『じゃーん、ノックノックのアカウントを作ったのでおぬしともこうやってお喋り出来るようになったぞ』
『帰れ』
『ガーン!』
翌日、まさかスマホにイングリッドからメッセージが来ていて流石に飛び上がった。
何なんだよマジであの女……。
『……で、わざわざメッセージ寄越すなんて穏やかじゃないな』
『おぬしは本当に素直に聞いてくるのう……。あれから少し気になってな』
『調べたのか。そっちの視点から見てくれるのは正直助かる』
『……や、やり辛いのう!こうも頼られるとそれはそれで……』
『今はどんな情報でも欲しい。頼む』
『ギルは本人ではない』
「……本人じゃない、か」
何となくそんな気はしていた。
会話が成立していなかったし。
『この世界風に言うのなら、「どっぺるげんがー」とやらか』
『ドッペルゲンガー……?』
ドッペルゲンガーとは、ホロウにたまに出没する……相対した相手のトラウマを読み取り恐怖の対象に変化すると言う。
『誰を読み取ったってんだ?』
『おぬしじゃよ』
『……俺?』
『みあずま?と言う奴にやられたじゃろ』
……思い出す。
一度、ミアズマに汚染されてぶっ倒れたことがあったな。
『ほろうから出る時にミアズマの一部がどっぺるげんがーと融合したのじゃろう』
『俺の記憶から生まれたって訳か……』
なおさら、俺が倒さなきゃならなくなった。
『今のおぬしは届かないじゃろうが……背中を押してくれる者たちがおる。そうすれば勝てるじゃろ』
『……そうか。助かるよ』
『にょほほ。生きて帰ってこいよ、小僧』
イングリッドがオフラインになる。
俺もスマホを置いて立ち上がる。
そろそろ着替えて適当観に向かうか……。
そう思い、寝巻き代わりのシャツとパンツを脱いでシャワーを浴びようと、
「アレク?居るかしら〜?」
「えっ」
「あっ」
……なんで合鍵持ってんだよコイツ。
「わぁ……凄い筋肉……」
「おま!ヴェスポ!!今まだ!とにかく出てけ!!」
「私は構わないわよ」
「俺が!気にすんだよ!!」
駄目だコイツ動かねぇわ。
俺は大慌てでシャワー室に逃げ込んだ。
いつの間にか俺の家の鍵がかくさんしてる……?
「アレクー?朝ごはんまだでしょー。知能構造体も行ける場所知ってるからモーニング行きましょうよ」
「……わーったよ。大人しくしてろ」
「はーい!」
そう言われて大人しくしてる奴じゃないのは短い付き合いで把握してるので急いでシャワーを済ませる。
上裸だがいつものジーンズを履いて出る。
……ヴェスポは大人しく椅子に座って待っていた。
「……本当に大人しくしてた」
「私を何だと思ってるのよ」
「じゃじゃ馬」
「なにそれ」
「……後で調べろ」
「ふーん……それよりも、アレク!モーニング行きましょ」
「俺は別に良いけど……お前何食うんだよ」
「ふふふ、知能構造体向けのサービスもしっかりしてるのよ!行きましょう!」
「はいはい……」
少し距離があるらしいので、バイクの後部にヴェスポを乗せて走る。
知能構造体はバイク乗る時にヘルメット要らないらしい。
俺のヘルメットの後頭部にコツンと額をぶつけてきた。
そのまま俺の腹に手を回す。
……固い。
知能構造体だからそういうもんだけど。
俺とヴェスポは、モーニングを堪能した。
「……それで?なんか話あるんだろ」
お互いに朝食を済ませて、残ったコーヒー片手にヴェスポに問いかけた。
「ええ。これ」
ヴェスポが取り出したのは……6枚のディスク。
「……ドライバディスクか」
実は、俺はドライバディスクを持っていない。
そもそもホロウレイダーが正規のディスクを手に入れられる訳もなく、仕方なく装備無しで今まで戦っていた。
「そう。私が作ったの」
「……作った?」
「ええ。世界でこのセットだけ」
「お前、そんなものどうして……」
俺はよく知らないが、ヴェスポは有名なTOPSの歌姫。
休止中の現在でも……このディスクの価値は計り知れない。
「……私も、貴方の役に立ちたい」
「……そう、か」
ヴェスポから、ドライバディスクを受け取る。
音動機を取り出して、セットしていく。
「……ん?確かディスクは1種類4セットで最大効果じゃなかったか?」
ドライバディスクは2枚か4枚装備する事で固有効果が発動する。
6枚同じ種類を装備する必要はない……が。
「6枚装備で効果が発動するようにしたわ!」
「……マジかよ」
「だって私の歌以外持ってて欲しくないんだもん」
「……んなことしなくたって、お前の歌が一番好きだよ」
「うぇ!?え、えへへへ……も、もう……!アレクったらほんとに私の歌好きね!」
「まあ……な。今聴いても良いか?」
「ダメ!」
「……えぇ?」
「もうダメかも!って思ったときに流れるようになってるから。私がついてるって思い出して勝ってほしいの」
「……とんだ逆転劇を俺にやらせるわけか」
「やっぱり貴方には勝って欲しいもの」
「……そうかい。楽しみにしておくよ」
無名の音動機に、無名のドライバディスクがセットされた。
こいつは、俺を助けてくれる……絶対に。
ヴェスポが支えてくれる。
「……ありがとな」
「ええ。だから、今日1日貴方の時間をちょうだい」
「は!?いや待て俺は今日まだ修行に……」
「ほら行きましょ!」
「やめ、ちょっ……!ああもう!仕方ねぇな!!」
儀玄に断りを入れて、結局ヴェスポに1日つき合わされることになった。
「……全く」
6セット効果ドライバディスク、タイトル不明効果不明。
発動条件はアレックスがピンチに陥った時。