験値が足りていない。
「戦闘経験だ。上澄みの実力差に食い付けるように、強い奴との戦闘経験が欲しい」
「……じゃあ……プロキシ様に相談してみたらどうでしょうか……」
「……アキラに?」
「プロキシ様の人脈で紹介してもらえるかも知れません」
「なるほど……相談してみるか……」
……俺は、この時の選択を後ほど死ぬほど後悔することになる。
ちなみにカリンちゃんは定期的にギルスから戦闘指導を受けていて、今は武器の丸鋸から烈風拳が出せます(