アレックスは修行中なので進展しないとは言えヒロイン目線のパート多過ぎないか……?
ある日のヴィクトリア家政。
本日はカリンが私用につき休暇を取ったので三人で回していた。
(珍しいこともあるものですね……あの子が休暇を申請するとは)
まるで我が子の成長を喜ぶ父のような気持ちになっているライカンではあるが……変化の理由がアレックスにあることを思い出すと若干機嫌が悪くなるのであった。
(……あの男にリナもカリンも振り回されているというのに二人からの信頼が厚いのはなんなんだろうな……)
「ボス〜?ちょっと良い?」
「エレン?どうしましたか」
手入れしていた道具を引き出しに戻す。
倉庫の出入り口に学生服姿のサメのシリオン野少女が居た。
ヴィクトリア家政の最後のひとり、エレン·ジョーである。
「リナがなんか変」
「変……とは?」
「料理が美味しかった」
「何ですって……!?」
……アレックスは美味いと言って食しているあの料理、実はエレン以外は手を付けたがらない。
理由は単純に見た目と……味が壊滅的なのだ。
ひと通りの家事だけにとどまらず、有能のひと言で済ますには多芸なリナではあるが、料理だけは壊滅的に下手なのだ。
エレンは味を気にしないしサメのシリオン特有の燃費の悪さからリナの手料理を食べる数少ない例である。
そのエレンが、リナの料理を美味いと言っている。
「……様子を見に行きます」
「はーい。それじゃあお疲れ様でしたー」
――――――――――
「………………」
従業員用の控室で、リナはボーッと座っていた。
非常に珍しい光景である。
ライカンは、ため息をぐっと堪えて声をかけた。
「リナ」
「………………」
「……リナ」
「……あら、ライカン……まぁ、もうこんな時間に……エレンは……」
「帰りました」
「……ごめんなさい」
普段は完璧なメイド長がこんなに無防備になるのも珍しい。
……だが、原因が原因だけにライカンはあまり良くは思っていないが。
「そのような調子では業務に差し支えが出ますが?」
「それは……大丈夫です」
「大丈夫に見えないから言っているのです」
「………………」
「はぁ……」
ライカンは徐ろにスマホを取り出した。
「あの、ライカン?」
「……もしもし?ウチの従業員がお前のせいで使い物にならん。何とかしろ」
……あろうことかライカンはアレックスに連絡した上にそんな事を言って通話を切った。
「ライカン……!?」
「こうするのが一番手っ取り早いと思いまして」
「……今、カリンちゃんと一緒に居るんじゃ……」
「……あっ」
「「………………」」
可愛がっている後輩の約束に割り込んでしまった罪悪感に一気に苛まれた。
「ライカン……」
「何も言わないでください、リナ……」
「……後で一緒にカリンちゃんに怒られましょうね」
「………………」
――――――――――
「え、えっと……誰からだったんですか?」
俺がマヌケにも口を空けて唖然としていたのをみかねて……カリンが声をかけてきた。
「……ライカンだ」
「ええっ……!?か、カリン何かやってしまいましたでしょうか……!?」
「従業員が使い物にならなくなったから何とかしろと」
そう言うと、カリンは少し遠い目をした。
「……多分リナさんです」
「アイツ、何かあったのか……?」
「えっ」
「えっ?」
カリンにジト目を向けられる。
「心当たりがないんですか……?」
「あ、ああ……」
「最低です」
「……俺なんか悪いことしたか!?」
「リナさんもプルクラさんもヴェスポさんも可哀想です」
「三人とも……!?」
俺マジで何かしたのか……!?